青山学院山岳部…未踏峰ホワイトウェーブ登頂に向けて訓練と準備の日々

青山学院大体育会山岳部がヒマラヤにある標高6960mの未踏峰「ホワイトウェーブ」に挑む。時期は2018年9月中旬から10月末までの約50日間。登頂予定日は10月10日から15日までの期間を想定する。いよいよ現地入りの時期が迫ってきて、練習や準備にも熱が入る。今回は登攀隊長の田口純也山岳部主将(大学4年)がヒマラヤ遠征の訓練について報告。

黄蓮谷右俣でトレーニングする青山学院山岳部

技術習得のためのトレーニング山行

Whitewave頂上に向けて今回登ろうとしているルートを想定した日本国内のルートを探したところ、標高差1000mのアイスクライミングならば南アルプス甲斐駒ケ岳にある黄蓮谷と考え、村上正幸監督と2人でトレーニングに向かいました。黄蓮谷は夏はきれいな沢なのですが、冬には沢がすべて凍って、氷の壁が続きます。

普通に行っても訓練にならないので、アタックを想定した2日間で完遂することと、装備はある程度の重量を持つため、テントを持っていくという条件を付与しました。

山行中何度もくじけそうになりましたが、Whitewaveでは標高が7000mととても高所のためもっとツラいはずです。安全面も考慮しながら、限界ギリギリの負荷を体にかけるという訓練ですので、超えるしかありません! 氷の壁の登攀では、本番を想定したロープワークを重点的に確認しながら登っていきます。

入山した日に雪が降り、氷の上に20cmほどの雪が積もっていてとても歩きにくく、当初想定していたスピードを出すことができず、山頂についたのは19時過ぎ。山頂から6時間かけて下山してきました。

成果として、標高差1000mの登攀と24時間の連続行動をすることができ、とても充実した訓練にすることができました。

体力強化のためのトレラン参加

経ヶ岳バーティカルリミット

隊員の中で唯一7000mの経験がある村上監督以外3名の学生は富士山が最高点です。心拍数が上がって多少体に支障があっても動ける体力をつける必要があります。箱根駅伝のように大会前に試走できたらよいのですが、未踏峰ですのでそれはさすがにかなわないので想像して練習を考えました。

まず、隊員全員の体力がどれくらいなのかを定量的に把握するために、トレランの大会を利用しました。部員全員で参加したのですが、無事遠征隊員達が上位を占めてくれました。

今後のトレーニング予定としては、三つ峠での登攀訓練と遠征出発直前の富士山での高所順応。三つ峠では、徹底的にマルチピッチのロープワークを修練し、富士山はお鉢でのランニングとビバーク(富士山ではテントを設営することができませんので、ほぼ寝袋だけで1晩を過ごします)ですね。3776mの標高はすでに高山病になる標高ですのでトレーニングには最適です。高所順応はこれに加え、三浦ドルフィンという高所施設で5000mの宿泊体験で体を慣らします。

装備や食料の準備

装備の準備も着々と進む

飛行機では持っていける重さが30kgまでなので、超過する分を先に輸送をします。夏には使わない高所靴やアイゼン、アイスバイルといった装備をネパールに送っておきます。三つ峠などでアイゼン登攀の練習もしますが、本番で使うアイゼンのつま先が岩に削られて丸まってしまうので、練習には別のアイゼンを使います。

食料はキャラバンとアタックの2つの場面に分けて準備します。

キャラバン中は小さな村があるので村で食糧を調達

キャラバン中は小さな村があるので村で食糧を調達して食べます。ほぼダルバートというカレーのような料理になります。。飽きないためにも調味料は持っていきます。醤油、味噌、マヨネーズ、七味、わさび、ふりかけ、お茶漬けの素など。ほぼ白米かジャガイモでエネルギーを摂取することになるので、ふりかけとマヨネーズが重要だと考えています。

ちなみにお茶漬けはかつての飛脚や旅人の食べ物でした。江戸時代の宿場では1日分の米を朝炊いて、お昼ごろに来た方に冷めた米をお茶で戻して食べやすくしていたそうです。すぐ出せるしお米を何度も炊く燃料を考えると合理的ですね。

私たちは、現地で食べれるものに無理やり味付けをして楽しむ予定です。

アタックの食料計画は難しく、練習同様に高所でどれだけ食欲が湧くのかが全く未知の領域ですが、軽い、カロリー高、食べやすい、この3点で選んで色々な食品を実際に食べながら選定を進めています。(田口純也)

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青山学院大山岳部がヒマラヤの人類前人未踏峰「ホワイトウェーブ」挑戦

青山学院大体育会山岳部がヒマラヤにある未踏峰「ホワイトウェーブ」に挑戦する。ネパール東部カンチェンジュンガ山群にあって、標高は6960m。登頂に挑む時期は2018年9月中旬から10月末までの約50日間。登頂予定日は10月10日から15日までの期間を想定している。2013年にニュージーランド隊の3隊員が同峰を目指したが、6300m付近で1人が滑落して負傷。ヘリ救助後に撤退していて、いまだに登頂成功者はいないという。

2013年に未踏峰アウトライアー初登頂に成功。ようやくヒマラヤの未踏の頂に青山学院山岳部の部旗がひるがえった

同部の部員数は13人。ボルダリング日本代表の中村真緒(総合文化政策学部1年)も所属する。今回のホワイトウェーブを目指すメンバーは5人。登攀隊長が田口純也(4年)、隊員は杉本俊太(3年)、池田昂史(4年)、松原峻彦(1年)。隊長は村上正幸(山岳部監督)。

2013年には同じヒマラヤの未踏峰アウトライアー(標高7034m)初登頂に成功。2015年には、このアウトライアー登山隊に参加して6000mの高度を経験した真下孝典が、6大学からの6人による日本山岳会学生部隊の隊長としてジャネII峰(6318m)に初登頂した。近年は箱根駅伝で4連覇中の陸上長距離部などとともに学内で最優秀選手、優秀団体表彰を受けるなどその活動は評価されている。

「ヒマラヤに未踏峰が、未知の部分がある限り私たちもそこに強い憧れを持ちます」と同部。
「今回私たちが目指すのは、カンチェンジュンガから西に約8km、アウトライアーから南に約15kmに位置し、カンチェンジュンガ山域のカンチェンジュンガ氷河支流ラムタン氷河の上流に位置するAnidesha山群の未踏峰、『White wave』6960mです。このピークは情報が少なく、山容からしても決して安易に取りついてよい山ではありません。しかし、我々が全力を尽くして当たるに足る山です」

アウトライアー初登頂から5年後になる2018年。モンスーン期を外した日程、さらに登山経験を積みつつ、調査・学習を続けて準備に万端を期すよう計画的に活動しているという。

挑戦に必要な経費は登山料や渡航費など971万8117円と試算。隊員の自己負担はもちろん、大学やOB会、一般からの寄付金を募ってこれに充てたいという。

約2カ月の遠征期間中は、パソコン、衛星モデム、太陽光発電機器を持ち込んで衛星通信によるブログの更新、GPSによる隊の現在地共有などITを駆使してできる限りのリアルタイム共有をしていく準備を進めているという。

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