サイクルモードで役立ちそうなアイテムを見つけてみた

日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード」が4月2〜3日、3年ぶりに開催された。これまでは千葉県の幕張メッセが会場だったが、初めて東京都内となる東京ビッグサイトで行われた。世界的な自転車の在庫不足が深刻な問題となるが、アプリや周辺機器は多様なアイテムがリリースされ、注目を集めた。

スマホアプリのU-ROUTEを開発した樋口貴広さん

環境変化がアクセサリー類にも進化をもたらしていく

日本の自転車は入学や転居の季節である春に売れることから、その商戦に合わせて前年秋に見本市が開催されてきた。今回はコロナ禍による異例の春開催となったが、自転車メーカーが新製品を発表する場がいわゆる自転車見本市だ。海外では1869年にフランスのパリで初開催され、米国ではオモチャと合同のトイ&サイクルショーとして開催された時代もあった。

東京都内での初開催となったサイクルモード

2022年のサイクルモードでは、欧州でのガソリン高と温暖化の解決策とされるeバイクが人気。日本各地のサイクリングコースや観光スポットなどを紹介する自治体ブースや、クラウドファンディングを活用した新機軸製品もあった。

BTB輪行箱が難度の高いディスクブレーキ梱包に対応

多様なBTB輪行箱をおすすめするコーワの森泉忠浩さん

梱包の専門会社コーワがプロデュースするダンボール製輪行箱「BTB」が進化した。ディスクブレーキ仕様のロードバイクの輸送ができる新製品をリリース。制動力のあるディスクブレーキだが、車輪を取り外したときに多くのトラブルが発生しやすい。それを解決した梱包法を設計した。サイズは宅配料金が安価で済む3辺の合計240cm。プロチームのEFエデュケーションがシーズンを通して使用する。
●コーワのホームページ

ロード乗りでもフロントバッグ装備が違和感なく

電車内に自転車を持ち込むときに使用する輪行袋の老舗ブランド「オーストリッチ」。現在最も注目されているのがロードバイクなどのハンドルに取り付ける筒型のフロントバッグだ。じつはバーレーンビクトリアスの新城幸也がオフシーズンの帰国時に、「こんなのがほしい」という要望を伝え、伊美哲也社長が具現化した。

フロントバッグを手にするオーストリッチの伊美社長

「かつてはロードバイクにバッグを付けるなんて素人だと言われましたが、不整地を走るグラベルロードの登場もあって、違和感がなくなりました」という。プロ選手でも練習時はスマホや空気入れ、防寒具などを携行する。これらをフロントバッグに収納すれば、背中にポケットに入れるものはレースと同じものになるからストレスがない。海外プロも欲しがりそうな逸品だ。
●アズマ産業のホームページ

ルービーなら実映像でバーチャルライドできる

ルービーのシステムを紹介する安藤康洋さん。バルセロナ五輪の自転車日本代表だ

自転車用荷台や室内トレーナーなどを製造するミノウラのブースには、バーチャルライドアプリの「ルービー」が展示された。Zwiftの競合ブランドで、本拠はチェコ。グローブ・スポーツコミュニケーションズが契約を結び、日本市場に本格参入させた。その魅力は実際のコース映像がモニターに映し出され、バーチャル走行できることだ。日本を含む世界の300コースが収録済みで、今後は観光誘致を目指す地域とタイアップ展開するなどを計画。
●グローブ・スポーツコミュニケーションズのホームページ

コンパスアプリで走るのが寄り道できるので楽しい

方向と距離だけを表示するスマホアプリの「U-ROUTE」がユニーク。一般的なナビと違って走行ルートを指示しないので、目的地への方角と距離感をつかんで、ルートは自由に決める。よさそうな脇道や目についた裏路地などを探索するのにちょうどいい。最小限の機能のほうが自転車で走る楽しみが最大化できるというアイデア。
●ワン・コンパスの詳細ページ

自転車を宅配してしまう手ぶらサイクリングのススメ

空路を使うような遠隔地でサイクリングするときは自転車を宅配してしまうのがいい。専用箱が市販され、自宅への集荷から宿泊先までの配送、さらに返送までネットで簡単に手配できる。フロアポンプやヘルメットなどの機材も同梱できるので、まさに手ぶらでサイクリング。また、海外遠征時も規定サイズに収まる専用箱を使って受託手荷物として預けるのが賢い。

シクロクロスナショナルチームの海外遠征でも輪行箱は使用されている

ラクチン宅配も重労働輪行もコストはほぼ同じ

宿泊先など自転車を受け取ってくれる場所があるときは送ってしまおう。自転車を入れた輪行袋を担ぐという重労働からまず解放される。四国に空路で渡った四万十川サイクリングのときは、専用の配送システムを使って自転車を宿泊先まで送った。関東と四国の往復料金は1万1000円(税別)だった。

例えばこれを輪行で行くとしたらその価格差はどのくらいかを試算してみた。輪行袋はバスには乗せられないからタクシー利用を余儀なくされる。タクシーは割高だと、国内線の空港まで自分のクルマに自転車を積んで乗りつけてもガソリン代や駐車料がかかる。概算で1万円。初期投資費を除けばコストはそれほど変わらないのだ。

さまざまな種類の輪行箱がラインナップ

国内配送の際に使用する専用箱は3辺合計が規格最大となる240cmのもの。段ボール製造会社のコーワがさまざまなタイプのBTB輪行箱を発売している。一般的な段ボールタイプで3200円(以下価格は税別)。何回も使える樹脂製のものは3万3000円で、どちらもコンパクトに折りたためるのが特徴。

箱には両輪を外して収納する。フレームサイズの大きなものはサドル部を、ライトなどの付属物も外し、緩衝材にくるんで箱の中に入れる。総重量は配送ドライバーが持ち運べる程度の常識の範囲なら可。なにを入れたのかメモを取っておくのが秘けつ。現地で開梱したときに忘れ物があっては困るからだ。

240cmサイズは佐川急便などが取り扱ってくれる。ヤマト運輸は宅急便ではなくヤマト便扱い。合計200cm以下という制限があり、配送時に使う収納パレットが底辺約1m四方なので縦積みになる。ヤマト便用に製造された専用輪行箱(3200円)を駆使し、縦にされてもいいような収納作業が必要。

宿泊施設に送る場合はあらかじめ自転車の受け取りを依頼するなどの連絡をしておくといい。近年はスポーツバイクが高価なことも一般に浸透し、自転車をホテル内に持ち込んで保管できることも多くなった。また「サイクリスト歓迎」を打ち出すホテルも増えつつあるが、周囲の環境に十分配慮することがマナー。

日本ナショナルチーム常連の唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)も輪行箱派

地方開催のサイクリング大会などでは宅配便会社と提携した自転車配送サービスが設定されることもある。コーワでも佐渡・北海道・しまなみ・沖縄などの大きなイベントに協賛し、箱+輸送パックセットを用意しているという。

飛行機に預けるのも箱型がイチバン

空港に自転車を運び込み、機内に手荷物として預ける移動スタイルもある。自転車はその大きさから「機内持ち込み」はできないので、「手荷物」として預ける。自分の手から離れるので、電車に持ち込むときに使用する薄手の輪行袋ではなく衝撃を和らげることができるパッド入りバッグ推奨。輪行箱の場合は3辺合計203cm以下のものを利用すると国際線では無償になることが多い。ただし両輪だけでなくハンドル、サドル、ペダル、後ろ変速機を外す必要がある。

松山市内のホテルに配送。あらかじめホテルに受け取っておいてもらえるように連絡しておいた。サイクルツーリズムが浸透する愛媛県のホテルだけに部屋に自転車を持ち込めるなどありがたい対応をしてくれた

預けられるサイズや無料の条件、超過料金に関しては航空会社、路線、飛行機の大きさ、座席クラスにより異なるので航空券を手配する際に確認する必要がある。格安航空は超過料金が高め。エールフランスなど大手キャリアの場合は欧州路線で片道1万円ほど払えば自転車を預けられる。

●BTB輪行箱のホームページ

スポーツバイクを保管してくれる宿泊施設も多くなってうれしい