山本元喜が日本チャンピオン…鮮やかな連携で新城雄大も3位に

サイクルロードレースにおける2018年シーズンの日本一を決める全日本自転車競技大会ロードレースの最終種目、男子エリートでキナンサイクリングの山本元喜が最終周回でのアタックを成功させ、独走で優勝。エリートカテゴリーでは初となる日本チャンピオンとなった。序盤からチームメートの新城雄大とともに先頭グループに入り、終盤は2人の連携で数的優位な状況を作りだした。その新城も3位となった。

12周目に山本元喜(左)と小石祐馬(チーム UKYO)が抜け出した ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

6月22日の開幕から各カテゴリーで熱戦が展開されてきた今大会。大会2日目、23日に行われた男子アンダー23では弟の山本大喜が9位。キナンとしては、優勝者に与えられる日本チャンピオンジャージの獲得を最終日の男子エリートにかけることとなった。

その男子エリートは14.2kmのサーキットコースを15周回する213kmで争われた。周回前半は最大勾配8%の上りが続き、後半からは下り基調。大会を通じ、ここまで独走か数人に絞られた中での優勝争いが続いてきた。実力がより拮抗する男子エリートでは、どんなレース展開となるかも大きな見どころ。獲得標高はおおよそ4000mにものぼり、暑さも相まってサバイバル化することが予想された。

そんなタフなレースに、キナンから山本元と新城のほか、中西健児、雨乞竜己、中島康晴の5選手が出場。各選手好調でこのレースを迎えた。チームによって出走人数にばらつきがあり、5人出走は決して多いとは言えないが、コース適性の高いメンバーをそろえ、いかにレースの流れや勝負どころを見定めるかが上位進出のカギとなった。

午前9時の号砲とともにスタートが切られると、1周回目から有力チーム・選手が乗じる逃げグループが形成された。キナン勢ではまず山本元が合流。2周目に入って新城も加わり、最大で32人もの先頭グループにふくらむ。優勝候補選手の一部が残る形となったメイン集団には、キナン勢では中西、雨乞、中島が待機する。

最終周回、佐野淳哉(マトリックスパワータグ)と新城雄大、山本元喜の3人に ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

その形勢のまましばらくは大きなアクションはなく、7周目の途中でタイム差がこの日最大となる9分以上となる。これを機に少しずつタイム差は縮まっていくが、メイン集団が先頭グループを射程圏にとらえるまでには至らない。11周目に入って先頭グループからアタックする選手が現れたこともあり、ここからいよいよ活性化。先頭の人数が絞られていくが、キナン勢2人は問題なく対応した。

大きな局面を迎えたのは続く12周目。長い上りを利用してアタックが発生すると、山本が反応。追随する選手を振り切って、先に飛び出していた小石祐馬(チームUKYO)と逃げの態勢を整える。さらにその後方で生まれた4人の追走グループには新城が加わる。新城は前方に山本元が逃げていることもあり、追走グループのローテーションには意図的に加わらない。

山本元らの2人逃げのまま周回数を重ねたが、追走グループも徐々にタイム差を縮め、14周目に先頭へ合流。追走もこのころには佐野淳哉(マトリックスパワータグ)と新城の2人に絞られ、そのまま4選手による優勝争いのムードになっていく。その直後、急坂区間で佐野がアタック。これに即座に反応したのが山本元。下り基調の周回後半には新城が小石を振り切って、山本元が走る位置まで再合流をねらう。そして最終周回を目前に新城が追いつき、3人で残り1周回の鐘を聞いた。

決定的な瞬間は、この日たびたび動きが発生していた長い上りだった。山本元が渾身のアタックを繰り出し、単独先頭に立つ。佐野が約10秒差で続くが、山本元の乱れのないペースに、少しずつその差が開き始める。一時は40秒差にまで広がり、そのまま勝負あり。

独走に持ち込んだ山本元。残り300mからフィニッシュまでの最後の直線は、さながらウイニングライド。残り100mで優勝を確信すると、最後は両拳を掲げてフィニッシュへ。勝利を信じて待ち続けた仲間のもとへと飛び込んだ。

チームメートとスタッフが新チャンピオンを迎える ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

山本元にとって、ロードの日本タイトルは通算3回目。過去2回はいずれもアンダー23でのもので、最上位のエリートでは初の頂点となる。この大会に向けて約1週間、開催地近くに滞在し、調整やコース研究に時間を割いた。ピーキングの成功はもとより、入念な準備も勝因といえそうだ。表彰式では晴れの日本チャンピオンジャージに袖を通し、今後1年間にわたって着用してレースに出場していくことになる。

そして、山本元とともに序盤から前方でレースを進め、終盤にかけて最高のコンビネーションで貢献した新城も3位でフィニッシュ。山本元やチームスタッフが待ち構える中、こちらもガッツポーズでレースを終えた。パーフェクトなレース展開でワン・スリーフィニッシュを達成した。

このほかキナン勢は、終盤に上位ねらいの動きに切り替えた中島がポジションを上げていき、最終的には7位。中西も23位で完走している。トップ10に3選手を送り込むことに成功し、国内選手権上位者に付与されるUCIポイントを3選手分合計で180点を獲得した。

チームにとってテーマの1つでもある、日本人選手でのレース構築を実践する場でもあった今大会。日本チャンピオンジャージの獲得という最高の形で、選手たちはその成果を示してみせた。確たる力を持ったチームは次戦、Jプロツアーの広島シリーズへの参戦を予定する。6月30日はJBCF西日本ロードクラシック広島大会、7月1日は初開催となるJBCF広島クリテリウムと、2連戦のスタートラインにつくこととなる。

日本のナショナルチャンピオンジャージを着用した山本元喜とチームメート ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

全日本選手権自転車競技大会ロードレース・男子エリート(213km)結果
1 山本元喜(KINAN Cycling Team) 5時間46分53秒
2 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) +32秒
3 新城雄大(KINAN Cycling Team) +2分43秒
4 入部正太朗(シマノレーシング) +4分26秒
5 平塚吉光(チームUKYO) +4分32秒
6 小石祐馬(チームUKYO) +4分39秒
7 中島康晴(KINAN Cycling Team) +4分44秒
23 中西健児(KINAN Cycling Team) +10分37秒
DNF 雨乞竜己(KINAN Cycling Team)

山本元喜

山本元喜のコメント
本当に信じられない気分。アシストしてくれたみんなや支えてくれたチームスタッフにも感謝している。今回は動きすぎないよう、我慢しながらレースすることを心掛けた。その甲斐あって終盤まで脚を残すことができ、最終周回でのアタックにつながった。約1週間、開催地で過ごしてコースの特徴を頭に叩き込んでいた。どこでどう動くべきかも想定していたので、他選手のアタックに対しての対応の仕方や、自分がどこからペースを上げていくべきかもイメージできていた。このコースに合わせたトレーニングを積むことができたこともよかった。いつかこのタイトルを獲りたいと思っていたが、これはあくまでも通過点。ここで勝つことだけで満足せず、今後に控える大きなレースで結果を残せるよう取り組んでいきたい。

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マーティン・ションカ優勝。室屋義秀11位…レッドブル・エアレース第4戦ブダペスト

究極の三次元モータースポーツRed Bull Air Race World Championship(レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ)2018年シーズンの第4戦が6月24日にハンガリーのブダペストで決勝を行い、前日の予選でコースレコードを記録して1位になったチェコのマーティン・ションカが本戦でも力を発揮して優勝した。室屋義秀(ファルケン)は予選で0.032秒という僅差で2位になったが、本戦は11位だった。

セーチェーニ鎖橋の下をくぐり抜けるチェコのマーティン・ションカ © Armin Walcher / Red Bull Content Pool

ドナウ川の両岸に13万5000人の観衆を集めた第4戦。飛行機で約1時間のチェコで生まれ育ったションカにとっては地元とも言える大会で、見事な実力を発揮して今シーズン初勝利を飾った。2017年は2勝して総合2位となりながら、今季開幕から2戦は機材面の失格で成績を残せなかった。今大会はフリープラクティス1からファイナル4までの7回のフライトで、ペナルティはおろか全て58秒台以下で飛行。予選はトップタイムという手がつけられない速さを見せた。

「レース期間中、観客から多くのエナジーをもらった。表彰台の頂点からの眺めはとても美しく、いつも楽しい。チームの技術陣がハードワークをして機材を仕上げてくれ、気持ちよく飛ぶことができた。チェコからも多くのファンが駆けつけてくれて、彼らに特別なプレゼントを提供することができたことがうれしい」とションカ。シーズン総合成績はオーストラリアのマット・ホールが45点で首位を堅持したが、ションカは34点で総合3位に浮上。
「総合成績で上位陣に食らいつけているので、シーズン中盤で勝てたことは非常に重要。我々には技術的な問題が山積みで、この瞬
間のために全員ハードワークに徹した」

またフランスのミカ・ブラジョーが2位となり、自身のキャリア初の表彰台を獲得した。これによりランキングも総合4位に浮上した。

室屋義秀は11位とふるわなかった ©
Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

2017年の総合優勝者である室屋は第3戦の千葉大会と同様に、本戦の1回戦で「オーバーG」の失格。14人中の11位に終わり、総合成績は19点の5位と苦戦を続ける。

前回千葉大会では予選3位通過ながら、決勝1回戦のラウンド・オブ14で今季2戦目優勝の強敵マット・ホール(オーストラリア)と対戦し、リスクを負ったフライトでGが最もかかる垂直上昇から反転して下降するバーティカルターンマニューバー(VTM)で規定の12Gを超えてオーバーGで失格。今大会も予選2位と好成績で通過したが、ラウンド・オブ14では今シーズン開幕戦で優勝し、驚異的な速さを見せているマイケル・グーリアン(米国)と2戦続けて強敵とのマッチアップ。先にフライトしたグーリアンが57秒504の好タイムを出すと、それを超えるべくフライトしたが、千葉大会同様にバーティカルターンマニューバーでオーバーGとなる。

レース後に室屋は「練習から予選までいいフライトが続いていましたが、最初の(バーティカルターンマニューバーで操縦桿を引き上げる)プルアップの時に、ガスト(突風)を感じて、12Gを超えないようにリアクションをしたのですけど、ちょっと間に合いませんでした」とコメント。

レッドブル・エアレース第4戦ブダペスト大会を飛ぶマイケル・グーリアン © Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

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ションカがコースレコード、室屋義秀が2位…レッドブル・エアレース第4戦

究極の三次元モータースポーツRed Bull Air Race World Championship(レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ)2018年シーズンの第4戦が6月23日にハンガリーのブダペストで開幕。初日の予選ではチェコのマーティン・ションカがコースレコードを記録して1位に。室屋義秀(ファルケン)が0.032秒という僅差で2位になった。

レッドブル・エアレース第4戦ブダペスト大会 © Armin Walcher / Red Bull Content Pool

ファンの中で人気が高い開催地のひとつとして知られるハンガリーの首都はこの日も多くのファンを集めた。2年連続の総合優勝をねらう室屋は、前節の第3戦千葉大会で失格しただけに、仕切り直しのレース。シリーズ総合優勝を争う実力者のションカにわずかに及ばなかったものの、千葉大会のショックは完全に忘れ去られるほどの積極的なフライトだった。

レッドブル・エアレース第4戦ブダペスト大会 © Mark Somay / Red Bull Content Pool

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トレック直営店のTREK Bicycle横浜が7月中旬に本牧にオープンへ

神奈川県初のトレック直営店となるTREK Bicycle横浜が7月中旬ごろ、横浜市中区本牧にオープンする予定。トレックのブランドを体験できる直営店として常時約60台のトレックの最新モデルを展示。ロードバイクやクロスバイクはもちろん、マウンテンバイク、今注目の電動アシストクロスバイク、女性モデルやキッズバイク、ボントレガー商品など幅広いラインナップをそろえる。試乗車も常時約10台を用意し、知識・経験豊富なスタッフが目的に合わせて自転車を通じたさまざまなライフスタイルを提案。

トレック直営店のTREK Bicycle 横浜

メンテナンスのみの利用も対応する。他店購入や他メーカーのバイクでもメンテナンスしてくれるので気軽に相談できる。また、トレックのフィッティングプログラム「Precision Fit」も将来的に導入予定。導入時期が決まり次第ストアサイトやSNSで案内するという。

すでにバイクを持っている人だけでなく、今から始めたいと考えている人、始めたばかりの初心者にも気軽に来られるようなお店づくりを目指し、地域のトレックファンとサイクリスト人口を増やしていきたいという思いでスタートするという。お店の場所は神奈川県山手警察署のすぐ横。横浜周辺や横浜から三浦半島へのライドついでに立ち寄れる立地。

幅広いラインナップをそろえ、試乗車も常時約10台を用意する

TREK Bicycle横浜
住所:〒231-0804 神奈川県横浜市中区本牧宮原1-5 サンタハウス1F
オープン日:7月中旬(予定)
電話:045-225-8592
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜日
駐車場なし。周辺のコインパーキングを利用
TREK Bicycle横浜のホームページ
TREK Bicycle横浜のFacebook
TREK Bicycle横浜のInstagram

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山本元喜が2018年の全日本チャンピオンに…終盤に単独で抜け出して独走

第87回全日本自転車競技選手権大会ロードレースは6月24日、島根県益田市で大会最終日の男子エリートが行われ、山本元喜(キナンサイクリング)が独走で初優勝。2018年の日本チャンピオンになった。弟で同チームの山本大喜は個人タイムトライアルの全日本チャンピオンで、種目は異なるが兄弟で国内タイトルを獲得した。

山本元喜が2018年の全日本チャンピオンに © 2018 JCF

1周14.2kmのコースを15周213kmで行われた男子エリート。梅雨時とは思えない青空の下でスタートしたレースは、4周目までに35人の先頭集団が形成され、後続との差が一気に3分まで開いた。その後レース中盤までに後続との差は7分まで開く。10周目に入ると、先頭集団の動きが活性化。アタックが繰り返され、人数が減っていく。12周目、山本元喜と小石祐馬(チーム右京)の2人が先行。30秒ほどの差で佐野淳哉(マトリックスパワータグ)、新城雄大(キナンサイクリング)、石橋学(ブリヂストンサイクリング)、小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)の4人が追走。残り2周となる14周目に入ったところで、佐野と新城の2人が先行する山本と小石に合流する。

独走する山本元喜 © 2018 JCF

7km地点の登りで佐野がアタック。山本が追従し、さらに新城が続いて3人が先行して最終周回に入る。その直後の上りで山本がアタック。佐野が追うものの引き離され、山本が独走態勢に入る。およそ1周を逃げ切った山本は、2位佐野に約30秒の差をつけてフィニッシュ。2018年のロードレース全日本チャンピオンジャージに袖を通した。

全日本選手権エリート男子ロード優勝の山本元喜(中央)。左は2位佐野淳哉、右は3位新城雄大 © 2018 JCF

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山本大喜が全日本選手権ロードレースU23で9位…2冠達成できず

ロードレースの日本一を決める全日本選手権自転車競技大会ロードレースは6月23日に大会2日目の競技を実施。キナンサイクリングは156kmで争われた男子アンダー23の2選手が出走。山本大喜がライバルからの厳しいチェックに遭いながらも上位争いを繰り広げ、最終的に9位でフィニッシュした。

全日本選手権ロードU23の3位争いのゴール勝負 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

21日に開幕し、カテゴリーごとの日本チャンピオンが続々と決定している今大会。大会2日目に入り、満を持してキナン勢がレースへと臨んだ。この日の正午スタートの男子アンダー23に山本大と塚本一樹の2選手が参戦。前週の個人タイムトライアルを制した山本大にとっては、国内選手権2冠を懸けたレースとなる。2月にはアジア選手権のこの種目を制しているが、その時に獲得したチャンピオンジャージを今回初披露。シーズン3枚目のスペシャルジャージ奪取をねらってスタートラインに並んだ。

今大会の舞台となっている島根県益田市の14.2kmのサーキットコースは、前半が長い上り、折り返す格好となってからの後半は下り基調。上りの最大勾配は8%で、その後の下りではテクニカルな区間が数カ所待ち受け、レース全体を通してはアップダウンに富んだコースレイアウトとなっている。キナン勢としては、多くの選手がエントリーした大学チームに比べ数的不利は否めないうえ、プロチームに所属する2選手へのマークが厳しくなることが予想されるが、将来を有望視される選手たちの中での戦いを確実にものにすることが求められた。

123選手が出走したレースは、2周目に山本大が自ら集団の活性化をねらって動く。周回前半の上りでアタックすると、数人が追随し先行を開始。ところが、数分遅れでスタートしたアンダー17+アンダー15のレースにトラブルが発生した関係から、コース上での混乱を避けるために一時的にニュートラルの措置がとられる。これにより山本大らはメイン集団へと戻ることを余儀なくされ、レースはふりだしへと戻った。

逃げが決まったのはこの周回の後半。8人がリードし、山本大と塚本はメイン集団に待機。集団前方が見える位置を確保しながら、次なる展開を待つ。しばしこの形勢のまま進行するが、4周目に集団から追走ねらいの選手が飛び出すと、塚本も同調。すぐに集団へと戻ることとなったが、積極的な姿勢を見せる。

しかし、その塚本にアクシデントが発生。周回のほぼ中間にあたる区間の下りでコースアウト。激しい落車となり、この時点でレース続行は不可能となってしまった。

一方で、順調にレースを進行させる山本大。5周目から集団のペースが上がりはじめ、やがて逃げグループを射程圏内にとらえる。勢いは集団が逃げグループをはるかに上回り、7周目には先行していた選手たちがすべて集団に吸収された。さらに、この直後から有力選手たちによる攻撃が本格化。数人が前をうかがうと、山本大も前後を走る選手たちの様子を見ながら先頭へ合流。8周回を終えるころには優勝争いは約20人に絞られる。

そんなレースが大きな局面を迎えたのは、9周目の前半。2選手のアタックが決まると、これを見送ったメンバーが追走グループへと転じる。山本大も追う側となり、前を走る2人になんとか引き離されまいと粘り強く走る。しかし、ライバルのチェックが一層厳しくなったこともあり、山本大が追走グループの牽引を任される時間帯が多くなる。そうしている間にも先頭の2人とのタイム差は広がっていき、最終周回の鐘を聞くころには2分近い差になった。

最終的に、9周目にアタックを決めた2選手がそのままワンツー。山本大らのグループは最終局面までに徐々に人数を減らしながら、3位ねらいに切り替えて表彰台の一角を争う格好に。残り500mのコーナーを抜けて、グループの先頭でやってきたのは山本大。前方からスプリントを開始したが、続く選手たちの勢いが勝り、山本大は9位でのフィニッシュだった。

優勝候補に挙げられ、山本大としても自信をもって臨んだレースだったが、最後の最後までチェックをかいくぐることはできず、終戦となった。悔しさをにじませた一方で、戦う姿勢をフィニッシュの瞬間まで崩さなかったことや、勝つためにレースをどのように展開すべきかなど、厳しい勝負だからこそ得られた課題と収穫に充実した表情も見せた。この年代における日本を代表する選手として、残るシーズンも大舞台を目指していくことになる。

レース途中に落車した塚本は大事には至らず、病院で診察後、擦過傷の手当てを受けてチームへと戻っている。

大会最終日、全体最後の競技として行われる男子エリートには、キナンから山本元喜、中西健児、雨乞竜己、中島康晴、新城雄大の5選手が出場。15周回・213kmのレースに臨む。レース距離もさることながら、獲得標高が約4000mにものぼるタフさは、サバイバルな戦いとなること必至。アンダー23の戦いを終えた2選手からのバトンを引き継ぎ、真の実力が問われる勝負に、キナン勢が日本王座をかけて挑むことになる。レースは24日午前9時にスタートする。

全日本選手権自転車競技大会–ロードレース・アンダー23(156km)結果
1 石上優大(AVC AIX EN PROVENCE) 4時間10分6秒
2 松田祥位(EQADS) +56秒
3 大前翔(慶應義塾大学) +3分27秒
4 草場啓吾(日本大学)
5 大町健斗(Team Eurasia – IRC TIRE)
6 孫崎大樹(早稲田大学)
9 山本大喜(KINAN Cycling Team)
DNF 塚本一樹(KINAN Cycling Team)

山本大喜

山本大喜のコメント
有力メンバーに絞られたレースにあって、アタックの打ち合いになれば勝負できる自信はあった。ただ、みんなにマークされている感覚がかなりあって、勝負どころでの力も今日は足りていなかった。早い段階で実力のあるメンバーに絞ろうと思って自分からアタックを仕掛けたが、直後にニュートラルがかかってしまったりと、うまく展開ができなかった。上位に入った選手たちはみんな強い選手ばかり。今日の結果は素直に受け入れたい。悔しいけれど、シーズン後半に向けて切り替えて、チームで臨む大きなレースや、代表入りを目指すことになるロード世界選手権などに向けて、もう一段階レベルアップしたい。

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