大谷翔平の陰で日本自転車界37年ぶりの快挙…山崎賢人ケイリン優勝

2024年UCIトラック世界選手権(デンマーク・バレラップ)で10月17日に2人の日本人世界チャンピオンが誕生した。男子ケイリンで山崎賢人(日本競輪選手会)が優勝。1987年に同種目を制した本田晴美以来37年ぶり2人目の覇者となった。男子スクラッチでは2022、2023年と2位に甘んじた窪木一茂(ブリヂストンサイクリング)が優勝。男子中距離陣では初の世界タイトルとなった。

世界チャンピオンのアルカンシエルを着用する窪木一茂と山崎賢人 ©日本自転車競技連盟

男子スクラッチの窪木一茂も同日世界チャンピオンに

2024パリ五輪では期待されていたメダル獲得を逃した日本トラック陣。男子ケイリンには山崎、太田海也、中野慎詞が出場し、そろって1回戦を突破して準々決勝に進出。中野、山崎は準決勝へ進出したが、太田はここで敗退し13位でレースを終えた。

山崎賢人が世界選手権ケイリンで1着フィニッシュ ©日本自転車競技連盟

準決勝では山崎とが中野が同じ組に。山崎は2位を確保して1-6位決定戦に進出。中野は5位で7-12位決定戦に回る。中野は7-12位決定戦で意地を見せて1位となり、7位となった。

そして決勝で山崎はイスラエルのヤコブレフ、コロンビアのキンテロを抑えて悲願の世界チャンピオンとなった。

世界選手権ケイリンを制した山崎賢人がウイニングライド ©日本自転車競技連盟

日本の短距離自転車界では、男子プロスプリントで中野浩一が1977年から前人未到の10連覇。それを受け継いだ俵信之が1987年に同種目優勝。同じ年にケイリンで本田晴美が優勝しているが、当時はプロとアマが別レースで行われていた。1993年にオープン化された以降で初めての世界タイトルとなる。

山崎賢人(中央)が日本勢として37年ぶりに世界選手権競輪優勝 ©日本自転車競技連盟

2年連続2位の窪木が悲願の世界チャンピオンに

24人で争われた男子スクラッチでは2年連続で2位に甘んじていた日本の窪木が悲願の優勝。世界チャンピオンの称号である5色の虹模様ジャージ、アルカンシエルを獲得した。

窪木一茂が世界選手権スクラッチで独走勝利 ©日本自転車競技連盟

短距離種目よりも距離が長いスクラッチなどではロードレースで活躍する選手も登場する。日本では2020年に梶原悠未が女子オムニアムで世界チャンピオンになっているが、男子では初めての世界タイトルとなった。折しもメジャーリーグや日本のプロ野球のプレーオフの最中で、自転車競技界の快挙の報道は少なかったが、現在の日本短距離・中距離陣の強さが証明された1日になった。

世界選手権で日本勢男子初の中距離種目優勝をつかんだ窪木一茂 ©日本自転車競技連盟
世界覇者の称号であるアルカンシエルを着用した窪木一茂 ©日本自転車競技連盟

日本チームスプリント、2024年トラック世界選手権で3位の快挙

2024年UCIトラック世界選手権が2024年10月16日から20日までの日程でデンマーク・バレラップで開催され、大会初日の男子チームスプリントで日本が3位になった。同種目では2020シドニー五輪で銀メダル獲得の実績があるが、世界選手権ではこれまでの最高位。

世界選手権男子チームスプリント3位の長迫吉拓、太田海也、小原佑太 ©日本自転車競技連盟

世界選手権男子チームスプリントに長迫吉拓、太田海也、小原佑太のメンバーで挑んだ日本は、予選を全体の3位で1回戦進出。対戦相手はコロンビアで、日本は1走目からリードを奪い、そのまま押し切って先着。全体の3位で3-4位決定戦に進出。

3-4位決定戦は英国との戦いとなり、1走の長迫がリードを奪われたが、2走の太田が逆転。3走の小原がそのまま押し切って先着。3位になった。

世界選手権男子チームスプリント3位の長迫吉拓、太田海也、小原佑太 ©日本自転車競技連盟

垣田真穂はスクラッチ12位…優勝はウィーブス

24人で争われた女子スクラッチに出場した日本の垣田真穂は12位。優勝はロードスプリンターのロレーナ・ウィーブス(オランダ)。

世界選手権女子スクラッチを走る垣田真穂 ©日本自転車競技連盟

男子チームパシュートは3-4位決定戦に進出

4000mを走る男子チームパシュート。日本は予選で窪木一茂、松田祥位、兒島直樹、河野翔輝のメンバーで臨み6位。1回戦はカナダとの対戦となり、窪木、松田、兒島、今村駿介とメンバーを一部入れ替えて、終始リードを保って先着。翌日の3-4位決定戦に進出した。

世界選手権男子チームパシュートを走る日本チーム ©日本自転車競技連盟
トラック世界選手権に挑む日本代表チーム ©日本自転車競技連盟

●日本自転車競技連盟のホームページ

自転車保険人気ランキング2024年10月最新の1位はau損害保険

自転車保険比較サイト、徹底比較「自転車保険STATION」が2024年10月最新版として自転車保険おすすめ人気ランキングTOP4を発表した。

第1位 au損害保険株式会社
自転車向け保険 Bycle (スタンダード傷害保険)

第2位 三井住友海上火災保険株式会社
GK ケガの保険(パーソナル総合傷害保険)

第3位 楽天損害保険株式会社
サイクルアシスト【自転車の保険】

第4位 ジャパン少額短期保険株式会社
ちゃりぽ【自転車あんしん保険】

同自転車保険比較サイト全体での契約件数に基づいたランキングによる。10月最新版では、2024年9月1日から30日の申込み件数を基に集計しているという。

「自転車保険STATION」は数ある人気な自転車保険のプランの中から「保険料・補償内容」をもとに自転車保険を比較できる機能をはじめ、自転車保険の選び方の注意点、 豆知識の情報なども更新している。

●「自転車保険STATION」のホームページ

2024東京レガシーハーフマラソン出場選手のタイムと位置情報をチェック

2024年10月20日に開催される東京レガシーハーフマラソン。参加者と応援者にWEB・モバイルサービスが提供され、参加者の現在走行位置やタイムがわかる。沿道観戦や自宅などで家族や友人を応援するのに便利。応援したいランナーのタイムと位置情報をチェック!

2024東京レガシーハーフマラソン出場選手のタイムと位置情報をチェック

パソコン・スマートフォン・タブレットを利用して、スタートしたランナーのタイムと予測位置情報を地図上で確認できるサービスが大会当日に利用できる。サイトオープンは大会当日。

●東京レガシーハーフマラソン出場選手位置情報 (大会当日にアクセス可)

東京レガシーハーフマラソンのタイムスケジュール

8:00 車いす スタート
9:40 車いす競技終了
8:05 ハーフマラソン スタート
11:05 ハーフマラソン競技終了

国立競技場の観戦スタンドで応援できる

国立競技場でランナーを応援できる。だれでも入れる観戦スタンドが用意されている。国立競技場で家族や友人を応援する人は1FのBゲートから入場。<注意事項>・ Aゲート / Eゲートへの再入場は不可。・国立競技場には刃物などの危険物、爆竹、花火などの火器類は持ち込み不可。

速報記録はここから

号砲からのグロスタイムとスタート通過からのネットタイムが確認できる。サイトオープンは大会当日の予定。記録証は大会終了後(11月上旬)に配信予定の記録証案内メールまたはスポーツエントリーの「マイページ」で確認できる。

●速報記録のホームページ

グラベル欧州選手権開催…マスターはレース中の事故死で中止に

2024ヨーロッパグラベル選手権が10月13日、イタリアのアシアゴで開催され、女子はスイスのシーナ・フライ、男子はチェコのマルティン・ストシェクが優勝した。

グラベル欧州選手権 ©TTommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024

経験豊富なフライは序盤からレースを支配し、最終ラップとなる2周目にアタックしてフィニッシュラインまで単独で逃げ切り、イタリアのシルビア・ペルシコとアリスマリア・アルズッフィを1分26秒差でフィニッシュした。

イタリアのアシアゴで行われたグラベル欧州選手権 ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024
スイスのシーナ・フライがグラベル欧州選手権の女王に ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024

男子レースではストシェクが最終ラップでトップグループから抜け出して差をつけた。ストシェクから3分44秒遅れで英国のトビー・ペリー、4分19秒遅れでベルギーのイェンノ・ベルクモースがフィニッシュラインを通過し、表彰台を獲得した。

グラベルでは極太タイヤを装着する ©TTommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024
グラベル欧州選手権を制したマルティン・ストシェク ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024

マスター65-69カテゴリーではイタリアのシルバーノ・ジェーンズがレース中の事故で死亡。マスターレースは途中で中止された。

未舗装のグラベルを走るレース ©Tommaso Pelagalli/SprintCyclingAgency©2024

タデイ・ポガチャルが自転車競技史上最強であるこれだけの理由

同年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、世界選手権の三冠を達成した史上3人目の選手、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)が2024年10月12日にイタリアで開催された第118回イルロンバルディアで大会4連覇した。

ベルガモ〜コモ間の255kmで行われたイルロンバルディアでポガチャルが独走 ©Tim de Waele/POOL Getty Images

世界チャンピオンの称号である5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを着用したポガチャルは48kmを独走してフィニッシュした。2位は3分16秒遅れでレムコ・エベネプール(ベルギー、スーダルクイックステップ)、3位は4分31秒遅れでジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)。

アルカンシエルを着るポガチャルがイルロンバルディアでアタック ©Luca Bettini/POOL Sprint Cycling Agency

世界チャンピオンジャージで勝つことはアメイジング!

「完璧なシーズンだった。2024年の初レースで優勝したストラーデ・ビアンケと同じように勝利を祝うことを選んだ。すべての勝利は特別なものだけど、このジャージを着て勝つことは素晴らしい」とポガチャル。

「沿道で応援してくれるサポーターがとてもよかったので、レースの一瞬一瞬を楽しめた。チームは完璧な仕事をしてくれた。彼らはみな素晴らしいプロフェッショナルで、シーズンを通して彼らのサポートは最高だった。レムコ・エベネプールも素晴らしいレースをした。私は将来彼がイルロンバルディアに勝つことができると感じている」

イルロンバルディア優勝のポガチャル(右)と2位レムコ・エベネプール ©Marco Alpozzi/LaPresse

2024シーズンを最高の形でを締めくくったポガチャルは、翌日からホリデーシーズンを取り、その後、2025年のターゲットを考えていきたいという。

ポガチャルが独走でコモにゴール ©Spada/LaPresse

決定的アタックから独走でフィニッシュする実力者

2024シーズンのポガチャルは圧巻の走りを見せつけた。ストラーデビアンケで勝利し、ボルタ・ア・カタルーニャでステージ4勝と総合優勝。最古のレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝。初出場のジロ・デ・イタリアでステージ6勝と総合優勝。ツール・ド・フランスでは3年ぶり3度目の総合優勝とステージ6勝。2024パリ五輪はツール・ド・フランス直後だけにパスしたが、北米のグランプリモンレアルで勝ち、世界選手権ロードで独走勝利。さらにジロ・デレミリア、イルロンバルディアで勝利した。

ポガチャルが愛車コルナゴを掲げてフィニッシュ ©LaPresse

自転車競技史上最強の霊長類、いや宇宙人

2024シーズンは初出場のジロ・デ・イタリアで区間6勝し、第2ステージで首位に立つと、一度もその座を譲り渡すことなく初優勝を遂げた。初日こそイネオスグレナディアーズのジョナタン・ナルバエス(エクアドル)ら3選手のゴール勝負で3位になったポガチャルだが、翌日の第2ステージで独走勝利して首位に。第7ステージの個人タイムトライアルもトップタイムで優勝し、総合2位との差を広げた。さらに翌日の山岳区間をはじめとして15、16、20ステージと過酷な区間で独走し、終わってみれば2位に9分56秒の大差をつけて総合優勝。区間6勝はあのエディ・メルクス以来の記録であり、20日間にわたってマリアローザを着用したこともメルクスと肩を並べる偉業だった。

ポガチャルが2024ジロ・デ・イタリアでステージ6勝目 ©LaPresse

シーズン前からジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを連覇するダブルツール達成を最大の目標に掲げていたポガチャルは、続くツール・ド・フランスでも圧倒的な強さを見せつけた。。

「もしかしたらこのジロ・デ・イタリアで僕も人間としてステップアップできたのかもしれない」とポガチャル。

2024ツール・ド・フランスで表彰台の登壇を待つポガチャル ©A.S.O. Charly Lopez

ポガチャルの名前が知られるようになったのは2019年のブエルタ・ア・エスパーニャだ。その大会では同じスロベニアのプリモシュ・ログリッチが大会3連覇を達成して話題をさらった。もう1人のスロベニア選手として頭角を現したポガチャルは区間3勝と活躍し、いきなり総合3位になった。第9ステージで初勝利したときは、「最終日の表彰台でログリッチの隣に立てたらうれしい」と夢を語ったが、それを実現してしまうことになる。

スロベニアの格下チームに所属していた2018年にアマチュア版ツール・ド・フランスと言われるツール・ド・ラブニールで総合優勝。2019年にUAEエミレーツに移籍し、このブエルタ・ア・エスパーニャがグランツール初参戦だった。

2019ブエルタ・ア・エスパーニャの第9ステージ。ピレネー山中の小国アンドラで開催されたレースは雷雨に見舞われる厳しい闘いとなったが、ポガチャルが有力選手の集団から抜け出して初優勝する。この大会最年少の20歳が三大ステージレース初優勝を遂げた日だった。

「天気予報で雨が降ると聞いてこのステージをねらっていた。自分にとってはそれがチャンスで、計画通りに勝利をつかむことができてうれしい」とポガチャル。

ポガチャルがイルロンバルディアで4連覇 ©Marco Alpozzi/LaPresse

さらに第13ステージ、峠の頂上にゴールが設定されている難関区間で首位ログリッチとポガチャルのスロベニア勢が抜け出した。最後はポガチャルが先着して、第9ステージに続く2勝目を挙げた。タイム差なしの2位になったログリッチはライバル選手との差をさらに広げ、ここで総合優勝に一歩前進した。

「この日はリタイアすることなく生き残ろうと思っていた。まさか最後にこんな調子がよくなるなんて思わなかった」とメジャー初出場にして2勝目を挙げたポガチャル。総合成績で前日の5位から3位に浮上。さらに新人賞でトップに躍り出て純白のリーダージャージを獲得した。

大会最後の山岳となった第20ステージでもポガチャルが独走を決めて、第9、13ステージに続く大会3勝目を挙げた。翌日の最終日は平たん区間なので、ログリッチの初優勝もここで決まった。

「多くのスロベニアファンがボクに声援を送ってくれた」とポガチャル。

「区間3勝を挙げ、最終日の表彰台にスゴい選手たちと立てるなんて夢のようだった」

2023ツール・ド・フランスさいたまのアート展会場でご満悦のポガチャル ©A.S.O. Thomas Maheux

25歳でツール・ド・フランス3勝…最多記録の更新もその先に

スロベニアはかつての社会主義国、ユーゴスラビアから1991年に独立した小国だ。しかし自転車界では一気に強豪国に。それをけん引するのがポガチャルだ。近年の自転車レースは高速化と専門性が顕著になり、1日レースで優勝をねらうタイプと2日以上の大会日程で総合優勝を争うタイプに分けられてきた。ツール・ド・フランスのように23日間の長丁場で頂点をねらうなら1日レースは視野に入れず調整することが常套手段となった。

23日間の長丁場で表彰台に立てるポガチャルはまさに後者のタイプと思われていた。グランツールは出場7回で総合優勝4回。他の3回も全て3位までの表彰台に乗っている。ところが2021年、ポガチャルは1日レースの伝統大会、春のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(ベルギー)、秋のイルロンバルディア(イタリア)で優勝。近年の傾向を完全に打ち破る成績を修めた。

1日レースでも複数日レースでも暴れまくったのがかつてのメルクスだ。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスで5勝、1日レースの最高峰である世界選手権で4勝。春先に開催される伝統の1日レースも総ナメにして、その強さから「人食い鬼」とさえ呼ばれた。これまでメルクスは「自らと並び立つ現役選手は?」の問いに答えなかったが、イルロンバルディアの優勝後にポガチャルの名前を口にした。

マイヨジョーヌのポガチャルが第8ステージを走る ©A.S.O. Pauline Ballet

そのコメントはポガチャル自身の耳にも入り、「彼がそう言うならボクは自転車競技の新たな歴史を作れるように頑張る」とさらに積極性を高めた。

ツール・ド・フランス最多となる5勝を記録した選手は過去に4人いるが、5勝目はいずれも30歳前後。ところがポガチャルは25歳で3勝を挙げてしまった。その先にはまだ相当の時間がある。メルクスを超える最強選手となるのか? 人喰い鬼を超えるあだ名はあるのか? 欧州各紙はたまにポガチャルのことを宇宙人と見出しに書き立てることがある。