ツール・ド・コリア開幕…上位進出を目指してキナンがスタート

キナンサイクリングが出場するツール・ド・コリアが5月30日に韓国で開幕し、第1ステージは群山から天安までの184.6kmで行われた。フィニッシュ付近が平坦基調のスプリンター向けステージで、チーム最高位は雨乞竜己の31位だった。塚本一樹はレース前半の落車により負傷した影響でリタイア。第2ステージからのキナンは4人で各ステージの表彰台や総合上位でのUCIポイント獲得を目指す。

ツール・ド・コリア第1ステージ ©︎KINAN Cycling Team / Naoi HIRASAWA

第1ステージはのどかな韓国西岸に位置する群山から北上し、大都市・天安にフィニッシュするコース。勾配の厳しい3級山岳をはじめとしたアップダウンが続くが、終盤は平坦基調。残り2kmからフィニッシュまでは一直線のスプリントステージだ。スタート地点からのパレード走行の段階で、中西は集団前方に顔を出し、アタックに対応できる位置につけた。0km地点で正式スタートが切られるとすぐにアタック合戦が始まり、数名が抜け出しては吸収され、という展開が続いた。中西はこのなかでいくつかのアタックに反応。数選手で集団から抜け出す場面もあったが、逃げが容認されるには至らなかった。

約30kmにわたる激しいアタック合戦のあと、2選手の逃げが成功。ウィリエールが集団のコントロールを開始し、ようやくレースに落ち着きがもたらされた。キナン勢5選手はメイン集団内でレースを展開。2017年大会で2度の10位台フィニッシュという成績を残している雨乞のスプリントに備えることとなった。

逃げが決まってからは、2分程度の差で集団が追いかけるシンプルな展開になったが、19歳の若手塚本にアクシデントが起きた。集団前方の選手が道を間違えた影響で方向転換を余儀なくされ、その際に周囲の選手ともつれるような形で落車。左脚などを負傷し、追いついては上りで離される苦しい展開が続き、大きく遅れてリタイアとなってしまった。

残り約60kmを過ぎ、タイム差が縮まったタイミングでメイン集団から単独でブリッジした選手が逃げに合流。さらに残り30kmほどで集団が活性化し逃げ集団をとらえにかかったが、残り約25kmで新たに4人の逃げが形成された。キナン勢は逃げには入らず、引き続き集団スプリントでチャンスをうかがった。残り10kmからはクロフォードが集団内での位置取りに尽力。椿と中西も雨乞の周囲を走り、残り2kmからは中西が雨乞を集団前方に引き上げ、フィニッシュに向けて順調にレースを進めていった。

しかし、メイン集団の追走は届かず先頭の4選手が逃げ切りで優勝争いを展開。5位争いとなった集団スプリントで、雨乞は好位置からスプリントに臨んだが、別のラインを進むトレインに先行されトップから9秒差の31位という結果に終わった。中西も集団内の57位でフィニッシュしている。雨乞をアシストして仕事を終えた椿は2分14秒遅れの104位。ポジショニングでチームを助けたクロフォードは、残り1kmで集団落車に巻き込まれた影響で108位でフィニッシュしたが、救済措置によりメイン集団と同じ9秒差となっている。怪我明けの復帰レースで思わぬ落車に見舞われたクロフォードだが、幸い軽傷で走りには影響がなさそうだという。

第2ステージは天安から東へ進み、栄州にフィニッシュする202.6kmの大会最長ステージ。山間部を走るステージで、序盤と中盤に2つの2級山岳が設定されている。とはいえフィニッシュまでの1kmはゆるやかな下り基調になるなど、第1ステージ同様にスプリンター向けのコースプロフィールとなっている。初日で連携に手ごたえをつかんだキナンには、さらなる好成績が期待できそうだ。(Text:平澤尚威)

ツール・ド・コリア第1ステージ結果(184.6km)
1 チョウ・ヒョンミン(韓国、グンサン・インサム チーム) 4時間19分2秒
2 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +0秒
3 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) +0秒
4 ステパン・アスタフィエフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナ モータース) +2秒
5 ヤクブ・マレチュコ(イタリア、ウィリエールトリエスティーナ・セッレイタリア) +9秒
6 ルーカス・セバスティアン・アエド(アルゼンチン、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) +9秒
31 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +9秒
57 中西健児(KINAN Cycling Team) +9秒
104 椿大志(KINAN Cycling Team) +2分14秒
108 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +9秒
DNF 塚本一樹(KINAN Cycling Team)

個人総合時間
1 チョウ・ヒョンミン(韓国、グンサン・インサム チーム) 4時間18分52秒
2 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) +1秒
3 セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) +6秒
4 ステパン・アスタフィエフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナ モータース) +12秒
5 キム・オクチョル(韓国、ソウル サイクリングチーム) +18秒
6 ヤクブ・マレチュコ(イタリア、ウィリエールトリエスティーナ・セッレイタリア) +19秒
32 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +19秒
57 中西健児(KINAN Cycling Team) +19秒
100 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、KINAN Cycling Team) +19秒
108 椿大志(KINAN Cycling Team) +2分24秒

ポイント賞
1 ベン・ペリー(カナダ、イスラエル サイクリングアカデミー) 19pts

山岳賞
1 アレクサンダー・カタフォード(カナダ、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム)

チーム総合
1 イスラエル サイクリングアカデミー 12時間57分24秒
20 KINAN Cycling Team +9秒

雨乞竜己

雨乞竜己のコメント
基本的に後ろにいたり、要所要所で前に上がってゆっくり上りをクリアしたりという感じだった。スプリントはそこまでガチガチでやろうというわけではなくて、ボクがいるところにみんなが集まってくれる感じだった。10kmくらいからジャイさんに引いてもらって、その後は椿と健児が周りにいてくれた。当初のプラン通りにラスト2kmで健児に上げきってもらい、そこから自分でトレインに入って、いい場所からスプリントできた。切り離してもらうところまではうまくいったが、右にイスラエルサイクリングアカデミーのトレインができて、そこに割り込めなかった。前が逃げ切ったことがわかっていたので、集団ではそれほどバチバチやっているわけではなかったけれど。脚の調子は悪くないので、またどこかのステージでスプリントをねらいたい。

中西健児

中西健児のコメント
序盤は集団前方でアタックに参加していたが、それほど積極的にではなく、チャンスがあればと思っていた。30kmほどアタックが続いたが、ウィリエールトリエスティーナが逃げのメンバーをコントロールしていた。数名で抜け出した場面もあったが、あまり自分の力を使わず、周りのメンバー次第で行けたら行こうかなという感じだった。メイン集団に残ってからは、チームで近くにいて、上りはある程度集団前方で入って、雨乞さんやみんなの脚を残すようにしていた。終盤に向けてはジャイさんが位置取りをしてくれて、ラスト10kmを過ぎてからもみんなで連携できていたので、形としてはよかったと思う。

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キナンが2度目のツール・ド・コリアに挑む…上位進出を目指し5日間の戦いへ

韓国を舞台に5月30日から6月3日まで開催されるステージレース、ツール・ド・コリア(Tour de Korea)に出場選手するキナンサイクリングは29日、トレーニングライドやミーティングを行い5日間の大会に向けて準備を進めた。チームは2年連続2度目のツール・ド・コリア出場となる。今回のメンバーは雨乞竜己、ジャイ・クロフォード、椿大志、中西健児、塚本一樹。このうち雨乞、クロフォード、中西は2017年も出場している。怪我で戦列を離れていたクロフォードにとっては、1月のシャールジャ・ツアー(Sharjah Tour)以来のレース復帰。塚本は海外では2度目となるレースに挑む。

ツール・ド・コリアの開幕地に集まったキナンの出場5選手 ©︎KINAN Cycling Team / Naoi HIRASAWA

大会にはキナンを含む20チームが出場。欧米を拠点とするUCIプロコンチネンタルチームが4チーム参戦するなど強豪が集まっている。開幕前日にあたるこの日、選手たちは第1ステージのスタート地点となる群山でライドを行った。川沿いを走り、2時間ほどのトレーニングで最終調整。気温が高く日差しも強いため、大会中も暑さへの注意が必要になりそうだ。また、夜にはミーティングを開き、レース中の動きや注意すべきポイント、大会を通しての目標などを確認し合った。

韓国西岸から山間部に向かうツール・ド・コリアの各ステージは、レース終盤までアップダウンが連続するものの、フィニッシュ付近はスプリンターに有利なレイアウトが多い。なかでも最終第5ステージは、首都ソウルの周回コースでフィニッシュする完全なスプリントレースだ。一方で、山頂ゴールがないため逃げ切りを決めると総合成績で上位に入れる可能性も高くなるため、逃げをめぐる攻防も重要になりそうだ。

今回初めてチームの指揮をとる綾部勇成スポーツディレクターは、現役時代に何度もツール・ド・コリアを走った経験をもつ。「レースのクラスとともに選手のレベルも上がっているが、アジアのレースは人数が少なくヨーロッパの選手には慣れない部分もあるので、チャンスはある」とレースを分析。チーム作りについては「みんながのびのびと走れる環境を作ってあげたい。また、いつも石田哲也監督の指揮のもと走っていると思うので、違うなにかを与えられたら」と意気込みを語った。

第1ステージは群山から北に進路をとり、山間部を抜けて天安にフィニッシュする184.6kmで争われる。スプリンター有利なステージが多いとはいえ、初日から距離1.3kmで平均勾配9.9%という急勾配の山岳が登場。キナンにとっては、アップダウンを越えてゴールスプリントでチャンスをうかがう、チーム力が試されるステージになりそうだ。(文=平澤尚威)


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キナンがツール・ド・コリアに2年連続出場…ハイスピードバトルに挑む

韓国を舞台としたステージレース、ツール・ド・コリアが5月30日から6月3日まで同地で開催され、キナンサイクリングが2年連続で出場。ツール・ド・コリアは2017年に初出場を果たし、2018年は2年連続の招待枠を獲得。レースカテゴリーは1クラスで、例年上位カテゴリーのチームが参戦してハイレベルな戦いを展開する。同時期開催のツール・ド・熊野とあわせ、チームは2班編成でUCIアジアツアーを転戦する。

ツール・ド・コリアに出場するキナンの5選手

 
2018年の開幕地は同国中西部の港湾都市・群山。以降徐々に東へと針路をとり、いったん内陸部へと戻ったのち、首都ソウルの市街地サーキットでフィナーレを迎える。レース総距離は781.6km。ソウル夏季五輪から30年、この冬には平昌冬季五輪が開かれ、スポーツ熱の高まる同国だけにこの大会への関心度は高い。

各ステージとも細かなアップダウンこそあるものの、頂上フィニッシュや上級山岳ステージといった設定がなく、終始スピード域の高いレースとなることが例年の流れ。特にスプリンターや独走力に長けるスピードマンを擁する韓国選手が得意とするコースレイアウトで、実際に2017年は同国の若手有望株が逃げ切り勝利からそのまま個人総合優勝を達成。いかに数少ないチャンスをモノにできるかも、勝敗を分けるカギとなる。

キナンはこの大会に椿大志、塚本一樹、ジャイ・クロフォード、中西健児、雨乞竜己の5選手をセレクト。上りや小集団での争いを得意とするクロフォード、2017年の大会で上位進出まであと一歩に迫った中西、独走力のある椿、若手の塚本、そしてスプリントになれば絶対的な存在となる雨乞と、あらゆるレース展開に対応するメンバー編成。2017年は個人の最上位が総合7位、チーム総合では2位だったが、2018年はそれを上回る結果を求めるとともに、UCIポイントの獲得を目指して走ることになる。


ツール・ド・コリア
5月30日(水) 第1ステージ 群山〜天安 184.6km
5月31日(木) 第2ステージ 天安〜栄州 202.6km
6月1日(金) 第3ステージ 栄州〜旌善 192.4km
6月2日(土) 第4ステージ 旌善〜忠州 137.0km
6月3日(日) 第5ステージ ソウル 65.0km

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ツール・ド・熊野にキナンのガルシアなど6選手…総合優勝を目指す

和歌山県と三重県にまたがる熊野地域を舞台としたステージレース、ツール・ド・熊野が5月31日から6月3日に開催され、キナンサイクリングから6選手が出場する。チームにとってホームである熊野地域で行われる4日間のステージレースはシーズン最大の目標であり、目指すはもちろん個人総合優勝者の輩出となる。2015年のチーム発足から「熊野制覇」に挑みながらも、厚く高い壁に跳ね返されてきた。2018年は4度目の正直となるか。

ツール・ド・熊野に出場するキナンサイクリングの6選手

2018年は第20回の記念大会で、節目の年にホームチームが勝利できるかにも期待と注目が集まっている。大会はチームのメインスポンサー「キナン」角口賀敏会長が理事長を務める「SPORTS PRODUCE 熊野」が主催。キナンチームにとっては固い絆と縁で結ばれているレースでもあるという。4日間のレースは、2004年にユネスコ世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれる熊野古道の周辺道路を使用。大会初日の31日はプロローグとして0.7kmの個人タイムトライアルが設定され、最初のリーダージャージ着用者を決める。

6月1日の第1ステージからはロードレースステージを実施。113.2kmで争われ、細かなアップダウンと道幅の狭いトンネル、テクニカルなコーナーなどが選手たちをふるいにかけていく。109.3kmに設定される第2ステージは、風光明媚な熊野名物の「千枚田」をレース前半と後半に1回ずつ上り、中盤には最大の山岳ポイントである札立峠を通過。難攻不落のクイーンステージであり、上りだけでなく狭く急なダウンヒルもコースの特徴。例年ここでの戦いから総合争いの形成が見えてくる傾向にある。

最終の第3ステージはクジラで有名な太地半島での104.3km。2018年から一部コースがアレンジされ、国道42号線沿いに位置する道の駅「たいじ」の敷地内を通過するルートへ。美しい海が眼前に広がり、太地港からの上りやテクニカルなダウンヒルなどを経て、大会はフィナーレを迎えることになる。

ホストチームとして臨むキナンはこの大会に山本元喜、マルコス・ガルシア、サルバドール・グアルディオラ、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の6選手を招集。2017年に個人総合3位となったガルシア、2017年の第2ステージを制したルバ、同じく2017年個人総合7位で終えた山本元など、この大会との相性のいい選手がそろうとともに、熊野での戦い方を知る選手たちがセレクトされた。

5月に入り、上旬のスリランカTカップでは中島が、大会直前のツアー・オブ・ジャパンではガルシアがそれぞれ個人総合優勝と、勢いに乗るキナン。他のメンバーも調子を上げていて、個人はもとよりチーム力を示す絶好の機会となる。プロローグ終了後に行われる開会式では、出場選手を代表して新城が選手宣誓を務める予定。オーガナイザーのみならず、地元の人々による運営や大会成功を目指し尽力する、まさに「おらが街のサイクルイベント」。すっかり国内UCIレースとしての地位を確立したこの大会にキナンはタイトル獲得をかけて戦う。


ツール・ド・熊野
5月31日(木) プロローグ(新宮) 0.7km個人タイムトライアル
6月1日(金) 第1ステージ(赤木川清流) 113.2km
6月2日(土) 第2ステージ(熊野山岳) 109.3km
6月3日(日) 第3ステージ(太地半島) 104.3km

ツール・ド・熊野の公式サイト

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マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパンで初の総合優勝

2015年の初出場から4度目の挑戦で、キナンサイクリングが初の個人総合優勝者を輩出。チームにとってシーズン最大目標の1つであるツアー・オブ・ジャパンで、マルコス・ガルシアが初めて総合優勝を挙げた。リーダージャージを守り抜き、最高の栄誉を勝ち取ってチーム総合でも1位を堅守。個人・チームともに頂点に立ち、力をもって今大会の主役であることを証明した。

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージでグリーンジャージのガルシアを援護してゴールを目指すキナンサイクリング ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

大会をとおしてキナンは各選手がそれぞれに役割をまっとうし、個人・チームともに存在感を発揮してきた。大阪・堺で5月20日に開幕して以来、同日の堺国際クリテリウムで中島康晴が3位に入ったのを皮切りに、南信州での第5ステージでトマ・ルバが、富士山ヒルクライムの第6ステージでガルシアがステージ優勝。ルバの勝利以降、チームにグリーンのリーダージャージがもたらされ、翌日にはガルシアへと引き継がれた。加えて、第5ステージ以降チーム総合でも首位に立ち、選手層の厚さも示した。

前日の26日に伊豆で行われた第7ステージは獲得標高が約4000mと山岳ステージに匹敵する難コースで行われたが、アシスト陣の好走もあり終始レースをコントロール。終盤はガルシアが自らライバルの攻撃を封じ、個人総合優勝に王手をかけた。このステージを終えた時点での総合成績では、トップのガルシアだけでなくルバが個人総合3位に続いている。

ファイナルを飾る第8ステージは日比谷シティ前をスタートし1.2kmのニュートラル走行を含むワンウェイルートを経て、大井埠頭のサーキットコースへと入っていく。1周7kmを14周回。レース全体では112.7kmで争われる。コースはオールフラットで、スピード感あふれるダイナミックなレースが展開される。勝負はスプリントに限らず、逃げ切りが決まるケースもあり、あらゆる展開を想定して臨むことが求められる。

キナンはガルシアのリーダージャージをフィニッシュまで運ぶことが絶対的なミッション。残りの5選手がライバルチームの動きを見ながら、ガルシアの個人総合優勝、同時に首位に立つチーム総合での1位に向かって進んでいくことになる。

緊張感の中でスタートが切られたレースは、序盤からキナンにとってねらい通りの展開となる。サーキットコースに入るとともに3選手がアタック。いずれも総合成績に関与していない選手とあり、この動きを容認。キナン勢がメイン集団の統率を図り、それ以上の飛び出しは許さない。序盤はサルバドール・グアルディオラを中心にペーシングを図り、タイム差は約3分とする。

こうして淡々と進行していくが、レース中盤を前にスプリントフィニッシュをねらう数チームがアシストを出し合い、逃げグループとのタイム差を少しずつ埋めていく。キナン勢としては、他チームにコントロールを任せられる好状況へと変化。集団前方で隊列を組みながら、ライバルチームの動きのチェックに終始する。この状況は後半に入っても続いた。約1分30秒差と逃げを射程圏内にとらえつつも、一気にペースアップする流れではなかったこともキナン勢にとっては幸い。総合成績にかかわるような動きは見られず、ガルシアを安全に走らせることに集中しながら、フィニッシュまでの残り距離を減らしていった。

結局、逃げは最終周回に入る直前で吸収。代わってカウンターアタックを仕掛ける選手が出たものの、これも労せず捕まえ、レースは定石通りスプリントにゆだねられることに。キナン勢はガルシアの危険回避を図りながら、メンバーが近くに固まってフィニッシュを目指した。

そして、ついに歓喜のときがやってきた。スプリント勝負が繰り広げられた後方で、キナンメンバーがガルシアの個人総合優勝を喜び合いながらフィニッシュラインを通過。ガルシアも近くにいたメンバーと手を取りながら、王座確定の瞬間を迎えた。

チーム創設4年目、これまで手が届きそうで届かなかった国内最大級のツアータイトルをようやく獲得。終わってみれば、ステージ2勝に、個人・チームともに1位を獲得。個人総合においてはガルシアの優勝に続き、ルバも3位の座を守った。ガルシアにとってステージレースの個人総合優勝は、2017年9月のツール・ド・北海道以来2回目となる。また、チーム総合の表彰ではメインスポンサー「キナン」角口賀敏会長もゲスト登壇。活躍した選手たちとともに会場に集まったファンから大きな祝福を受けた。

今大会のキナンは順位的には目立たなかったステージも含め、予定していたとおりにレースが運び、ねらっていたステージできっちりと結果を残したことが、最高の成果につながったといえる。また、難コースに多くの選手が苦しめられた中、キナンは6人全員が完走。チーム加入1年目の山本大喜と新城雄大も十二分に機能し、ライバルチームに対して数的優位な状況を作り出したことも、勝因の1つとして挙げられそうだ。

チーム登録における上位カテゴリーの、UCIワールドチーム、同プロコンチネンタルチームから強豪も参戦し、いつになくハイレベルな戦いだった2018年のツアー・オブ・ジャパン。キナンにとっては目標達成にとどまらず、今後のビッグレースでの戦い方やチーム力の指標となる価値あるシリーズとなった。力のある選手がそろうチームにあって、今回の結果が出走メンバーだけでなく、メンバー外となった選手たちも含めた全体の底上げにもつながることだろう。

5月に入り、上旬のスリランカTカップに続くUCI公認国際レースでの立て続けの勝利。この波に乗って、たちまちやってくる次の戦いに挑むことになる。5月31日からはツール・ド・熊野が開幕。チーム本拠地である熊野地域での年間最大のチームイベント。2018年は第20回記念大会。ねらうはもちろん個人総合優勝だ。なお、この大会に臨むロースター(出場選手)は一両日中に発表する予定となっている。

ツアー・オブ・ジャパンを制したガルシア(中央)とチーム優勝のキナンサイクリング ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ結果(112.7km)
1 マルティン・ラース(エストニア、チームイルミネイト) 2時間23分12秒
2 アンソニー・ジャコッポ(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +0秒
3 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックスパワータグ)
4 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)
5 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
28 中島康晴(KINAN Cycling Team)
29 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
31 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
34 新城雄大(KINAN Cycling Team)
35 山本大喜(KINAN Cycling Team)
37 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team)

ツアー・オブ・ジャパン個人総合時間
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 19時間57分25秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +35秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +53秒
4 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分27秒
5 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分40秒
6 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分55秒
17 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +5分0秒
54 山本大喜(KINAN Cycling Team) +48分11秒
57 中島康晴(KINAN Cycling Team) +52分21秒
65 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1時間5分28秒

ポイント賞
1 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 110pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 41pts
19 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 18pts
26 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
46 新城雄大(KINAN Cycling Team) 6pts

山岳賞
1 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 24pts
4 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 15pts
17 新城雄大(KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 KINAN Cycling Team 59時間58分13秒

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
最終ステージについては、チームとしてよいプロトンコントロールができたと思う。逃げの3人をよいタイミングで行かせることができ、ねらっていたとおりのレース展開にすることができた。そしてなにより、個人総合優勝を果たせたことがとてもうれしい。(第5ステージでの)トマのステージ優勝に始まり、翌日の富士山では自分が勝つことができた。チームとしてはこれ以上ない出来になった。この勝利はチーム全員の働きがあったからなしえたもの。ライバルチームの動きをしっかりと読んで動いてくれたことにありがとうと言いたい。クイーンステージと考えていた伊豆(第7ステージ)でのみんなの働きは本当に素晴らしく、心から感謝している。

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マルコス・ガルシアがツアー・オブ・ジャパン伊豆で首位死守…総合Vに前進

日本各地をめぐり熱戦を繰り広げているツアー・オブ・ジャパン。大会は終盤戦へと突入し、5月26日は静岡県伊豆市で第7ステージが行われた。日本サイクルスポーツセンターを主会場とする120.8kmのレースは、今大会の総合争いの行方を決定づけるのにふさわしいレースが展開された。マルコス・ガルシアを個人総合のトップに送り出しているキナンサイクリングは、終始リーダーチームとしてのプロトン(メイン集団)での役割を果たし、ガルシアのリーダージャージを堅守。アシスト陣の好走もあり、鉄壁のレースコントロールを見せた。

ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージで首位を守ったマルコス・ガルシア ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日、富士山須走口五合目を目指したヒルクライムの第6ステージで、キナンはガルシアが3度目の挑戦で悲願のステージ優勝。残り約7kmで飛び出し、後続を寄せ付けない圧倒的な登坂力を見せつけた。その走りで個人総合でも首位に浮上。第5ステージの逃げ切り勝利でグリーンのリーダージャージに袖を通したトマ・ルバから、その座を引き継いだ。ルバは個人総合3位、両者のケアをしながらも自身のリザルトも安定しているサルバドール・グアルディオラが同6位につけ、チーム総合でも他チームに5分以上の差をつけてトップに立っている。

また、富士山ステージでは序盤に中島康晴、山本大喜、新城雄大の3選手が絶妙なペーシングを見せ、本格的な上りまでに逃げていた選手たちを吸収。クライマーたちによる力勝負に持ち込むお膳立てを演じた。

続く第7ステージは、日本サイクルスポーツセンター内のサーキットコースがメインとなる通称「伊豆ステージ」。2018年から修善寺駅前を出発してのパレード走行が行われ、その後ワンウェイルートを経て、1周12.2kmのサーキットへと入る。周回数は9回。テクニカルなコーナーやアップダウンが連続する難コースは、山岳ステージに匹敵するレベル。総合争いにおける最終決戦の舞台となり、有力チームが捨て身の攻撃に出ることが通例。2018年もサバイバルレースが予想される。キナンとしては、何よりもガルシアのリーダージャージを守り抜くことが最大のミッションとなる。

正式スタートと同時に激しいアタック合戦となったレース序盤。ときに10人以上が数秒先行する場面もあったが、早々にレースのコントロールを担ったキナン勢がしっかりと対処。個人総合で上位をゆく選手や、大人数の逃げは許さず、アタックする選手の動きを見定める。その間、個人総合で35秒差の2位につけるヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ)のアタックがあるも、これはガルシア自らがチェック。ライバルの動きは決して許さない姿勢をチーム全体で示す。

プロトンを統率するキナン勢が逃げを容認したのが2周目の終盤。6人がレースをリードすることとなるが、その中で個人総合で上位につける選手はガルシアから2分53秒差。キナン勢は逃げグループを先行させて、有力選手がひしめくメイン集団の動きを落ち着かせることに努める。

逃げグループとメイン集団との構図が決まってからは、ルバやグアルディオラに加えて、中島、新城、山本らもペーシングを行い、前とのタイム差を約3分で推移させる。レース後半に入り、その差を少しずつ縮めて調整していくが、無理に追い上げることはせず、ライバルの動きを見ながら進んでいく。

7周目に入って逃げグループが崩れて、先頭をいくのは3人となる。一時メイン集団とのタイム差が再び3分となるが、ここは慌てずキナン勢のコントロールで安全圏へと戻していく。距離を追うごとにアシストを減らしていくが、終盤からは満を持してグアルディオラとルバが集団牽引を本格化。ライバルにとってはそう簡単には攻撃ができない状況を作り出していった。

そしてレースはいよいよ最終周回へと突入。逃げる3人とメイン集団との差は1分45秒。先頭の3選手はガルシアとの総合タイム差に開きがあることから、キナン勢としては逃げ切りを容認する構え。それ以上に、わずかな可能性に懸けて攻撃を繰り返すペルシュタイナーへのチェックが最優先となる。ここからはガルシアが自ら反応し、アタックを阻止していく。

逃げの3人はそのままステージ優勝争いへ。それから1分18秒後、メイン集団が最後の直線へとやってきた。わずかな上り基調の最終局面は、ガルシアにとっては問題なし。ペルシュタイナーら総合上位陣と同集団でフィニッシュラインを通過。リーダージャージのキープが確定。総合タイム差を縮められることなく、難関ステージを乗り切った。

ガルシアらのグループからわずかに遅れたルバだったが、こちらも個人総合3位をは変わらず。総合表彰台に2人が王手をかけることとなった。加えてチーム総合でも首位を保っている。

そのほか、キナン勢はグアルディオラ、山本、新城、中島の順でフィニッシュへ。グアルディオラは総合順位を落とすこととなったが、自身の成績を犠牲にしても大切なリーダージャージへの執念を見せて、チームに貢献。前日に続き、キナンの角口賀敏会長夫妻、角口友紀・同社長夫人家族が駆け付けた中でパーフェクトなレースを選手たちが演じた。

20日に始まった大会は、華やかなレースを続けながら東へと進んできた。そして28日、ついに最終目的地の東京へと到達する。最後となる第8ステージは、日比谷シティ前をスタートし1.2kmのニュートラル走行を含むワンウェイルートを経て、大井埠頭のサーキットコースへと入っていく。1周7kmを14周回。レース全体では112.7kmで争われる。コースはオールフラットで、スピード感あふれるダイナミックなレースが展開される。セオリーではスプリント勝負だが、これまで何度か逃げ切りが決まったケースもあり、選手たちの思惑が行き交うステージとなりそう。

キナンとしては、ガルシアのリーダージャージをフィニッシュラインまで運ぶことが最大のミッション。レース中のトラブルやアクシデントを避け、いかにセーフティーに走り切るかがポイントになる。悲願のツアー・オブ・ジャパン制覇に向けて、より集中してレースへと臨む。

ツアー・オブ・ジャパン第7ステージ結果(120.8km)
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 3時間29分53秒
2 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +0秒
3 フェリックス・アレハンドロ・バロン(コロンビア、チームイルミネイト)
4 ベンジャミン・ベリー(カナダ、イスラエルサイクリングアカデミー) +1分18秒
5 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO)
6 中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ)
11 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team)
18 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +1分25秒
23 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +4分11秒
47 山本大喜(KINAN Cycling Team) +15分37秒
63 新城雄大(KINAN Cycling Team) +22分22秒
64 中島康晴(KINAN Cycling Team)

個人総合時間
1 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 17時間34分13秒
2 ヘルマン・ペルシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) +35秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +53秒
4 クリス・ハーパー(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分27秒
5 グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +1分40秒
6 サム・クローム(オーストラリア、ベネロング・スイスウェルネスサイクリングチーム) +1分55秒
17 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +5分0秒
54 山本大喜(KINAN Cycling Team) +48分11秒
58 中島康晴(KINAN Cycling Team) +52分21秒
66 新城雄大(KINAN Cycling Team) +1時間5分28秒

ポイント賞
1 グレガ・ボレ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 107pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 41pts
17 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 18pts
22 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 13pts
37 新城雄大(KINAN Cycling Team) 6pts

山岳賞
1 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) 24pts
4 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 15pts
17 新城雄大(KINAN Cycling Team) 3pts

チーム総合
1 KINAN Cycling Team 52時間48分37秒

マルコス・ガルシア

マルコス・ガルシアのコメント
序盤からハイペースのレースになったが、途中からチームとして集団を落ち着かせて逃げとのタイム差を調整していった。3選手の逃げ切りはまったく問題がなく、チームのプラン通りにレースを進められたことがより重要だと考えている。昨年ステージ優勝を挙げた伊豆だけれど、今年はまったく違った状況でこの日を迎えたから、ステージ優勝は特に考えず、リーダージャージのキープを最優先に臨んだ。チーム、そして私を信じてくれているキナンの角口賀敏会長には心から感謝を伝えたい。今日はチームメートが最初から最後まで働いてくれて、私としては楽にレースを終えることができたと感じている。

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