8人の計測スタッフが毎日16時間…ティソがツール・ド・フランス全日程に帯同

ツール・ド・フランスは全日程を走って最も所要時間が少なかった選手が総合優勝となる競技。記録の集計は栄冠の行方を左右するだけに重要だ。さらには世界180カ国に放送されるだけに、実況者に瞬時に着順を提供するシステムも欠かせない。大会を支える公式タイムキーパー「ティソ社」の最新システムをチェックした。

ツール・ド・フランスのゴール地点には最新機材が多数設置されている

大集団のゴールでも一瞬で順位を判別
各ステージのゴールタイムと着順は最先端の写真判定機・選手のフレームに搭載されたセンサーをゴールゲートの読み取り装置で収集し、各選手が何位で何秒でゴールしたのか、高精度にそして瞬時に判定する。このデータは世界各国のテレビ実況者の手元にすぐに表示されるようになっていて、暫定記録として生中継の実況コメントに活用できるようになっている。

選手の着順決定は連続画像を確認しながら審判と計測スタッフが協力して行う

記録の正確性を維持するために多くの最先端の技術システムを必ず2つ配置して、どちらかの不具合があった場合のバックアップ体制は欠かせない。電子計測と写真判定を併用するのも精度を高めるための技術だ。ゴールラインを通過した選手のフレームにつけられたトランスポンダーという機器から発信された信号をゴールラインの受信機読み取る。コンピュータシステム上に識別した選手の順位がリストアップされ、あっという間に選手の着順と所要時間が分かるという仕組みだ。

クロノポールはゴールの特等席だ

ただしこれは暫定順位。トランスポンダーが取りつけられているフレームの位置が選手によってまちまちだからだ。ルール上は前輪の先端がゴールラインを通過した順に順位が与えられる。そこで登場するのが写真判定機。ゴールラインを斜め上から撮影するカメラがあって、毎秒1万枚を連続撮影する。選手の着順はミリ単位で判別できるので、肉眼で判断できない接戦でも優劣が特定できるという。

毎秒1万枚の連続撮影が可能なカメラ

 
ゴール横のクロノポールで作業を進行
ステージ優勝や各賞の得点配分が関わる着順は、ゴール横に設営された「クロノポール」と呼ばれるブースで8人の計測スタッフが管理。自転車競技のコミッセール(審判)と共同で確認しながら最終的な着順を決定していく。大勢に影響のない大集団中盤以降の着順はセンサーによって自動判定。これによって極めて短時間で正式記録が全世界に配信されるというわけ。

ゴールタイムは1000分の1秒まで計測されるが、自転車競技ルールによってコンマ以下のタイムは切り捨て。そして同じ集団でゴールした選手は先頭選手のタイムがすべての選手に与えられるという自転車競技の特性もある。最終的には人間が成績を確定させるのだが、最新システムがあるからこそ、全日程にわたって滞ることもなく成績が発表されていく。

ゴール横のクロノポールで8人の計測スタッフが働く

タイムトライアルの際は有力選手のマシンにトランスポンダーを搭載。途中計測ポイントだけでなく、コース途中の通過ラップをすべて取得することで、例えば総合1位と2位のタイム差の変化を生中継の画面上に表示することが可能に。そんな最新システムがあるから、視聴者は刻々と変わるタイム差にハラハラできるのだ。

計測スタッフの実働時間は1日なんと16時間。中間スプリントポイントの計測もあり、ゴール班とは別の動きをする。3週間以上にわたって3500kmの旅をしながら時間を記録し続けるという、重要でありハードな業務だ。沿道のファンやテレビの前の視聴者、SNSでレース展開をチェックする人たちのために、選手とともにフランス一周の旅を続けていく。

公式タイムキーパーが集計したデータはテレビ各社に瞬時に情報提供する

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