国境越えでイタリアに行き、アルプス貫通トンネルで再び戻る

ツール・ド・フランス取材者日記。さすがにアルプスの朝晩は冷えます。前日に宿泊したキャンプ場のモーターホーム。日中は暑かったと管理者が言っていましたが、夜になると涼しくなり、室内のソファでくつろぎ、アルザス地方でもらった白ワインを飲みながら夕ごはん。生き返った思いがしました。

アルプスの中腹にあるシャンブルドット(民宿)

気持ちよく目覚めたこの日は冷え込んだ朝の空気のなか、大山脈を見ながらジョギング。最高に気持ちいいですが、ちょっと標高が高いので息切れします。

昼間は猛暑ですが、さすがに朝夕はセーターを着込むくらいに冷え込みます

マルセイユから小さなクルマで来たという若者2人が近くでテントを張っていて、ボクのクルマにツール・ド・フランスの記者ステッカーが貼ってあったので、「それはどうやったら入手できるの?」と聞きに来ました。1人はサッカーのオランピックマルセイユのユニを着ていて、酒井宏樹の写真を待ち受け画面にしているほどの大ファンとのことでした。

マルセイユからバカンスにやって来たフランスの若者と
こんな景色を見ながら朝のジョギング

この日はモンジュネーブル峠を上っていったんイタリアに行き、アルプス山脈を貫通する長いトンネルを走ってフランスに戻ります。トンネルに突入したら明るく見える度つきアイウエアに替えられるように手元に3タイプのオークリーを用意して運転しました。

オークリーは度付きタイプが2種類、通常のアイウエアも愛用

ブリアンソンからすぐ、モンジュネーブル峠は意外とたやすく上れる峠で、ブリアンソンがステージとなるときはここを上ってイタリアに行き宿泊します。本格的イタリア料理が食べられるのでそれが楽しみです。

しかしこの日は過酷。いったんイタリア入りしてから、長さ12.8kmのフレジュストンネルでアルプスを貫通してフランスに戻らないといけません。通行料金は6000円。ツール・ド・フランスのたいていの関係者は会社が出してくれると思いますが、ボクは自腹です。

暗いトンネルは圧迫感があるので敬遠しようかなと思ったんですが、制限スピードも遅く、規定の車間距離を開けなければいけないというルールがあるのでなんとかクリアしました!

速度制限は70km、車間を150m空けるのがルール
アルプスを貫通するトンネル。料金は高いですが、峠を上るよりも楽…、というかこのルートに峠越えの道はありません

ところでツール・ド・フランス取材時はほとんど運転しています。レースが佳境にならないとラジオ放送しないので、それまでは音楽専門のNRJ(エネルジーと読みます)を聞いているんですが、フランスで大ヒット中の歌手がAya Nakamura。どんな人でどんな曲かは検索してみてください。
●Aya NakamuraのTwitter

ようやくフランスに再入国し、サンミシェルドモリエンヌへ。このサボワ地方のおすすめはお蕎麦。サラザンって言うらしいですが、クルミが入っています。クルミもこのあたりの定番ですね。これを白ワインでいただきます。フランスはガレットとか、そば粉を使った料理が多いんです。日本人には親しみやすくて、同じ地方名物のフォンデュより口に合いますよ。

サボワ地方のおすすめはサラザンというお蕎麦

アルプス3連泊の2日目はシャンブルドット(民宿)。ふもとの町から急勾配の道を8km上ったところに集落があり、さらにクルマが1速でエンストしそうな激坂の先にありました。バスとトイレは共同でしたが、ボク以外に北欧の家族連れしかいなかったので、気兼ねなく利用できました。

目の前には稜線の頂点にお城が築かれたテレグラフ山、イタリア国境のモンジュネーブルやガリビエ峠は目の前に見える山岳のその奥にあるそうです。カウベルが家畜のヤギの首につけられているようで、かなりせわしなくカランカラン鳴っているのが、勇壮とは言いがたいですがそれほどイヤでもありません。谷の反対側の大岸壁にも家が点在していて、星のようにきらめいて幻想的でした。

サンミシェルドモリエンヌのサルドプレスに樽酒が

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バカンス客集まるキャンプ場でビジネスマンが1人浮く

ツール・ド・フランス取材者日記。「クリマティゼ=冷房付き」という看板を掲げているにもかかわらず、エアコンから風しか出ない南仏ニームのホテルを脱出。この日ははモンバントゥーの南麓を通ってのんびりとした一般道をメインに250kmの移動。

もうすこし見栄えのいいラベンダー畑を見つけたかったのですが、自分がドライフラワーになる前に自重した

思い出すのは2003年の猛暑です。朝夕が冷えて過ごしやすいフランスは冷房の普及率が低いんですが、そんな環境に熱波が襲来。あの年は体力のない高齢者など1万5000人が死亡したと言われています。その一方でワインとしては当たり年のようでした。

2003ツール・ド・フランスは暑さが弱点であるランス・アームストロングが唯一苦戦した年です。逆に寒さに弱いヤン・ウルリッヒがこの年とばかり肉薄。最終日前日の個人タイムトライアルで逆転の可能性があったんですが、朝起きたら冷たい雨が降っていて…。ランス、どこまで悪運強いのかと思いました。

並木が強烈な太陽光を遮断してくれる
ガップのサルドプレスはいつもおいしいが、外で食べていると倒れそうなくらい暑い

年齢を重ねるほど経験値が高まるためか楽しく取材できてきたと思っていましたが、今回はツラいです。体力は年々向上しているはずなのに、精神的に疲労困ぱい。ホテルの荷物忘れによる320kmの移動。3日間におよぶ視察団のアテンド。多少の要因はあるかも知れませんが、熱波による高温が激しい疲労感を誘発しているようです。

年齢的にも。30年前の初取材時は900人の記者の中でボクが一番の駆け出しでした。時を経て現在、ボクよりも年齢が高く、経験がある記者は両手ほどの数になっています。フランス社会は60歳の定年を迎えるとキッパリと仕事を辞める人が多いんです。さすがに60代でこの仕事は厳しすぎることもあるでしょう。

言い換えるとボクもあと4年で終わり方を考えなくちゃ、などと運転しながら弱音のひとつも言いたくなります。ただしアルプスに逃げ込めば快適すぎて、やめるなんて誰が言ったのさと考え直す気もしていましたが…。

原稿に取りかかる前にサルドプレスで休憩。室内は快適です

ゴールはアルプスとプロバンスのちょうど中間、ガップです。いつものサルドプレスに到着するとホッとします。エアコンをかけてクルマを運転しているのにどれだけ水を飲んだかな、というくらい水分を必要とする1日。自転車選手はホントに大変でしょうね。サルドプレスは必要以上にエアコンが効いているのでいったんクルマに戻って長袖と長ズボンに着替えてきました。

ガップはホテル数が少なく、いつもかなり遠いところまで泊まりに行きます。そしてアルプスとイタリアとプロバンスと地中海の十字路となる盆地で、いつもゴール後は大渋滞します。そのためそそくさと退出。それでもちょっと渋滞に捕まりましたが、あとから出た取材陣は思いっきり巻き込まれていました。

アルプス3連泊の初日はモーターホームだ。家族全員でも1人でも90ユーロ

今夜のお宿は山の中にあるキャンプ場のモーターホームです。「プールもあるから入っていいわよ」だって。いずれにしてもバカンス家族の中にビジネスマンがひとり浮いています。悪い予感がしたので夕食と朝食は買い込んできましたが、花火を買うのを忘れました。

キッチンに冷蔵庫、トイレとバスが別、ベッドルームと子ども部屋がある
子ども部屋も快適だ。大人でも3人でシェアできるだろう
さすがに朝晩は涼しいのでプールはご遠慮した

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