澤田茉奈がBMX世界選手権12歳女子クラスでダブルタイトル

BMXレーシング世界選手権のワールドチャレンジカテゴリーがフランスのナントで7月26日から29日まで開催され、初日に開催されたクルーザークラス女子12歳アンダーで、澤田茉奈(さわだまな)が後続に10車身以上の差をつけ、日本人女子初となるクルーザークラス優勝を飾った。

女子12歳アンダーの澤田茉奈 ©日本自転車競技連盟

総勢2830選手、8歳から50歳超で世界チャンピオンを争う

世界各国から総勢2830選手が集まったUCI BMXレーシングワールドチャレンジは、新型コロナウイルスの影響から中止が続いていて、2019年のベルギー大会以来の開催となった。ワールドチャレンジは、タイヤサイズが20インチと24インチの2種類のクラス設定があり、下は8歳から上は50歳以上まで全43カテゴリーが設けられる。世界中から集まる老若男女が、チャンピオンシップレベルと同様のコースで世界1を争う、自転車競技でも選手年齢層の幅が一番広い国際大会となっている。

ワールドチャレンジカテゴリーに参加した日本チーム ©日本自転車競技連盟

日本からは総勢18選手が参戦し、男子は12歳アンダーで石川智士(いしかわさとし)が7位入賞、15−16歳では浦井健芯(うらいけんしん)が5位に入り、合計3名のファイナリストが生まれた。

15−16歳で浦井健芯(左から4人目)が5位に ©日本自転車競技連盟
11歳クラスで2位になった高崎成琉 ©日本自転車競技連盟
12歳アンダーで石川智士が7位 ©日本自転車競技連盟

2日目以降の20インチクラスでは、女子12歳で澤田が2018年以来の2度目の優勝、クルーザー クラスとのダブルチャンピオンを獲得した。男子は11歳の高崎成琉(たかさきなる)が決勝へ進出し、優勝まであと数センチ届かなかったものの、2018年に獲得した自身の7位を大きく上回る世界2位を獲得した。 男子の表彰台獲得は、2012年の増田優一以来10年ぶりだった。

澤田茉奈が後続に10車身以上の差をつけ日本人女子初となるクルーザークラス優勝 ©日本自転車競技連盟

大会でのワールドチャレンジ日本チームの活躍は、その後に開催されたれチャンピオンシップレベルの複数名決勝進出につながる大きな勢いをつけ、次世代の可能性も表す好成績で大会を終えた。

木内彪凱がBMXレーシング世界選手権29位、西村寧々花17位

BMXレーシング世界選手権がフランスのナントで7月30日から 31日まで開催され、ジュニア1年目となる木内彪凱(飛龍高)が男子で29位、西村寧々花(GAN TRIGGER)が女子ジュニアで17位になった。

木内彪凱はジュニア男子29位 ©日本自転車競技連盟

ジュニア男子はエリート男子に次ぐ大混戦

エリート男子に続く参加人数56選手(計27カ国)が集まったジュニア男子カテゴリー(17−18歳)。日本からはジュニア1年目となる木内が派遣され、シーズン前半に行ったヨーロッパシリーズでの単独武者修行の成果の発揮に期待がかかった。

予選では好スタートを決めたが、隣の選手と接触してクラッシュ。一時は重症と思われたが、幸いにも軽症だったため、敗者復活戦Last Chance Qualifyに出場し、通過圏内の2位で1/8決勝へ進出。1/8決勝でも好スタートを決めて3位でレースを展開するが、最終コーナーでのライン取りミスにより順位を落とし、5位で準々決勝進出を逃した。

木内彪凱のコメント
15-16歳のワールドチャレンジがコロナウイルスの影響により2年間中止が続き、3年越しでの世界選手権挑戦でした。事前練習から調子は整っていただけに1/8決勝でミスをして、チャンスをつかみきれなかった自分にガッカリしていますが、現状の自分の位置も確認できたことは、次のトレーニング活かせる収穫でした。

また、初めてのナショナルチームとの大会参戦で慣れない部分もありましたが、それ以上に学ぶことも多く、ここからエリートへ向けての新たなスタートと再認識することもできました。 来年もヨーロッパにベースを置いて、最後のジュニアで勝負できる位置に持っていきたいです。

<大会結果 男子ジュニア>
優勝:BIJSTERBOSCH Julian(オランダ)
2位:BRINK Jaymio(オランダ)
3位:MAGDELIJNS Wannes(ベルギー)
29位:木内彪凱(飛龍高)

ジュニア女子で西村が準々決勝に進出

女子17カ国から総勢27名が集まったジュニア女子カテゴリーには、日本からは西村が出場した。予選は通過圏内の4位でコース前半を終えるが、第2コーナーで接触してクラッシュしたため、敗者復活戦に回った。

西村寧々花はジュニア女子17位 ©日本自転車競技連盟

上位2名が通過となる敗者復活戦では、3位で追いかけると展開となったが、最終コーナーで一つ順位を上げ、0.087秒と僅差で逃げ切り、翌日の準々決勝へ進んだ。

5名で争われた準々決勝では、最初のジャンプでのミスが響き、上位4名には届かず、総合17位でジュニア最終年を終えた。

西村寧々花のコメント
2021年の世界選手権では予選を通過できなかったため、いくつかの課題に取り組んできましたが、ジャンプという最大の課題で差を埋めきれず、今回も納得できる結果は得られませんでした。

帰国後はアジア選手権などが続きますが、まずはジャンプフォーム修正を1番の目標において、その後に次のU23カテゴリーでの4年間に向けて大会での結果を考えてきたいと思っています。日本からのたくさんの応援、ありがとうございました。

左から丹野夏波、籔田寿衣、西村寧々花 ©日本自転車競技連盟

<大会結果 女子ジュニア>
優勝:BRINDJONC Lea(フランス)
2位:STURISKA Veronika Monika(ラトビア)
3位:MAY Bella(オーストラリア)
17位:西村寧々花(GAN Trigger)

中井飛馬がBMXレーシング世界選手権U23で3位…丹野夏波は女子4位

BMXレーシング世界選手権がフランスのナントで7月30日から 31日まで開催され、世界選手権大会初開催となったU23カテゴリーで、男子は中井飛馬(日本体育大)が、2017年世界選手権ジュニアカテゴリー以来の決勝進出を果たし、3位になった。

中井飛馬が2022BMXレーシング世界選手権U23で3位。中央は優勝したレオ・ガロワン(フランス)、左は2位フアンカミロ・ラミレス(コロンビア) ©日本自転車競技連盟

女子U23カテゴリーでは丹野夏波(早稲田大)、籔田寿衣(大阪体育大)が決勝進出を果たし、それぞれ4位と7位に食い込んだ。

丹野夏波(左から2人目)はU23女子で4位と健闘 ©日本自転車競技連盟

フランスでのBMX世界選手権開催は2005年パリ大会以来。それにさかのぼる1999年にも同市ナント世界選手権開催実績を持っている。日本チームはチャンピオンの称号であるレインボージャージを賭けて戦うチャンピオンシップレベル(ジュニア、U23、エリート)に、ジュニア男女各1選手、U23男子3選手、女子2選手の計7選手を派遣した。エリートの派遣は、男子該当者なし、女子は怪我のため不参加だった。

中井が日本勢としてチャンピオンシップカテゴリー初の表彰台

この大会から新設されたU23カテゴリーには24カ国、55選手が参戦し、初代チャンピオンを狙っての混戦が繰り広げられた。日本からは2021年のワールドカップシリーズチャンピオンである中井をはじめ、増田優一(大阪体育大)、島田遼(GAN TRIGGER)の 3人が代表とし参戦。

中井飛馬が先頭に立ってゴールを目指す ©日本自転車競技連盟 ©日本自転車競技連盟

初日の予選・1/8 決勝では、中井が1/8決勝を1位で通過し翌日の準々決勝へ進出した。 島田は1/8決勝で通過圏内の3位を走行中に、前走者との接触で失速。増田は敗者復活戦にあたる Last Chance Qualifyであと1つ届かず、それぞれ翌日の準々決勝へは勝ち進むことができなかった。

中井は翌日の準々決勝、準決勝を勝ち上がり、決勝へ駒を進めた。決勝ではインサイドの3レーンを選択。得意のスタートのタイミングミスにより後方から追い上げる展開となったが、世界選手権決勝であることから先頭グループでは荒れたレース内容が続き、度重なる接触などをうまくかわして、3位までの追い上げを見せてレースを終えた。

今大会会場はコンパクトで短いコースレイアウトのためスピードコースであり、一つのミスが大きく響く結果となった。それでも日本チームとしてはチャンピオンシップレベルでの初メダル・表彰台獲得となり、中井自身もジュニア4位を上回る成績を修めた。

先頭を行く島田遼。男子U23で37位 ©日本自転車競技連盟

中井飛馬のコメント
最低ラインのメダルを獲得しましたが、優勝だけを狙ってトレーニングを積んできて、決勝でも勝てる条件が揃っていただけに、レース直後から悔しい気持ちでいっぱいです。

決勝のスタートではタイミングを早まり、ゲートに前輪をヒットさせてしまいました。他の選手の展開からも、通常のスタートを決めることができていればと悔やみきれませんが、来年 からのエリートカテゴリーに向けて、今大会での経験を大切なステップとしたいです。

日本初のレインボージャージを持ち帰ることはできませんでしたが、日々の多くの方々のサポート、そして会場での日本チームの応援により、全力で今大会に挑めたことに感謝しています。たくさんの応援、ありがとうございました。

増田優一は男子U23で50位 ©日本自転車競技連盟

<大会結果 男子U23>
優勝:GAROYAN Leo(フランス)
2位:RAMIREZ VALENCIA Juan Camilo(コロンビア)
3位:中井飛馬(日本体育大)
37位:島田遼(GAN TRIGGER)
50位:増田優一(大阪体育大)

U23女子で丹野が表彰台まであと一歩の4位

女子U23の参加者は13カ国、18選手と少なめだったが、参加者の半数以上が今シーズンのワールドカップシリーズで決勝へ進出していて、各国の強豪選手が集結した。

日本の丹野と籔田は各組において予選を2位で勝ち上がり、準決勝も接触などで危ない場面もあったが、それぞれ4位で決勝へ進出した。両選手ともチャレンジレベルでの決勝進出が最後で、丹野は2016年ぶり、籔田は2015年ぶりに決勝へ。再び世界選手権大会決勝の舞台へ戻ってきた。

籔田寿衣は女子U23で7位 ©日本自転車競技連盟

決勝で丹野は5レーン、籔田は6レーンからスタート。丹野が好スタートを決めるも、最初のジャンプで少し失敗し、4番目で第1コーナーを通過。前を行く選手を追走するが終始差を縮めることはできず4位でフィニッシュ。籔田は第1バームで接触し、大幅に失速したため最終7位となった。

表彰台まであと1歩だったが、複数名の日本人選手決勝進出はチームとしても大きな成果となった。

丹野夏波のコメント
目標としていたトップ3にあとひとつだったので、悔しい気持ちもありますが、決勝でも今持っているベストのパフォーマンスを発揮することができたので、今大会の結果には満足しています。

東京オリンピックの代表を逃してから、気持ちの切り替えに時間がかかってしまいましたが、こうしてまた大きな舞台でBMXレーシングをすることで、次なる目標へのモチベーションを見つけることができました。今シーズンもまだ続くので、短い休憩をはさんで残りのワールドカップシリーズに向けてトレーニングに励みたいと思っています。 応援ありがとうございました。

左から丹野夏波、籔田寿衣、西村寧々花 ©日本自転車競技連盟

籔田寿衣のコメント
大会に向けてヨーロッパで2カ月半の事前調整をしてきましたが、大会約3週間前に病院へ救急搬送される大きなクラッシュをしてしまい、直前までスタートに立つことが目標となっていました。レースができるか不安な日々が続いていましたが、怪我の回復は早く、チームのサポートもあり、レース当日には全力で走れるまでになりました。

当初の目標でもあった決勝へ進出することができ、安堵の気持ちでいっぱいです。決勝では思った展開にはならず7位で終わりましたが、残り2年あるU23カテゴリーで表彰台、そし 優勝と着実にステップアップできることが今後の目標です。今大会でもたくさんのサポートをいただき、ありがとうございました。

<大会結果 女子U23>
優勝:SØRENSEN Malene(デンマーク)
2位:AEBERHARD Nadine(スイス)
3位:SIMPSON Molly(カナダ)
4位:丹野夏波(早稲田大)
7位:籔田寿衣(大阪体育大)

対向車が迷惑なまぶしさを抑え、地面も明るくなるシェード

自転車ヘッドライトが照射する光で、歩行者や対向車ドライバーが「眩しい」と感じる光を遮断し、危険を防止するシェードがワールドサイクルから発売された。シリコンゴムの伸縮性を利用することで、90%以上の自転車ヘッドライトに装着可能とメーカー。2200円。

防眩効果を維持しながら先端が発光する「光る防眩シェード」

夜のサイクリングに欠かせない自転車ヘッドライト。しかし、性能がアップし、光量が大きくなることで、歩行者や対向車ドライバーには「眩しい」ものになる。眩しいライトから歩行者や対向車ドライバーが眼をそむけたり、眼の残像効果で視界が暗くなることは、一瞬だが「危険な瞬間」を生み出す。

自転車ヘッドライト用防眩シェードORCANO(オルカノ)は自転車ヘッドライトが照射する歩行者や対向車ドライバーへの「眩しい光」を遮断し、サイクリストに必要な視界を確保しながら、サイクリストの存在を知らせる機能、ライトの落下防止機能もあわせ持つ。

防眩性能
ORCANO(オルカノ)は前方に滑らかに突き出す形状で自転車ヘッドライトの光をコントロール。歩行者に対する遮光と対向車ドライバーに対する遮光を同時に実現。サイクリストの走行に必要な視界を確保するための中心光と道路への光はそのまま維持。さらに内面の鏡面仕上げによって上方に照射されていた光を自転車下部と周辺に反射させ、周囲に自転車の存在を知らせる。

高い耐衝撃性
シリコンゴムで成型されたORCANO(オルカノ)は柔らかい素材のため、人・車と接触しても衝撃を吸収。

光る防眩シェード
グラファイト・チェレステブルー・ペールピンク・ブルー・グリーン・オレンジ・イエロー・ホワイト。先端部の光はシリコンゴムを透過しているため、柔らかい拡散光となり、眩しさはない。

被せるだけのイージーフィット構造
ほとんどのヘッドライトでORCANO(オルカノ)の装着はライト先端に被せるだけ(メーカー調べ)。シリコンゴムの伸縮によってORCANO(オルカノ)はライトにしっかりと密着し、走行中に脱落することはない。一部のライト(先端からブラケット取付部が近いタイプなど)では、ORCANO(オルカノ)の一部をカットするとフィットする。その場合は付属の装着固定用両面シールで固定。一般的な両面テープではシリコンゴムに接着できない。

ライトの形状は円筒形が一般的だが、断面が楕円形でも角の丸い長方形でも周囲長が92〜126mmであれば装着できる。周囲長111mm以上、断面が角の丸い長方形の場合は時間がかかるかも。取扱説明書に取付手順を記載。

ミラーステッカー付属。オルカノのカラーとライトの光量、取り付け位置によっては、ライダーがまぶしいと感じる場合がある。その場合付属のミラーステッカーを貼ることで、光の透過が抑えられる。スリット入りなので、ライトのON/OFFも容易に判別がつつ。

付属の専用ストラップでライトの落下を防止:ORCANO(オルカノ)には左右に二つのストラップホールがあり、シリコンゴム製の専用ストラップが付属。夜間走行中にヘッドライトがブラケットからはずれて道路や草むらに落下してしまう事故を防止。

徹底した軽量化
無駄をそぎ落としたORCANO(オルカノ)の重量はわずか12g。専用ストラップを含めても16g。極限まで軽量化したロードレーサーでも負担にならない重さ。

素材:シリコンゴム
重量:本体12g・専用ストラップ4g
サイズ:幅36.6mm・奥行き90.2mm・高さ32.8mm
シリコンゴム伸び率:約140%
付属品:専用ストラップ1本、ミラーステッカー、装着固定用両面シール(2cm×2cm)2枚、取扱説明書/ガイドブック
生産国:本体/日本 専用ストラップ/中国

●ワールドサイクルの販売ページ

トレックバイシクル東京池袋東口店が7月22日にオープン

トレック・ジャパンが東京都豊島区南池袋にTREK Bicycle 東京池袋東口店を7月22日にオープンさせた。メーカー直営店として国内では26店舗目、都内では5店舗目となった。

TREK Bicycle 東京池袋東口店

JR池袋駅至近の利便性の高い場所にオープン

キッズバイクからハイエンドロードバイクまで、最新ラインナップ70台以上を常時展示。試乗車も約10台用意される。直営店独自のサービスも多数あって、トレック社製以外のスポーツ自転車のメンテナンスにも対応。

トレックFX 2

サイクリストはもちろん、初めてのスポーツ自転車を探している人まで、要望に合わせて自転車を通じた幅広いライフスタイルをメーカー直営店として自信をもって提案していきたいという。

トレック・Madone SLR9 eTap
■店舗情報
TREK Bicycle 東京池袋東口店
オープン日:7月22日(金)
住所:〒171-0022 東京都豊島区南池袋1-21-10 藤久ビル東1号館1階
電話:03-6914-2156
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
Webサイト:https://www.trekstore.jp/shop/tokyoikebukuro
Instagram:https://www.instagram.com/trekbicycle_tokyoikebukuro/
Facebook:https://www.facebook.com/trekbicycletokyoikebukuro

ビンゲゴーが総合優勝…開幕地となったデンマーク勢は26年ぶり

ユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(25)が第109回ツール・ド・フランスで初の総合優勝を達成した。大会は史上初めて北欧のデンマークで開幕し、7月1日から24日まで行われた。同国選手として1996年のビャルネ・リース以来の2人目の勝者となった。

ユンボ・ビスマは最終ステージで、リタイアしたチームメート3選手のナンバーカードを掲げて圧巻の優勝を報告 ©A.S.O. Pauline Ballet

チームメートのワウト・ファンアールト(ベルギー)が連日にわたって積極的な走りを見せ、ビンゲゴーの勝利に貢献するとともに、区間3勝、ポイント賞、総合敢闘賞を集中にした。した。3連覇を狙ったUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)は総合2位。

デンマークの3日間は大盛りあがり ©A.S.O. Pauline Ballet

3連覇を狙ったポガチャルから離れず、タイムトライアルで突き放す

2021年にポガチャルに続いて総合2位となったビンゲゴー。第11ステージで首位に立つと、最終日前日の個人タイムトライアルで総合優勝を確実にした。その日の勝利者会見で「昨年からツール・ド・フランスに勝てると信じていた」と明かす。

初日はランパールトが優勝。たった1日だがマイヨジョーヌを着用した ©A.S.O. Pauline Ballet

一見か弱く見える選手だ。母国である開幕地で大声援を送られて思わず目頭が熱くなるほどの素朴な性格。ポガチャルのように若い頃から注目されることはなく、魚河岸でアルバイトをしながら練習し、プロになった努力家だ。しかしマイヨジョーヌを着用し続けていくうちに王者の風格が感じられるようになり、記者会見も堂々としたところを見せた。

マイヨジョーヌのファンアールトがまさかのアタック ©A.S.O. Pauline Ballet

2年前、チームは最終日前日にどん底に叩き込まれた。マイヨジョーヌを守ってきたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が個人タイムトライアルでポガチャルにまさかの逆転負けを喫したのだ。

「そんなことの再来は望んでいなかったから、いい走りができて首位を守ることができてようやく安堵した」と今回のビンゲゴー。

大会中盤はタデイ・ポガチャルが実力を見せつけて首位に。第7ステージのスタート地点 ©A.S.O. Charly Lopez

3連覇を狙ったポガチャルから、アルプスでマイヨジョーヌを奪うと、その後は息を呑むような戦いを展開する。どちらも守りに入らず、毎日全力でライバルを引き離しにかかった。攻撃の手を緩めないポガチャルに、ビンゲゴーは食らいつき、そして最終日前日の個人タイムトライアルで突き放した。

「お世話になったチームとデンマークにいい報告ができる。デンマークでの報道をまだ知らないけど、みんな興奮していることは推測できる」

2022ツール・ド・フランス第11ステージ ©A.S.O. Aurélien Vialatte

変幻自在の動きを見せたファンアールトが敢闘賞

ビンゲゴーの初優勝に大きく貢献したのがベルギーのワウト・ファンアールトだ。ステージ3勝と、スプリント王の称号であるポイント賞を獲得。序盤の4日間はマイヨジョーヌを着用したが、「チームエースはビンゲゴー」と割り切り、集団から遅れた同選手を引き上げたりした。

ファンアールトが先頭に立ってマイヨジョーヌのビンゲゴーを牽引 ©A.S.O. Pauline Ballet

最終日前日はそんなファンアールトにとっても感慨深い結果になった。2年前にログリッチが逆転負けしたときのチームメートだったからだ。自身がトップタイムで優勝するとともに、ビンゲゴーがマイヨジョーヌを死守してゴールすると感極まって頬に涙が伝わった。

「チームから総合優勝者が出ることは特別なことだ。ビンゲゴーは強くもあるが、人間としても素晴らしい。そんな彼をチーム全員が栄冠に導いたのだから、本当にうれしい」

マイヨジョーヌを獲得してからビンゲゴーはポガチャルを徹底マークした ©A.S.O. Pauline Ballet

コロナ禍での3年目のツール・ド・フランス

2002年は大会が2カ月遅れの秋に延期され、スタートとゴールに観客を入れない運営で開催。2021年は感染状況も落ち着いたことからいつもの夏開催へ。そして2022年はフランスに第7波が到来。4度の総合優勝を誇るクリストファー・フルームなど複数の選手が大会中に罹患しリタイアした。主催者は大会中盤から選手への接触を禁止。チームバスが駐車するエリアに立ち入るスタッフにマスク着用を義務づけた。

2022年のツール・ド・フランスは初日以外は快晴で、おりからの熱波もあって暑かった ©A.S.O. Pauline Ballet

感染者は多いもののフランスではコロナ以前の生活が戻った。海外からの観光客数は激減しているが、2024年のパリ五輪に向けて観光大国としての復権に努める。