日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード」が4月2日、初めて東京都内の国際展示場「東京ビッグサイト」で開幕した。コロナ禍により3年ぶりの開催となるが、これまでは千葉県の幕張メッセが会場だった。開催は4月3日まで。
多くの自転車業界の関係者や自転車愛好家でにぎわった自転車見本市。半世紀を経て日本の自転車ショーも様変わりしたが、今回はその変遷と課題に迫ってみたい。
業界の自転車見本市から一般愛好家へ…さらに試乗もできるイベントに
自転車メーカーが1年におよぶ開発期間を経て、新製品をラインナップするのが毎年秋ごろ。各メーカーが見本市会場に集まって商品ピーアールするのがいわゆる自転車見本市、サイクルショーだ。海外では1869年にフランスのパリで初開催され、米国ではオモチャと合同のトイ&サイクルショーなどとして開催された時代もあり、そんなチャンスをものにしたシマノが自社製品の優位性を海外にアピールして、世界に認められるまでになるのだからメーカーとしては侮ることができない一大イベントだ。
日本では1967年に日本自転車工業会が主導して誕生させたのが第1回サイクルショーだ。当時はまだ国産自転車メーカーがしのぎを削り、輸入車や外国製パーツはあまり市場に出回っていなかった。1980年代になるとアルミやチタンなどの新素材ブームを打ち出し、1985年にNHKで紹介されたツール・ド・フランスを引き金としたロードブーム、その後のMTBブームなどをけん引した。国内産業界の恒例行事として重要な使命を果たしてきたが、業界の閉塞性か、あるいは競輪公益資金に依存する上での制約がつきまとったのか、1989年を最後に中止された。
これを継承したのが自転車業界紙のインタープレス社で、1990年に第1回東京国際自転車展が開催された。同社の強みは業界情報であり、そういった意味でまだ一般向けのイベントではなかった。そのため同展はかつての見本市的な商談が随所で見られるのが特徴だった。
第1回のサイクルモードは2005年…当初は別名称で開始
テレビ大阪が主催するサイクルモード・インターナショナルは2005年に始まった。現在も年に一度のイベントとして定着し、11回目の開催となった2015年には累計来場者が50万人を突破したというから、毎年5万人は足を運んでいることになる。当初は「サイクルスタイル」という名称だったが、商標を有するウェブサイトがあったため、途中からサイクルモードに改称した。東京国際自転車展はその人気に押されて出展社・来場者が激減。2006年に17年の開催にピリオドを打った。
サイクルモードの特徴は一般来場者が最新自転車を試乗できることだ。そのためたくさんの自転車好きが集まる。なかにはヘルメットを持参して熱心に試乗する人もいたり、カップルや家族連れも目立つ。ここ数年は全体的に女性の比率が高くなった感があり、自転車人気が一般的になったことを印象づける。こういった人気に応えるため、主催者も試乗コースを拡大。さまざまな車種を本格的に試乗できるようにした。
その一方で大手メーカーの出展見送りが相次いでいるのも事実だ。その理由は出展が購買に直接的に結びつかないためだと聞く。イベントとしてこの日だけは最新自転車に乗って楽しむ。しかし予算を握りしめて自転車ショップには行かない。そういった来場者が多い傾向にあるのは時代として仕方ないことで、主催者はその対策として、多様な施策を導入する。
eバイクや旅のコーナーが最新トレンド
初めて東京ビッグサイトで開催されたことも主催者の熱の入れようが伝わってくる。コロナ禍による異例の春開催となったが、トレンドをとらえていつくかの柱を全面に押し出した。ガソリン高と温暖化の危機が生み出した欧州市場でのeバイク人気に着目した最新モデルの展示。日本各地のサイクリングコースや観光スポット、グルメ情報などを一挙紹介する「ジテンシャ×旅フェア」や、昨今知名度が上がっているクラウドファンディングを活用した新機軸製品が並ぶ新企画コーナーもある。
イベントの隆盛を判断する材料である来場者数を水増しすることなく発表し続ける、良心的な興業イベントであることも最後に。来年以降も自転車好きの人たちをワクワクさせるようなショーであることは間違いない。日本にサイクルショーが始まって50年。その形態を時代に即して変化させながら、今後はどんな楽しみを提供してくれるのだろうか。