ツール・ド・フランス初日でも採用されるチームタイムトライアル規定を解説

第83回パリ〜ニースは3月11日、シルキュイ・ド・ヌヴェール・マニクール〜ヌヴェール間で第3ステージとして距離28.4kmのチームタイムトライアルが行われ、チームヴィスマ・リースアバイクのマッテオ・ジョーゲンソン(米国)が最後はチームの隊列から飛び出してトップタイムでゴール。同チームが第3ステージの優勝者となった。

パリ〜ニース第3ステージのチームタイムトライアルはヴィスマ・リースアバイクが優勝 ©A.S.O. Billy Ceusters

ジョーゲンソンは前年の覇者。チームに第3ステージの優勝をもたらすとともに、この日の自分自身のフィニッシュタイムを前日までの成績に加えて全選手の中で最も所要時間が少なかったことで総合1位に。マイヨジョーヌ・エ・ブランはスーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)から同選手に移った。

チームエースのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)もジョーゲンソンのすぐ後ろ、タイム差なしでゴールし、自身の所要タイムの累計で総合2位に浮上した。首位ジョーゲンソンとのタイム差は6秒で、この6秒はジョーゲンソンが前日までに獲得したボータスタイムのもの。

パリ〜ニース第3ステージはチームタイムトライアル。国際レーシングサーキットをスタートした ©A.S.O. Billy Ceusters

新チームTTは先頭選手のゴールタイムで優劣…各選手の総合成績はそれぞれのゴールタイムを反映

チームタイムトライアルは1チームごとに全選手が一斉にスタートし、チームの4番目(大会の1チームあたりの出場選手数によって異なる)にフィニッシュラインを通過した選手の所要タイムでステージの着順が決められた。この4番目の選手と一緒にゴールしたチームメート全員がそのタイムを個人総合成績上で反映される。途中でチームの隊列から脱落した選手は各選手が実際に要した時間がそれぞれに反映された。

2023年のパリ〜ニースで新ルールのチームタイムトライアルが採用された。所属選手が一斉にスタートするのは同じだが、トップフィニッシュした選手の所要時間でステージ成績が決められる。つまりこのステージの優勝を狙う場合は、わずか1人だけでも最速タイムでゴールさせればいい。距離およそ25kmのコースで前半に長い距離を牽引する選手たち、中盤を担当する選手たちがいて、最後まで力を温存して独走になってから全力でゴールを目指す選手と分担作戦を練る。

一方、個人総合成績としては選手1人ひとりの所要時間を計算し、それを反映させることになった。これが大きな内容変更ポイントだ。総合優勝を狙う選手は独走で無駄に足を使いたくないので1番先にフィニッシュする役目を担うことはめったにない。それでも最後の最後まで1番手についていって可能な限りタイムロスせずにレースを終えたい。チームとしての戦略に影響する部分だ。

パリ〜ニース第3ステージのチームタイムトライアルを走るティム・メルリール(先頭から3人目) ©A.S.O. Billy Ceusters

どうしてチームタイムトライアルが新ルールになったか?

チームタイムトライアルの国際規定が一律変更されたのではなく、パリ〜ニースがレースを面白くするために導入したもの。面白ければ当然、主催者が同じツール・ド・フランスにも適用される。スペインのバルセルナで行われる2026年大会の第1ステージは距離19.7kmのチームタイムトライアルであり、この方式を採用することが決まっているようだ。

要はトラック種目のチームスプリントのように、1周目を先頭で走る選手、2周目を先頭で走る選手、そしてフィニッシュの計測ラインまで3周回を走る選手という役割分担が生じる。もちろん距離は25km前後と長距離になり、チームあたりの選手数も多くなるので戦略としては複雑となり、さらには全日程で争われる個人総合成績も絡んでくるのだから、このステージだけで見どころは満載。

パリ〜ニース第3ステージのチームタイムトライアル ©A.S.O. Billy Ceusters

優勝のヴィスマはアッフィニ発射台、カンペナールツ2段ロケット役

それではどうしてパリ〜ニースは新ルールを考えたのか? チームタイムトライアルはリタイア選手ができるだけ少ない大会序盤、ともすると初日に設定されるケースが多い。そしてこれまでは4番目の選手と一緒にゴールした選手全員に、個人総合成績の所要時間が割り振られるので、特定のチームが総合成績の上位を独占してしまうのだ。そして2位チームもまたずらりと続く。3位チームも。

パリ〜ニース第3ステージを制したヴィスマ・リースアバイクの作戦は、タイムトライアル欧州チャンピオンのエドアルド・アッフィニが前半に爆走。総合成績でどんなに遅れてもいいので、アッフィニはお役御免となって脱落する。中盤からは長い独走が得意なヴィクトル・カンペナールツがガンガン行った。ローテーションを多用して終盤までできるだけ多くの人数で走り、最後はトップタイムを目指してジョーゲンソンが最終ロケット。総合成績のためにヴィンゲゴーも行けるところまで一緒に行った。それが見事に的中した。

パリ〜ニース第3ステージのチームタイムトライアルはヴィスマ・リースアバイクが優勝 ©A.S.O. Billy Ceusters

第83回パリ〜ニース日程
3月9日 第1ステージ ル・ペレ・アンイヴリーヌ〜ル・ペレ・アンイヴリーヌ 156.1km
3月10日 第2ステージ モンテソン〜ベルガルド 183.9km
3月11日 第3ステージ シルキュイ・ド・ヌヴェール・マニクール〜ヌヴェール 28.4km)チームタイムトライアル)
3月12日 第4ステージ ヴィシ〜ラ・ロジュ・デ・ガルド 163.4km
3月13日 第5ステージ サンジュスト・アンシュヴァレ〜ラ・コートサンタンドレ 203.3km
3月14日 第6ステージ サンジュスト・アンサンタルバン〜ベールレタン 209.8km
3月15日 第7ステージ ニース〜オロン 147.8km
3月16日 第8ステージ ニース〜ニース 119.9km
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