吉田安里沙17歳。レッドブル・クラッシュドアイスは第1章が終わったばかり

女子高生ながらインラインスケート全日本選手権2位の実力を持つ吉田安里沙が過激なウインタースポーツ、レッドブル・クラッシュドアイスに挑んだ。初の海外連戦で常に紙一重の予選落ち。その中でなにかをつかみかけ、このスポーツを突き詰めていこうと決意を固める。

決勝進出にタイムトライアル順位でひとつ届かなかった吉田安里沙

17歳の高校2年生。特設された氷のスロープを、アイスホッケーあるいはバイクモトクロスのような防具に身を包んだ4人が一斉にスタートし、2位までが勝ち上がる。クォーターファイナル、セミファイナルと選手が強豪ばかりに絞り込まれ、生き残った4選手が頂点をかけてファイナルに挑む。

吉田は小学3年生からインラインスケートを始める。この世界のスーパースターである安床ブラザーズ(安床エイト、武士)の指導のもと、現在JASPA(アグレッシブインラインスケート全日本選手権)女子2位の実力者に。さらには女子高生でありながらインラインスケートのインストラクターもしている。師匠である安床兄弟からのすすめで、レッドブル・クラッシュドアイスに挑戦することになった。

吉⽥安⾥沙 © Lisa-Marie Reiter / Red Bull Content Pool

2018年12月にアジアで初開催となる横浜大会が実現し、それに合わせて参入を目指す選手らがトレーニングを積み重ねた。日本代表選考で吉田は、アイスホッケー選手の佐藤つば冴に次ぐ女子2位で初出場を決めた。そして本番ではこの世界の第一人者である山本純子とともに予選を突破。ファイナル1回戦で敗退したものの、高い順応性を見せつけた。

横浜大会の最終結果は15位。年が変わってシリーズ第2戦となるユバスキュラ(フィンランド)へ。さらにロシアのイゴラで規模の小さい大会にも参戦。そして最終戦のボストンにすべてを懸けた。

「ロシアのイゴラとユバスキュラは氷面がボコボコだったのに対して、ボストンは氷がきれいなのにビックリしました。氷を見ただけでテンションが上がりました。普段からやっているインラインスケート寄りのコースだったので、滑っていて楽しかったです」と吉田。

しかし予選のタイムトライアルであと一歩の差で本戦に進めない。4人で一斉にスタートする本戦に出場することは、経験値の少ない吉田にとっては貴重な練習を兼ねる。それがタイムカットで経験することさえ阻まれる。

ユバスキュラは結局25位。ボストン(米国)では21位。最終的に世界選手権2018-19シーズンの女子総合18位という記録だけを残した。

吉田安里沙は初出場の横浜大会で予選を突破。日本女子選手で2人だけというファイナル進出を遂げた ©Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

「氷の上での練習はなかなかできませんが、それだけにその部分はまだ伸びしろになるんじゃないかなと思います。普段のインラインスケートと靴が変わるだけで、まったく違う動きが求められるので、(好成績を修めるのは)簡単じゃないと思います」

「この遠征で参戦した3つの大会すべてLCQ(本戦出場を目指す敗者復活戦)一歩手前で予選落ち。これが今の自分の実力なんやなってのが凄く分かりました」と自身のツイートでも自己分析。自分が出場できなかったレースを見ていて悔しさがこみ上げたという。それでも遠征を続けていくうちに確かな感触をつかむことができるようになり、最終戦ボストンでは一番いい滑りができたという。

「もっとこの世界で戦えるように、この遠征で学んだことを生かしてこれからも練習頑張っていきたいと思います!」

山本純子(左)と吉田安里沙

山本純子がファイナル進出…レッドブル・クラッシュドアイス最終戦ボストン大会

アイスクロス・ダウンヒルの世界選手権の最上位カテゴリー大会であるレッドブル・クラッシュドアイスは全3戦で展開するシーズン最終戦が2月8日に米国ボストンで開幕。山本純子が翌日のファイナル進出を果たした。

ファイナルに進出した山本純子

山本は予選タイム8位で、ファイナル一発進出のベスト4には入れなかったが、LCQと呼ばれる敗者復活戦では、1回戦(クォーターファイナル)で安定感のある走りを見せて1着フィニッシュ。翌日のファイナルのゲート選択権をめぐるセミファイナルも2着で通過。この日の女子ファイナルに登場し、4位でゴールした。

LCQ(敗者復活戦)で勝ち上がりの2着にわずかに届かなかった安床武士

昨シーズンから参戦している安床武士はLCQとインラインスケートXゲーム王者の技を見せる「フリースタイル」コンテストとタイトなタイムスケジュールをこなしたが、LCQ1回戦で勝ち上がりとなる2着に写真判定の結果敗退。

鈴木雅仁はLCQ(敗者復活戦)で敗退し悲願のファイナル進出ならず

横浜大会から参戦している元プロアイスホッケー選手の鈴木雅仁はLCQで敗退。「これがいまの実力。メジャーリーグのスタジアムでレースできて最高の気分だったが、翌日のファイナルに出場できなくて残念」と悔しさをにじませた。

LCQ(敗者復活戦)でミスから3着に沈んだ山内斗真

同志社大アイスホッケー部所属の山内斗真はLCQで2位をキープしながら、終盤に逆転されてまさかの敗退。「2着を確保すれば決勝に進出できたけど、トップをねらって攻めたのが裏目に出てしまった。まだまだです」とゴール後にコメント。

決勝進出にタイムトライアル順位でひとつ届かなかった吉田安里沙

そして安床の愛弟子で現役高校生の吉田安里沙は予選となるタイムトライアルのタイムで順位ひとつ及ばず敗退した。

クラッシュドアイス・ユバスキュラ大会で山本純子10位

アイスクロス・ダウンヒルの世界選手権の最上位カテゴリー大会であるレッドブル・クラッシュドアイスは今シーズン第2戦を2月2日にフィンランドのユバスキュラで開催し、決勝進出した山本純子が10位になった。

レッドブル・クラッシュドアイスのユバスキュラ大会、決勝で強豪に挑む山本純子(左奥) ©Samo Vidic/Red Bull Content Pool

北欧開催の第2戦に日本からは5選手が出場。男子は日本勢の決勝進出はならなかったが、日本歴代最多出場の山本は女子の決勝トーナメントに進出。準々決勝で強敵ばかりと当たり、ファイナルには駒を進められなかった。

男子ファイナルは現ワールドチャンピオンの弟と元ワールドチャンピオンである兄のクロクソール兄弟対決が実現。兄が2015年以来となる勝利を修めた。

ジュニア部門8位と健闘した山内斗真 ©Daniel Grund/Red Bull Content Pool

2018年12月にアジアで初めて開催された横浜大会に続くシリーズ戦。日本からは歴代最多出場の山本、昨シーズンから参戦している安床武士に加え、横浜大会から参戦している元プロアイスホッケー選手の鈴木雅仁、同志社大アイスホッケー部所属の山内斗真、そして安床の愛弟子で現役高校生の吉田安里沙の計5名が出場。

予選上位16名が決勝進出する女子では吉田が25位で敗退するも、山本が順当に決勝トーナメントに進出。しかし準々決勝で前ワールドチャンピオンのジャクリーン・レジェールと好敵手タマラ・カジャと当たり、惜しくも敗れて10位に。

予選上位64名が決勝進出する男子は、安床86位、鈴木88位、山内92位と、残念ながら日本勢は決勝進出できなかった。ジュニア枠である山内はジュニアで8位と健闘。

男子ファイナルの序盤は弟のスコットが先行したが ©Samo Vidic/Red Bull Content Pool

男子のファイナルは、2018年のユバスキュラ大会に続いてカイル・クロクソール(2012年ワールドチャンピオン)とスコット・クロクソール(昨シーズンと2015年ワールドチャンピオン)の兄弟対決が実現。兄カイルはスタートで出遅れたものの、途中で弟が転倒し2位に浮上。最終コーナーのイン側を回って先行するミルコ・ラティをかわして、大逆転で2015年以来の優勝を修めた。

女子クラスで横浜大会に続き2連勝を飾ったアマンダ・トルンゾ(中央) ©Samo Vidic/Red Bull Content Pool
カイル・クロクソール(カナダ)を中央に、右が2位ミルコ・ラティ(フィンランド)、左が3位ルカ・ダルラーゴ(オーストリア) ©Andreas Schaad/Victor Engström/Red Bull Content Pool

■Red Bull Crashed Ice第2戦ユバスキュラ大会結果
男子
1位 カイル・クロクソール(カナダ)
2位 ミルコ・ラティ(フィンランド)
3位 ルカ・ダルラーゴ(オーストリア)
86位 安床武士(やすとこたけし)
88位 鈴木雅仁(すずきまさひと)
92位 山内斗真(やまうちとうま)
女子
1位 アマンダ・トルンゾ(アメリカ)
2位 アナイス・モラン(スイス)
3位 ミリアム・トレパニエ(カナダ)
10位 山本純子(やまもとじゅんこ)
25位 吉田安里沙(よしだありさ)

大会の様子はRed Bull TVで。