ポガチャルやクスがツール・ド・フランスさいたまに意欲
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが11月5日のレースを翌日に控え、出場選手が登場するチームプレゼンテーションなどのイベントが行われ、有力選手が意気込みを語った。
「日本に来てファンの人と会えるのを楽しみにしていたのでとてもうれしい」とUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル。
「どんなに忙しくても疲れてしまっても、きちんとリカバリーして1つひとつのレースに挑むことがボクの仕事だからね」と、大活躍のシーズン総括。負傷したケガも99%の回復を見せているという。
「ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したことでいろいろと変わったことはあるけど、チームメートといろんなレースに行ったり、家族を連れて行ったりして、自転車に乗るのが大好きなんだ。これからも変わることなく楽しんでいきたい」とユンボ・ビスマのセップ・クス。
世界最高峰の自転車レースとして110回の歴史を持つツール・ド・フランス。その名を冠し、市街地サーキットに凝縮した大会として2013年に始まったのが「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」だ。
その夏に開催されたツール・ド・フランスの総合優勝者をはじめ、区間勝利や各賞を獲得するなど大活躍したプロ選手がこぞって来日する。欧州を主戦場とするロードレースのエッセンスが持ち込まれ、日本にいながらにして本場の興奮と感動が味わえるのが魅力。
舞台はさいたま新都心の高層ビル群。距離の短い周回コースが設定され、沿道に立てば世界最高峰のスピード感が何度も味わえる。2020、2021年はコロナ禍により開催を断念したが2022年に3年ぶりに開催。2023年は9回目の大会となる。
クスがブエルタ・ア・エスパーニャ初優勝…ユンボ・ビスマ勢がグランツール全制覇
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは最終日となる2023年9月17日、サルスエラ競馬場〜マドリード間の101.5kmで第21ステージが行われ、ユンボ・ビスマのセップ・クス(米国)が初優勝した。総合2位はヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)、3位はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)でユンボ・ビスマが表彰台を独占。
またログリッチは5月のジロ・デ・イタリア、ビンゲゴーは7月のツール・ド・フランス総合優勝者で、ユンボ・ビスマの所属選手がグランツール(三大ステージレース)で全勝。自転車競技史上初の快挙を達成した。
最終ステージの勝者はカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)で、今大会3勝目、大会通算4勝目。ポイント賞を獲得した。
山岳賞はレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)。新人賞はフアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)。チーム賞はユンボ・ビスマ。
たくさんの思い出と楽しい時間を過ごした(クス)
「今日はレース全体の中で最も苦しんだステージだったと思う。アングリルで苦しんだときよりも苦しんだ。だから今は終わってよかったと思っている。選手たちがアタックの準備をしているのを見たとき、速いステージになるだろうと感じていた」とクス。
「ブエルタ・ア・エスパーニャで勝ったからといって、ボクは何も変わらないと思っていた。ボクはこれからもボクだとね。でも全然違っていた。この勝利は人生を変えるようなものだ。たくさんの楽しい思い出とともにこの経験を振り返ると思う。まだ感情に沈み込んでいるので、かなり時間がかかると思う。
さあ、盛大なお祝いだよ。家族、友人がここにいる。本当に素晴らしく特別なことになる。チームメートやスタッフと一緒に、ここまでの3週間の物語を語れることがうれしい。たくさんの思い出と楽しい時間を過ごしたからね」
●4賞ジャージ
■マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
■マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
●マイヨルナレス(山岳賞)レムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)
クスがブエルタ・ア・エスパーニャ初優勝に王手…ビンゲゴーとログリッチがアシスト役
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは2023年9月16日、マンザナレスエルレアル〜グアダラマ間の208kmで第20ステージが行われ、総合1位のセップ・クス(米国)がチームメートで同2位のヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)、3位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)と一緒にゴールし、初の総合優勝を確実にした。
プリモシュとヨナスが仕事してくれるなんて想像できなかった(クス)
「とてもホッとしている。あともう少しだね。序盤は逃げた選手たちを完璧にコントロールできていた。ロベルト・ヘーシンクとディラン・ファンバーレがステージの90%を引っ張っていた」とクス。
「長くて大変な1日だったけど、彼らが1日中そこにいてくれた。彼らには本当に脱帽だ。彼らは素晴らしかった。そして、アッティラ・バルテルが最後の上りでいてくれて、プリモシュ・ログリッチが最後の上りと平地で私のために多くの仕事をしてくれた。ヨナス・ビンゲゴーもそうだった。それは私が想像したこともなかったことだ。2人のチームメイトと一緒に山岳ステージの最後の1kmであんなにリラックスできたのはとても特別な瞬間だった。本当に素晴らしいよ。まだ実感できていない」
プールスが今度はリアルなステージ勝利
この日は最後の山岳レースとなり、山岳賞トップのレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)らが第1集団を形成。最後はバーレーンビクトリアスのワウト・プールス(オランダ)が抜け出し、猛追したエベネプールから間一髪で逃げ切った。
プールスは2011ブエルタ・ア・エスパーニャの第15ステージで2位だったが、このステージの勝者で総合1位でフィニッシュしたスペインのコボが、不正薬物使用で失格になったことで記録上の繰り上がり優勝。それ以来の勝利となった。
●4賞ジャージ
■マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
■マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
●マイヨルナレス(山岳賞)レムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)
スーパードメスティック、セップ・クスが覚醒の時を迎える
ユンボ・ビスマの29歳、セップ・クス(米国)が一躍脚光を浴びている。チームエースのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)やヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)のアシスト役としてグランツール(三大ステージレース)にはなくてはならない存在だ。
グランツール11回出場で、エースが総合優勝したのは6回
5月のジロ・デ・イタリア、7月のツール・ド・フランスとともにグランツールと呼ばれるブエルタ・ア・エスパーニャが8月26日から9月17日まで開催されている。クスのチームには2年ぶり4度目の栄冠を目指すログリッチがいて、さらにツール・ド・フランス2連覇中のビンゲゴーもメンバーに加わった。
クスの役割はアシストかと誰もが思ったに違いない。
優勝請負人。グランツールにアシスト役として11回出場して、チームエースを総合優勝に導いたのはなんと6回。アシスト役はドメスティックとも言われるが、クスの称号はスーパードメスティックだ。勝負どころの山岳ステージでエースを力強く牽引し、ライバルたちの奇襲作戦を封じ込める。時としてその強さは総合優勝を果たすエースもかなわない。
米国コロラド州のデュランゴ出身。2018年にプロデビューして以来現チームでひたむきに走る。2019年は前年に引き続いてブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、ログリッチの総合優勝に貢献するとともに区間1勝をあげた。初出場の2020ツール・ド・フランスでは最終日前日に逆転されて2位となったログリッチの走りを支えた。
さらに2020、2021年のブエルタ・ア・エスパーニャでもログリッチの優勝に貢献。2022、2023ツール・ド・フランスではもう1人のエース、ビンゲゴーの連覇を支えた。そして今季のジロ・デ・イタリアでもログリッチの初優勝のお膳立てをした。
レムコ・エベネプールが圧勝した2022年のブエルタ・ア・エスパーニャで、クスは途中リタイアを余儀なくされ、アシストをなくしたログリッチが失速。クスなくしてチームは総合優勝を狙えないほど、重要な役割を果たしていることを印象づけた。
総合優勝争いに影響しない平坦ステージでは常に大集団の後方でゴールして体力温存。勝負のかかる山岳ステージでもボトル運びや中盤までのペースメークはチームメートに任せる。有力選手のバトルが始まる最後の上り坂でいよいよクスが前方に上がってくる。ここからが仕事だ。
勝ちたいけどボクがエースだったら結果が伴わないかも
ライバルチームのエースをふるい落としてしまうほどの走力を持ちながら、どうして総合優勝を狙わないのか? クスは「精神的にも期待の重みがかかっていないほうがいい走りができるから」と語る。「もちろん勝ちたいけど、チームの求めていることを遂行するために所属しているんだ。もしボクがエースとなったら最終結果は違ったものになるかもしれない」
米国は欧州と比べると自転車レース後進国だった。1981年にジョナサン・ボイヤーがツール・ド・フランス初出場を決めてようやく認知された。次第にグレッグ・レモンらの有力選手が同大会で活躍。しかし7連覇したランス・アームストロングは薬物使用で全成績抹消。米国でのロード熱は一気に冷めてしまい、クスの功績も母国でなかなか報じられない。
クスは2023ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツール5大会連続出場となった。1選手が同一シーズンに3連戦するのは4年ぶりの記録。そしていま、大会は思わぬ展開となって最終局面を迎えている。
クスが初優勝に前進…最後の山岳でエベネプール3勝目【ブエルタ・ア・エスパーニャ】
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは2023年9月14日、ポラデアランデ〜ラクルズデリナレス間の179kmで第18ステージが行われ、ベルギーチャンピオンのレムコ・エベネプール(スーダル・クイックステップ)が独走。今大会3勝目を挙げるとともに、初の山岳賞獲得をほぼ確実にした。
ユンボ・ビスマの3選手による総合優勝争いは、総合1位のセップ・クス(米国)が9分29秒遅れの区間10位でゴール。
総合3位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)は同タイムの11位。8秒差で総合2位につけていたヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)はこの2選手から9秒遅れたため、クスとビンゲゴーの総合成績でのタイム差は17秒に開いた。
ヨナスはとても強いので、それがちょっと怖かった(クス)
「チームメートは本当に素晴らしい仕事をして、一日中引っ張ってくれた」とクス。
この日のステージは最後の上りを2周する設定で、「ヤン・トラトニクが2度目の上りで戻ってきて、ボクたちのために素晴らしい走りをしてくれた」とクスが続けた。
「そしてヨナスが素晴らしい走りをしてくれた。下から本当にいいペースだった。彼はとても強いので、それが少し怖かった。でも彼はボクにちょうどいい乗り方をしてくれた」
「今日はこれまでより守備的な戦術を取った。チームのボクたち3人の中ではアングリルで合意した作戦があった。そのステージの後にどのような戦略を立てたのかといえば、常に変化していった。多少のミスもあったけど、対処できる範囲内だった。総合勝利は近づいている。明日は間違いなく楽なステージだ。でも集中力を切らしちゃいけないし、第20ステージは本当に長くて難しいステージになるだろう。厳しい山岳は終わったけど、この先も厳しい局面はいくつかあるだろう」
●4賞ジャージ
■マイヨロホ(個人総合成績)セップ・クス(米国、ユンボ・ビスマ)
■マイヨベルデ(ポイント賞)カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
●マイヨルナレス(山岳賞)レムコ・エベネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
□マイヨブランコ(新人賞)フアン・アユソ(スペイン、UAEエミレーツ)
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