ツール・ド・フランス6日後の東京五輪は問題なし…ティボー・ピノ

グルパマFDJのティボー・ピノ(フランス)は 6月27日から7月19日まで開催されるツール・ド・フランスを2020シーズン最大の目標としながら、6日後の25日に日本で開催される東京五輪の個人ロードレースに出場する考えを示した。

ツール・ド・フランス第8ステージで総合優勝を期待されるピノがライバルに差をつけてゴール ©ASO Alex BROADWAY

富士山麓を走る東京五輪のコースが山岳に強い選手に適しているため、フランス勢はピノのほか、AG2Rラモンディアールのロマン・バルデ、ドゥークニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップらをエースに起用する構想がある。このうちバルデはツール・ド・フランスを欠場し、5月のジロ・デ・イタリアと東京五輪に照準を合わせると発言している。

「ツール・ド・フランスばかりが人生ではない」という考えはピノの頭の片隅にあるというが、ツール・ド・フランス最終日にシャンゼリゼ通りを走ることは重要な意味があり、その後に空路を移動して東京入りする準備を考えているようだ。

「ボクは東京五輪に行くことを確信している」とピノは1月17日に発言。7月19日にツール・ド・フランスの激闘を終えてわずか6日後に富士山でレースするという日程の過酷さは問題ないとした。

ロマン・バルデは2020ツール・ド・フランスをパスする可能性がある ©A.S.O. Pauline BALLET

サンセバスティアンでも実績がある

ピノはツール・ド・フランスの1週間後に開催されたスペインのクラシカ・サンセバスティアンでいい走りをした経験がある。

「サンセバスティアンでの経験もある。ボクたち選手は15日後よりも6日後のほうが脚が回ることが多いんだ」とピノ。
「だから肉体的な疲れはあまり神経質になることはなく、いかに精神的なものをコントロールできるかがキーとなる。頭の中できちんと整理できていたら、ツール・ド・フランスの疲労は6日にはなくなっているはずだ」

2016年にピノは当初、リオ五輪のフランス代表に選ばれていたが、ウイルス感染により代表入りを見送られたという経緯がある。2020年はどうしても五輪を走りたい。バルデとアラフィリップとの役割分担は不明だが、ピノも日本で目撃できる可能性が高くなった。

ピノ(左から2人目)、アラフィリップ(同4人目)は五輪でどう走るのか? 2019ツール・ド・フランス第14ステージ ©ASO Pauline BALLET

●2020東京五輪のホームページ

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位

KINAN Cycling Teamが出場したニュージーランドサイクルクラシック(UCIオセアニアツアー2.2)は1月19日に行われた第5ステージをもって閉幕。最終日は120kmで争われ、集団スプリントに挑んだ中島康晴が10位でフィニッシュ。6人全員が完走を果たし、個人総合ではトマ・ルバがUCIポイント圏内の8位に。開幕以降チャレンジを繰り返してきたチームは、収穫と課題を明確にして次の戦いにつなげていくことを誓った。

中島康晴がニュージーランド・サイクルクラシック最終日10位  ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

15日にレースがスタートした大会は、上りフィニッシュや平坦ステージなどが設けられ、総合的な力が試される戦いとなった。そんな中でKINAN Cycling Teamは、最難関の第4ステージでトマ・ルバを4位に送り込んだ。

そして迎えた最終日。大会の拠点であったマスタートンを基点とする10kmの周回コースを12回めぐる120km。カテゴリー山岳が設定されない、おおむねフラットのコースとあって、スピードレースとなることが予想された。実際、レースはその通りに展開していくことになる。

スタート直後のアタックに乗じたのは椿大志。5人が先行するが、その中にリーダージャージのライリー・フィールド選手(オーストラリア、チームブリッジレーン)ら実力者が加わったこともあり、メイン集団も簡単には容認しない。リードを奪おうと先を急ぐも、椿らはいずれも集団へと引き戻されてしまう。

その直後からはスプリント狙いのチームが中心となって集団を統率するが、5周目を迎えて1人の飛び出しを容認。タイム差は2分以内にとどめつつ、追撃のタイミングを図る。KINAN勢も集団に待機し、6人が固まって次の展開に備えた。

しばし逃げと集団との構図が変わらなかったが、逃げる選手の背中を視界に捉えたところで、集団から1人がブリッジ。一時的に2選手が先行する格好となったが、次の周回ではメイン集団が完全に飲み込み、プロトンはスプリント勝負に向けて状況を整えていった。

終始ハイペースで進んだレースにあって、勝負どころを見据えて集団内でのポジショニングを図ったKINAN勢。最終周回を前に前方へと上がっていき、中島でのスプリントに賭けた。

そしてステージ優勝は大集団でのスピード決戦に。アシスト陣の援護を受けた中島は好位置から加速。トップまではあと少し及ばず、10位でフィニッシュラインを通過。以降、残る5人も次々とレースを完了させた。

15日から始まった大会は、全5ステージを終えた。KINAN Cycling Teamは、この日メイン集団で走り切ったトマが個人総合順位を変えることなく、8位を確定。UCIポイント(3点)圏内でのフィニッシュとした。

シーズン初戦を終え、先々に向けた収穫と課題が明確になり、選手たちはそれぞれにレースやトレーニングの方向性も定まった様子。次戦は2月5~9日のヘラルド・サン・ツアー(UCIオセアニアツアー2.1)が予定されるが、これからはチーム内でのセレクションも含め、レースを高いレベルで戦えるだけのコンディションづくりに取り組んでいくことになる。

ニュージーランドサイクルクラシック2020 第5ステージ(120km)結果
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 2時間41分9秒
2 イェンセン・プロウライト(オーストラリア、チームブリッジレーン) +0秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム)
4 トーマス・ボルトン(オーストラリア、オリバーズリアルフードサイクリング) 
5 大前翔(愛三工業レーシングチーム) 
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) 
10 中島康晴(KINAN Cycling Team) 
31 山本大喜(KINAN Cycling Team) 
34 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
57 新城雄大(KINAN Cycling Team) +9秒
63 山本元喜(KINAN Cycling Team) +1分8秒
64 椿大志(KINAN Cycling Team) 

個人総合
1 ライリー・フィールド(オーストラリア、チームブリッジレーン) 15時間18分8秒
2 アーロン・ゲート(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +25秒
3 コルビン・ストロング(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +41秒
4 ヘイデン・マコーミック(ニュージーランド、ブラックスポークプロサイクリングアカデミー) +48秒
5 キース・デュベステイン(ニュージーランド、チームブリッジレーン) +49秒
6 コナー・ブラウン(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) +51秒
8 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +55秒
15 山本大喜(KINAN Cycling Team) +1分59秒
42 新城雄大(KINAN Cycling Team) +4分37秒
62 椿大志(KINAN Cycling Team) +11分6秒
65 山本元喜(KINAN Cycling Team) +12分47秒
75 中島康晴(KINAN Cycling Team) +25分0秒

ポイント賞
1 ディラン・ケネット(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタル) 37pts
14 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
22 山本元喜(KINAN Cycling Team) 1pts

山岳賞
1 フィン・フィッシャー=ブラック(ニュージーランド、ニュージーランドナショナルチーム) 16pts
10 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 4pts
12 山本元喜(KINAN Cycling Team) 4pts

チーム総合
1 ブラックスポークプロサイクリングアカデミー 45時間56分48秒
7 KINAN Cycling Team +4分58秒

山本大喜

山本大喜のコメント

「昨年のこの大会ではトマに頼りきりだったが、今年はみんなが逃げにチャレンジしたり、中島さんのスプリント、自分の総合と、どれもベストな結果ではなかったがあらゆる挑戦ができたことは大きな収穫。個人的には総合を狙う意識で臨みながら、最終的にトマに託す形になってしまったことが反省点。

シーズンが本格化するにつれてアシストに回ることも出てきて、自分が総合を狙える立場になることは減るかもしれないが、数少ないチャンスを生かせるようになりたい。マークをかいくぐって逃げ切ったり、それをきっかけに総合成績も狙ったり、スマートに戦って勝負できる機会を増やしたい。

今シーズンの目標は、ツール・ド・熊野。(和歌山県)新宮市に住んでいて、みんなが応援してくれている。地元レースで期待に応えられるよう走って、総合優勝したい」

ジロ・デ・イタリアの名峰セストリエーレがスキー世界選手権に立候補

イタリアアルプスに位置するスキーリゾート、セストリエーレが2029年にアルペンスキー世界選手権の招致活動を始めた。同地は2020ジロ・デ・イタリアの最後の山岳区間となる第20ステージのゴール地点。サイクリングとスキーの大舞台として同地の魅力を打ち出していく。

アルペンスキー世界選手権のセストリエーレ招致を目指すメンバー ©Marco Alpozzi/LaPresse

アルペンスキーワールドカップ大会初日の1月18日、招致委員会が記者会見を行って表明した。

5月30日、セストリエーレは8回目となるジロ・デ・イタリアを迎える。翌日は最終日と成り、ミラノでタイムトライアルが行われるが、山岳ステージとしては最後の大舞台だ。アルペンスキー世界選手権招致委員会は世界中が注目するジロ・デ・イタリアの最後の山岳ステージをいいきっかけとして、ジロ・デ・イタリアを主催するRCSスポルトと協力しながら関係者にセストリエーレの魅力を発信していく計画だ。

2020ジロ・デ・イタリア第20ステージ。107.6km地点のアニェッロ峠でフランス入りし、イゾアール、モンジュネーブルを越えてセストリエーレへ。獲得標高は5000m

スキー産業はセストリエーレの歴史の中で間違いなく重要な部分だ。1934年に設立された自治体は、国際的なスキーリゾートになっていく。1997年にワールドカップとスキー世界選手権を開催。トリノ2006冬季オリンピックでもアルペンスキー会場となった。

セストリエーレの規模は年々拡大し、何百万人ものスキーヤーを集客するようになる。今日のセストリエーレは標高2000mの斜面のほとんどをゲレンデとして、世界で最も人気のある観光地の一つとなった。突然の地球規模の気候変動を考えると、その魅力はさらに増していくと分析する。

「8回目の訪問となるジロ・デ・イタリア。この町は多くのサイクリストにも愛されるようになった。アマチュアサイクリストのチャレンジレースであるグランフォンドもこの夏に開催する。そんな町の活気をぜひとも2029アルペンスキー世界選手権の開催につなげていきたい」とセストリエーレのジャンニ・ポンチェット市長。

国境となるアニェッロ峠。ジロ・デ・イタリアでは右手のイタリア側から左手のフランス側に走っていく
イゾアール峠。2019ツール・ド・フランス第18ステージ ©ASO Pauline BALLET

●ジロ・デ・イタリアの公式サイト