仲間と協力しながら自転車に乗って宝探しするサイクリングイベント「ライドハンターズin上野村」が11月24日、群馬県上野村で初開催され、長崎県からやって来たサイクリストをはじめ約100人が参加。地元の人たちとふれあえるサイクリング大会はアットホームな温かさがあふれていた。
エリア探索サイクリングという、いま最も人気が上昇しているサイクリング大会。「その土地ならでは」のものを感じながら、旅行気分で楽しめるのが特徴だ。今回のエリアは「山岳サイクリストの聖地」とも呼ばれる西上州・上野村。全国各地で毎週のように開催されているツール・ド・ニッポンシリーズとしても群馬県でのイベントは初めてとなる。
ライドハンターズとは地図上で指定されたスポットを巡り、制限時間内に獲得した総合得点を競うゲーム感覚のサイクリング。スポット得点のほかにミッション得点(~で●●を食べる、~にいる■■さんを訪ねて一緒に写真を撮るなど)も多数設定されていて、脚力というよりは「よりこの地域を楽しんだ人」が有利になるといったルールになっている。
チームごとにエントリーした参加者は、地図やグーグルマップを使って村内65カ所に設定されたチェックポイントを制限時間内に回る。オリエンテーリングと似ているが、ポイント数が多いのですべてを回る必要がなく、回る順番も決められていない。地形的な難易度によって配点され、集めた得点の合計で順位が決まるというのが着順で争うロードレースとは異なる点だ。
ポイントに到着したら自撮り画像をLineで送信。事務局がリアルタイム集計し、途中経過順位も確認できる。また、いい写真などには特別賞が与えられるなどフォトコンテストの要素もある。緊張感あるレースとはまったく異なる、こんな楽しいイベントが全国に増殖中だ。
群馬県の南西部に位置する上野村は四方を山に囲まれた、すり鉢の底に集落がたたずむ。この村に行くには必ずどこかの峠を越えなければならない。そんな特殊な地形から、古くから峠越えを趣味とするサイクリストが訪問するようになり、いつの日か「自転車野郎の聖地」と呼ばれるようになった。
今でこそ国道299号がバイパスとして村を貫き、上信越自動車道の下仁田インターにアクセスする湯の沢トンネルも開通したが、川沿いの旧道は時代がストップしたかのようなたたずまいをみせる。
2017ミスアース群馬代表の成田美織さんも今回のイベントに参加。ロードバイクを始めたばかりだが、「信号がなく、気持ちいいサイクリングは初体験でした。また走りたいです!」と大満足。
成田さんが訪ねた得点ポイントのひとつが、軽トラ移動カフェのYotacco。店主の黒澤恒明さんはかつて4年ほど海外サイクリングをしていた経験を持つ。「遠方から参加しに来てくれたサイクリストと話がはずみました。村のことを知ってもらえて、感激しました!」と顔をほころばせた。
民家の脇を通らないと見過ごしてしまうような新羽神社もポイントだった。隣の民家の男性が自家製こんにゃくいもから作ったおでんを用意。神社にやって来た参加者に「みそ田楽」をふるまった。
「風雨にさらされているけど本殿の彫刻は素晴らしいもの。観光客が訪れてくれるイベントは本当にありがたい」という。
上野村の黒澤八郎村長は、「参加者のみなさんの笑顔が印象的でした。これからも継続して開催していきます」と約束。
優勝チームは31カ所のポイントを回り、副賞として宿泊施設のペア宿泊券をゲット。そのほかにも特産しいたけ3kgやイノブタ肉3kgなどの特産物が各賞獲得チームに提供された。
今回のポイントは交通量がほとんどない旧道に多く設定された。古い日本のよさをしのばせる、のどかな雰囲気はのんびりと自転車を走らせるのにうってつけ。ケータイ電波の圏外であることから今回のポイントから除外されたが、上野村には走りごたえ十分の峠がいくつもある。そんな魅力あふれるエリアであることを参加者全員が感じたことだろう。
地元の人たちとふれあえる企画にしたことも特徴だ。イベント翌日にサイクリングしてみると、軽自動車を運転する村の人たちがこれまで以上にサイクリストを気遣う運転をしてくれていることが感じられた。こういったイベントが全国に増えることで、政府の掲げる「自転車活用推進」の旗艦となる自転車ツーリズムが普及していくのだと確信した。
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