自転車好きには「愛車とともに生活したい」という夢がある。室内の出し入れにストレスがなくて、愛車を整備したり複数台を保管できたりするガレージが部屋にある。共用部でいいから洗車場があれば最高だ。今回は東京都立川市にある「サイクルガレージのある賃貸物件」をたずねてみた。新年・新学期に向けて、自転車専用設計の住環境に替えてみる?
じっくりと愛車を整備したり複数台を並べてみたり
「住む人の遊び心を満たすガレージを。なにかにチャレンジしている人を応援できる住まいになってくれたら」
立川市にある賃貸物件GARAGE Cの大家さんである後藤実亜さんが語ってくれた。二級建築士の資格を持ち、今回のコンセプトからプロデュースまでを手がけた。こだわったのは「これまでにないもの」。車やモーターサイクルのガレージは男の秘密基地というイメージはあったが、すでに多く存在している。さらにはめぐり会った用地が、車が入れるほどの間口がなかったこともあって、「自転車にしたらどうかな」とひらめいた。
後藤さん自身はそれまで自転車の知識がなかった。そのため、立川市内で廃校となった小学校を改装して営業する自転車ショップ「TRYCLE」の田渕君幸さんに専門的な意見を求めた。コロナ禍で室内トレーニングするサイクリストが増えたので、ガレージにも据え付けタイプのエアコンが設置できる環境がいいと助言を受けた。そして田渕さんがもっとも主張したのは洗車場だ。
未舗装路で汚れた自転車を室内に持ち込む前に水で洗うという用途のほか、油で黒くなったチェーンやギアを定期的に洗浄したいというサイクリストの要望がある。庭付き一戸建てなら水回りの作業はできるが、集合住宅ではまずあきらめざるをえない整備行程だった。
「大家としては水道を使いっぱなしにされたり、共用部分の裁量を入居者に任せることは勇気のいる決断でしたが、自転車乗りが求める環境だと田渕さんがアドバイスしてくれたので、物件の魅力向上のためにトライしました」(後藤さん)。
物件は新築で全8戸。アプローチから段差なしで入室できるスペースがガレージだ。壁にはパンチングボードがあり、フックを入手すれば工具類やヘルメットなどのアクセサリーが陳列できる。一般的な賃貸物件の場合、退居時には原状回復のためのコストがかかるが、2年以上の入居者ならボードにペイントしようが改造しようが自由だという。
入居してすぐにネット接続して、世界中のサイクリストと室内バーチャル練習ができるようにネット環境も月々の支払いの中で使える。
車などのガレージつき物件を多く扱う不動産会社「いえとくるまと」の担当者は、「ガレージハウスの中には、デザイン重視で居住性に乏しい物件も多いのですが、このGARAGE Cは居住部分も配慮されていて、かなり珍しい物件です」という。
写真紹介したタイプのほかにも、キッチンや寝室のある2階から降りるとガラス戸越しに愛車の置かれたガレージが見えるタイプもある。洗面所のシンクなども、サイクリストの使い勝手をリサーチした後藤さんが、自転車のある生活がカッコよくなるようにセレクトしたアイテムがしつらえられている。自転車好きが増えつつある都心部ではこういった「サイクルガレージのある賃貸物件」が注目されていくのは間違いない。
物件は東京都立川市に存在
物件名=GARAGE C 交通=JR中央線・立川駅徒歩11分 木造3階建て 築年=2020年9月 ●賃料 4号室(メゾメット1・2階)=11万円 管理費等5000円/月 礼金・敷金=各11万円 保証金なし ◆問い合わせ先=いえとくるまと
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