初めてMTBに乗るときに覚えておきたい4つの基本

MTB(マウンテンバイク)は木の根や石などがある山道を走るのが得意な自転車だ。基本の乗車姿勢を覚え、上りや下りの操縦技術を身につければだれでもアウトドアを満喫できる。栃木県宇都宮市で開催されたSBAAオフロードバイクディーラーサミットで、プロ選手がMTBの乗り方を初級者に伝授。山道で出会った人や自然に優しくする心構えも教えてくれた。

前後車輪の負荷は平地も上りも下りも50対50

MTBが本領を発揮するのは、トレイルと呼ばれる未舗装の山道だ。地形の変化や大自然の空気を感じることができ、日常生活とは異なる時間を味わえる。太いタイヤとサスペンションのおかげで、段差や急斜面も走ることができる。頑丈な作りなのでラフな使い方でも壊れることはまずない。

上り坂に初挑戦する綾川さん

MTBは大きく分けて下り専用のダウンヒルバイクと、アップダウンをこなせるクロスカントリーバイクがある。競技としてもこの2タイプがあって、ダウンヒル選手とクロスカントリー選手に分けられる。今回のサミットには、ダウンヒルの井手川直樹さん、クロスカントリーの小笠原崇裕さんというそれぞれのトップレベルのプロ選手がインストラクターを務めた。さっそく、初めてMTBに乗る人が覚えるべき基本を教えてもらった。

MTB初級者ライディング教室が11月17日に宇都宮市で行われた

基本の乗車姿勢

オフロードで路面の凹凸を越えるときの基本姿勢。ペダルを回している足を止め、左右の高さをそろえたペダルの上に立つことで、膝の屈伸ができて体が突き上げられることなくスムーズに走行できる。肘は突っ張らずリラックスさせる。

凸凹を越えるときの基本姿勢
綾川さんも丸太越えにチャレンジ

上り坂

前後のタイヤにかかる荷重は50対50。平地と同じ姿勢では後輪に荷重がかかり過ぎるので、上体を伏せるようにして前輪に荷重をかける。極端に前傾すると後輪が空転するので注意。サドルに軽く座ってタイヤがグリップするようにする。

電動アシストパワーで激坂をグイグイと上る

下り坂

前後のタイヤにかかる荷重は平地や上りと同様に50対50。前輪にかかり過ぎると前転するリスクが高まるので、サドルから腰を浮かせ、お尻を引き気味にして前後バランスを調整する。

ブレーキをかけるときは下りと同様に腰を後ろに引く

コーナー

内側のペダルが地面に接触しないように左右の足の高さをそろえるか、外側の足を下げる。コーナー手前で十分に減速し、コーナー出口に視線を置いて体を内側に傾ければ、ハンドルを切るという動作がなくてもスムーズに通過できる。

井手川直樹さん(左)と小笠原崇裕さん

著名コスプレイヤーが生徒役

「ロードバイクは大好きだけどMTBには乗ったことがない」という、コスプレイヤーとして人気の綾川ゆんまおさんが、今回は「素」の姿でMTBに初挑戦した。日本メイド協会理事でもあるが、今回のイベントにはMCとして参加した。

素の状態の綾川ゆんまおさん

ロードバイクで荒川沿いを気分転換のために走ることが多い綾川さんだが、オフロード走行はこの日が初めて。電動アシスト機能を搭載したeMTBに乗り、まずは平地で基本を習得。続いてトレイルに挑戦した。

「ロードバイクは風とお友だちになれますが、MTBは自然とお友だちになれた気がします」と無難に乗りこなして笑顔。

マナーもしっかりと身につけたい

カリスマコスプレイヤーの綾川ゆんまおさん(前列中央)

スポーツ用自転車の楽しみ方を啓蒙する自転車協会は、「みんなにやさしいMTBマナーカード」を作成・配付して人や自然に配慮した走り方をしようと呼びかける。ハイカーらに出会ったらMTBを止めて道を譲ること。登山道を太いタイヤで痛めないように、雨の日や雨が降ったあとは走らないこと。またルート外を走行して草木を傷つけないことなどがカードに明記されている。マウンテンバイカーとして愛される行動を取り、安全で快適にアウトドアを楽しんでほしいという。

●自転車協会のホームページ

自転車店の店員がオフロードバイクのことを学ぶセミナー

自転車販売店の店員がMTBをはじめとするオフロード用自転車の性能やセールスポイントを学ぶ「SBAAオフロードバイクディーラーサミット」が11月17日、栃木県宇都宮市で開催された。プロ選手やメーカー技術者が講師となり、一般的に見れば「自転車のプロ」である店員を指導する。主催する自転車協会には、まだ市場拡大の余地があるオフロード用自転車の取り扱い店を増やしたいという戦略がある。

ライディングスクール。初めてMTBに乗るという自転車店員も

オフロードバイクに関する知識がない販売店スタッフも多い

消費者向けの試乗会や講習会ではなく、いわゆる「B to B」と言われる関係者向けのイベントだ。自転車メーカーと販売店員が直接対話できる機会としてこのサミットが始まった。自転車を販売する人にオフロードバイクの魅力を感じてもらい、最新情報を知ることで店頭での積極的な販売につなげてもらいたいというねらいがある。

電動アシストパワーで激坂をグイグイと上る

自転車屋なら自転車のことは知っているだろうと思いがちだが、「一般的な自転車店からするとスポーツバイクといったらロードバイクやクロスバイク。オンロード系が主流」と、自転車協会の山﨑一理事長。MTBはもとより、近年派生した電動アシスト機能付きのeMTBなどは特有の知識が必要となり、売り場に並べることを敬遠している店も多いという。

「オフロードバイクの知識がない販売店スタッフも多いんです。これでは機会損失。一方で、日本の国土の70%は山林。スキー場も夏場は活用されていない。だからオフロードバイクが活性化していけば新たな市場が生まれる」(理事長)。

オフロードを知り尽くした井手川直樹と小笠原崇裕が講師を務めた

サミットには、MTBやeMTBを扱う10社が出展し、合同試乗会を行った。ライディングスクールはダウンヒル系の井手川直樹さん、クロスカントリー系の小笠原崇裕さんが講師を務めた。MTBビジネスの心構えやロードバイクビジネスとの違い、eMTB販売のポイントを紹介する座学講習もあり、シマノの技術者がディスクブレーキ整備講習を行った。

一般の自転車店では整備が難しいとされる専門部品をシマノの技術者が解説

スポーツ用自転車の普及に取り組んでいる協会は、これまでMTBコースの新設・運営に対する助成金制度を実施するなどオフロード市場の活性化に向けた取り組みを行なってきた。2年前にサミットを初開催。昨年はコロナ禍により中止されたが、今回は2年ぶりの開催を実現し、関東・中部・関西の3会場に拡大させた。また今回から、自治体自転車担当者も視察に訪れる機会を提供。宮城県大河原町の地域整備課、茨城県大子町(だいごまち)の観光商工課の自転車施策担当者が会場を訪れた。

オフロードバイク商圏は分母が小さいことがかねてから指摘されている。興味を持つ人が2、3倍になっても市場としてはまだ小さい。そこに救世主として登場したのが電動アシストだ。「育児世代がこのタイプをこぞって愛用していることを考えると、eスポーツの魅力が浸透したら市場拡大規模は計り知れない」と見ている。

自転車協会の山﨑一理事長

コロナ禍で好調だといわれているが、販売台数はピーク時より25%減少している。これまでの2大ブームはオイルショックと東日本大震災のときで、移動手段としての軽快車が1年という短い期間で爆発的に売れたという。光明が見えるのは、長引くコロナ禍で2年続いて好調に売り上げていること。そして、今回は購入単価が高く、愛着を持って乗り続けてくれる層が増えていることだ。

「これまでは生活の足として自転車に乗っていた。今回はせっかく買った自転車だからもっと活用しようという気持ちがあるのかな。自分のスタイルに合わせて自転車を楽しもうという人が増えている」と理事長。

コスプレイヤーとして活躍する綾川ゆんまおがイベントMCを務めた

同イベントは12月7〜8日に静岡県伊豆の国市でも開催され、2022年1月19日には大阪府河内長野市で行われる。「今後は全国に開催エリアを広げていきたい」という。

●自転車協会のホームページ

SBAAオフロードバイクディーラーサミットが3会場で開催

「SBAAオフロードバイクディーラーサミット2021-22」が11月17日(水)に関東で、12月7日(火)と12月8日(水)は中部で、2022年1月19日(水)は関西で、SBAA PLUS認定者(自転車協会の特別賛助会員)と一般自転車販売店のスタッフ向けに開催される。試乗ができる学習会で、一般社団法人自転車協会が主催。

SBAA PLUS認定者とは、同会主催のSBAA PLUS資格取得講習会を受講し、試験に合格した人で、スポーツ用自転車販売に欠かせない豊富な経験・高い知識と技量を兼ね備えたスポーツ 用自転車のトータルアドバイザー”としての活躍が期待されている。

プログラムは、MTB、オフロード向けeバイク(eMTB 含む)、シクロクロスバイク、グラベルバイクなどの合同試乗会と、プロライダーによるライディングスクール、MTBビジネスの心 構えやロードバイクビジネスとの違い、eバイク販売のポイントなどを紹介する座学講習。試乗会のみ、座学のみ、ブース視察のみの参加も可能。自転車販売店にMTBを中心としたオフロードバイクの魅力を感じてもらい、貴重な学習の機会として活用してもらうことがねらい。

SBAAオフロードバイクディーラーサミット2021-22

【関東会場】
栃木県宇都宮市ろまんちっく村もくもくの森MTB特設コース
栃木県宇都宮市新里町1667-2
2021年11月17日(水)9時~15時
雨天決行
エントリー締切日:11月12日(金)

【中部会場】
静岡県伊豆の国市・狩野川河川敷のMTB特設コース
静岡県伊豆の国市田京195-2 道の駅『伊豆のへそ』近く
2021年12月7日(火)・8日(水)9時~15時
雨天決行
エントリー締切日:12月3日(金)

【関西会場】
大阪府河内長野市・プラザ阪下
大阪府河内長野市末広町4-1
2022年1月19日(水) 9時~15時
雨天決行
エントリー締切日:2022年1月14日(金)

参加対象:
(1)SBAA PLUS認定者
(2)BAAアドバイザー
(3)その他の自転車販売店勤務者
(4)地方自治体(MTBフィールドで自転車活用を検討中の関係者)

料金:一般入場料料3000円(エントリーサイトで招待コードを記入すると無料)

自転車協会が自転車アドバイザー向けのオフロード試乗会

安全・安心で環境に優しい自転車普及にかかる事業を推進する自転車協会は11月12日(火)と11月13日(水)に関東で、11月20日(水)に関西で、SBAA PLUS認定者(自転車協会の特別賛助会員)と一般販売店のスタッフ向けの試乗会、SBAAオフロードバイクディーラーサミットを開催する。

SBAA PLUS認定者とは、自転車協会主催のSBAA PLUS資格取得講習会を受講し、試験に合格された人で、スポーツ用自転車販売に欠かせない豊富な経験・高い知識と技量を兼ね備えたスポーツ用自転車のトータルアドバイザーとして活躍する。

SBAA オフロードバイク ディーラー サミット

関東開催日:2019年11月12日(火)、11月13日(水)
関東会場:御殿場BIKE & RUNパークFUTAGO静岡県御殿場市二子275-2
関西開催日:2019年11月20日(水)
関西会場: プラザ阪下大阪府河内長野市末広町4-1
参加対象:SBAA PLUS 認定者(自転車協会の特別賛助会員)と一般販売店のスタッフ
参加料金:3000円

プログラムは、MTB、オフロード向けe-Bike(e-MTB 含む)、シクロクロスバイク、グラベルバイクなどの合同試乗会と、プロライダーによるライディングスクール、MTBビジネスの心構えやロードバイクビジネスとの違い、e-Bike 販売のポイントなどを紹介する座学講習。

スポーツ用自転車販売店にMTBを中心としたオフロードバイクの魅力を感じてもらい、貴重な学習の機会として活用してもらいたいという。

●詳細サイト

自転車専用通行帯と自転車ナビラインの違いが分かる?