伊豆半島を走る…初・中・上級別のおすすめサイクリングコース

サイクリングパラダイス伊豆半島。海と山がこれほど近いところもなく、温泉や特産物も思う存分楽しめる。ただし半島を一周すると200km超なので、東西南北どこかのエリアに定めて走るのがいい。今回は「伊豆のへそ」と呼ばれるど真ん中。結構見落とされがちな穴場である修善寺や狩野川(かのがわ)をのんびり走ってみた。

狩野川沿いの道で1人ひとりファンと併走しながら会話を楽しむ新城幸也(前から4番目)

●初級者コース
狩野川沿いサイクリングコース
距離:往復16km
獲得標高:26m
所要時間:1時間(休憩除く)
発着地:道の駅「伊豆のへそ」 メリダXベース
ルート:伊豆のへそ〜狩野川〜道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」〜狩野川〜伊豆のへそ

ツール・ド・フランス7回完走の実績を持つ新城幸也(バーレーン・メリダ)がつかの間の日本滞在期間を使って、12月2日にファンとサイクリングするという企画があった。チームに自転車を提供するメリダが主催。熱狂的ファン8人の限定ライドで、メリダ製の最新モデルを貸してもらい、憧れのプロ選手と狩野川沿いをおしゃべりしながらのんびり走るというものだ。

発着は修善寺道路・大仁(おおひと)中央IC近くの道の駅「伊豆のへそ」。施設内に「メリダXベース」という巨大なサイクリング拠点があり、eバイクを含む最新モデルがレンタルでき、割引料金で温泉に入ることもできる。参加したファンは狩野川沿いの平たんなサイクリングコースを8kmほど北上し、伊豆縦貫自動車道近くの道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」まで走った。ここにもメリダが経営するサイクリングカフェがあって、店内でドリンクを飲みながら日本のスーパースターを囲んで話を聞く。

道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」で

狩野川は伊豆半島中央部の山々から駿河湾のある北に向かって流れる。川沿いのサイクリングコースは初級者向きで、安全なので家族連れやデートに最適。都内からのアクセスもよく、自動車道を降りたところにサイクリング拠点があることからとても便利。しかも飲食店や日帰り温泉も併設されているので至れり尽くせりだ。

●中級者コース
修善寺奥の院
距離:往復20km
獲得標高:283m
所要時間:1時間20分
発着地:修善寺・大仁
ルート:大仁〜狩野川〜下田街道〜修禅寺(温泉街)〜北又川〜奥の院〜北又川〜修禅寺(温泉街)〜下田街道〜狩野川〜大仁

中級コースは修善寺の温泉街から北又川という支流をさかのぼって奥の院を目指すルートがいい。弘法大師が見つけたという独鈷(とっこ)の湯が観光スポットの中心エリア。ここから西に進むルートは最初こそ勾配がキツいものの、すぐに美しい田園風景を楽しみながらのゆるやかな上りになる。奥の院まで10kmほど。さらに道は続くが、その先は急になり、舗装状態も悪くなるので無理しないほうがいい。帰路の下り坂もスピードはそれほど出ないので、ダウンヒルが苦手な人でも安心だ。

自転車愛好家にとって「修善寺」という地名は親近感がある。東京五輪MTB競技会場の日本サイクルスポーツセンターがあり、隣接する伊豆ベロドロームでは同トラック競技が開催される。ただし本来の「修善寺」である温泉街まで足を伸ばすサイクリストはそれほど多くはない。近いけれど意外と知らない存在なのだ。

道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」のサイクリングカフェで

●上級者コース
だるま山
距離:往復40km
獲得標高:800m
所要時間:3時間30分
発着地:道の駅「伊豆のへそ」 メリダXベース
ルート:伊豆のへそ〜狩野川〜下田街道〜修善寺虹の郷〜県道18号〜だるま山〜県道18号〜修善寺虹の郷〜下田街道〜狩野川〜伊豆のへそ

上級者は修善寺温泉街から県道を西に向かってだるま山を目指す。展望台からは駿河湾の向こうに富士山が望める。さらに健脚派は西伊豆スカイラインなどを使って周回コースを取ると50kmから80kmの山岳ルートを走ることができる。自動販売機などが少ないので携行品は十分に。またこれからの時期は路面凍結しやすく、天気が崩れれば冠雪に見舞われることも。海岸沿いの西伊豆ほど季節風は強くないが、日が傾くと気温も一気に低下する。日没時間や天気予報を確認しながら実施したい。

弘法大師が見つけたという独鈷(とっこ)の湯が観光スポットの中心エリア
新城幸也と一緒に走ったファンが道の駅「伊豆のへそ」で記念撮影

伊豆半島と富士山すそ野をサイクリストの聖地に…東京五輪が環境作りのチャンス

伊豆半島と富士山すそ野をサイクリストの聖地に。静岡県東部地域が自転車愛好家の受け入れ環境整備を進めている。東京五輪で開催される自転車4競技のうち3競技がこのエリアで開催されることになったからだ。「だったら県東部全体でなにかをしよう」と、20の市町村、地元企業が一体となって「ふじのくにサイクルスポーツ県づくり」を推進している。

アテネ五輪代表の田代恭崇さんが魅力的なサイクリングコースを案内してくれる

2020年東京五輪の自転車競技。伊豆市の「日本サイクルスポーツセンター」がトラックとMTBの会場となる。小山町の「富士スピードウェイ」はロードレースのゴールや個人タイムトライアルのコースに。「このチャンスを逃がさず、サイクルスポーツをレガシー(資産)にしよう」と、東京五輪・パラリンピック自転車競技静岡県開催推進委員会、同伊豆半島・東部地域首長協議会が相次いで設立され、環境作りに着手した。

田代恭崇さん。スルガ銀行主催のツアーでも案内役を務める

これまで埼玉県上尾市にあった国内実業団チーム「ブリヂストン・アンカー」も静岡県三島市に拠点を変更し、チーム名も五輪協賛企業の親会社を前面に打ち出す「ブリヂストンサイクリング」と変更。ロード選手のみならず、トラックやパラサイクリストも同地を拠点として2020年を目指すことになった。また、アテネ五輪代表で、元ブリヂストンサイクル社員の田代恭崇さんをアドバイザー起用。前週の「自転車で行こう」で南伊豆90kmサイクリングを案内してくれたように、さまざまな企画を実施してサイクリストの聖地としての基盤づくりを進める。

地元企業もバックアップする。「スルガ銀行」では3支店に「サイクルステーション」を設置。銀行口座を持っている人なら無料で参加できるサイクリングツアーも1年を通して開催する。さらに規模の大きなホテルや旅館もロビーあるいは部屋に高額な自転車を持ち込めるようにして、「サイクリストに優しい宿」キャンペーンを展開する。

プレ五輪イヤーとなる2019年にはプレ大会などが開催される予定で、サイクリストの聖地を打ち出すことで地元の人たちが自転車競技に興味を持ってくれるようにする。市民の五輪気運を高めるとともに、観光で潤うまちづくりを目指す。その手段が自転車というわけだ。

伊豆半島は自転車店が少ないので、パンク時の頼もしい存在として飲料自販機でチューブが買える!
しかもバルブの長さが選べる

●アローサイクリングコース
2020年までに伊豆半島の主要道路に青い矢羽型路面表示を40mごとに設置する。オススメのサイクリングコースの進行方向が分かるようにして、愛好家を誘致しようという計画。目的地までの残り距離も表示する。人気の高い「しまなみ海道=広島県尾道市〜愛媛県今治市」を参考にした試みだ。すでに西伊豆の海岸線に敷設済みで、実際に走行してみたが、細いタイヤでもペイントの厚みが気にならない程度で、サイクリストに優しいのがうれしい。

「バイシクルピット」の幟を掲げるホテル。ロビーには自転車ラックや貸し出し工具がある

●バイシクルピット
空気入れやスタンドのないスポーツバイクを駐輪するバイクラックを常備した「バイシクルピット」も道の駅や鉄道駅など合計200カ所に設置する計画。ガソリンスタンドを経営する企業からも設置の申し出をもらっているという。工具類の貸し出しのほか、休憩スポットとしても使え、体調不良やトラブル時には必要となる施設を紹介するなどのサポートもある。

ハローサイクリングの電動アシスト自転車

●ハローサイクリング
電動アシスト自転車を貸し出すレンタサイクルステーション「ハローサイクリング」も要所に置き、広域での乗り捨ても可能にした。予約はスマホでも可能。この「ハローサイクリング」は都内や神奈川県横浜市、さいたま市などにステーションを持つシステムだが、伊豆半島南部も重点的に展開している。

伊豆半島は鉄道駅から観光地までの二次交通が弱いので、それをカバーするためにレンタサイクルを整備したという。アップダウンが多く、走りごたえのあるコースなので、電動アシスト自転車は初級者の体力をカバーしてくれるのでオススメ。

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