中島康晴がスリランカTカップで総合優勝…ライバルの猛追を1秒差で振り切る

キナンサイクリングの中島康晴が3日間のステージレース、スリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)で総合優勝した。第1ステージで優勝し、リーダージャージを着続けて最終日に臨んだが、その座を守り切った。最後はスプリントボーナスをかけた争いとなり、ライバルの猛追を振り切って僅差の勝負を制した。2位の選手との総合タイム差は1秒だった。

スリランカTカップで個人総合優勝した中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スリランカを構成するセイロン島の東海岸から西海岸とを結ぶ戦いは5月6日が最終日。4日に始まったレースは各ステージ100km前後と短いことも関係し、終始プロトン(メイン集団)内での出入りが激しいものに。キナンは第1ステージに中島が逃げ切りでステージ優勝を決めて以来、リーダーチームの立場として戦いを続けてきた。前日の第2ステージでは中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大のアシスト陣が絶妙の集団コントロール。中島のリーダージャージ堅守に大きく貢献した。

トップをいく中島と、個人総合2位のステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)との総合タイム差は、第2ステージを終えて3秒。中間スプリントとフィニッシュで上位選手に付与されるボーナスタイム次第では、その差を開くことも逆転もできる状況。今大会でもキナンとヴィノ・アスタナモータースのチーム力が群を抜いていて、第3ステージも両チームの攻防戦となることが予想された。

このステージは、前日のフィニッシュ地であるキャンディからニゴンボまでの118.5km。スタートから5.8kmでこの日唯一の山岳ポイントが設けられ、その後はダウンヒルを経ておおむね平坦路となる。ただし、前夜の強い雨により序盤の登坂区間とダウンヒル区間には泥が浮いている場所もあることから、落車やバイクトラブルには十分に注意を払う必要があった。

そんな中で始まったレースは、スタート直後からアタックの応酬。ただし、この流れは山岳ポイントを通過するころには沈静化。4人が先行したのを機に、キナンが集団のコントロールを開始する。その後も逃げをねらう選手が集団から発生するものの、容認できる選手とできない選手とをキナン勢を中心にセレクション。やがて総合成績に大きな影響を及ぼさない6人に逃げが固まり、キナン勢はしばらく彼らを先行させた。

しかし、33.6km地点に設けられたこの日1つ目のスプリントポイントに近づくと、ライバルのヴィノ・アスタナモータースが集団のスピードアップを図る。スプリントポイント直前で逃げを捕らえたことから、キナン勢も中島でのスプリントに備えるが、結果的に総合成績の上位に関係しない選手が上位通過。中島もボーナスタイムをねらって動いたが4位。ここでの総合タイム差拡大はならなかった。

この直後、今度は集団から7人が飛び出し、徐々にリードを広げていく。集団のコントロールを担うのはキナン。最大で約3分差までリードを許容し、次なる展開へと備える。

集団のムードが変化したのは、スタートから80kmを迎えようかというタイミング。キナン勢のコントロールにヴィノ・アスタナモータース、トレンガヌサイクリングが加わり、逃げる選手との差を縮め始める。3チームの思惑が交錯する中、レースは終盤戦へ。逃げグループも最後のチャンスに賭けてペースアップ。人数を減らしながら、先を急いだ。

フィニッシュまで残り20kmとなったところで逃げと集団とのタイム差は2分10秒。さらに集団の勢いは増し、残り10kmでは約1分。そして、残り5kmを迎える直前で逃げを吸収。集団は1つとなり、勝負はスプリントにゆだねられることになった。キナン勢は中島での勝負に備え、本来はエーススプリンターの雨乞をリードアウト役に抜擢。集団前方でのポジショニングで中島を好位置へと引き上げる。そして、今大会最大のクライマックスの時を迎える。

スリランカTカップ第3ステージのゴール勝負。右が2位のアスタフイェフ。黄色いジャージが3位の中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

長い直線を経て始まったスプリントは、アスタフイェフが最前列から加速。これをチェックするように中島も反応。追い上げる形になった中島だったが、アスタフイェフの背後につけ、両者がなだれ込むようにフィニッシュ。ステージ優勝こそ他選手に譲ったものの、アスタフイェフが2位、中島が3位となった。この結果、アスタフイェフがフィニッシュボーナスで6秒、中島が4秒をそれぞれ獲得。総合タイム差3秒で始まった最終ステージは、わずか1秒で中島に軍配。個人総合優勝決定の瞬間は、劇的なものとなった。

結果を知って喜びを爆発させたキナンの選手たち。第1ステージで中島がチームに今シーズン初勝利をもたらしたが、その勢いのまま新たなタイトル獲得にこぎつけた。中島個人にとっても、UCIレースにおけるキャリア通算9勝目、そしてチームにとっては発足4年目にして初となる日本人選手でのUCIレース個人総合優勝となった。

キナンはそのほか、チーム総合で3位、スプリント賞では最終日にアスタフイェフの逆転を許したものの、中島が2位。最後までチーム力を誇示した3日間だった。

主戦場のUCIアジアツアーで組織力の高さを示したキナン。チーム最大目標であるツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野が近づく中、大きな弾みとなる勝利を挙げることとなった。また、同時に日本人選手の底上げが着々と進んでいることも証明する今大会だった。この勢いのまま、チームはレース活動を続けていくこととなる。次戦は5月12日のJBCF 宇都宮クリテリウムを予定している。

スリランカTカップで総合優勝した中島康晴(中央)とキナンのチームメート ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スリランカTカップ 第3ステージ結果(118.5km)
1 モハドハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム) 2時間44分36秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +0秒
3 中島康晴(KINAN Cycling Team)
4 イルワンディ・ラカセク(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム)
5 シーン・ウィットフィールド(オーストラリア、オリバーズリアルフードレーシング)
6 キム・ジュセク(韓国、ガピョンサイクリングチーム)
10 雨乞竜己(KINAN Cycling Team)
20 中西健児(KINAN Cycling Team)
30 新城雄大(KINAN Cycling Team)
41 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +33秒

個人総合時間
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 7時間45分3秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +1秒
3 平塚吉光(チームUKYO) +16秒
4 ローガン・グリフィン(ニュージーランド、ネックス・CCNサイクリングチーム) +2分38秒
5 吉岡直哉(チームUKYO) +2分45秒
6 イェフゲニー・ネポムニャフシー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +2分51秒
14 中西健児(KINAN Cycling Team) +3分42秒
15 新城雄大(KINAN Cycling Team) +3分58秒
16 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +4分31秒
38 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +18分53秒

スプリント賞
1 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) 35pts
2 中島康晴(KINAN Cycling Team) 34pts

山岳賞
1 ジュリアン・アマドリ(フランス、チームフランスディフェンス) 25pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 10pts
9 中西健児(KINAN Cycling Team) 2pts
10 新城雄大(KINAN Cycling Team) 2pts

チーム総合
1 ヴィノ・アスタナモータース 23時間21分39秒
3 KINAN Cycling Team +1分26秒

中島康晴

中島康晴のコメント
自分でなにかを残せたレースというのは第1ステージだけだと思っている。残りの2日間はみんなが支えてくれた。自分の勝利ではあるけれど、それ以上にチームの勝利として価値のあるものになった。日本籍のチームとして、日本人選手が活躍することがチーム理念の1つ。それを果たせたことがなによりうれしい。この先にはツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野が控えていて、そこに向けてこの勝利が大きな勢いになるのではないか。メンバー入りができれば今度は自分がみんなを助ける番になる。
ジャージを守るうえで、総合に関係しない選手の逃げなどをどう選別していくのかは、トマが中心となって若い選手たちにアドバイスしながらレースを進められた。中西、雨乞、新城がトマの期待に応えて働いてくれたことが勝因として挙げられると思う。

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マックス・バルシャイトがツール・ド・ヨークシャー第3ステージで優勝

ツール・ド・ヨークシャーは5月5日、距離181kmの第3ステージが開催され、サンウェブのマックス・バルシャイト(ドイツ)がスプリント勝負を制してステージ優勝。総合成績では前日に首位に立ったアスタナのマグナス・コルト(デンマーク)がその座を守った。英国で開催されている同大会は5月3日から6日まで4日間のステージレースで、ツール・ド・フランスのASOが主催する。

マックス・バルシャイトがツール・ド・ヨークシャー第3ステージで優勝 © Miwa iijima/Cor Vos

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ビビアーニがジロ・デ・イタリア第2ステージ優勝…首位はデニスに

第101回ジロ・デ・イタリアは5月5日、イスラエルのハイファ〜テルアビブ間の167kmで第2ステージが行われ、クイックステップフロアーズのエリア・ビビアーニ(イタリア)がゴール勝負を制して、2015年の第2ステージ以来となる区間2勝目を挙げた。総合成績ではBMCのローハン・デニス(オーストラリア)が途中のスプリントポイントでボーナスタイム3秒を獲得。前日の個人タイムトライアルで2秒遅れのタイムをマークしていたデニスは、サンウェブのトム・デュムラン(オランダ)を1秒差で逆転して首位に立った。

イスラエルを走るジロ・デ・イタリア第2ステージ © Fabio Ferrari – LaPresse

イスラエルの大地を走る集団スタートのロードレースは地元ファンの大声援に包まれた。2つ目のスプリントポイントでデニスをトップ通過させるためにBMCがコントロール。サンウェブ勢はデュムランの着るマリアローザを守る意志がなく、デニスがトップ通過した。スプリンターのビビアーニもポイント賞のマリアチクラミーノ獲得のためにスパート合戦に加わったが、デニスに先着を譲るかたちで通過。

レースはゴール前までに逃げていたすべての選手を吸収し、ビビアーニが圧倒的なパワーでステージ優勝を飾る。
「ここ2年間、ジロ・デ・イタリアを欠場していたので、この日の優勝のためにかなりナーバスになっていた。多くの人たちがボクの勝利を望んでいたことも分かっていた。この勝利は多くの犠牲を払ってきたガールフレンドに捧げたい」とビビアーニ。

●ダイジェスト動画

エリア・ビビアーニ(イタリア)がジロ・デ・イタリア第2ステージで優勝 © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

BMCのローハン・デニス(オーストラリア) © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

初めてマリアローザを着用したデニスは、グランツール(三大ステージレース)のすべてのリーダージャージを獲得した23人目の選手。マリアローザはオーストラリア勢として9人目。
「前日のタイムトライアルは勝ちにいったのに残念な結果になった。この日は中間スプリントで3秒を取れたが、これで逆転できるとは思わなかった。チームメートがその状況を堅持する働きをしてくれた」とデニス。
「これでグランツールのリーダージャージをすべて獲得したことになるけど、すべてその手段は異なっている。ツール・ド・フランスでは個人タイムトライアルでつかんだ。ブエルタ・ア・エスパーニャではチームタイムトライアルで、みんなで獲得したジャージなのにボクが着ることになってビタースイートな気持ちだった。マリアローザは数日で失うことになる。この大会の最終週はボクにとって厳しすぎるからね」

ジロ・デ・イタリア第2ステージ © Fabio Ferrari – LaPresse

ハイファ〜テルアビブ間を走るジロ・デ・イタリア第2ステージ © Fabio Ferrari – LaPresse

大会は6日に、イスラエルのベエルシェバ〜エイラト間の229kmで第3ステージが行われる。7日はイタリアの
シチリア島までの移動。8日に第4ステージが開催される。

ジロ・デ・イタリア第2ステージで首位に立ったデニス © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)ローハン・デニス(オーストラリア、BMC)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)エリア・ビビアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
マリアアッズーラ(山岳賞)エンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)
□マリアビアンカ(新人賞)マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)

サポートカーのルーフキャリアのどの位置にだれのスペアバイクが積まれているかをメモ © TeamSunweb
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