くまモンがフランスに浸透…フランス人観光客はこうして熊本を目指す

フランス観光開発機構と熊本県が、国際観光交流の促進を目的とした新たな覚書を2025年6月2日に署名した。両者はこれまでも、くまモンのフランス訪問(2013年~)や、2017年にフランス観光開発機構がくまモンに委嘱した「フランス観光親善大使」としての活動を通じて交流を深めてきた。2019年1月に一度目の覚書を締結し、観光を通じた相互理解と友好関係の深化に取り組んでいた。

署名式の後に行われた朝食会でのセトン大使(右)とくまモン ©Atout France

調印した新たな覚書では、ポストコロナ時代における観光産業の再興と「持続可能な観光」への転換が求められるなかで、伝統工芸や食文化、自然・歴史資源などを活かした観光地域づくりをさらに強化すべく、両者が協力して観光振興に取り組むことを確認したもの。

署名式はフィリップ・セトン駐日フランス大使が出席してフランス大使公邸で行われ、くまモンが立ち会った。覚書への署名は熊本県側が木村敬知事、フランス観光観光発機構側がジャンクリストフ・アラン日本およびASEAN代表が行った。

くまモンは2025年7月にフランスを訪問し、ジャパンエキスポに参加するほか、ヌーヴェル・アキテーヌ地域圏のオービュッソン、リモージュを訪れる予定。

熊本県とフランス観光開発機構が国際観光交流の促進のために覚書調印 ©Atout France

フィリップ・セトン駐日フランス大使 

 「くまモンが初めてこの大使公邸を訪れたのは2016年9月のこと。以来、日仏両国、とりわけフランスと熊本県の友情を象徴する行事が行われるたび、くまモンはこの場を訪れ華を添えてくれています。

今回調印された覚書は熊本県とフランスの関係がより深まっているいることの証であり、それは観光分野にとどまらず、文化的、経済的なつながりにも及んでおります」

熊本県とフランス観光開発機構との国際観光交流の促進に関する覚書調印 ©Atout France

 木村敬 熊本県知事 

 「今回の新たな覚書では、伝統工芸や手仕事、食文化など、地域が守り育ててきた歴史・文化・自然等を活用したプロモーションを相互に実施することで、更なる国際観光交流の促進を図ることとしています。 この覚書に基づき、来月(6月30日~7月7日)には、早速くまモンがフランスを訪問し、「ジャパンエキスポ in パリ」に参加するとともに、リモージュやオービュッソンを訪問し、地域の伝統工芸を通じてフランスの皆様との交流をさらに深めていきたいと考えています」

 ジャンクリストフ・アラン フランス観光開発機構 日本& ASEAN代表

「今年はくまモンのジャパンエキスポへの10回目の参加、また、くまモンの活動15周年という二つの周年記念にあたることに、お祝い申し上げます。 

 今夏、くまモンが訪問する二つの都市(リモージュとオービュッソン)は、それぞれ磁器とタピスリーという伝統工芸があります。この訪問地の選択は、観光地としての知名度はそれほど高くないものの、今後地域の伝統や職人技を尊重しながら観光を発展をさせる可能性があり、観光客の訪問先を多様化させるという、新しい覚書の精神を体現しています。くまモンにの滞在が素晴らしいものになり、今後のヨーロッパでの一層の活躍を祈念します」

辻仁成が2021年のフランス観光親善大使に就任

フランス在住の作家・ミュージシャンの辻仁成が2021年度フランス観光親善大使に任命された。フランス国家唯一の観光推進機関であるフランス観光開発機構(アトゥー・フランス、本部パリ)が2021年5月28日に任命した。

任命状を手にする辻仁成 ©Kô ODA

フランス観光親善大使のタイトルは2000年、フランス観光開発機構の前身であるフランス政府観光局が創設し、フランスに縁のある著名人の個人的な視点からフランスの魅力を発信してもらうことを目的にこれまで45人を任命している。

新しく就任される観光親善大使には、駐日フランス大使、フランス観光開発機構総裁の署名入りの任命状が渡される。2021年はフィリップ・セトン駐日フランス大使、フランス観光開発機構カロリーヌ・ルブシェ総裁による任命状が、機構パリ本部でカロリーヌ・ルブシェから手渡された。

任命状を手渡すカロリーヌ・ルブシェフランス観光開発機構総裁(左)、辻仁成 ©Kô ODA 

パリから常にポジティブな言葉を発信

辻は2000年度初頭よりパリ在住。ブログやSNS、自身が立ち上げたウェブマガジン Design Stories を通じ、フランスでの日常生活のほか、コロナ禍にある世界やフランス情勢についても、未来を見すえポジティブな視点から精力的に発信を続けている。その高い発信力を評価し、フランス観光開発機構は2021年度フランス観光親善大使の任を辻に依頼することを決定した。

任期中の活動
任期の間、辻はフランス観光開発機構やその協力先の各地方観光局と連携し、フランス各地の見どころについて発信していく。発信の場は主にウェブマガジンDesign Storiesで、フランス観光開発機構の公式サイト France.fr 内に設けるフランス観光親善大使特設サイトと連携。

セーヌ川クルーズライブ中の就任報告
就任から2日後となる5月30日、辻はセーヌ河のクルーズ船からオンラインコンサートを配信するという初の試みに挑戦。演奏の合間にフランス観光親善大使への就任を報告し、エッフェル塔やオルセー美術館などパリの名所をガイドするなど、就任後初の自身のイベントを観光プロモーションにつなげ、観光親善大使としての存在感を十二分に発揮した。

就任の抱負を語る辻仁成 ©Kô ODA

辻仁成のコメント

大変光栄なことにフランスの親善大使に任命されました。
パリに暮らし始めて20年が経ち、僕の息子もここで生まれ、来年は大学生になろうとしています。フランスに育ててもらったというのもあり、なにかフランスに恩返しができたらと思っていました。最近パリと田舎を行き来する中で今まで知らなかったフランスのよさに気づき、それを日本の人に伝えたいと思っていた矢先の親善大使のお話でしたので、これはちょうどいい僕の仕事だと使命感に燃え、オファーを請けさせていただきました。日本の皆さんにフランスの素晴らしさ、この国が持っている文化と教養、そして心のやさしさをすべて僕なりに解釈してお伝えできればと思っています。

カロリーヌ・ルブシェ(フランス観光開発機構 総裁)コメント
フランス観光親善大使の任命状を辻様にお渡しできて非常に光栄です。彼は才能豊かで、その感性をフランスの国民と分かち合い、とくに日本とフランスを結ぶ分野である文化、歴史、食、フランス流の暮らしを敏感に感じ、日本の皆様に伝えておられます。このような方に親善大使をお願いできるのは大変嬉しく光栄なことで、我々にとり大きなチャンスであります。氏を通して日本の皆様がフランスの文化、歴史、史跡、食を知り、この国やその多様な風土と人への理解が深まること、氏の著作や取材によりフランスについて良き反響が起こることを願ってやみません。

任命状 ©Kô ODA

辻 仁成(つじ・ひとなり)
作家1989年『ピアニシモ』で第13回すばる文学賞を受賞。97年『海峡の光』で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として唯一受賞。映画監督として、1999年、第三回ドーヴィル・アジア映画祭コンペティション部門で監督作品「ほとけ」が最優秀イマージュ賞受賞。同作品でベルリン映画祭。監督作品「千年旅人」でベネチア映画祭、監督作品「アカシア」で東京国際映画祭にノミネート。ミュージシャンとしては80年代にECHOESを結成、作詞作曲した「ZOO」がミリオンセラーに。さまざまな分野で活動を続ける。現在は拠点をフランスに置き、日仏を行き来しながら創作に取り組んいる。帝京大学・冲永総合研究所特任教授。Webマガジン「Design Stories」、 デザイン&アートの新世代賞を主宰。
●WebマガジンDesignStories

観光親善大使の就任を祝って乾杯する辻仁成(右) ©Kô ODA

●歴代のフランス観光親善大使・フランス広報大使
2017年:くまモン(熊本県キャラクター)、リカちゃん(着せ替え人形)
2016年:中村江里子(アナウンサー)、新城幸也(自転車選手)
2015年:大地真央(女優)、森田恭通(デザイナー)
2014年:高見沢俊彦(ミュージシャン)、池田理代子(劇画家)
2013年:川島なお美(女優)、鎧塚俊彦(パティシエ)
2012年:竹中直人(俳優)、蜷川実花(写真家)
2011年:寺島しのぶ(女優)、平野啓一郎(作家)
2010年:小山薫堂(放送作家)、諏訪敦彦(映画監督)、知花くらら(モデル)
2009年:市川團十郎・海老蔵(歌舞伎俳優)、夏木マリ(ディレクター)
2008年:滝川クリステル(キャスター)、假屋崎省吾(華道家)
2007年:城之内ミサ(音楽家)、佐藤陽一(ソムリエ)、櫻井寛(フォトジャーナリスト)
2006年:黒柳徹子(女優)
2005年:石坂浩二(俳優)
2004年:柴俊夫(俳優)、真野響子(女優)
2003年:貴乃花光司(元横綱)、野際陽子(女優)
2002年:阿川佐和子(エッセイスト)、檀ふみ(女優)、吉田兄弟(津軽三味線奏者)
2001年:東儀秀樹(雅楽師)、林真理子(作家)、藤野真紀子(料理研究家)
2000年:石川次郎(編集者)、市川染五郎(歌舞伎俳優)、岸惠子(女優)、高田万由子(女優)、藤本ひとみ(作家)、細川護煕(元首相)、山本容子(版画)

●フランス観光親善大使特設サイト