急な競輪出走に備えて最低でも80%の力を出せるように…福田真平

新型コロナウイルス感染拡大でレースシーズン中断が続いているが、KINAN Cycling Teamの福田真平は競輪を主戦場としながら、かつてスプリンターとして鳴らしたロードレースにもシーズン中は数回参戦。国内プロチームによるトラックレース対抗戦「バンクリーグ」でも活躍している。マルチな才能を発揮する同選手に現在の競輪界の動向や日々の生活、今後の目標などを聞いた。

福田真平

-ご家族も含めて、みんな元気に過ごせていますか?
みんな元気です。最近は家で過ごす時間が増えたので、ゆっくりできています。

-現在の競輪界の動きについて教えてください
無観客で開催しているところもあれば、都市部を中心に中止の判断をした競輪場もあります。全体的にはかなり限定された状態で行われている感じです。自分のケースでは、4月上旬の豊橋競輪場開催は出走しましたが、その後予定されていた青森と奈良は緊急事態宣言が発令されたことで中止になりました。次戦は5月8日からの名古屋になります(※)。※名古屋競輪場での開催は予定通り行われ、福田は3日間・計3レースを走った。

-開催中止の際の連絡はどのような形で送られてくるものなのですか?
斡旋されているレースの最終的な開催可否はメールで送られてくるようになっています。青森の時は前検日(レース開催前日に行われる身体検査や車体検査)の2日前に連絡がありました。奈良の時は緊急事態宣言が発令されてから少し経っていたので、開催1週間前には中止の連絡を受けました。名古屋開催については緊急事態宣言が延長されるかどうかで変わるかもしれなかったですが、その時点では(あらゆることを総合して)走れるのではないかなと思っていました。

-無観客レースを経験して、走りや気持ちの面での変化はありましたか?
自分の場合は3月のレースから無観客だったのですが、正直なところ選手間でも「開催して大丈夫なのか?」といった半信半疑な状態で開催期間を過ごしていました。そうしているうちに国内外での感染が拡大していったので、「あぁ、やっぱり…」といったムードが漂いましたね。競輪場内ではマスク着用を徹底していましたし、食堂ではバイキング形式だったのが取り分けられた状態で配られたり、サラダ用のドレッシングを誰かが手にするたびに容器を消毒するなど、できる範囲での感染防止対策がなされていました。

無観客レース自体はミッドナイト競輪でも経験していますし、普段の開催を考えても、自分たちA級選手はモチベーションや全体の雰囲気に対して大きな変化は感じていないと思います。ただ、S級選手はミッドナイト競輪を走ることがないですし、大観衆の中で走る経験もあるでしょうから、何らかの違いは感じているかもしれませんね。個人的には「1着を獲る」という仕事そのものに変わりはないので、モチベーションが下がるといったことはまったくなかったですね。

バンクリーグ2019第2戦・松阪ラウンド(2019年8月30日)を戦う福田。バンクリーグではチームのエース格を担っている

-現在トレーニングはどのように行っていますか?
基本は自宅でのローラートレーニングですね。バンクでのトレーニングも許可はされているのですが、どうしても選手間で密集してしまいかねないので、いまのところはそれを避けています。

-1日の過ごし方には大きな変化が出ていますか?
トレーニングに割く時間はそれほど変わっていなくて、屋外よりローラーに乗っている時間が長くなったかな、というくらいですね。それほど大きな変化は感じていません。

-ローラートレーニングをはじめとする室内活動では、映画や音楽など、どんな“燃える要素”を取り入れていますか?
そのときどきで使い分けています。最近は多くのサイクリストがZwiftを取り入れていますが、自分も同様に固定ローラーとを組み合わせてトレーニングに生かしています。それとは別に、3本ローラーを用いてのトレーニングも行っています。そんな時はツール・ド・フランスや昔のワンデークラシックのレース映像を観ながら取り組んだりしています。

-自転車に限らず、日々なにおか楽しみを見つけていますか?
子供がとても元気で、外で遊びたい欲求が強いのですが、この状況下ではなかなか連れ出すことができません。そこでいろいろと考えて、最近流行っている「ベランピング」にチャレンジしてみることにしました。簡易のテントなど道具をそろえて、ベランダに設置してみたら子供が大喜びしていました。思っていた以上にお出かけ気分を味わえて、「こんなのもアリだな」と自分も楽しむことができています。

-「Stay Home」が叫ばれる中で、なにか健康を維持する効果的な方法があれば教えてください
自宅で長い時間過ごしていると、ついついお菓子に手を伸ばしてしまったりで、なにかしら食べていることが多くなってしまいますね。そこをグッとこらえて、食べ過ぎないようにはしています。あと、セルフケアできる時間がこれまで以上に確保できているので、最近はストレッチポールに乗ることが増えました。

-レースに目を向けて、現状でどのような目標やビジョンを持って活動をされていますか?
競走が急に中止になってしまうこともあるので、場合によっては目標にしていたレースがなくなってしまう、なんてことも考えられます。ただ、競輪はロードとの体のつくり方が異なりますし、通常であれば年中レースが行われていて、ときには開催直前に急遽出走が決まるといったケースもあります。なので、基本的にはいつどんなことがあっても80%の力は最低限出せるようにしておかないといけないと思っています。そこがロードとの大きな違いでもありますね。最低でも80%はいつでも出せるようにしておかないと、競輪の世界では戦えないですね。

-UCI通達により7月に入ってからのレースシーズン再開に向けた動きが出てきました。その通りにいけばバンクリーグやロードでも活躍の場があると思います。どんな走りがしたいか、意気込みをお聞かせください
バンクリーグは自分がしっかりやらないといけない戦いなので、常に勝負できるよう競輪のトレーニングと並行して準備を進めていきたいです。ロードに関しては、体重を含めて体が競輪仕様になっているので、どのレースに呼んでもらえるかで調整方法を変えていく必要がありますね。そのなかでも、シマノ鈴鹿ロードレース クラシック(8月30日開催予定)のような平坦系のレースであればきっちり走れると思うので、ロードの中では結果を求めていくレースになってきます。ロードをメインに走っていた時から鈴鹿は得意にしていましたし、昨年も位置取りがはまって勝負に絡むことができました。そのほかのロードレースに関しても、機会をいただけるならしっかり調整して臨みたいですね。2カ月あれば仕上げられると思うので、コツコツと時間をかけて作り上げていきたいと思います。

聞き手:KINAN Cycling Teamメディアオフィサー 福光俊介
インタビュー実施日:2020年5月3日

●キナンのホームページ

福田真平が逃げ集団のスプリントを制す…KINAN AACA CUP第5戦

東海地区を転戦するロードレース「KINAN AACA CUP」の2018年シリーズ第5戦が5月5日、岐阜県の国営木曽三川公園長良川サービスセンター特設コースで行われた。メインレースの1-1カテゴリーは福田真平(日本競輪選手会愛知県支部)が逃げ集団でのスプリントを制して優勝。元プロロードレーサーとしての意地を見せつけた。

KINAN AACA CUP 第5戦は福田真平が逃げ集団のスプリントを制す ©︎KINAN Cycling Team / cyclejam

同地区におけるロードレースシーンのレベルアップを目的に開催されるシリーズ戦は、オールフラットの長良川のコースでスピード感あふれるレースが展開されるのが特徴。ホストチームとして臨むキナンからは山本元喜、椿大志、山本大喜、塚本一樹がエントリー。2018年のアンダー23(23歳未満)ロードレースアジア王者の山本大はシリーズ戦初参加。チームは同時期にUCIアジアツアー遠征を行なっていたこともあり、国内で調整する選手のみで臨むこととなった。

正午にスタートを切ったメインカテゴリーの1-1クラスは、スタート直後から序盤に設けられた周回賞をねらってのアタックで激しい出入りが見られるものの、逃げグループの形勢にはいたらない。変化が生まれたのは4周目。9人がリードを開始し、福田のほか、水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)や中里仁(Rapha Cycling Club)らの先頭集団にキナンからは山本元が加わった。

やがて8人となった逃げグループだが、レース全体がハイペースで進行。メイン集団も前を行く8人を射程圏内にとらえながら走り続け、レースが終盤を迎えようかというころには吸収する可能性が徐々に高まっていった。しかし、粘る8人はギリギリまでハイペースを維持し続け、追いすがるメイン集団が最終周回、それも最後のコーナーでようやく追いつき、フィニッシュには多くの選手がなだれ込む形となった。

し烈を極めた優勝争いは、最終コーナーを先頭で抜けた逃げ8人がそのままスプリント態勢に入りフィニッシュラインを通過。実質的には逃げ切りの格好となり、最後の直線で抜群の加速を見せた福田が今シリーズ初優勝を果たした。愛三工業レーシをはじめ、ロード選手としてキャリアを積んだ福田選手は競輪に転向し、この3月に日本競輪学校を卒業。デビューが控えている中で、ロードでもその力が健在であることを示した。
(Report:サイクルジャム、Edit:福光俊介)

KINAN AACA CUP 2018 第5戦1-1クラス(102km、5.1km×20周回)
1 福田真平(日本競輪選手会愛知県支部)
2 寺田吉騎(磐田北高校&Vivace-掛川)
3 中里仁(Rapha Cycling Club)
4 和田宗浩(イナーメ信濃山形)
5 水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)

KINAN AACA CUP 2018 ポイントランキング(第5戦終了時)
1 新城雄大(KINAN Cycling Team) 576pts
2 アイラン・フェルナンデス(マトリックスパワータグ) 512pts
2 福田真平(日本競輪選手会愛知県支部) 512pts
2 津田悠義(EQADS) 512pts
2 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 512pts
2 中島康晴(KINAN Cycling Team) 512pts

■ブレーキングをテーマに行った「レーススキルアップ講座」
KINAN AACA CUP恒例の「レーススキルアップ講座」。ビギナーから上級者まで幅広く参加が可能で、国内外でのレースで経験と実績を積むキナンの選手たちが講師を務めるとあって毎回好評だ。今回のテーマは「ブレーキング」。レースや練習中の不測の事態でも、安全に減速できるバイクコントロールが選手には求められる。そこで、レースでの活躍を誓う受講者に対し、制動技術の必要性を説くとともにブレーキングのスキル向上を図った。また、1-1カテゴリーのレース前には、恒例となったキッズ限定のオープニングランを実施。サイクリングを志す子供たちとキナンの選手たちとが交流を図りながら、実際にレースで使用されるコースを走った。

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