MGCは最後の5km勝負。そこでは誰にも負けない…東京五輪を目指す神野大地

神野大地(セルソース)が、9月15日に開催される2020年東京オリンピック男女マラソン日本代表選手選考レース、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への思いを語った。

2020東京五輪出場を目指す神野大地

「1億円よりも東京オリンピック出場。MGCで2番以内になるのが目標に。そして本当の勝負は東京オリンピックだと思っています」

MGCは東京五輪マラソン男女3枠のうち2枠を決める一発勝負のレース。2017年夏から約2年をかけて行われたMGCシリーズで、MGC出走権を獲得した男子31選手、女子12選手が出場する。残る代表枠はMGCファイナルチャレンジ派遣設定記録「男子2時間5分49秒」「女子2時間22分22秒」をクリアした最上位が内定となるが、クリアした者がいない場合はMGC2枠に入らなかった3位選手が内定する。

日本中が注目する選考レース。6月3日に都内でその出場選手発表会が行われ、現役選手として唯一、神野が出席した。

青山学院大3年生の箱根駅伝では、往路5区の山登りでこれまでの記録を塗り替えての区間新記録。同大学初の総合優勝の立役者となった。神野にはすぐさま「三代目山の神」のレッテルが貼られ、一躍注目される選手となった。

「山の神と言われるようになり、社会人になってからもマラソンに挑戦しようというときも、それがすごいプレッシャーでした。自分自身の思うような結果が出ない日々でした」(神野)

高橋尚子(左)と野口みずき(右)という五輪金メダリストにはさまれて緊張気味の神野大地

それでもMGCへの切符はなかなか遠かった。2019年3月、日本記録保持者の大迫傑さえ途中リタイアするような冷たい雨のレースとなった東京マラソンで、神野はようやく出場権をゲット。うれしい思いがゴール時の笑顔に現れていましたが、2018年5月にプロランナーとして転向してケニアに行ったりエチオピアに行ったりといろいろな挑戦をしています。

「最終的にギリギリではありましたけれど、2019年3月の東京マラソンでMGC出場権を獲得できたことは素直にほっとしました。レースに出るたびに山の神というプレッシャーがあって、それでもなんとか結果を出してきた。そういう力は他の選手に負けていないと思っている」

35km地点で10番手であっても、ボクはそこから逆転できる

MGC記者発表に登壇した野口みずきさん、神野大地、瀬古利彦プロジェクトリーダー、高橋尚子さん

MGCのコースは明治神宮外苑いちょう並木~四ツ谷~飯田橋~神田~日本橋~浅草雷門~銀座~芝公園~日本橋~二重橋前~神保町~飯田橋~四ツ谷~明治神宮外苑いちょう並木。

「2週間前にコース試走に行ったんですけれど、最後の5kmの上りが厳しいことを実感。短いけれど壁のような激坂があって、ゴールの新宮外苑までも上りが続きます。35km地点で10番手であっても、ボクはそこで逆転できると思います」

2004アテネ五輪女子マラソン金メダルの野口みずきもエールを送る。
「私自身も後半の坂に備えて、3カ月前からはしっかり勝負できる脚を作るように練習しました。3カ月前に目標・目的をしっかりと考えることが重要だと思います」と野口は秘策を伝授する。

2018年は同世代とも言える大迫傑や設楽悠太が日本記録を更新。それを評価しながらも、MGCでは両選手をマークしすぎないように心がけたいという。

「MGCに出場する選手は全員がライバルだと思っています。もちろん大迫さんや設楽さんはすごく成果を上げている。3年前の丸亀のハーフマラソンではボクが1番、大迫さんが2番、設楽さんが3番でした! そういうレースもあったんです。だからそんなに雲の上の存在というわけではないです。

大迫や設楽に勝っている日本選手はあんまりいないと、 日本陸上競技連盟強化委員会の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも神野の走力を評価している。

日本陸上競技連盟強化委員会の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー

「大迫さんに日本人で先着をしている選手はここ数年であまりないと思います」(神野)

五輪代表最終枠を争うファイナルチャレンジのタイムが予想してたよりも厳しいものとなったことで、今回のMGCでは3番以内でも東京オリンピックに行けると神野はそれを脳裏に入れている。
「いずれにしろMGCは最後の5km勝負。自分自身しっかり結果を出したい。 2020五輪が東京に決まってから、そしてMGC開催が決まってから自分は明確な目標を掲げて継続して努力を続けてきています。いまさら新しくやるものはなく、日々の継続こそが大事だと信じています」

五輪マラソン代表選考のMGCは男子がTBS、女子がNHKで同時生中継

2020東京五輪の男女マラソン日本代表を選考するマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は男子がTBS、女子がNHKで二局同時生中継をする。大会は9月15日の開催で、8時50分に男子が、9時10分に女子がスタートする。

MGC記者発表に登壇した野口みずきさん、神野大地、瀬古利彦プロジェクトリーダー、高橋尚子さん

史上初の二局体制による前代未聞のマラソン中継。男子マラソンを中継するTBSはMGCスペシャルキャスターとして、2000年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子を起用。女子マラソンを中継するNHKはMGC解説として、2004年アテネ五輪金メダリストの野口みずきを抜てきした。

レースにはMGC出場権を獲得した男子31選手、女子12選手が出場する。

「これまでのマラソンの選考の常識を覆すMGCの導入は、公平に透明に選考を行うため」と、6月3日に都内で開催されたMGC出場選手発表会見で日本陸上競技連盟の尾縣貢専務理事。

日本陸上競技連盟の尾縣貢専務理事
東京のマラソンコース攻略をトークする。左から瀬古利彦プロジェクトリーダー、高橋尚子さん、神野大地、野口みずきさん

「レース展開は読めません。いろんなタイプの選手がいるので」と、日本陸上競技連盟強化委員会の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー。
「MGCは一瞬たりとも目が離せませんよ。だから生中継は2つ見たいよなあ(笑)」

「ただ言えるのは誰が勝つかわからないということ。東京オリンピックで勝つために新設されたのがMGCなんだから、大会当日はだから暑くなってほしい。予想される暑さの東京五輪で勝てなければなりませんからね」

MGC記者発表に登壇した野口みずきさん、神野大地、瀬古利彦プロジェクトリーダー、高橋尚子さん

「私は東京で開催された選考レースを落ちた身ではありますが、臨場感あふれる解説をしたいです。男子と女子がほぼ同時進行で行われるので、この1日がマラソンデーになるように盛り上げていきたい」と高橋。

「選手も緊張しているけど、私もドキドキワクワクです。安定した走りの松田瑞生選手やベテランの福士加代子選手に注目」と野口。

「レースに集中して首位を守りたい」エアレース終了で室屋義秀コメント

レッドブルは、Red Bull Air Race World Championship(レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ)を2019年シーズン限りで終了することを決定。2017年ワールドチャンピオンで、現在シーズンランキング首位の室屋義秀がそれを受けてコメントを発表した。

室屋義秀 © Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

今後開催を予定しているレースは以下の3戦となる。
6月15日(土)、16(日) カザン(ロシア)
7月13日(土)、14(日) バラトン湖(ハンガリー)
9月7日(土)、8日(日) 千葉

2003年の初開催以来、レッドブル・エアレースはこれまで90以上のレースを開催し、世界最高の飛行技術を持つパイロットたちが低空の空中コースを高速で旋回しながら競い合う世界最高峰のスポーツ・エンタテイメントを世の中に提供してきました。しかし、残念ながらレッドブル・エアレースは、レッドブルが世界各地で開催している他のイベントと同じレベルで世間の興味関心を得ることができなかったという。

「記憶に残る素晴らしいレースの数々を作り上げてくれたパイロットたちとチームメンバー、大会パートナー、ホストシティと地域住⺠、そしてファンにこの場を借りて感謝を申し上げたい」と同社。

今回の発表を受けて、千葉大会を主催するレッドブル・エアレース・ジャパン実行委員会もコメントした。
「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップのなかでも千葉大会は最大規模の動員数を誇り、多くのモータースポーツファンの興味関心を惹きつける一大イベントです。千葉大会にはさらなる可能性があったため今回の発表は非常に残念です。レッドブル・エアレース最後のレースが有終の美を飾れるようにレッドブル・エアレース・ジャパン実行委員会は邁進して参ります。皆さま是非千葉大会にお越し下さい」

2018年のレッドブル・エアレース千葉大会 ©Samo Vidic/Red Bull Content Pool

現在シーズン首位の室屋は 「今シーズンは全4戦に変更となったので、チャンピオンシップの年間戦略を修正しながら、現在のリーディングポジションを維持できるよう全力を尽くしていきます」という。
「9月までの短期決戦となりましたので、他のことは考えず100%レースに集中していきます。スポーツ選手とは、設定されたルールや与えられた条件の中において、その能力の限界に挑戦する存在だと考えます。その挑戦の過程により、新たな未来が創造されていくと考えています」

梅雨は通気性に富んだカリマーの用途別レインウェアで快適に

英国発祥のアウトドアブランド『karrimor(カリマー)』から、防水透湿性を完備したレインウェアシリーズ“karrimor Rainwear Collection”が到着した。アウトドアアクティビティやこれからのシーズンに盛り上がるフェス、タウンユースまでさまざまなシーンに対応する充実のラインナップ。

今シーズンのレインウェアシリーズは『通気性』をキーワードに、雨による濡れから身体をプロテクトするだけでなく、着用時に発生するウェア内部の不快なムレを逃す多孔質素材を使用した。梅雨を快適に過ごせる豊富なラインナップになっている。

シーン別に対応できる最適な機能をプラスしたカリマーのレインウェアシリーズ“karrimor Rainwear Collection”は、全国のカリマー取扱店・カリマーのwebサイトで発売。

オールシーズン対応の本格仕様ハードシェル

summit pro jkt / サミット プロ ジャケット

サミット プロ ジャケット(Black) ¥67,000+tax
Ice

オールシーズン対応の高機能ハードシェルジャケット。2タイプの防水透湿素材〈eVent〉をメインファブリックに採用、肩と袖上部には摩耗性に優れるTaslanタイプ、身頃には40DクラスのRipstopを使用することで、防水・透湿性を確保しながらも、耐久性や動きやすさを追求した。さらに〈POLARTEC®Neoshell〉を脇下に配置することでストレッチ性と通気性を向上。

ボディーに施されたジッパーは、リュックサックのハーネスに干渉しない配置となっている。フードはヘルメットの装着に対応。2ポイントで調整でき、フィット感に優れ、広い視野を確保。ロールアップでの収納も可能。

ソフトシェルとハードシェルの機能を併せ持つ

boma NS jkt / ボマ NS ジャケット

ボマ NS ジャケット(Black) ¥46,300+tax

ソフトシェルの優れた通気性、換気性、ストレッチ性と、ハードシェルとしての防水機能、耐摩耗性を組み合わせた〈POLARTECNeoShell〉を採用したレインジャケット。ベンチレーションとしても活躍するフロントポケットを装備し、リュックを背負っていても開閉を妨げないジップの配置など、実用的な機能をふんだんに盛り込んだフラッグシップモデル。

カリマーの軽量ライン[aerial ーエアリアルー]シリーズより

ビューフォート 3L ジャケット & ビューフォート 3L パンツ

ビューフォート 3L ジャケット & ビューフォート 3L パンツ(Beige) jkt ¥23,000+tax pants ¥16,000+tax

ライトウェイトと機能を両立された防水性・透湿性に優れるレインジャケット。撥水性と耐久性を向上させ、長時間の雨への対応を実現した。メインファブリックにはカリマー独自の防水透湿素材〈weathertite〉を採用。多孔質のメンブレンを使用しているため、通気性も良好。リュックサックを背負ったままでも腕上げの良いラグランスリーブ採用。ポケットはリュックに干渉しない位置に配置し、袖口にタブを設けて充実した機能面を実現しています。快適な着心地で高いパフォーマンスを発揮。

動きやすさにこだわった高機能レインジャケット

phantom jkt / ファントム ジャケット

ファントム ジャケット(Beige) ¥22,000+tax

機能性に優れた高機能レインジャケット。動きやすさにこだわったラグランスリーブを採用。生地は防水透湿素材〈weathertite2.5L〉を使用。さらに、発汗時のベタつきを大きく軽減するDrytauch加工を施すことで、一般的な2.5層生地と比較しても優れた快適性を実現している。

トレッキングからアルパインまで網羅する3L ストレッチ素材

summit jkt stretch / サミット ジャケット ストレッチ

サミット ジャケット ストレッチ(Beige) ¥28,000+tax

フェスやタウンユースにもオススメのラインナップ

poncho ¥14,000+tax
pioneer coat ¥32,000+tax

アクセサリーにも『通気性』完備で快適に

レッドブル・エアレースは今季限り…千葉大会がラストレース

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは2019年を最後に継続しないことをレッドブルが決定し、5月29日に公式サイトで発表した。2019年がラストイヤーとなり、6月15〜16日に開催されるカザン(ロシア)、7月13〜14日に開催されるバラトン湖(ハンガリー)、9月7〜8日に開催される千葉大会を残すのみとなった。

レッドブル・エアレース千葉大会 © Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

レッドブルエアレースは2003年に始まり、これまで90以上のレースを世界各国で開催してきた。世界で最も卓越したパイロットが究極の操縦技術を駆使して、高速飛行するレースは空のF1とも呼ばれていた。

「レッドブル・エアレースは最高品質のスポーツエンターテイメントを提供してきたが、世界中で開催されているレッドブルイベントと同じような関心は得られなかった」と今季限りでの打ち切り理由を説明。

2019シーズンはこれまで全8戦で開催されるとされ、千葉大会は第5戦として準備されていた。第6戦は開催日未定でアジア圏で、第7戦は10月19〜20日にインディアナポリス(米国)で、第8戦は11月8〜9日でサウジアラビアでの開催が予定されていたが、発表の内容からキャンセルとなるようだ。

「レッドブルはパイロットとそのチーム、パートナー、ホスト都市だけでなく、エアレースの楽しい記憶を作るために精力を注いでいたレッドブルのスタッフに感謝の意を示したい」と主催者。

●室屋義秀のコメント

苦しさも難しさも楽しむことができてしまう…反中祐介のRed Bull 400参戦記

どうも、反中です。
2018年に引き続き2019年も参加してきました、Red Bull 400(レッドブル・フォーハンドレッド)。“世界で最も過酷な400m走”の異名を持つこの大会に再び参加することになろうとは。

予選ヒートで1位通過の反中祐介 ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool

さて、Red Bull 400のコースプロフィールは2018年の記事をご参照ください。
相変わらず数字だけではこの大会の過酷さが全く伝わらないのがとても悔しいです。
ちなみに獲得標高だけで考えると、さっぽろテレビ塔(147m)を地上からてっぺんまで登るイメージが近いですね。

2019年で3回目の開催となった同大会ですが、ついに大会参加者数1000人を突破。
会場である大倉山ジャンプ競技場に1000人以上がいる光景はまさに圧巻。非日常的でお祭りのような華やかな雰囲気はランニング大会としては異色なものです。
この空気感は中毒性がありますね。

©Jason Halayko/Red Bull Content Pool

前回大会から変更された点がいくつかあったのでご確認を

◾︎参加賞Tee:青色→水色(第1回目は灰色)
◾︎予選:(男子)全5ヒート→全6ヒート
(女子)前回と同じく全2ヒート

◾︎決勝進出条件:(男子)各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者55名の計60名が決勝進出→各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者74名の計80名が決勝進出
(女子)各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者38名の計40名が決勝進出→各ヒートトップ通過者+各ヒートトップ通過者を除くタイム上位者58名の計60名が決勝進出

参加者数が増えたことで決勝進出者が増。ヒートは年齢の高い順に出走するのは変わりなし。後半のヒートほど予選終了してから決勝までのインターバルが短くなるので若さでのアドバンテージがなくなる仕組みになっている。

©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

まずは予選、第5ヒートに出走

直前の第4ヒートでは階段王ことワタナベリョウジ選手が3’48”32のコースレコードでフィニッシュ。そのせいなのか、第5ヒートはスタート直前からピリついた空気感。案の定、みんなスタートからかなりのハイペース。スタート〜100mあたりまではブレーキングトラック逆走の緩やかなくだり。足場が長めの人工芝は沈み込みやすくスピードを出すほどに足先のコントロールが難しくなる。10人近くの選手に先行されているが動じずにマイペースで走る。徐々にスピードを上げていき登りへ突入。

100m過ぎたあたりでは7、8番手。ランディングバーンを一気に登っていく。このセクションは人工芝の上に格子状の網(通称:ラーメンネット)が張り巡らされている。人工芝の上は滑るため、ラーメンネットにシューズのグリップをひっかけていく。踏ん張りが効いてパワーロスを抑えることができる。ランニングシューズよりはトレイルランニングシューズの方がグリップをひっかけやすくベター。

K点(赤ライン)では四つん這いの選手が現れ始める。このあたりから二足走行 or 四つん這いと選手のスタイルが分かれ始める。自分はなるべく早いタイミングで四つん這いにシフト。後半パート・決勝に向けて脚を温存する。このあたりから疾走感というものは皆無だ。淡々と登るのみ。

大倉山ジャンプ台を駆け上がる参加者たち ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

P点(青ライン)が200mあたり。ここで先頭にでる。その後、最大斜度37度に到達。急斜面すぎてほとんどクライミング状態。いかに上半身を使って登れるかがポイントだ。このポイントではほとんどの選手が四つん這いになっている。二足で登るにはかなりの体幹と脚力(特に腿周り)が必要になる。

ランディングバーン後半は徐々に斜度が緩やかになっていき、視野が広がってくる。
ここでリズムを落とさないのがポイント。接地が長いと負担がかかりやすくなり失速に繋がるため、短い接地を心がける。
ランディングバーンとカンテ(踏み切り台)のギャップを埋めるために設置された木段をクリアするとレッドブルのゲートが。ここからラスト100m。

レッドブルゲートをくぐり、はるか遠くに見えるフィニッシュゲートを目指しアプローチ(助走路)を登る。アプローチのサーフェスは木とゴムの2パターン。両方の感触を確かめながら走る。ゴムのほうがシューズのグリップが効いて滑りにくい。ゴムの上を、途中歩きや走りを繰り返してどの動きが自分に合っているかを確認しながら進む。

ちょうど半分です ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool

■第5ヒート:1着 4’09″93。総合5着で決勝へ

平均心拍数:160bpm(131-182)

決勝に向けていろんな動きを試して、いいイメージのあるまま予選を通過。想定通りである。余力もかなりある。あとは決勝までにいかにリカバリーするか。リカバリーは会場に戻ってからでは遅い。ゴール直後すぐに補食を摂取するのがベスト。摂取のタイミングは早ければ早いほどいい。ランニングショーツのポケットにしまっていた【サカナのちから】【MEDALIST AMINO DIRECT 5500】を2袋ずつ摂取。筋疲労の激しいときにはアミノ酸とクエン酸は必須。会場に戻りすぐエネルギーに変わる糖質系エネルギーとじっくりと長く効果の出る脂質系エネルギーをそれぞれ摂取。少量で高カロリーな脂質系エネルギーを少し多めに摂るのがポイント。今回のような負担の大きい種目でもハイパフォーマンスを持続させることができる。私は脂質系エネルギーでは【Trail Butter】、糖質系エネルギーには【TRAIL HUT ENERGY JELLY】【MEDALIST ENERGY GEL】をそれぞれ摂取するようにした。どれも美味しいのでストレスなく摂取可能。

ケータリングではカツ丼やバナナなどが用意されているが、後半のヒートは決勝までのインターバルが短いためパンチのあるご飯はリスクが大きい。補給食を各自用意しておくことをオススメする。

最終ヒートでは上田瑠偉選手が3’31”80とコースレコードを更新してフィニッシュ。大会を2連覇している高坂凌太選手は3’58”80の3番手でフィニッシュ。
決勝は大荒れの予感しかしないんですけど。

©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

そして、決勝へ

2018年と比べて気温が高く日差しも強い。2018年の決勝のボーダータイムが約5’40”だったのに比べて2019年は約5’20”。2018年からかなりレベルが上がってきたのが見てとれる。無難な展開で無難な結果を出すくらいなら、自分の全てをぶつけて果敢に攻めることを決意してスタート位置についた。

張り詰めた空気の中一斉にスタート。スタート直後から先頭に飛び出して登りに突入。登りに入ってからも勢いをキープしていたが、若干のオーバーストライドで脚が一気に棒になる。ペースを上げるには高い心拍数を維持する必要がある。しかし、脚が棒になっていては心拍数を上げることができない。上がらない心拍数に苛立ちながらももがき続ける。K点あたりからどんどんと抜かれていく。最大傾斜到達時には7番手。1~3ははるか先だが4~7までの差はほとんどない。

レッドブルゲートをくぐり、ラスト100mに差しかかる。

観戦者との距離が近いアプローチでは声援をどこよりも間近に受けることができる。しかし、動かない身体を動かし続けてここまできた時には全身の疲労はピークに達している。腿周りはパンパンでいろんな雑念が頭をよぎる。短いようで濃密な100mだ。ゴールは見えているのに全く近づいてこない。身体が追い込まれてくると気持ちもすり減り始める。疾走感というものは一切ない。もがくように這いつくばるようにただただ進む。前の選手は手を伸ばせば追いつけそうなところにいるのだがその一歩が遠い。気持ちだけは途切らさず身体を動かし続けるが順位は変動せず。フィニッシュ直後マットに担ぎ込まれる。脚を酷使しすぎた結果、心拍数は上がりきらずただただ身体が動かなかった。

■決勝:7位 4’00″66

平均心拍数:138bpm(111-167)

惨敗だ。2018年から約1秒タイムは更新したもの順位ははるかに後退。前半のオーバーストライドが大きく影響したレースとなったが今の自分ができる全てを出し切ることはできた。自分の未熟さを痛感することとなったが不思議と悔いはない。苦しくも有意義な時間であったのは間違いない。

たかが400m、されど400mなのである。

上田瑠偉が圧倒的な強さを見せて優勝 ©Jason Halayko/Red Bull Content Pool

Red Bull 400の攻略ポイントをまとめると

◾︎シューズはトレランシューズがベスト。アウトソールのグリップパターンがこのコースとの相性抜群で確実にグリップしてガシガシ登れる。アウトソールのグリップがゴツくて、ミッドソールの前足部の厚みと後足部の厚みの差が少ないものが理想。私が今回着用した【Salomon S-LAB SENSE 7 SG】もこのタイプの一つ。レーシングモデルで、走行性抜群。今回のようなコースでのパフォーマンスはもちろん、トレイルランニングレースでも幅広く活躍する。私以外にも女子2位の選手も着用している。

◾︎テーピングをすることでパフォーマンスアップ&疲労軽減に効果がある。私が使用しているテーピングは【GONTEX】。膝から腿にかけて貼ることで腿周りの筋肉を補助してくれる。テーピングの糊面がストライプ状になっており、汗で蒸れたりかぶれたりしない。

◾︎ほとんど四つん這いの体勢なのでグローブは着用すべし。ロープを強く握ったときに手のひらがかなり擦れる恐れあり。ランニング用ストレッチグローブよりは【SALOMON FAST WING GLOVE U】のような手のひらが補強されているタイプがオススメ。

元プロ野球選手の森本稀哲さんもゴール ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

◾︎レース前の補給食は大事。脂質系と糖質系をバランスよく摂取しよう。少量で高カロリー、美味しいものが摂取時のストレスがない。アミノ酸系・クエン酸系もリカバリーの促進にはとても効果的。

◾︎斜度がきつくなったときは無理せずできるだけ早く四つん這いになった方がいい。下肢の負担を減らし効率的に登ることができる。体幹・脚力に自身があるならば二足で登るのも有効。パワーは出るが、その分かなりの負担がかかる。二足で登るためにはそれなりの特訓が必要だ。

◾︎この大会は「気力」「全身持久力」「集中力」この三位一体がとても重要。ひとつでもダメになると全てがバランスを崩してしまう。この400mという限られた距離の中でこの3つの力をいかに高い次元でコントロールするか。これがこの競技の難しさであり病み付きになってしまうポイントなのかもしれない。

©Suguru Saito / Red Bull Content Pool

この記事をまとめている今でも、すでに2020年の大会のことを考えている

この大会特有の不思議な魅力はなんでしょうね。例えるならばやんちゃなバイキングに近い感覚でしょうか?
腹八分目を超えてもまだ食べ続けるから、もう2度と食べなくてもいいかもってなりますよね。でも、時間が経ってお腹が空いてくると次はいつ食べに行こうかなってバイキングを意識する自分がいる。

まさにその感覚に近いものがこの大会にはあるような気がします。走っている時は脚ガクガク心臓バクバクで苦しいのですが、時間が経って疲労感が抜けてくると次はどれくらいの記録が狙えるかなってRed Bull 400を意識している自分がいるのです。

その時の経験が苦しければ苦しいほど時間が経ってしまえば記憶の中では美化されてしまうんでしょうね、きっと。

苦しさも難しさも楽しむことができてしまう。Red Bull 400はヤバい。

反中祐介(たんなかゆうすけ)
トレイルランナー。ランニングチームのランニングコーチとしてビギナーランナーからシリアスランナーまで幅広いレベルのランナーの指導を経てトレイルランニングを始める。大学在学時には健康運動実践指導者を取得。ランニング以外にも、自然を楽しみつくすべく様々なアクティビティを提案・発信している。北海道のSAPPORO EXPERIENCE BASEサロモンストアにアドバイザリースタッフとして勤務している。
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【2019年大会速報】
誰でも生まれたての子鹿になれる! レッドブル400は上田瑠偉圧勝
【2018年のレポート】
世界で最も過酷な400m走に挑んだ! 反中祐介のRed Bull 400参戦記

©Suguru Saito / Red Bull Content Pool