23日間の日程で開催されるツール・ド・フランスは連日ホテルでその日暮らし。こうした現地ホテルはインターネットの宿泊予約サイトでほぼ完璧に取れる。便利な時代になったものだが、それにともなって現地でネット予約ならではのトラブルも。賢く利用するならその対策が必要だ。
フランスは郊外に行くととてものんびりできるホテルがあちこちにある
四半世紀前のツール・ド・フランス取材はホテル予約なんかせずにその場しのぎだった。だって、予約するのもたいへんだけど、そのホテルをさがすのもたいへんだったからだ。それでも仕事を終えた人からホテルを探し始めるので、原稿書いていると焦るのね。だから予約は大切だなと考え直して、電話やFAXで部屋を確保するように。農家の部屋を借りる「シャンブルドット」なんて国際郵便をやりとりした。そんな過渡期もあった。
農家を改装して旅行者に提供するシャンブルドット。水回りを含めてとても清潔で快適に過ごせる
そのうち大手チェーン店はネット予約ができるようになり、最近は宿泊予約サイトが圧倒的に便利に。ホテルドットコムとかブッキングドットコムとかあるが、どちらで予約してもホテルに着いたら「ああ、エクスペディアね」と言われる。どうやらフランスではネット予約は総称してエクスペディアらしい。ボクはこのうちの1つを利用しているが、10泊すると1泊が無料になり、ツール・ド・フランス取材をしているとあっという間に10泊するので、経費が浮いてうれしい。
フランスは世界有数の観光大国なので、ホテルに宿泊予約が通ってなかったり、なにかのトラブルで当てにしていた部屋がなかったりすることはめったにない。めったにないというのはたまにあるというわけで。そしてボク自身がトラブルに数えていないというけーすもままある。まあ、その場で解決できるものばかりだからだ。でも解決できなかったらそれなりのトラブルになる。
6人ほどの家族で過ごせる山小屋をシングルユース。宿泊料は1万円ほどだ
例えば値段の食い違い。ディスカウント料金が適用されるはずなのに、ホテルに行ったら通常料金だったり。また支払いは予約時にカード決済するか現地でチェックアウト時に支払うかが選択できるのだが、払ったのに料金を請求されることもある。このあたりは当日フロントにいたスタッフが単に間違っているだけなので、問題を解決するためにはネットの予約サイトをプリントアウトして持っていくことだ。
ホテル名は合っているのに、「あなたの名前では予約がない」と言われたことも何回かある。これはボクのほうのミスで、同じ系列ホテルの別の町に行ってしまったという間違い。例えば「イビスホテル・モンペリエ」を予約したつもりで行ってみたら、ボクが予約したのはモンペリエの南にある町の「イビスホテル・モンペリエ南」だったり。フランスのホテルチェーン店はひとつの町にいくつも同じブランドを持っていたりするので、住所をしっかりと確認して向かわなくちゃ行けないのだ。
1泊7000円程度のエコノミーなホテルは午後9時を過ぎるとフロントが閉まってしまう。無人になると自動ロックされた玄関の外にあるマシンで予約番号や予約時のクレジットカードを入れるなどの手続きを踏まないとマシンからカードキーが出てこない。聞き取りにくい音声ガイダンスで、間違えたらこの日はクルマの中で寝るしかないなと思うと冷や汗が出る。そのためできればまだスタッフがいる午後9時前に訪れたい。予約取り消し忘れや宿泊日間違いも多いミスなので、しっかりと事前チェックしておく必要がある。
ツール・ド・フランスではクルマで帯同することが普通なので、無料駐車場がある郊外型ホテルを利用することが多い。ただし付近にディナーを食べるところがないなんてところも。さらにはレストランを併設したホテルのはずなのに日曜日なのでレストランが閉まっているなんてことも。そんなときにひもじい思いをしないために、常に1食分の食べ物やワインかビールはクルマに積んでおくのがいい。
ちょっとした旅籠に泊まると、併設されるレストランがミシュラン掲載店だったりする
最近はいわゆるホテルではない宿泊施設も予約できるようになった。例えば巡礼者を宿泊させる宗教的な宿泊所だ。かなり安価に宿泊でき、キッチンつきの部屋はベッドが5つもあるのに1泊2食で5000円なんてところも。ここでは夕食はみんなで一斉に同じテーブルに着き、修道女が作ってくれたスープや食べ物を口にしながら語り合う。食後はミサだ。ホテルの看板も掲げていないような隠れ家的なところもあった。天体研究者が泊まる標高2800mの天文台なんてところも体験した。
いずれにしても「今夜はどんなところに泊まれるんだろ?」とツール・ド・フランスの期間中はワクワクしっぱなし。たまに不安になることもあるけど、それを含めて旅は楽しまなくちゃ。
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