クルマではなく人が中心となる居心地のいいまちに。環境にも健康にもいい自転車をキーワードに、東京都が2030年度に向けて自転車に優しい未来のまちづくりを行っていく。具体的な目標として都道約600kmの整備に取り組むことを掲げる。今回はアイテムの1つとなるシェアサイクリングを使って都内を散策するとともに、東京都の担当者に意気込みを聞いた。
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東京都議会議員の白戸太朗がナビゲーター
自転車でそのまちを走ると自分の住んでいる場所のように親近感が芽ばえる。それは自分の自転車でなくても、気軽に利用できるシェアサイクルでも同じだ。今回は次第に広域で使えるようになったシェアサイクルを借りて散策してみた。
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案内役は元プロトライアスリート、ツール・ド・フランス国際映像の実況も担当していた東京都議会議員の白戸太朗さん。東京都の自転車活用推進計画を強力にプッシュする張本人でもあり、その活動に小池百合子知事も全面的に賛同している。
「東京都が自転車施策に対して、ここまで積極的に取り組んだことは過去になかった」と白戸さんも期待する。
今回は東京都都市整備局のホームページにオススメとして紹介されているコースを実走した。スーツ姿で軽快に走リ出した白戸さんは、「シェアサイクルは通勤手段としても便利なんです」とも。
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中央区の浜離宮を出発して、港区の麻布・六本木をめぐり、渋谷区の新国立競技場にゴールする。距離は約8km。増上寺、東京タワー、国立新美術館、青山霊園など東京のランドマークがいくつもあって、途中で訪問することも自由だ。
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取材日は3月19日。平日なので交通量や人出はそれほど多くなく、大都会といえども自転車で走ることに不快を覚えることはない。道幅も広いので心地よささえ感じる。芝大門や六本木交差点も併走するクルマの存在を尊重するような走り方をすれば、ドライバー側も安全に配慮した運転をしてくれる。都心部ではとりわけお互いをリスペクトすることが安全通行のカギだ。
ロンドンやパリなど世界の主要都市は近年、相次いでサイクルシティとして大変身を遂げている。10年後の東京がどれだけ自転車にやさしいまちになるか。今後もその過程を追ってみたい。
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東京をサイクルシティにする4つの施策
東京都はさまざまな自転車施策を2030年度まで展開していく。国道などと連携しながら都道の通行空間を整備。コロナ禍により、通勤・通学やフードデリバリーなどの自転車利用の関心が高まる中、自転車事故などの安全対策強化。区市町村をまたいでも使える自転車シェアリングサービスの推進。密を避ける通勤利用や健康増進のための新しい日常での活用方法。これらが大きな柱になる。
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「30年度に向けて都道だけで約600kmの整備に取り組んでいきます」と、都市整備局交通計画調整担当の酒井浩一課長。自転車活用推進重点地区を設定するとともに、優先整備区間として約250km、無電柱化事業と合わせて約150km、都市計画道路の整備と合わせて約200kmがその内訳だ。
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高齢化でも持続的発展を遂げていくまちづくり。その手段として自転車は絶対に外せない。都内でも笑顔で快適にサイクリングできる環境づくりを。10年後の未来に向けてのプロジェクトがこうして進められている。
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シェアサイクルは区をまたいでも貸し借りできる傾向へ
シェアサイクルは千代田区や新宿区など11区のサイクルポートで貸し出しと返却ができる「東京自転車シェアリング」を利用。利用料引き落としのクレジットカードを登録するなど会員となれば、都民でなくても利用できる。専用アプリもあるが、メール受信できるスマホを携行すれば、操作手順と解錠時の暗証番号を受信することで利用可。1回利用で最初の30分165円、その後30分ごとに110円。今回は90分利用したので385円。
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