第106回ジロ・デ・イタリアが5月6日から28日まで開催され、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチが最終日前日の個人タイムトライアルで逆転。スロベニア選手として初優勝した。緊急出場の新城幸也(バーレーン・ビクトリアス)はチーム優勝に貢献した。
ローマを発着とする距離126kmの第21ステージはゴールスプリント勝負となり、アスタナ・カザクスタンチームのマーク・カヴェンディッシュ(英国)が優勝した。2位はトレック・セガフレードのアレックス・キルシュ(ルクセンブルク)、3位はグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・フィオレッリ(イタリア)。
全23日間の長丁場でスロベニア選手として初の総合優勝を達成
ヨーロッパ大陸出身の選手が総合優勝したのは2017年のトム・デュムラン(オランダ)以来となる。スロベニアはイタリアと接する国ながら、ステージ初優勝は10年前のルカ・メスゲツ。ここ10年でロードレースの強豪国の仲間入りを果たしたが、同国の自転車ロード界を牽引してきたのはもちろんログリッチだ。
ログリッチはツール・ド・フランスこそ勝っていないが、ブエルタ・ア・エスパーニャ3連覇(2019、2020、2021)に続くグランツール制覇を達成した。
「ローマの街を走るのは本当に楽しかったけど、ジロ・デ・イタリアで総合優勝することの意味をまだ理解できていなかった」とゴール直後にログリッチは語っている。
「昨日起こったことの後、私は自分の感情を封じ込めようとした。ローマは壮観な街だ。すべての勝利は特別であり、この勝利を獲得できたことに感謝している。それは私の人生の残りの間もずっと心にとどまるはずだ」
「昨日のタイムトライアルで優勝した後、とても多くの感情があふれてきた。最終日のローマは初めてだった。景色は素晴らしい。総合1位というこのポジションで歴史の一部になれたことをうれしく思いし、関係者全員に心から感謝したい。すべてのグランツールはチャレンジだ。ジロ・デ・イタリアでの勝利をツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャと比較することはできない。今年はジロ・デ・イタリアを狙っていた。もっと簡単に勝てたらいいのにと思うが、私のよき友人であるゲラント・トーマスと戦うことができて光栄だった。ここで彼を倒したからといって、私たちの関係に影響を与えることはないよ」(ログリッチ)
最終ステージの舞台はイタリアの首都ローマだ。ジロ・デ・イタリアはツール・ド・フランスとは異なり、最終到着地が固定されていない。そのためローマが最終ステージとなるのは今回で5回目。ローマがステージのゴールとなるのは49回目。
コースはローマ郊外を出発した後、一路海へ。そこからUターンしてローマ市街地の13.6km特設サーキットを6周回してフィナーレとなる。レースは平坦ステージ特有のゴールスプリント勝負となり、アスタナ・カザクスタンチームのマーク・カヴェンディッシュ(英国)が優勝した。2位はトレック・セガフレードのアレックス・キルシュ(ルクセンブルク)、3位はグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・フィオレッリ(イタリア)。
カヴェンディッシュにとっては2023シーズン初優勝。そしてこの大会の休息日に今季限りでの引退を表明していて、ジロ・デ・イタリアでステージ優勝するラストチャンスでもあった。
大会通算17勝目であり、38歳と7日でのステージ優勝は、2015年にパオロ・ティラロンゴが樹立した37歳10カ月9日を上回る最年長記録となった。カヴェンディッシュが初勝利したのは2008年で、この日の最後の勝利との月日はなんと15年と15日。ジーノ・バルタリが1935年から1950年に記録した15年と9日という快記録も更新した。
「とても幸せだし、信じられないような1日だった。私のチームメイトは素晴らしい仕事をした。私の最初の勝利は2008年で、再び勝者の位置に立ったことは信じられないほど。ゲラント・トーマスをはじめ、フィニッシュ後に多くの同僚や友人が私のために喜んでいるのを見るのはとてもうれしかった」とカヴェンディッシュ。
「どんな勝利も自信が後押しする。今回もそうだ。私はゲラント・トーマスと冗談を言った。25年間、彼は私の親友で特別の存在だ。今日のように幸せな気分になれる日はないと思う。イタリアでのレースキャリアは私の中で大きな部分を占めてき。それだけにジロ・デ・イタリアの最終ステージで優勝できたのは素晴らしいことだ。この記憶は永遠にとどまると思う」
総合2位は14秒遅れでゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)。
「私の仕事はすでに終わっていたので、フィナーレを締めくくるマーク・カヴェンディッシュを見ていた。彼は古い仲間で、私は彼が勝つだろうと予測していた」
「今回のジロ・デ・イタリアに勝てなかったのは痛い。プリモシュがピンク色に彩られているのを見て、それは私だったかもしれないと思った。フィリッポ・ガンナ、テイオ・ゲイガンハート、パヴェル・シヴァコフを失ったにもかかわらず、チームとしてのレースをしたことは今でも非常に誇りに思っていて、私たちは力を合わせてうまく走り続けた。ライダーだけでなく、誰もが私を100%サポートしてくれた。それは信じられないほどのチームの努力だった」(トーマス)
総合3位はジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)。アルメイダはヤング・ライダー賞も受賞した。
「グランツールで初めてのトップ3入りだが、2人のグランツール優勝者と一緒にステージに立つのはとても特別なことだ。彼らは非常に多くの経験を持っており、とてもいい走りをした。素直に喜びたい。年齢的にヤング・ライダー賞を獲得する最後のチャンスだった。それを獲得できたのはうれしいけど、もっと上を目指したい。私の目標は常に総合成績だ。改善の余地はあると確信している。いつかジロ・デ・イタリアには戻ってくるけど、来年かそれ以降になるかは分からない」(アルメイダ)
ポイント賞は新城幸也が所属するバーレーン・ヴィクトリアスのジョナサン・ミラン(イタリア)。第2ステージのスプリント勝負で優勝し、ここでポイント賞ジャージを獲得すると、20ステージにわたって一度も手放すことなくローマに凱旋した。22歳による受賞は1979年のジュゼッペ・サロンニに次ぐ若さとなった。
「僕にとってもチームにとっても、素晴らしいジロ・デ・イタリアだった。私はマリア・チクラミーノに本当に満足している。今日はいい気分を味わいたいと思っていたけど、スプリントのために最善を尽くした。このジロ・デ・イタリアの間に多くの間違いを犯したので、その状況を改善したい。将来的にもっとうまくやることを望んでいる」(ミラン)
山岳賞はグルパマ・エフデジのティボー・ピノ(フランス)。区間2位2回とステージ勝利こそ手中にできなかったが、序盤戦から山岳賞ジャージ争いに積極参戦。ドロミテ山塊が舞台となった第18ステージで三たび山岳賞ジャージ獲得をすると、そのまま山岳王となった。
「僕の当初の目標はステージ優勝だったけど、レースの展開は違った。総合成績のために動き、そして山岳賞ジャージを獲得するという最高の結果でフィナーレを迎えた。複数の目標を追いかけるのは決して簡単ではない。私は今回のジロ・デ・イタリアでやったことを誇りに思っている」(ピノ)
バーレーン・ヴィクトリアスの新城は、大会直前に参戦予定だった選手がコロナ罹患し、急きょ代替出場した。ポイント賞ジャージを着用するミランをアシストし、チーム賞1位を下支えする走りを全ステージにわたって見せた。
新城の総合成績は5時間08分37秒遅れの122位。ジロ・デ・イタリアは5度の出場で5回目の完走。ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャを加えた三大大会は16回出場で全完走という偉業を達成した。
ステージ優勝者は合計19人にもなり、20人だった2000年と2010年に続く記録。13選手が大会初優勝を記録し、ベテラン勢の老練なマリア・ローザ争いとは別の将来性のある走りが随所に見られた。
●4賞ジャージ
■マリアローザ(個人総合成績)プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
■マリアチクラミーノ(ポイント賞)ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
■マリアアッズーラ(山岳賞)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
□マリアビアンカ(新人賞)ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
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