【ツール・ド・フランスリバイバル】2015年はフルームがキンタナを振り切る

オランダのユトレヒトで開幕した第102回大会はスカイのクリストファー・フルーム(英国)が2年ぶり2度目の総合優勝を果たした。フルームは第3ステージでマイヨジョーヌを獲得するが、1日でエティックス・クイックステップのトニー・マルティン(ドイツ)に首位を明け渡した。そのマルティンが第6ステージで鎖骨骨折して、再び首位に。最後は新人王のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)に肉薄されたが、逃げ切った。

第12ステージ、プラトードベイユを上るフルーム、キンタナ、コンタドール
ツール・ド・フランス2015

2年ぶりの優勝をねらうフルームが大会3日目に首位へ

大会3日目の第3ステージ、壁のように立ちはだかるユイの激坂にゴールしたレースは、カチューシャのホアキン・ロドリゲス(スペイン)がフルームを同タイムで制して5年ぶり2度目の優勝を果たした。

前日に総合1位となったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリー)はレース中盤に落車。その痛みのため大きく遅れてゴールしたため、フルームが大会3日目にして首位に立った。

広告キャラバン隊はいつも元気いっぱい

前年の覇者ビンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やキンタナは11秒遅れでゴールしたが、ティンコフ・サクソのアルベルト・コンタドール(スペイン)はさらに7秒遅れた。コンタドールは総合成績でフルームに36秒差をつけられてその後を戦うことになった。

オランダで2日間を走ったレースは、この日ベルギーに移動して、レース終盤にはいよいよアップダウンが出現する。山岳賞争いも大会3日目にして始まるのだが、その勝負どころを目指す中盤に思わぬアクシデントが発生した。わずかな下り坂で大集団が高速走行をしていたときに落車が発生。この中にマイヨジョーヌを着るカンチェラーラがいた。

ユトレヒトはミッフィーちゃんの生まれ故郷だ

ツール・ド・フランスでは伝統としてマイヨジョーヌが不可避のアクシデントで遅れたときは、他選手がレースを中断して復帰するまで待つという慣習がある。もちろんルールとしてあるわけではない。1世紀以上も続くこの大会は、いわばサーカスのような庶民の娯楽であり、いたるところに人間的な感情が入り込む。国際ルールというのは後付けで規定されたものであり、集団を仕切る選手の親分が全員に「止まれ!」と言ったら止まるのである。

第2ステージはオランダらしい景色の中を突っ走った

今回の場合はその親分であるカンチェラーラが落車したので、主催者の最高権威プリュドムが全選手を止めた。この日の重要な部分はコース終盤であり、「それまでは一緒に行こうな」という自転車レースならではの判断基準もカンチェラーラを待った理由だった。

第3ステージはユイの丘にゴールが設定された

仕切り直しとなったレースは最後のユイの激坂に向けて有力選手たちが激しい戦いを見せた。ロドリゲスはこういった激坂を無酸素運動に近い運動能力で走れるタイプ。最後まで争ったフルームを突き放して優勝するのだが、5年前の勝利も激坂にゴールするコースで、そのときはコンタドールを振り切っている。

フルームは他のライバルに差をつけたことで、大会3日目にしてマイヨジョーヌを獲得した。

表彰式のアテンド。左から3人目がツール・ド・フランス解説者として活躍しているマリアン・ルス

繰り上がりマイヨジョーヌをフルームは拒否

ノルマンディー地方の平たん路で争われた第7ステージはエティックス・クイックステップのマーク・カベンディッシュ(英国)が大集団のゴール勝負を制して優勝。母国で開幕した2014年は第1ステージのゴール勝負で落車骨折していて、2年ぶり26回目の区間勝利を飾った。

前日はマイヨジョーヌを着るチームメートのマルティンが、カベンディッシュのアシスト時に落車。左鎖骨骨折が判明し、この日は出走できなかった。繰り上がりで首位となったのはフルームだが、「不運に見舞われたマルティンに敬意を表したい」とマイヨジョーヌの着用を拒否。この日はマイヨジョーヌ不在のレースとなった。

第6ステージで鎖骨骨折したトニー・マルティンはマイヨジョーヌのままリタイア

有力選手はタイム差なしの同一集団でゴールし、フルームが首位になった。

フルームはその後、終盤の山岳ステージで上り坂を得意とするキンタナに何度もアタックされ、青息吐息ながらなんとか逃げ切り、2年ぶり3度目の総合優勝を達成した。最終的なタイム差は1分12秒だ。

フルームは前年、第5ステージで落車骨折して涙ながらにリタイアしている。この年はは圧倒的な総合力に加え、鉄壁のアシスト陣に援護され、リーダージャージーのマイヨジョーヌを16日間着用。記録だけを見れば圧勝だが、薄氷の勝利だった。

オランダで開幕した大会は2日目に総合優勝争いで大きなポイントがあった。この日はオランダ特有の風と強い雨に見舞われて集団が分断。フルームはトップと同タイムの集団でゴールしたが、第2集団に取り残されたキンタナは1分28秒も遅れてしまった。南米で生まれ、スペインを拠点として走る選手は過酷な条件下となりがちなオランダやベルギーのレースに参加することが少なく、経験不足が露呈した。

第11ステージのツールマレー峠

中盤のピレネーを終えてフルームはキンタナに3分10秒の差をつけていたが、その貯金は最後の2日間の山岳で大きく失った。大会中盤から「マークするのはキンタナしかない」と公言していたフルームだが、その粘り強さは驚異だったのだ。

「最後の山岳であるラルプデュエズを上っていてボクの頭の中にはいろんな感慨が浮かんでいた。いつもボクのそばにはチームメートがいてくれた。みんながボクのマイヨジョーヌを一生懸命守ってくれた。最後は力を合わせてナイロ・キンタナの攻撃をしのげばよかった」とフルーム。

「そして家族の存在があってこそ、ハードなトレーニングをこなし、ボクの背中を後押ししてくれた。最終日前日の最後の山岳ステージはわずか110kmだけど、ボクには平地の300kmに感じた。ツール・ド・フランスに再び勝てるなんて信じられない気分だ」

上空から見ると「クツヒモ」のように見えるラセドモンベルニエ

そしてキンタナ。マイヨジョーヌをつかむにはまだなにかが足らない

総合2位はキンタナ。前年は同大会を欠場し、ジロ・デ・イタリアに照準を合わせて優勝。総合2位と新人賞の獲得は2年前と同様。

「全力を尽くして届かなかったので後悔はしていないが、マイヨジョーヌをつかむにはまだなにかが足らないということだね。何年かかってもボクの夢を実現するために、努力を惜しまない」

2人の男の熱き走りが久しぶりに見応えのあるレースにしてくれた。

キング・オブ・スプリンターの称号であるポイント賞は4年連続でティンコフ・サクソのペテル・サガン(スロバキア)が獲得。山岳賞はフルームが初受賞した。

パリでマイヨジョーヌを着たフルーム

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ジロ・デ・イタリアバーチャルに首位アスタナはLL・サンチェス起用

ジロ・デ・イタリアバーチャルの第3ステージが4月25日から始まる。リアルのジロ・デ・イタリアではウーディネ〜サンダニエレデルフリウリ間の第16ステージにあたり、その一部である距離26.9kmが使用される。アスタナが2ステージを終わって首位を守り、女子ではトレック・セガフレードが首位。

アスタナのルイスレオン・サンチェス

レジェンドカテゴリーではアレッサンドロ・バランとアンドレア・タフィを抑えてマッテオ・モンタグティが首位。25日19時(欧州中央時間)からの「ポストステージライブ」はイバン・バッソ、ドメニコ・ポッツォビーボ、ルイスレオン・サンチェスがライブインサイト出演する。

ジロ・デ・イタリアの主催者が企画するバーチャルレースは、必要な機材をそろえればだれでも自宅から参加できる。すでに8000人以上の一般サイクリストが登録してペダルを回している。●参加方法

コルブレッリやポッゾビーボも参戦

ジロ・デ・イタリアバーチャルの第3ステージは4月25日から4日間の日程で行われる。25日はプロ、女子、アマチュア、26日はレジェンドとアマチュア、27・28日はアマチュアが参加する。距離26.9km、獲得標高550m。

プロレースは各チームが2選手を起用して合計タイムで競う。2ステージを終えてアスタナがマリアローザ。アンドローニジョカトリ・シデルメクが10分19秒遅れの2位、イタリアナショナルチームが15分38秒遅れの3位。

25日の第3ステージでは、アスタナがエフゲニー・ギディッチと、ルイスレオン・サンチェスプロチームのエフゲニー・ギディッチとルイスレオン・サンチェス(ツール・ド・フランス区間4勝、 クラシカサンセバスティアン優勝2回、2009パリ〜ニース優勝)を起用。バーレーン・マクラーレンはソンニ・コルブレッリ(2018グランピエモンテ、2017ブラバンテピール)とエンリーコ・バッタリーン(ジロ・デ・イタリア2013、2014年、2018で通算3勝)。ドメニコ・ポッツォビーボと23歳以下のミケーレ・ガッゾーリがイタリア代表として出場。

レース後の19時からはサンチェス、ポッツォビーボ、イバン・バッソがジロ・デ・イタリアのソーシャルチャンネルでライブステージに出演する。

イタリア代表として起用されたエレナ・チェッキーニ

第3ステージ出場選手
●ジロ・デ・イタリアバーチャル

アスタナ=エフゲニー・ギディッチ、ルイスレオン・サンチェス
モビスター=イマノル・エルビティ、エイネルアウグスト・ルビオ
バーレーン・マクラーレン=ソンニ・コルブレッリ、エンリーコ・バッタリーン
ユンボ・ビズマ=クリストフ・フィングステン、ティモ・ローセン
アンドローニジョカトリ・シデルメク=ニコラ・ベンキアルッティ、マッティア・ビエル
バルディアーニCSFファイザネ=アレッサンドロ・ペゾット、フィリッポ・フィオレッリ
ビーニザブKTM=アンドレア・バルトロッツィ、ベリコ・ストイニッツ
イタリアナショナルチーム=ドメニコ・ポッゾビーボ、ミケーレ・ガッゾーリ

●レジェンド
第2ステージは、アレッサンドロ・バラン(1時間17分08秒)とアンドレア・タフィ(1時間17分34秒)を上回ったマッテオ・モンタグティ(1時間11分07秒)が優勝した。25日にはイバン・バッソ、ステファノ・ガルゼッリ、クラウディオ・キャプーチ、ステファノ・アロッキオ、アレッサンドロ・ベルトリーニなどイタリア自転車界の元スター選手が登場する。

Stage 16 – from Saturday 25 to Tuesday 28 April UDINE > SAN DANIELE DEL FRIULI (1 lap of the stage’s final circuit) – (final 26.9 km – 550m vertical elevation)

●ピンクレース
女子カテゴリーではトレック・セガフレードが首位。モビスターに6分23秒、イタリアナショナルチームに27分27秒差をつけている。

第3ステージではエレナ・チェッキーニとマリアジュリア・コンファロニエリがイタリア代表。アンナ・プリヒタとエレン・ファンダイクがトレック・セガフレード、カトリーヌ・アーレルドとアリシア・ゴンザレスがモビスター、カティア・ラグーザとオルガ・シェケルがアスタナ。

ジロ・デ・イタリアバーチャルの開催日程

●Garminバーチャルライドのホームページ

🇮🇹ジロ・デ・イタリアバーチャル / 延期された2020ジロ・デ・イタリア特集サイト

ツール・ド・フランス、ル・マン、全仏など延期日程確定

新型コロナウイルス感染拡大でフランスの大型スポーツイベントを中心に国を挙げての大きな行事が延期を余儀なくされているが、収束に向けてわずかな兆しが見えてきたことから続々と再調整された日程が発表されている。 2020年4月24日時点。

© ASO
  • エヴィアン選手権(女子ゴルフ)
    8月6~9日に延期(当初予定は7月23~26日)
    www.evianchampionship.com/
  • ツール・ド・フランス
    8月29日~9月30日に延期(当初予定は6月27日~7月19日)
    www.letour.fr
  • ル・マン24時間耐久レース
    9月19日~20日に延期(当初予定は6月13日~14日)
    www.lemans.org
  • ローラン・ガロス全仏オープン(テニス)
    9月20日~10月4日に延期 (当初予定は5月18日~6月7日)
    www.rolandgarros.com
  • パリ・マラソン
    10月18日(当初予定は4月5日) www.parismarathon.com
  • マルセイユマラソン
    11月22日に延期(当初予定は4月12日)
    www.runinmarseille.com
パリにあるローラン・ガロス競技場 ©Atout France/Nathalie Baetens

文化イベント

  • カンヌ映画祭
    2020年はマーケット部門に絞り6月22~26日開催(当初予定は5月12~23日)
    www.festival-cannes.com