料理の五輪で唯一の、最年少25歳でフランスチームを率いた女性シェフ

世界最高峰の料理コンクール「ボキューズ・ドール」(Bocuse d’Or)でフランスチームを率いたナイス・ピロレ(Naïs Pirollet)が来日。これからの料理界を牽引するシェフとして、いま最も注目される存在だ。

フランスチームのキャプテンを任されたナイス・ピロレシェフ

「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」は世界で一番長く三ツ星に輝き続け、現代フランス料理の生みの親でもあるポール・ボキューズ氏の呼びかけに世界各国で活躍する多くのシェフが賛同し、1987年に創設された。「料理のオリンピック」とも言われる大会は、24カ国の代表シェフが出場し、2年に一度フランスで開催される。

リヨンのSIRHA(シラ国際外食産業見本市)の開催中に同会場で行われ、2023年は1月23日に開催された。その結果は強豪国デンマークが金賞を受賞。前大会の優勝国フランスは5位だったが、参加24カ国の中、唯一の女性キャプテンで、かつ最年少となる25歳のピロレに注目が集まった。

25歳のナイス・ピロレ ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

フランスが優勝した2021年、ピロレはダビ・ティソ(Davy Tissot)キャプテンが率いるチームの一員として参加している。ティソとともにレシピの研究開発を担当した。

ナイス・ピロレが作るピスタチオ入りソーセージ、赤ワインソース。リヨンとブルゴーニュの特色を合わせた一品 ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー
多様なフランスワインは楽しみしかない ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

「ユニークでやりがいのある経験は、自分自身の冒険に乗り出したいと思わせるものでした」と回想する。

シェフの中の最年少シェフ、しかも史上初の女性キャプテン

ピロレは2021年11月にランスで開催されたボキューズ・ドールフランス予選で、300点差をつけて優勝。この結果、2022年3月にブダペストで開催されるボキューズドールヨーロッパ大会にフランス代表として出場する資格が得られ、チームは2023年1月22日と23日にリヨンで開催される決勝への切符を獲得した。

食の都リヨンにはおいしいものがいっぱいある ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

ボキューズ・ドール決勝戦のステージテーマは、アンコウのほか、野菜の付け合わせ2品と、この地域の象徴的なマメ科植物とムール貝をベースにした付け合わせ1品を別々に調理すること。結果は5位だったが、ピロレの将来性は脚光を浴びた。

世界で最も星を獲得した女性シェフ、アンヌソフィー・ピックの料理哲学を体験 ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

フランスのブリアンソン出身。ピロレは2017年にポール・ボキューズ研究所で料理芸術部を卒業した後、パリでミシュランの星を獲得したシェフ、デビッド・トゥタンのもとで副料理長としてキャリアをスタートさせた。2020年の初めに、アンスティチュ・ポール・ボキューズのミシュラン1つ星研修レストランであるセゾンのチームに加わる。

ルレ・ベルナール・ロワゾ― ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

セゾンは、チームに学生が所属するフランスで唯一のミシュランの星を獲得したレストラン。その後、フランスのボキューズ・ドールチームに加わり、世界選考会でティソキャプテンに同行。フランスに金賞をもたらせた立役者となった。 24歳で学校を首席卒業したピロレは、料理コンクール史上初のフランス代表女性キャプテンに。料理の世界における女性の才能の評価と職業の変革に向けた重要な一歩となった。現在、国際調理芸術管理学士号を取得する学生の50%が女性だ。

ワインテイスティングトラック ©ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー

医者いらずになるためには医者のおすすめを体験するに限る

家族で楽しく健康を学んだり、日本の最先端技術・研究を駆使して健康なライフスタイルのヒントがつかめるイベント、第31回日本医学会総会2023東京博覧会が、東京都の丸の内・有楽町エリアで開催されている。だれでも無料で入場・体験できる。4月23日まで。

リング上でボクシングのスパーリングをVR体験しているところ

医学総会に併催して市民に開放された無料プログラムがズラリ

日本医学会総会などと聞くとそれだけで一生縁がないと判断してしまいそうだが、4年に一度開催される「健康になるためのイベント」だ。子どもと一緒に、あるいは大人でも健康になるために知っておきたいこと、やっていきたいことなどを経験する博覧会だ。

もちろん全国の医学者や関連領域の人たちが集まり、最新医療の情報を交換したりする学術会議はしっかりと開催される。今回体験したのはその併催イベント部分。社会に開かれた総会として市民に開放された博覧会のプログラムだ。一般の人が健康や医療に関する最新の現場を体験して学ぶことができることがメリット。

スマホのカメラで食事を撮影するだけでカロリーなどの主要要素7項目が数値で表示される

歩行基礎力測定と内臓脂肪ラボ、VR体験を実際にやってみた

期間は4月15日から23日までの1週間ほどで、丸の内・有楽町全体が健康志向一色になる。いま知るべき、健康と医療を楽しく知り、そして無料で体験できる。健康増進に役立つ測定ブースもあるので積極的に活用するのがいい。

VRを使って、がん患者同士の情報共有やフィットネスを行うプログラム

取材日は19日で、この日はステージイベントとして、VR(バーチャルリアリティ)を用いた患者さん同士のサポート・遠隔フィットネスシステムを体験。東京大附属病院でがん患者の緩和ケア診療を行う住谷昌彦先生がプログラムした「VRがんピアサポート」だ。

新型コロナ禍で患者同士が直接対面できない状況下で、インターネット環境を使って仮想対面しピア(仲間)サポートする環境を作ることができるのがメリットだという。

「不安の多いがん患者同士が情報を共有することで不安感が軽減される」と住谷先生。

腕の筋肉を使うので、呼吸も早くなる。VR特有の「気持ち悪くなる」という現象も感じた

このVR体験は19日のみのステージプログラムだったが、丸ビル1階のマルキューブで開催されている測定会が健康管理に役立ちそうだ。

「歩行基礎力測定」は「圧力センサーシート」の上を歩き、科学的根拠に基づいてその歩き方を瞬時に解析し、歩行バランス年齢や歩行スピード年齢を算出。筋力の衰えを防ぎ、若さを保つ予防運動としてどう歩いたらいいかをアドバイスしてくれる。また将来的に転倒、腰痛、ヒザ痛、尿もれなどの傾向があるので注意すべきという指針も提示される。

黒い圧力センサーの上を歩くことで自分の歩行状態がチェックされる

内臓脂肪ラボでは内臓脂肪測定を行ってそれぞれの腹部断面イメージを表示。内臓脂肪は、お腹の皮膚の下についている皮下脂肪(つまめるお肉)と違い、外から見えないのでスリムに見える人でも「かくれ内臓脂肪型肥満」のことがあるので、この測定はとても参考になる。

内臓脂肪を測定。ホームページにアクセスして健康状態の質問に答えると生活改善アドバイスももらえる

内臓脂肪が貯まると血圧、血糖、血中脂質などの異常が重なり、メタボリックシンドロームとなる。別名は内臓脂肪症候群と言われ、この状態を放っておくとやがて脳卒中や心疾患、糖尿病などの重篤な疾病につながる。

自転車とランニングでかなりシェイプされているはずだが、同年代でもさらにその上の人が多いのに驚いた

内臓脂肪はそれぞれの生活習慣(食事や運動)を反映して変化する。だからたまりやすいが減らしやすい健康指標でもある。生活習慣の改善で内臓脂肪を減らせばリスムも減ることがわかっている。

メタボは日々の食生活のありかたなどを改善していけば、だれでも健康方向にシフトしていく

普通の人も参加できる医学の祭典「医学会総会博覧会」、4年に1度のお祭りを活用しよう。ちなみに4年後は大阪開催となる。

丸の内エリアのワーカーが綱引き勝負。写真の医療チームや帝京大ラグビー部も参戦した

●日本医学会総会2023東京博覧会のホームページ

このままでは日本の道端がオレンジに染まってしまう…危険ナガミヒナゲシ

春から初夏にかけて田んぼや道端に咲くオレンジ色のかわいい花が年を追うごとに増えていることに気づいている人も多いはず。欧州地中海由来のケシ科・ケシ属の植物「ナガミヒナゲシ」で毒があり、強い繁殖力を持つため各自治体が注意喚起を始めた。

長い実をつけるのでナガミヒナゲシと命名された

全国の自治体が危険外来種として注意喚起を始めた

地中海沿岸原産の一年草は高さ20~60cm、4月ごろから6月ごろに道端や空き地などで直径3cmほどの薄いオレンジ色の花を咲かせる。花はポピーと似ていて、葉はヨモギと似ているのでカメラを向けたり、食用として収穫したりする人もいるが要注意。

現在のところ特定外来生物には指定されていないが、他の植物の育成を妨げる成分を含んだ物質を根から出すことから、特定外来生物と同様に日本の生態系に大きな影響を与える植物であることは間違いない。

クルマのタイヤや靴底に付着して運ばれるので道路脇に群生することが多い

1つの花から1600粒の種が取れる。1つの個体が100個の花をつけることもあるため合計で16万の種が発生する。クルマのタイヤや人間の靴底に付着して運ばれるので、道路脇などに群生することが多い。かわいい花なのでたいていの人はほほえましく見届けるだけだ。

かわいいのだが、実は毒がある。黄色い汁の中にアルカイド性の有害物質が含まれ、素手で触るとかぶれる恐れがある。また根には他の植物を攻撃する成分が含まれ、在来植物の生育に影響が出る可能性がある。

ナガミヒナゲシは4月から6月に開花する

毒があるため駆除は慎重に行う。できれば種ができる前に抜き取り、ビニール袋などに密封して可燃ゴミとして処分するのがベスト。たいていはオレンジの花が咲いて初めて気づくので、ゴム手袋などをして根から抜き取って処分する。種ができている場合は、種が飛ばないよう十分注意する。

●環境省のホームページ

作者はアーティスト、それがたまたま障害者というアート展開幕

障害者の作品を集めた展覧会で5回目となる「日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツ公募展」が2023年3月15日から、東京・渋谷のBunkamura Galleryで始まった。観覧無料。

作品を解説する審査員の中津川浩章アートディレクター

公募展は26日まで東京の同施設で開催され、その後は横浜の障害者スポーツ文化センター 横浜ラポールで3月29日から4月2日まで、大阪の阪急うめだ本店9階 阪急うめだホールで4月12日から17日まで行われる。

障害のある人にアート活動の機会を提供し、才能を発掘する

プロジェクトは2018年にスタートし、アートを通じて障害のある人、ない人、全ての人々の交流を促し、感動やよろこびを共有しながら、障害のある人自身が自己の可能性を見いだせるよう、アート活動の機会を提供するとともに、才能あるアーティストの発掘や、障害のあるアーティストの活動の支援を行い、多様性の意義と価値をより広く社会へ伝え、より多くの人へ届けることを目指している。

今回は、国内外12カ国から2246作品の応募があり、各界で活躍する6人の審査員の審査を経て、128作品(審査員賞6作家8作品、海外作品賞1作家1作品、入賞43作家53作品、佳作50作家66作品)が選出された。

いい作品にめぐり会えて、なにかを感じ取ってくれたら

「いい作品にめぐり会えて、たくさんの人に見ていただける機会を作れた。ここに来てなにかを感じ取ってくれたら」と、内覧会の冒頭で日本財団公益事業部国内事業開発チームの齊藤裕美さんがコメントしてくれた。

「公募展は今回の5回で終了となるが、この流れをくんで多様性が浸透する時代になってくれれば」と一般財団法人 日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツの横尾紀彦理事長。

また、「この5年で1.5倍の作品が集まるまでになった。障害者が社会に発信したいという気持ちの現われです。そんなメッセージの発進の場になれた」と国際障害者交流センター ビッグ・アイの鈴木京子プロデューサー/副館長も。

「作者はまず第一にアーティスト、その次に障害者なんです」と審査員を務めたエドワードM.ゴメス氏

また、公募展の審査委員長で、東京藝術大の秋元雄史名誉教授は、「作品の背後にある息遣い、言葉にならない感情が、使用される色などを通していろんなものを感じられる。奥行きのあるものばかり。アートの再発見ができた」と総評した。

●日本財団ダイバーシティ・ イン・ジ・アーツのホームページ

ベルギービールウィークエンド2023は全国6会場で開催へ

ベルギービールの多様性を、それにマッチした食事とともに楽しみ尽くす都会派イベント、ベルギービールウィークエンドは、2023年に全国6会場での開催されることになり、その日程と開催会場が発表された。 

ベルギービールウィークエンド2023のスケジュールは、下記6会場。前売りチケット、ビールやフードのラインナップ、ライブ情報などの詳細は近日公開予定という。

Toyosu

東京都・サイタブリア ベイパーク
4月14日(金)〜 4月16日(日)
4月21日(金)〜 4月23日(日)

Nagoya

名古屋市・久屋大通公園
エディオン久屋広場・エンゼル広場
4月27日(木)〜 5月7日(日)

Yokohama

横浜市・山下公園
5月18日(木)〜 5月21日(日)

Osaka

大阪市中央公会堂前
中之島公園
5月24日(水)〜 5月28日(日)

Roppongi

東京都・六本木ヒルズアリーナ
9月14日(木)〜 9月18日(月・祝)

Shinjuku

東京都・新宿住友ビル三角広場
12月6日(水)〜 12月10日(日)

●ベルギービールウィークエンドのホームページ

自転車利用者のヘルメット着用努力義務が4月1日から全国で施行

改正道路交通法の施行により、2023年4月1日から全国で自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化される。かぶらなくても違反ではないが、不幸な交通事故死や後遺障害を回避できる可能性が高くなるのでおすすめしたい。自転車用ヘルメットを初めて購入するときのポイント、正しい着用方法などを紹介。

ツール・ド・フランス出場経験のある今中さんもヘルメット着用をすすめる

着用しなくても罰則はない。そもそも一般自転車に似合わない!?

自転車レースの選手やサイクリング愛好家なら乗車時にヘルメットを着用するのはあたりまえ。軽量で通気性のいいスポーツタイプを愛用しているので、長時間かぶっていても快適だ。ところが町中を見る限り、通勤や買い物時に自転車を利用する人の多くはヘルメットなし。かぶらない理由として、着用しなくても罰則はないし、そもそも一般自転車に似合わないという意見が多い。

これまでも、保護者として13歳未満の子供にヘルメットをかぶらせるよう努めなければならないという規則はあった。子供乗せに座らせるときもキッズヘルメットをかぶらせることはかなり定着している。そのほうが安全であることを親として感じているからだ。今回の法改正は、だったら自転車に乗るすべての人がヘルメットをかぶることで、致命的な頭部損傷を回避し、命を守ろうというものだ。

スポーツモデルは軽量で通気性がいい

警視庁交通総務課のホームページによれば、自転車事故で死亡した人の約7割が頭部に致命傷を負っているという。また、ヘルメットの着用状況による致死率では、着用していない場合の致死率は、着用している場合と比較すると約2.3倍も高いという。今回の法改正は着用努力義務のため罰則などはないが、警察庁は大人も含めて着用を習慣化することで事故による被害を最小限に抑えていきたいとしている。

ヘルメットはもともと米国で普及が始まり、トライアスロンレースなどで着用が義務化された。欧州ではなかなか浸透しなかったが、五輪金メダリストのファビオ・カサルテッリが1995ツール・ド・フランスの下り坂でクラッシュ。ヘルメットなしの頭部を打ちつけて即死したことを契機に国際規定として着用義務化された。

国内最大手のヘルメットメーカー、カブトのカジュアルモデル

欧州では、一般道を自転車で走る市民がヘルメットをかぶっているとは現在も言い難い。ただしクルマとの接触機会が少ない道路構造整備をすることで事故を抑えようという政策が功を奏している。ところが日本、とりわけ東京などの大都会ではクルマと自転車などが同じ車線上でひしめき合う状態。これでは事故は必然的に起こるわけで、そのときにヘルメットの有無で生死が分かれることも簡単に想像できる。

おでこが露出しないように目深(まぶか)に着用することで頭部や顔面が守られる

自分だけは大丈夫と思う過信が最も危険

日本人プロとしてツール・ド・フランスに初出場した今中大介さんは、「自分だけは安全だというおごりがあったらダメ」という。また「ヘルメットは自分に適したサイズを正しく装着することも大事だ」とアドバイス。

購入時には試着してみて、自分の頭に合ったサイズを選ぶ。廉価モデルは1サイズ展開も多いが、調整ベルトが内装されるなどフィットさせる機能があるものを最低限選びたい。あごひもは指2本が入る程度のゆとりでしっかりと締める。きちんと締めていないと地面に倒れる前に頭部から外れてしまうので着用の意味がない。

また不注意で落としてしまうと、衝撃を緩和させる内部形状が損傷し、いざというときに機能しない。経年劣化などで使用限度は3年ほど。無傷でも新しいものに買い替えたい。

海外からも続々と個性的なヘルメットが入荷されている

自転車用ヘルメットはスポーツバイクには似合うが、ママチャリと呼ばれる一般用自転車にマッチしないと言われた。それでも近年は通勤・通学に使えるカジュアルモデルや、普段着に合うファッショブルなモデルもラインナップされる。ヘルメットを覆う帽子タイプのカバーも安価で用意されている。レース用ヘルメットは3万円前後するが、街乗り用なら5000円から1万円、キッズ用はさらに安い。