パリ五輪開催時期の国別・競技別ドーピング…日本はゼロ、多かったのは

第32回オリンピック競技大会(2024パリ)の開催時期において各競技、各国スポーツ選手のドーピング(不正薬物使用)と不正行為の件数がどれだけ公表されたかをThe Movement for a Credible Cycling(MPCC)が2024年10月11日に明らかにした。

スポーツ別のドーピング件数

五輪では6000件が採取され、ドーピング違反は6件

MPCCによると、トップレベルのスポーツはドーピング撲滅のために相当なリソースを投入する必要性を無視できないと指摘している。今回の五輪では、全参加者の約40%にあたる4150人の選手から約6000のサンプルが採取された。これらの検査で明らかになった ADRV(アンチドーピング規則違反)はわずか6件で、すぐに暫定的な資格停止処分となった。

6000サンプルで薬物陽性を突き止めたのは6という数字は馬鹿げているように思えるかもしれないが、分析研究所の調査員とスタッフは、まだ何千件ものケースを処理中で、今後数カ月でさらに新たなケースが明らかになる可能性が高い。

五輪期間中、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は検査官の仕事に加え、フランスの首都に2つの臨時事務所を設置した。そのうちの1つは、発覚したドーピング事件に迅速に対処することに専念していた。強い政治的意志、十分な資源、そしてドーピングに対する妥協のない姿勢があれば、不正行為を抑制できるという意思を感じさせた。

競技別で最もドーピングが多いのは陸上、国別ではインド

とはいえ、2024年は数々の事件で特徴づけられる年となった。2021年の陽性検査が世界アンチ・ドーピング機構(WADA)によって隠蔽されたとされる中国水泳選手事件、この事件について連邦捜査を開始した米国の政治的反応、そして関係国が自国の法律を世界規程に沿わせようと奮闘する中、いくつかの国家アンチ・ドーピング機関が資格停止となった事件などである。

MPCCの国別・競技別不正リストは3回目。2024年1月1日から9月30日までの件数だ。競技別のトップは陸上競技で、重量挙げ、パワーリフティング、ラグビー、MMA(総合格闘技)、テニス、柔道、ボクシングと続く。国別ではインド、ロシア、ケニアの順。日本は0。

クリーンな自転車競技を目指す団体「MPCC=信頼ある自転車競技のための運動」公式リリースより。

●MPCCのホームページ

五輪イヤーのドーピング、重量挙げ・陸上競技、国別ではインドとロシア

2024年最初の四半期(1〜3月)において各競技、各国スポーツ選手のドーピング(不正薬物使用)と不正行為の件数がどれだけ公表されたかをThe Movement for a Credible Cycling(MPCC)が2024年5月4日に明らかにした。

MPCCのスポーツ別・国別不正件数

競技が公平に行われるかを監視する役割の国際機関

オリンピックイヤーとなる2024年は多くのスポーツにおいてトップ選手に注目が集まる。各国・地域の競技団体とNOC(オリンピック委員会)も五輪代表候補選手のパフォーマンスを後押しする。スポーツ選手を継続的にサポートしてきたスポンサーや、自国のアスリートのメダル獲得に期待するファンも圧倒的に多い。リスペクトや友情といった五輪の価値観を五輪出場選手が表現してくれると同時に、競技の公平性を保証するためにアンチドーピングコントロールを強化する必要性もある。

ここ数カ月間、世界アンチドーピング機構(WADA)、独立不正防止機関のアスレティックス・インテグリティ・ユニット(AIU)、国際検査機関(ITA)はアンチドーピング対策に高いレベルで対応するための取り組みを強化してきた。

チュニジア、ベネズエラ、ナイジェリアなどの国のアンチドーピング機関が世界アンチドーピング規定に準拠していないと指摘し、南アフリカでの検査を担当する一部研究所を暫定的に停止させた。

2024年の初めには、スペインアンチドーピング機関(CELAD)が、禁止物質・方法を治療目的で使用したいアスリートが申請するTUEを事後に追加したり、2005年にWADAによって禁止された静脈内治療を行なったり、一部選手の出場停止を白紙にするなどの問題があり、スキャンダルになった。

インドの数値が大幅に増加したのは理由がある

3月31日時点での各スポーツの不正行為数が発表されている。陸上競技と筋力系スポーツがトップを占め、ウェイトリフティングでは40件、陸上競技では39件、パワーリフティングでは27件のドーピングや不正行為が明らかになっている。ただし、モスクワのLIMSデータ(検査情報管理システム)の分析後に16件の症例が公表されたため、重量挙げの数字は修正される可能性がある。

国別で見ると、インドでの出場停止数が49と大幅な増加が懸念される。2023年10月と11月にゴアでナショナルゲームズが開催され、実施された検査数が多かったという見解もある。

フランスの出場停止数は10人、同国を代表するフェンシング選手のイサオラ・ティバスの陽性反応と、やり投げのチャンピオンであるアレクシー・アレイの出場停止処分が明らかになった。

自転車競技部門では、第1四半期にドーピングやスポーツ不正行為が6件発生した。2件は詐欺事件ともいえ、女子コンチネンタルチームCynisca Cyclingが2023年7月9日、チームマネージャーがチームメカニックを5人目の選手として登録し、他の4選手に嘘をつくように指示。レースに出場できる選手人数にして出場しようとした。

ワールドツアーチームのリドル・トレックから離れる途中だったアントワン・トルホークとデカトロンAG2Rラモンディアルのフランク・ボナムールの不正が発覚。デカトロンチームはルールを厳格に適用し、同選手を即座に出場停止処分とし、最終的に3月26日に解雇した。

クリーンな自転車競技を目指す団体「MPCC=信頼ある自転車競技のための運動」公式リリースより。

●MPCCのホームページ

自転車競技は前年よりも潔白に? 薬物違反は8位に後退

ドーピング違反を告発して信頼される自転車競技を目指す国際団体、MPCC(Le Mouvement pour un cyclisme crédible)が2020年に発表された各競技のドーピング違反件数を発表。自転車競技は2019年の5位から8位に後退した。

4位のEQUESTRIANは馬術、5位のMMAは総合格闘技。クリックすると拡大します

最もドーピングが多かったのは陸上競技で、これに続いて重量挙げ。

新型コロナウイルス感染拡大により、アンチドーピング検査が例年に比べて実施しにくい状況に逢ったという。

世界アンチドーピング機関(WADA)と各スポーツの国際統括団体は、とりわけ「競技会外」の検査に関して、これまでほど多くのドーピング防止検査を実施できなかったとした。2020東京五輪など数多くの大会がキャンセルまたは延期されたため、「競技中」のテスト数も論理的に減少した。

そのため2020年に公表された症例数が前年と比較して大幅に減少したという。2019年と比較して18.6%、2018年と比較してほぼ30%減少した。

陸上競技の違反は113。野球は19例のみで、近年の米国スポーツでは60〜108例は報告されていたことから、新型コロナウイルス感染拡大のため予定されていたMLB(メジャーリーグ)162試合が60試合に減少したことが原因とされる。

米国は、12月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)によって今後2年間のすべての主要イベントの出場禁止が命じられたロシアを上回って、5年連続でランキングのトップにとどまっている。欧州ではイタリアと英国が多い。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたスポーツはドーピング件数が減少する傾向にある、自転車競技は2019年に32件が報告されていたが、2020年は全カテゴリー合わせて18件。

ドーピング事件のうちワールドチームまたはプロチームに所属しているのは3人の男子選手。2019年は8選手だった。15年前のワールドツアーの創設以来、減少傾向にあるという。

●MPCCのホームページ

コロナ禍でドーピング検査も手薄…2020後半は違反数増か?

WADA(世界アンチドーピング機関)は5月23日、新型コロナウイルス感染拡大を抑えようとする衛生対策が喫緊の課題となったことで、スポーツ界のアンチドーピング検査数が減少しているという問題に直面していると認めた。

2020年前半における各スポーツのドーピング件数

スポーツ界のドーピング件数は2019年に比べ、2020年上半期のほうが増加した。2019年上半期のドーピング陽性数は190件で、2020年は同期間で227件に上る。さらに一部に審議中のため機密にされているものもあり、総数はさらに増えると予測されている。

もちろん、サンプルが取得された日付とドーピングが公表された日付には時間差があり、2020年前半にリリースされたいくつかのケースは、2019年に行われたテストの結果となるので、ドーピングが増えていると性急に結論を出すことはできないという。

スポーツ連盟の中には、ドーピングが発覚しても選手に活動停止を通告するまでドーピング陽性を明らかにしない団体もあるという。UCI(国際自転車競技連合)やIAAF(国際陸上競技連盟)は疑惑のケースが起こった際はまず発表し、関係する選手を暫定的な活動停止にするという手段を講じる。

自転車競技で報告されたドーピング陽性数は、2019年に比べて減少傾向が続く。2020年上半期のドーピング陽性数は7で、2019年の1/2だ。

新型コロナウイルス感染が抑え込まれれば、欧州をメインとする自転車競技スケジュールは8月上旬から再開する。WADAはそれをふまえ、各チームにアンチドーピング検査の再開と徹底を通告。ドーピングに対するあくなき姿勢を明らかにしている。

クリーンな自転車競技を目指す団体「MPCC=信頼ある自転車競技のための運動」公式リリースより。

●MPCCのホームページ

ロシア排除でも個人参加で東京五輪へ…イルヌル・ザカリン

2020シーズンにCCCチームに移籍したロシアのイルヌル・ザカリンがシーズンの参戦計画を明かした。ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、そして中立選手として2020東京五輪を目指したいと語った。ロシアは国家的なドーピング違反によって五輪から排除される可能性がある。

イルヌル・ザカリン ©Tim de Waele/Getty Images

2019シーズンはカチューシャ・アルペシンに所属していたザカリンは30歳。新たなキャリアを求めて刺激を与えようとCCCに移籍した。「新チームでは役割が明確に定義され、すべてが非常によく組織されている」と、トレーニングキャンプ中にその手応えをコメントしている。

2019年はジロ・デ・イタリアで4年ぶり2度目のステージ優勝を挙げ、総合10位でフィニッシュした。

「シーズン前半から1週間のステージレースを走って競争力を高め、自分のトップレベルに戻りたい。昨年と同様にジロ・デ・イタリアを走り、ツール・ド・フランスでも2016年に続くステージ優勝と総合成績の上位を目指したい」とザカリン。

カチューシャ・アルペシンのイルヌル・ザカリンが2019ジロ・デ・イタリア第13ステージで独走 ©Fabio Ferrari / LaPresse

過去にドーピング違反のザカリンは東京に出場可?

ツール・ド・フランス終了後は東京五輪への出場を望んでいるが、世界アンチドーピング機関によってロシアはオリンピックから除外される可能性が高い。それでも一部のロシア選手は個人参加で競技することを許されるのだが、2009年にザカリンはステロイドの陽性検出で2年間の活動停止処分を受けている。ザカリンの出場を国際オリンピック委員会が認めるかは定かではないという。

「多くのロシア選手と同様に国際的な制裁には憤りを感じている。だからどんな色の旗の下であっても東京五輪に出場できるように、必要な書類を提出するつもりだ」とザカリンは東京行きをあきらめていない。

●CCCチームの公式サイト

不注意によるドーピングを回避するためファン差し入れ辞退…宇都宮ブリッツェン

5月の国際レース、ツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・熊野などを控えた宇都宮ブリッツェンが、公式ホームページで「選手への飲食物の差し入れについて」と題して、「受け取りを控えさせていただきます」と掲載した。ファンの厚意としてこれまではありがたく受け取っていたが、ドーピング検査に影響を与える可能性のある成分を不注意で選手が摂取してしまう恐れもあるため。

宇都宮ブリッツェンのホームページ(スクリーンショット)

「健康食品や市販食品、食材の中にも、製造過程中でドーピング検査に影響を与える可能性のある成分が含まれてしまうケースなど体調管理に影響をきたす場合もあることから、選手のコンディション維持のため、飲食物全般の差し入れに関しましてはご遠慮下さいますようお願い申し上げます」とホームページ。

「選手たちを激励するために差し入れをいただいたファンの皆様には大変申し訳ございませんが、なにとぞご理解いただけると幸いです」と結んでいる。

●選手への飲食物の差し入れについて(宇都宮ブリッツェン)

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