一人一人の身体に合わせたオーダーメイドの自転車で、障害者や高齢者の自立をサポート。46年で2700台の自転車を製造してきた町工場、堀田製作所の取り組みとは。
障害者も自由に移動することができる自転車を
足立区にある堀田製作所は、身体に障害がある人に向けたオーダーメイドの自転車の製造・販売を手掛ける町工場。例えば、脚に障害がある人でも操作ができるよう、踏み込み式のペダルを採用する。
同社では1979年の創業以来、さまざまな障害者と向き合い、一人一人に合った自転車を作り続けてきた。障害者の生活行動の拡大に貢献したことを評価され、2007年に吉川英治文化賞を受賞。代表の堀田健一氏を主人公とした書籍『風を切って走りたい!夢をかなえるバリアフリー自転車』(高橋うらら著)が金の星社より出版されている。
堀田製作所は、堀田夫妻が2人で営む小さな町工場。堀田氏は、「障害があることで、自転車に乗ることをあきらめてしまう方もいらっしゃると思います。でも、その方に合った自転車をお作りすることで、自転車に乗って生活をするという夢はかなえることができます。そのお手伝いを続けていきたい」という思いのもと、40年以上この事業を続けている。
自転車のオーダーから納品までの流れ
堀田製作所には、全国から多くの依頼者が訪れる。これまでに製作した自転車は2700台以上。多くの人の「自転車に乗りたい」という思いを実現してきた。実際にはどのようにオーダーをし、製作が進められるのか。
オーダーしてから納品までの流れを紹介。
⚫️打ち合わせ
同社の自転車は、代表の堀田氏が全て手作業で作り上げる。堀田氏と直接会話をして、障害の状況について詳しく伝える。
⚫️サンプルの試乗
サンプルとなる自転車に実際に乗ってみて、調整が必要な箇所を確認。ペダルやハンドルの長さ、可能な操作方法、乗り心地などを細かく見ていく。
⚫️設計~製作
一人一人に合った自転車に仕上がるよう設計し、フレーム一つから手作りで製作していく。
⚫️納品
近隣の場合は直接納品、遠方の場合は配送で納品。納品後も、メンテナンスなどきめ細やかな対応によるアフターケアを大切にする。
きっかけは、息子へ贈った手作りの自転車
子どものころから機械いじりやものづくりが大好きだった堀田氏。ある日、小学生になった息子が「自転車に乗りたい」と言ったことから、自ら自転車を作り上げ、プレゼントした。それは、初めて自転車に乗る息子の安全を考慮した、踏み込み式の三輪車だった。
この三輪自転車を見た近所の女性から、「同じものを作ってほしい」との依頼が。その女性は生まれつき足が不自由で、外出に苦労していたが、「この自転車なら私にも乗れそう」と考えたという。この依頼を引き受けたことが、堀田氏の自転車製造事業のきっかけとなった。
堀田氏の自転車は、一人一人の身体に合わせて設計されている。既製品の部品では合わないことも多く、ほとんどのパーツを手作業で作っていくという。設計図作りから金属の加工、溶接、メッキ塗装まで全て一人で行う。手間も時間もかかる作業であり、経営が苦しい時期もあった。それでも、注文者が楽しそうに自転車に乗って喜んでいる姿を見て、「この道に進んでよかった」と心から思うという。
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