能登半島地震は震源地の石川県だけでなく隣接する富山県にも多くの被害をもたらした。半島の付け根にある氷見(ひみ)市、その南に隣接する高岡市の観光産業は打撃を受けた。全国からサイクリストが集まれば復興支援になると、スマホアプリを使っていつでも自由に、無料で参加できるイベントが企画された。さっそく富山の絶景とおいしいものを満喫してきた。
ナショナルサイクルルートのなかでも絶景
能登半島を自転車で走ると、日本地図帳を初めて開いた小学生のころを思い出す。独特の海岸線を描く半島の東岸に位置するのが氷見。半円形の富山湾をはさんで3000m級の立山連峰が一望できる。これからの季節は日本海の荒波の向こうに冠雪した剣岳などが見えるチャンスが増える。そんな絶景ルートが全国に6カ所ある国土交通省指定のナショナルサイクルルートのひとつ、富山湾岸サイクリングコースだ。
今回は無料のサイクリングアプリ「トラベロ」をスマホにダウンロードし、ナビとして活用しながら富山県を走った。日本全国のサイクリングコースをアプリを使って走破しようという「サイクルボール」に、5年目となる2024年から初めて富山県を走る「とやまいち」が登場した。琵琶湖一周を「ビワイチ」と呼ぶように、一周するという意味を込めて「とやまいち」と名付けられたのだ。
距離131kmのロングコースと40kmのショートコースが用意されているが、スタート・ゴール地点はともに氷見。画面でコースを確認できたり、途中の「ご当地スポット」にチェックインできたりする。完走するとアプリ内の通貨を貯めることができて、特典と交換できる。これまでサイクリング大会といえば年に一度の開催が多かったが、「サイクルボール」はあらかじめ決められた期間内ならいつでも申し込みなしに参加できる。「とやまいち」は11月30日まで開催されるので、スマホと自転車があればいつでも無料で参加可だ。
今回は手軽なやり方で富山の魅力を満喫した。東京駅から北陸新幹線を使って2時間ちょっとで富山駅へ。駅近くにある自転車メーカーのジャイアントストアで最新バイクを2日間8800円でレンタル。自宅から持っていったのは愛用ペダルとシューズ、ウエアのみだ。
「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟している富山湾の眺望を自転車に乗りながら楽しむ。ルートは交通量が少なく、いつでも立ち止まったり引き返したりできる。今回の訪問で思い出に残ったポイントは雨晴(あまはらし)海岸、「日本のベニス」と称される落ち着いた内川の風情など。コース途中には随所に道の駅や公園などの休憩場所があり、飲食店で口にした「のどぐろ」「しろえび」が忘れがたいほどおいしかった。これからの季節なら「ベニズワイガニ」や「ブリ」なども味わえる。
故郷の復興支援の機運につなげたい…被災で発案
コロナ禍をきっかけにこの期間分散型サイクリングイベントを企画したのが一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン。富山県高岡市出身の中島祥元代表理事は2024年1月1日、氷見市に滞在していたときに最大震度7、氷見市は震度5強の災害に見舞われた。その後、氷見・高岡エリアのホテルがキャンセルなどの影響を受けている状況を知り、「故郷の復興支援の機運につなげたい」と、富山県庁、氷見市役所の賛同と協力を得て、「とやまいち」企画が実現。「全国から多くの方に富山に来てもらい、素晴らしいサイクリングコースやグルメなどを堪能する機会となることを願っています」と中島代表理事。
ナショナルサイクルルートとは
優れた観光資源を 自転車の走行環境や休憩・宿泊機能、情報発信などと連携させ、新たな観光価値を創造し、地域の創生を図るため一定の水準を満たすルートを国土交通省が指定。日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルートとして国内外にピーアールして、 サイクルツーリズムを強力に推進していくもの。
●しまなみ海道サイクリングロード(広島・愛媛県)
●ビワイチ(滋賀県)
●富山湾サイクリングコース(富山県)
●太平洋岸自転車道(千葉・神奈川・静岡・愛知・三重・和歌山県)
●つくば霞ヶ浦りんりんロード(茨城県)
●トカプチ400
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