スリランカTカップは中島康晴の連覇に挑むことなく欠場…テロ発生により決断

KINAN Cycling Teamは、スリランカ民主社会主義共和国において発生したテロ事件を受けて、出場を予定していた5月10~12日開催の「スリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)」への参加と同国への遠征をを取りやめる決定をした。
2018年開催のスリランカ Tカップでは中島康晴が個人総合優勝した

4月21日、コロンボ市、ニゴンボ市、バティカロア市などにおける爆発により、日本人を含む多数の死傷者が発生。チームは「犠牲者のご冥福をお祈りし、ご遺族に哀悼の意を表するとともに、負傷者の方々に衷心よりお見舞い申し上げます」と発表。

重ねて、レース活動に関しては大会の欠場と公国への遠征取りやめを決断した。選手・スタッフの安全を最大限優先するべきであるとの判断によるもの。チームとしての決定後、主催者判断により大会の無期限延期となることが決まっている。

2018年のこの大会では、中島康晴が個人総合優勝を達成。2019年の大会へは、チャンピオンチームであると同時に、2018年のUCIアジアツアーチームランキング1位のチームとして高い評価を得て、2年連続での招待出場が決定していた。

連覇へ向けて、チームとして準備を進めていたが、その最中で発生した事態にレース出場・遠征の取りやめはやむを得ないものと判断した。新たなレースプログラムについては、今後チームから発表される。

「スリランカは、素晴らしいホスピタリティと人々の温かさを感じられる、チームとしてもとても思い入れの強い国であります。改めまして、KINAN Cycling Teamは、スリランカの人々がこの困難を乗り越えるにあたり、心からの連帯を表明します」とチーム発表。

中島康晴がツール・ド・台湾でポイント賞を獲得

台湾をおおよそ北から南に縦断したツール・ド・台湾(UCIアジアツアー2.1)は、3月21日に5日間の戦いに幕が下りた。この大会に初出場を果たしたKINAN Cycling Teamは、ポイント賞のグリーンジャージでスタートした中島康晴がその座を守り切り、賞を確定。最終ステージでも7位に入り、最後までアグレッシブな姿勢を崩さず大会を終えた。

ツール・ド・台湾でポイント賞を獲得した中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

平坦あり、山岳ありと、バリエーション豊かなコース設定で熱戦が展開された同大会。中島が第3ステージでポイント賞争いで首位に立ち、グリーンジャージに袖を通した。さらに、第4ステージでも得点を加算し、ここまでリードを守ってきた。

そして大会最終日。全5ステージの戦いは、21日に行われる192.8kmを残すのみとなった。ルートはおおよそ海沿いを走る設定で、中盤にかけては南シナ海沿いを往復する。クライマックスは、大鵬湾を囲うサーキットコースをおおよそ4周回。その間に2回設定されている中間スプリントは、総合成績のジャンプアップをかけたボーナスタイム争いや、ポイント賞を賭けたスプリンターたちの戦いなど、さまざまな要素が秘める。レースとしては平坦ステージにカテゴライズされ、定石であればスプリンターの競演となるところだが、個人総合が僅差での争いとなっていることもあり、あらゆる展開が想定された。

それらを受けてKINAN Cycling Teamとしては、中島のグリーンジャージを最優先しつつ、首位から総合タイム差16秒につけるトマ・ルバ、サルバドール・グアルディオラ、マルコス・ガルシアによる順位のジャンプアップの可能性を模索していくこととなった。

迎えたレースは、スタート直後からアタックと集団による吸収との繰り返し。数人がリードを奪うも、そのほとんどに総合での上位進出の可能性を持つ選手たちが入るため、それを嫌うチームが追いかけ、やがてキャッチする流れに。KINAN勢も新城雄大が逃げにトライしたほか、トマも総合争いのライバルたちと協調して先行を図るが、いずれも実らない。

出入りの連続で激しさを増すプロトン内でアクシデントが発生。スタートから60kmほど進んだポイントで数人がクラッシュ。大久保陣が巻き込まれ、地面に叩きつけられてしまう。落車のダメージによりレース続行は難しいと判断し、大事をとってリタイアすることとなった。

残った5選手でのレースとなったKINAN勢は、70km付近でようやく形成された逃げグループには合流せず、集団内に待機。リーダーチームが逃げを容認し、集団のコントロールを始めたことでレースは落ち着きを見せる。逃げグループがコースを逸脱するハプニングがあり、一時レースがストップしたが、タイム差を維持して再スタート。その後は淡々と進んだ。

距離を追うにつれ集団が逃げグループとの差を着々と縮め、大鵬湾沿いの周回コースに入ったタイミングで先行していたメンバーは全員吸収。新たに1人がアタックし、独走を開始したが、集団は射程圏内にとどめながら進行する。

サーキット2周回目に入ると、中間スプリントに向けて集団は活性化。中島のポイント賞がかかるKINAN勢も隊列を組んで集団前方へとポジショニング。だが、ここはボーナスタイムを狙う総合上位陣がメインの争いに。ポイント獲得に状況を整えていた中島だったが、総合勢をリスペクトし自らのスプリントは行わず。続く3周回目に設定された中間スプリントも同様に総合上位陣の争いとなった。

しばらく続いた1人逃げは、最終周回でふりだしに。フィニッシュまでの約10kmは、スプリントに向けた主導権争いへと変化。KINAN勢もサルバドールやトマらが前方へと姿を見せ、中島のスプリントポジション固めに従事。最後を託された中島は、好位置へ自ら切れ込んで勝負に挑んだ。

残り約200mから左へとコーナーリングをしながらの変則レイアウトでの集団スプリント。中島はライバルたちの先着こそ許したが、7位でフィニッシュラインを通過。肝心のポイントは9点を獲得。

ポイント賞をかけて争った他選手の順位との総合により、中島は同賞を守り切ることに成功。グリーンジャージを確定。第3ステージで得たリーダージャージを最後まで奪われることなく戦い抜いた。

個人総合ではサルバドールがチーム最上位の13位。トマも15位に続き、それぞれUCIポイントを5点ずつ獲得。大会を通じては、第1ステージ3位の中島獲得分と合わせて13点をゲット。また、チーム総合ではトップと同タイムで3位としている。なお、途中リタイアの大久保は頭部に裂傷を負ったものの、処置の後にチームへと戻っている。

これまでステージレースでの総合成績や、山岳での走りでインパクトを残すことの多かったチームは、スプリンターの華ともいえるポイント賞争いでも結果を出し、新たな一面を今大会で披露。総合でも上位を狙える位置で5日間走り続けたことも含め、山岳・平坦と総合的に戦えるチームのスタイルが実ったといえそうだ。また、スプリントでは中島だけではなく、出場した6選手がそれぞれの役割を意識して奮闘。ポイント賞のグリーンジャージ獲得に至った最大の要因となった。

KINAN Cycling Teamは引き続き充実のレース活動を進める。次戦は3月22~24日のツール・ド・とちぎ(UCIアジアツアー2.2)。台湾で得た勢いのまま、国内UCI国際レースでも結果を求めていく。

中島康晴

中島康晴のコメント
「ポイント賞を獲得できてとてもうれしい。チームメートがジャージ獲得のために働いてくれて、それに応えることができてよかった。ただ、ステージ優勝がしたかったというのが正直なところ。

チームの総合系ライダーも自分のスプリントのために仕事をしてくれて、そうした姿勢がKINANはスプリントもできるということを他チームにアピールする材料になった。特に、グリーンジャージを着てからは集団内でもリスペクトしてもらっていることを実感できたし、なによりチームとしての戦術の幅が生まれると思う。今後のレースに向けて、大きなきっかけにできたと感じている。

昨シーズン、自分がスリランカ Tカップで個人総合優勝してからチームに勢いが生まれたといろいろな方に言っていただけた。今回も、このポイント賞を機にチームメートが続いてくれると信じている」

マトリックスのアウラールとトリビオがワンツー…KINAN AACA CUP2019第3戦

東海地区を転戦するサイクルロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」2019年シーズン第3戦が、3月2日に岐阜県海津市の国営木曽三川公園長良川サービスセンター内の特設コースで開催された。90人もの選手が参戦した最上位カテゴリーの1-1クラスは、国内トップチームを中心としたハイレベルの戦いに。残り2周で逃げグループから抜け出したマトリックスパワータグ勢がワンツーフィニッシュ。シリーズ初参戦のオールイスアルベルト・アウラール(ベネズエラ)が優勝した。

KINAN AACA CUP 2019第3戦はマトリックスパワータグのワンツーフィニッシュ ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

今節は第1戦以来となる長良川開催。前節の新城(2月10日)はクリテリウム形式でスピード域の高いレースだったが、今回は国内シーンの本格的なシーズンイン間近でもあることから、102kmにレース距離を設定。この時期特有の北からの季節風「伊吹おろし」も展開に大きく左右することが予想された。

シリーズのホストチームであるKINAN Cycling Teamからは、山本元喜、椿大志、大久保陣、山本大喜、雨乞竜己、新城雄大、荒井佑太に加え、競輪が本職の福田真平がKINANジャージを身にまとっての初レース。8選手がエントリーした。さらに今節は、ベストメンバーを配したマトリックスパワータグをはじめ、国内有力チームが多く参戦。90選手がスタートラインに並ぶ注目の一戦となった。

5.1kmの周回を20周するレースは、このシリーズの特徴でもあるアクチュアルスタートからのアタック合戦で幕開け。1周目には山本元と岸本伊織(ロードレース男子部)が飛び出し、それをきっかけにプロトンが活性化するなど、調子を上げる選手たちが次々と攻撃的な姿勢を見せる。KINAN勢とマトリックス勢、どちらかが動くともう一方がチェックにシーンや、両チームの動きをマークする選手たちが同調する場面が繰り返し発生。出入りが何度もありながら、前半戦を消化していった。

その均衡が破られたのは9周目。佐野淳哉らマトリックス勢を中心とした動きに続いた7人が、メイン集団とのリードを広げることに成功。一瞬対応が遅れたKINAN勢は、椿が先頭グループに加わったものの、他の選手たちが続くことができず、メイン集団からの追撃にシフトすることとなった。

やがて先頭は6人で落ち着く。メンバーは佐野、アウラール、ホセビセンテ・トリビオのマトリックス勢が3人、中里仁(Rapha Cycling Club)吉岡拓也(Team Eurasia – IRC Tire)、そして椿。なかでも、佐野による長時間の牽引が目立つ。追いつきたいメイン集団は20秒から30秒のタイム差で続くが、力のある選手たちがそろった逃げグループにはそう簡単に迫ることができない。残り周回が減っていくにつれて、逃げ優位の状況が形作られていった。

役目を終えた佐野が下がってからも、マトリックス勢が主導権を握る流れは変化せず。そして、決定的な局面は残り2周でやってくる。周回後半の追い風区間でアウラールがアタック。中里や椿が懸命に追うが、強力なスピードアップへの対応に苦しむ。この2人の状態を見るや、トリビオがカウンターで飛び出しアウラールに合流。マトリックスの2選手が後続との差を引き離しながら、最終周回へと入っていった。

協調を続ける先頭の2人は、最後の最後まで快調な走り。最終コーナーを抜けると、あとはフィニッシュラインまでウイニングライド。両者並んでフィニッシュしたが、公式記録はアウラールの優勝に。ホセ選手が2位となり、マトリックスパワータグによるワンツーが達成された。

今シーズンから日本のチームで活動するアウラールは、ベネズエラ代表として2017年のロード世界選手権にも出場経験のある若手。同シリーズ初参戦にして、鮮烈なインパクトを残す走りを見せた。

なお、ホストとして臨んだKINAN Cycling Teamは、終盤追い上げたメイン集団でのスプリントに挑んだ大久保陣の4位が最高だった。

キッズスクールやAACA選抜トライアウトも実施

KINAN AACA CUPでは、参加選手のレベルやスキルに合わせた1-1から1-4までのカテゴリー、個人タイムトライアルのほか、キッズレースも実施。エリートレースさながらの熱戦が繰り広げられた。

また、小学生を対象としたキッズスクールも行われ、今回は椿が講師を務め安定したストレート走行やコーナーリングをレクチャー。KINAN Cycling Teamの選手たちもサポートとして加わり、プロ選手たちと一緒に走る貴重な時間を過ごした。

また、このほどツール・ド・熊野(UCIアジアツアー2.2、5月30日~6月2日)への出場が発表されたAACA選抜チームのメンバー入りを賭けたトライアウトも実施中。すでに今節好走した選手に鈴木新史監督がヒアリングを行うなど、続々と注目選手が集まっている。次節・4月14日の第4戦(三重県いなべ市・農業公園梅林公園内特設コース)までがトライアウト対象レースで、23歳未満の選手たちの中から熊野路を走るメンバーが選出されることになる。

キナンサイクリングがツール・ド・熊野2019に出場

2019年で第21回を迎える国際サイクルロードレース「ツール・ド・熊野」の開催プレゼンテーションが大阪市内で行われた。ホストチームとして挑むKINAN Cycling Teamからも選手・スタッフが出席し意気込みを語ったほか、コースや出場チーム、会期中に実施される新たな取り組みの発表を見守った。

ツール・ド・熊野2019プレゼンテーション ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツール・ド・熊野といえば、KINAN Cycling Teamにとってシーズン最大目標となるステージレース。チーム本拠地である和歌山県・三重県にまたがる熊野地域が舞台となるビッグイベントでの個人総合優勝者の輩出が至上命題でもある。チームとして大会への意欲を示す意味でも、このプレゼンテーションでは選手・スタッフの口から強い意志を示すことが求められた。

今回チームから出席したのは、山本元喜・山本大喜両選手に加藤康則ゼネラルマネージャーの3人。第21回大会で展開される全4ステージのほか、すでに出場が決定している10チームの発表、さらには新たな取り組みとして行われる大会公式観戦ツアーの説明に耳を傾けた。

大会を主催する「SPORTS PRODUCE 熊野」角口賀敏理事長は、21回目の開催にあたって「第20回大会を節目に、さらに高い領域でのレース実施」を目指していくことを表明。会の半ばでは活躍が期待される選手・チーム監督が前へと出て意気込みを口にした。山本大喜はチームのお膝元でもある新宮市を中心に行われるレースでの活躍を誓うと、日本チャンピオンジャージをまとって登場した山本元喜も「チームの誰もが出場を目指している。日本王者だからといって出られるとは限らないし、チーム内選考で勝ち抜かなければいけない」と続く。

その後、加藤ゼネラルマネージャーからホストチームであるKINAN Cycling Teamの活動についての説明。サイクルメディアにとどまらず、関西圏を中心にテレビ局や新聞社などが集まる中、山本元喜着用の日本チャンピオンジャージの価値、同席する山本大喜の実績に触れるとともに、チームの活躍を高らかに誓った。

大会は例年通り、全4ステージ。0.7km個人タイムトライアルによるプロローグを皮切りに、113.2kmで争われる第1ステージ、熊野山岳での総合争いが激しさを増す第2ステージは109.3km。そして最終の第3ステージは104.3km。総距離は327.5km(パレード区間をのぞく、レース距離が変更となる場合あり)と予定されている。

また、プレゼンテーション開催時点で決定している出場チームは、国内外合わせて10チーム。所属選手が保有するUCIポイントの積算をもとにUCIが設定した、今季のUCIアジアツアー自動招待枠を確保している3チーム、KINAN Cycling Team、トレンガヌInc・TSGサイクリング(マレーシア)、HKSIプロサイクリング(香港)がそろい踏みを果たす。

大会は5月30日から6月2日までの日程で開催。大会公式ウェブサイトもリニューアルオープン。出場決定チームの追加やその他トピックが随時更新される見通しとなっている。

ツール・ド・熊野2019(UCIアジアツアー2.2)
●公式ウェブサイト

●ステージ
5月30日 プロローグ 0.7km個人タイムトライアル 和歌山県新宮市
5月31日 第1ステージ 113.2km 和歌山県新宮市
6月1日 第2ステージ 109.3km 三重県熊野市・御浜町
6月2日 第3ステージ 104.3km 和歌山県太地町
※レース距離は変更になる場合あり

●出場チーム(3月1日現在)
トレンガヌInc・TSGサイクリング(マレーシア)
HKSIプロサイクリング(香港)
アモーレ&ヴィータ・プロディル(ラトビア)
KFCサイクリング(インドネシア)
ソウルサイクリング(韓国)
ジョッティビクトリア(ルーマニア)
キナンサイクリング
チームUKYO
マトリックスパワータグ
ブリヂストンサイクリング
宇都宮ブリッツェン
シマノレーシング
愛三工業レーシング
イナーメ信濃山形
ユーラシアIRCタイヤ
AACA選抜チーム


KINAN AACA CUP 2019 第2戦で中島康晴が4人の争いを制す

東海地区を転戦するサイクルロードレースシリーズ「KINAN AACA CUP」の2019年シーズン第2戦が2月10日、愛知県新城市・新城総合公園で開催された。最上位カテゴリーの1-1クラスには、ホストライダーとしてKINAN Cycling Teamが出場。レースはスタートから激しい人数の絞り込みとなり、4人による優勝争いに。最後は中島康晴がスプリント力の違いを見せつけ、シーズン初勝利を飾った。

KINAN AACA CUP 2019 第2戦を制した中島康晴 ©KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

同地区のロードレースのレベル向上を主目的としつつ、このところは全国各地から参加希望者が集まるハイレベルなシリーズに。2019年初めてとなる新城市での開催は、新城総合公園内に設定した1.5kmのコースが舞台。周回の前半は下り基調、後半は上りがメインのレイアウトとなり、レース終盤の駆け引きにどう影響するかがポイントとなった。また、コース内のいたるところに鋭角コーナーがあり、スピードに乗せた状態でいかにコーナーを抜けるかといったテクニック、そして集団内でのポジショニングも求められるものとなった。

今節はサイクルエンデューロイベント「新城ヴェロフェスタ」との併催だったこともあり、上位カテゴリーの1-1と1-2、キッズレースの3クラスを実施。ホストを務めるKINAN Cycling Teamからは中島のほか、山本元喜、椿大志、山本大喜、新城雄大、荒井佑太の6選手が出走。30周回・45kmで争われた1-1クラスに臨んだ。

椿のファーストアタックで幕を開けたレースは、序盤からハイペースで進行。レース距離が短いことやKINAN勢が中心のプロトン(大集団)の動きによって、ハイスピードで周回数を減らしていく。そうした状況下では散発するアタックが決まることはなく、自然とプロトンの人数が減っていく流れとなっていく。10周を終える頃に先頭は8人に絞られ、KINANからは中島と山本元が加わった。

中盤に入って先頭グループと後続との構図が固まると、前を行く8選手による駆け引きが激しさを増す。ここで積極性を発揮したのが、津田悠義(EQADS)。ライバルに隙があると見るや、次々とアタックを試みる。この動きを中島がチェックし、一時的に2人がリードする場面もあったが、河田恭司郎(ロードレース男子部)や山田拓海(飯田風越高)、さらには山本元も追いつき、追走を図る後続との差を広げていく。やがて山本元が後方へと下がると、先頭は中島、津田、河田、山田に絞られる。

この4人が好ペースを維持したままレースは後半を迎え、そのまま優勝争いへと進んでいく。たびたび仕掛ける津田に対し、中島らがチェックに入る状況が繰り返される。中島もチャンスをうかがうが、展開を変化させるところまでは至らず、ライバルとなった3人の動きを見ながら重要な局面に備える。4選手による勝負は、そのまま最終周回へと持ち込まれた。

河田や山田の牽引も見られ、それぞれのよさが光った戦い。互角の勝負とあり決定打は生まれず、争いはスプリントにゆだねられた。最終コーナーを並ぶようにして抜けてきたのは津田と中島。優位な態勢となった2人がそのまま突き進むが、ここはやはり経験に勝る中島のスプリント力が発揮された。好勝負を演じた3選手からしっかりとリードを奪い、トップでフィニッシュラインを通過。イベントと合わせて観戦に訪れた多くのファンの前で、ホストライダーとしての役目を果たした。

2位以下は津田、河田、山田の順。約50人が出走したが、アクチュアルスタート直後からサバイバル化したレース展開によって、完走者は10人ほどに。寒波によって吹き付けた冷たい風も、選手たちにとっては強敵になったといえそうだ。

このほか、レース後のポディウムでは、優勝の表彰に臨んだ中島による即席のじゃんけん大会に。勝者によるプレゼントをかけて、ファンやレース関係者が混じっての“熱戦”が繰り広げられ、閉幕までにぎわいが続いた。

バリエーションに富んだレースセッティングが魅力のシリーズ戦。第3戦は3月2日に、岐阜県海津市・国営木曽三川公園長良川サービスセンター前の特設コースで開催される。次節は1-3クラス、1-4クラス、個人タイムトライアルも行われ、多くの参加者で盛り上がることが期待される。エントリーも受付中。詳しくは、シリーズ公式ウェブサイトで。

中島康晴のコメント
「新城ヴェロフェスタとの併催で盛り上がる会場で走ることができ、とてもうれしかった。レースはテクニカルなコースとあって、前方でレースを展開することやアタックなどの積極的な動きを意識して走っていた。
(先頭グループでは)津田選手の動きが活発で、一緒に走っていて強さを感じていた。津田選手のアタックに合わせて、自分がカウンターで仕掛けてみるといった動きも試したが、河田選手や山田選手も強くて振り切るところまではいかなかった。できれば人数を絞り込んで勝負したかったが、残り2周でスプリントで狙うことに切り替えた。
1月にニュージーランドで開幕戦を迎えられたことで、よい感覚で走ることができている。現状としてはコンディションを上げている段階だが、ニュージーランドで結果を残せなかった悔しさも含めて、今日はしっかり走ろうと思っていた。この勝利を弾みに、春のレース、さらには5月のツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野までつなげていきたい」

雨乞竜己が東海シクロクロス2018-2019第7戦で独走優勝

東海地区各県を転戦するシクロクロスシリーズ「東海シクロクロス」2018-2019シーズンの第7戦が1月27日、愛知県一宮市の大野極楽寺公園で開催され、最上位カテゴリーであるC1カテゴリーにKINAN Cycling Teamの雨乞竜己が出場。ねらい通りのレース運びをし、2018年に続き同コースでの2連覇を果たした。

東海シクロクロス2018-2019第7戦で雨乞竜己が優勝 ©KINAN Cycling Team / Midori SHIMIZU

大野極楽寺公園の特設コースは芝生、舗装、砂利、階段とさまざまなパートが入り混じる難コース。長い直線もあり、ロードレースとシクロクロスとの並行選手にも上位をねらいやすいコースといわれる。

KINAN Cycling Teamはこの冬シクロクロスに主眼を置く雨乞が、最上位カテゴリーであるC1カテゴリー(60分)に参戦。前節の愛知牧場(1月13日)では、機材トラブルによりリタイアしていて、今回は立ち直りを図るレースでもある。レース前には「昨年勝っている好きなコースなので2連覇したい」と意気込み、存在感を示すにはこれ以上ない舞台が用意された。

そして迎えたレースでは、前方グリッドからのスタートを生かしてダッシュを試みる。同シリーズの上位ランカーとともに、序盤は5選手の先頭パック形勢。そのなかでも、雨乞を含む3選手が先頭ポジションを争い、激しい出入りが繰り返された。

パートによってはコース取りが展開に影響を与えると見られていたが、やがて先頭に立った雨乞はレースの流れに合わせて走行ラインを適宜チョイスしていく。階段セクション付近では、バイク乗降がタイムロスにつながると見るや、その脇を乗車したままクリアしていくなど、アグレッシブに進んでいく。ねらい通りにライバルとのタイム差を広げていき、スタートから30分を迎えるころには2位から約20秒のリードを奪った。

レース後半は余裕の走りとなった雨乞だが、攻めることはやめず後続との差をグングン広げていく。1周目のラップタイムによって設定される周回数は今回、11周と定められたが、フィニッシュを迎えるころには後続と1分以上のタイム差に。

完全な独壇場とし、会場に駆け付けたファンの目を奪ったその走り。最後の直線はコース脇に立つファンとハイタッチをしながらのウイニングライド。オープン参加だったものの実質1位だった2018年に続き、得意とするコースで完勝となった。

レース後には「ねらったポイントでライバルに差をつけられたことがよかった」と勝因を語った雨乞。表彰式では多くの人たちからの拍手と歓声を受け、表彰台の最上段で笑顔を見せた。

雨乞にとってKINAN Cycling Teamのジャージでは初の本格参戦となったシクロクロスシーズンだが、いよいよ“本職”であるロードレースへ目を向ける。今シーズンのシクロクロス参戦はこれで終え、ロードの調整へと移っていく。(Text: 清水翠、Edit: 福光俊介)

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
「シクロクロスは試走でのルート分析がとても重要。ねらい通りに先頭に出て、ねらったポイントで差をつけられてよかった。差が開いてからはシケインなどは慎重に越えつつも、直線では積極的に踏み込んでいった。
シーズン終盤は結果が出せなかったが、終わりよければすべてよし。自身のシーズン最終戦を優勝で締めくくることができてよかった」