キナンがいなべ市内の小学校でウィーラースクール…自転車交通安全教室

開幕を5月20日に控えた国内最大級のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」に向け、キナンサイクリングは同大会関連の地域貢献活動に参画。チームのホームステージが行われる三重県いなべ市の小学校2校を訪問し、ウィーラースクール(自転車交通安全教室)を実施。自転車の正しい乗り方をレクチャーすることはもちろん、地域児童との交流を通して大会本番での活躍を誓った。

員弁東小学校でウィーラースクールが開催された ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

ツアー・オブ・ジャパンではステージごとに独自の「ホームチーム」を設定し、レース内外での地域交流を日ごろから促す取り組みが行われている。それを通じ、選手・チームは地域の人たちに活躍を約束し、地域の人たちは愛するチームを全力応援する、という自転車文化の構築がなされている。キナンは第3ステージにあたる「いなべステージ」をホームとし、レース当日の各種催しはもとより、通年での地域貢献活動に参画している。2度のウィーラースクールもその一環。特に大会開幕直前のこの時期に行うことで、いなべステージ本番への思いを高める効果が期待される。

チームは5月8日にいなべ市立十社(とやしろ)小学校、10日に員弁(いなべ)東小学校を訪問。十社小学校には山本元喜、中島康晴、新城雄大の3選手、加藤康則ゼネラルマネージャー(GM)、石田哲也監督が参加。員弁東小学校には椿大志、中西健児、山本大喜、雨乞竜己、加藤GMに加え、「ウィーラースクールジャパン」主宰のブラッキー中島氏を講師に招いて4~6年生を対象にスクールを進行した。

ウィーラースクールとはベルギー発祥の自転車教育カリキュラム。ただ自転車の乗り方を学ぶだけでなく、乗る楽しみや安全な乗り方について大人と子供が一緒に考える機会の提供も目的とする。員弁東小学校でのプログラムではブラッキー氏がスライドを用いて自転車の歴史や実際に起こった事故の例、そして安全に乗るための意識の持ち方などを説いた。

スクール後半は実技の時間として、キナンの選手たちがお手本を示しながら、レーン走行や一本橋走行、パイロンの間を通過するスラロームなどを行った。まっすぐ走るばかりでなく、走行環境に合わせた左右への体重移動やハンドル操作も実践。予想以上の難しさに児童から驚きの声が上がる場面も見られた。スクールを終えた児童からは、「いままで以上に安全に乗ることを意識する」「自転車の楽しさに気が付いた」といった声も。また、スクールの合間には選手たちが大勢の児童に囲まれるなど、約1時間のふれあいであっという間に打ち解けた様子だった。

最後は「キナンがんばれ!」の掛け声で締めくくり。選手たちはツアー・オブ・ジャパンいなべステージでの活躍を約束した。キナンがホストとなるいなべステージは5月22日(水)午前9時20分に同市内の阿下喜駅をスタート。パレード走行ののち、いなべ市梅林公園を主会場とする周回コースで127kmに及ぶレースが繰り広げられる。

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福田真平が逃げ集団のスプリントを制す…KINAN AACA CUP第5戦

東海地区を転戦するロードレース「KINAN AACA CUP」の2018年シリーズ第5戦が5月5日、岐阜県の国営木曽三川公園長良川サービスセンター特設コースで行われた。メインレースの1-1カテゴリーは福田真平(日本競輪選手会愛知県支部)が逃げ集団でのスプリントを制して優勝。元プロロードレーサーとしての意地を見せつけた。

KINAN AACA CUP 第5戦は福田真平が逃げ集団のスプリントを制す ©︎KINAN Cycling Team / cyclejam

同地区におけるロードレースシーンのレベルアップを目的に開催されるシリーズ戦は、オールフラットの長良川のコースでスピード感あふれるレースが展開されるのが特徴。ホストチームとして臨むキナンからは山本元喜、椿大志、山本大喜、塚本一樹がエントリー。2018年のアンダー23(23歳未満)ロードレースアジア王者の山本大はシリーズ戦初参加。チームは同時期にUCIアジアツアー遠征を行なっていたこともあり、国内で調整する選手のみで臨むこととなった。

正午にスタートを切ったメインカテゴリーの1-1クラスは、スタート直後から序盤に設けられた周回賞をねらってのアタックで激しい出入りが見られるものの、逃げグループの形勢にはいたらない。変化が生まれたのは4周目。9人がリードを開始し、福田のほか、水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)や中里仁(Rapha Cycling Club)らの先頭集団にキナンからは山本元が加わった。

やがて8人となった逃げグループだが、レース全体がハイペースで進行。メイン集団も前を行く8人を射程圏内にとらえながら走り続け、レースが終盤を迎えようかというころには吸収する可能性が徐々に高まっていった。しかし、粘る8人はギリギリまでハイペースを維持し続け、追いすがるメイン集団が最終周回、それも最後のコーナーでようやく追いつき、フィニッシュには多くの選手がなだれ込む形となった。

し烈を極めた優勝争いは、最終コーナーを先頭で抜けた逃げ8人がそのままスプリント態勢に入りフィニッシュラインを通過。実質的には逃げ切りの格好となり、最後の直線で抜群の加速を見せた福田が今シリーズ初優勝を果たした。愛三工業レーシをはじめ、ロード選手としてキャリアを積んだ福田選手は競輪に転向し、この3月に日本競輪学校を卒業。デビューが控えている中で、ロードでもその力が健在であることを示した。
(Report:サイクルジャム、Edit:福光俊介)

KINAN AACA CUP 2018 第5戦1-1クラス(102km、5.1km×20周回)
1 福田真平(日本競輪選手会愛知県支部)
2 寺田吉騎(磐田北高校&Vivace-掛川)
3 中里仁(Rapha Cycling Club)
4 和田宗浩(イナーメ信濃山形)
5 水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)

KINAN AACA CUP 2018 ポイントランキング(第5戦終了時)
1 新城雄大(KINAN Cycling Team) 576pts
2 アイラン・フェルナンデス(マトリックスパワータグ) 512pts
2 福田真平(日本競輪選手会愛知県支部) 512pts
2 津田悠義(EQADS) 512pts
2 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 512pts
2 中島康晴(KINAN Cycling Team) 512pts

■ブレーキングをテーマに行った「レーススキルアップ講座」
KINAN AACA CUP恒例の「レーススキルアップ講座」。ビギナーから上級者まで幅広く参加が可能で、国内外でのレースで経験と実績を積むキナンの選手たちが講師を務めるとあって毎回好評だ。今回のテーマは「ブレーキング」。レースや練習中の不測の事態でも、安全に減速できるバイクコントロールが選手には求められる。そこで、レースでの活躍を誓う受講者に対し、制動技術の必要性を説くとともにブレーキングのスキル向上を図った。また、1-1カテゴリーのレース前には、恒例となったキッズ限定のオープニングランを実施。サイクリングを志す子供たちとキナンの選手たちとが交流を図りながら、実際にレースで使用されるコースを走った。

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中島康晴がスリランカTカップで総合優勝…ライバルの猛追を1秒差で振り切る

キナンサイクリングの中島康晴が3日間のステージレース、スリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)で総合優勝した。第1ステージで優勝し、リーダージャージを着続けて最終日に臨んだが、その座を守り切った。最後はスプリントボーナスをかけた争いとなり、ライバルの猛追を振り切って僅差の勝負を制した。2位の選手との総合タイム差は1秒だった。

スリランカTカップで個人総合優勝した中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スリランカを構成するセイロン島の東海岸から西海岸とを結ぶ戦いは5月6日が最終日。4日に始まったレースは各ステージ100km前後と短いことも関係し、終始プロトン(メイン集団)内での出入りが激しいものに。キナンは第1ステージに中島が逃げ切りでステージ優勝を決めて以来、リーダーチームの立場として戦いを続けてきた。前日の第2ステージでは中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大のアシスト陣が絶妙の集団コントロール。中島のリーダージャージ堅守に大きく貢献した。

トップをいく中島と、個人総合2位のステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)との総合タイム差は、第2ステージを終えて3秒。中間スプリントとフィニッシュで上位選手に付与されるボーナスタイム次第では、その差を開くことも逆転もできる状況。今大会でもキナンとヴィノ・アスタナモータースのチーム力が群を抜いていて、第3ステージも両チームの攻防戦となることが予想された。

このステージは、前日のフィニッシュ地であるキャンディからニゴンボまでの118.5km。スタートから5.8kmでこの日唯一の山岳ポイントが設けられ、その後はダウンヒルを経ておおむね平坦路となる。ただし、前夜の強い雨により序盤の登坂区間とダウンヒル区間には泥が浮いている場所もあることから、落車やバイクトラブルには十分に注意を払う必要があった。

そんな中で始まったレースは、スタート直後からアタックの応酬。ただし、この流れは山岳ポイントを通過するころには沈静化。4人が先行したのを機に、キナンが集団のコントロールを開始する。その後も逃げをねらう選手が集団から発生するものの、容認できる選手とできない選手とをキナン勢を中心にセレクション。やがて総合成績に大きな影響を及ぼさない6人に逃げが固まり、キナン勢はしばらく彼らを先行させた。

しかし、33.6km地点に設けられたこの日1つ目のスプリントポイントに近づくと、ライバルのヴィノ・アスタナモータースが集団のスピードアップを図る。スプリントポイント直前で逃げを捕らえたことから、キナン勢も中島でのスプリントに備えるが、結果的に総合成績の上位に関係しない選手が上位通過。中島もボーナスタイムをねらって動いたが4位。ここでの総合タイム差拡大はならなかった。

この直後、今度は集団から7人が飛び出し、徐々にリードを広げていく。集団のコントロールを担うのはキナン。最大で約3分差までリードを許容し、次なる展開へと備える。

集団のムードが変化したのは、スタートから80kmを迎えようかというタイミング。キナン勢のコントロールにヴィノ・アスタナモータース、トレンガヌサイクリングが加わり、逃げる選手との差を縮め始める。3チームの思惑が交錯する中、レースは終盤戦へ。逃げグループも最後のチャンスに賭けてペースアップ。人数を減らしながら、先を急いだ。

フィニッシュまで残り20kmとなったところで逃げと集団とのタイム差は2分10秒。さらに集団の勢いは増し、残り10kmでは約1分。そして、残り5kmを迎える直前で逃げを吸収。集団は1つとなり、勝負はスプリントにゆだねられることになった。キナン勢は中島での勝負に備え、本来はエーススプリンターの雨乞をリードアウト役に抜擢。集団前方でのポジショニングで中島を好位置へと引き上げる。そして、今大会最大のクライマックスの時を迎える。

スリランカTカップ第3ステージのゴール勝負。右が2位のアスタフイェフ。黄色いジャージが3位の中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

長い直線を経て始まったスプリントは、アスタフイェフが最前列から加速。これをチェックするように中島も反応。追い上げる形になった中島だったが、アスタフイェフの背後につけ、両者がなだれ込むようにフィニッシュ。ステージ優勝こそ他選手に譲ったものの、アスタフイェフが2位、中島が3位となった。この結果、アスタフイェフがフィニッシュボーナスで6秒、中島が4秒をそれぞれ獲得。総合タイム差3秒で始まった最終ステージは、わずか1秒で中島に軍配。個人総合優勝決定の瞬間は、劇的なものとなった。

結果を知って喜びを爆発させたキナンの選手たち。第1ステージで中島がチームに今シーズン初勝利をもたらしたが、その勢いのまま新たなタイトル獲得にこぎつけた。中島個人にとっても、UCIレースにおけるキャリア通算9勝目、そしてチームにとっては発足4年目にして初となる日本人選手でのUCIレース個人総合優勝となった。

キナンはそのほか、チーム総合で3位、スプリント賞では最終日にアスタフイェフの逆転を許したものの、中島が2位。最後までチーム力を誇示した3日間だった。

主戦場のUCIアジアツアーで組織力の高さを示したキナン。チーム最大目標であるツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野が近づく中、大きな弾みとなる勝利を挙げることとなった。また、同時に日本人選手の底上げが着々と進んでいることも証明する今大会だった。この勢いのまま、チームはレース活動を続けていくこととなる。次戦は5月12日のJBCF 宇都宮クリテリウムを予定している。

スリランカTカップで総合優勝した中島康晴(中央)とキナンのチームメート ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スリランカTカップ 第3ステージ結果(118.5km)
1 モハドハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム) 2時間44分36秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +0秒
3 中島康晴(KINAN Cycling Team)
4 イルワンディ・ラカセク(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム)
5 シーン・ウィットフィールド(オーストラリア、オリバーズリアルフードレーシング)
6 キム・ジュセク(韓国、ガピョンサイクリングチーム)
10 雨乞竜己(KINAN Cycling Team)
20 中西健児(KINAN Cycling Team)
30 新城雄大(KINAN Cycling Team)
41 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +33秒

個人総合時間
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 7時間45分3秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +1秒
3 平塚吉光(チームUKYO) +16秒
4 ローガン・グリフィン(ニュージーランド、ネックス・CCNサイクリングチーム) +2分38秒
5 吉岡直哉(チームUKYO) +2分45秒
6 イェフゲニー・ネポムニャフシー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +2分51秒
14 中西健児(KINAN Cycling Team) +3分42秒
15 新城雄大(KINAN Cycling Team) +3分58秒
16 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +4分31秒
38 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +18分53秒

スプリント賞
1 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) 35pts
2 中島康晴(KINAN Cycling Team) 34pts

山岳賞
1 ジュリアン・アマドリ(フランス、チームフランスディフェンス) 25pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 10pts
9 中西健児(KINAN Cycling Team) 2pts
10 新城雄大(KINAN Cycling Team) 2pts

チーム総合
1 ヴィノ・アスタナモータース 23時間21分39秒
3 KINAN Cycling Team +1分26秒

中島康晴

中島康晴のコメント
自分でなにかを残せたレースというのは第1ステージだけだと思っている。残りの2日間はみんなが支えてくれた。自分の勝利ではあるけれど、それ以上にチームの勝利として価値のあるものになった。日本籍のチームとして、日本人選手が活躍することがチーム理念の1つ。それを果たせたことがなによりうれしい。この先にはツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野が控えていて、そこに向けてこの勝利が大きな勢いになるのではないか。メンバー入りができれば今度は自分がみんなを助ける番になる。
ジャージを守るうえで、総合に関係しない選手の逃げなどをどう選別していくのかは、トマが中心となって若い選手たちにアドバイスしながらレースを進められた。中西、雨乞、新城がトマの期待に応えて働いてくれたことが勝因として挙げられると思う。

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中島康晴がスリランカTカップでリーダージャージを死守して最終日へ

キナンサイクリングが出場するステージレース、スリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)は5月5日に同地で第2ステージが行われた。前日のステージ優勝によって中島康晴がリーダージャージを着て出走したが、終始キナン勢がレースを統率。個人総合首位の座をキープしてステージを終えた。中島はリーダージャージに加えてスプリント賞でも首位を守っていて、残る1ステージにタイトルを懸けることになった。

スリランカTカップでリーダージャージを死守した中島康晴 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

前日の第1ステージでは、レース序盤から逃げた選手たちによる勝負となり、優位にレースを進めた中島がステージ優勝。チームに今シーズン初勝利をもたらした。個人総合でも首位に立つ中島は、イエローのリーダージャージで第2ステージを出走。ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)が3秒差で続いていることから、ボーナスタイムが適用される中間スプリント、フィニッシュを含めて、ライバルの動きに気を配りながらレースを進めることになる。中島を支えるのは中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大の4人。

この日のルートはマヒヤンガーナヤからキャンディ(Kandy)までの85.3km。今大会の最短距離でありながら、唯一の山岳ステージ。中盤に2つのカテゴリー山岳が立て続けに現れ、選手たちをふるいにかける。2つ目の山頂を通過すると、フィニッシュまで約37km。登坂力とスピードが問われるコースセッティングとなった。

レースが始まると、序盤の平坦区間から次々とアタックが発生。出入りの激しい中で、10km地点を過ぎて8人が先行を開始。メイン集団のコントロールはキナン勢が担い、この8人の動きを容認する。その後は逃げグループとのタイム差をコントロールしながら進行。追走を狙う選手の動きを押さえながら、山岳区間へと入る。

上りに入るまで集団を牽引した雨乞が役目を終えると、入れ替わるようにアスタフイェフを擁するヴィノ・アスタナモータースがペースアップ。メイン集団の人数が徐々に減っていくが、キナン勢は雨乞をのぞく4人が集団前方をキープして次の展開へと備える。その間に逃げグループも崩壊し、1人が先行する形と変化した。

1つ目の山岳を先頭から45秒差で通過したメイン集団。ここから再びキナン勢が集団コントロールを開始。ときおりアタックする選手が現れるが、中西や新城らがメイクするペースによっていずれも逃げの態勢まで移ることができない。2つ目の山岳に入ってからは、満を持してルバが集団を牽引。他選手のアタックをすべて封じ、中島を引き連れながら山頂を通過した。

しばらく逃げ続けていた1選手は60km地点を過ぎたところで吸収。代わって数人がカウンターアタックを仕掛けた中からヴィノ・アスタナモータース勢が先頭へ。さらにチームメートの1人が合流し、2人がリードを開始。キナンにとってはライバルチームの動きながらも、個人総合に関係しない選手とあり、逃げ容認の構え。先頭の2人はメイン集団を振り切り、そのままフィニッシュへ。ヴィノ・アスタナモータース勢がワン・ツーフィニッシュを達成した。

トップから遅れること38秒でメイン集団がゴール。最後までアシストに守られて走った中島もスプリントに加わり、6位でフィニッシュ。個人総合を争うアスタフイェフが5位だったことから、互いにボーナスタイム獲得はなし。総合タイム差3秒は変わらず2日目を終えることとなった。

これにより中島はリーダージャージをキープ。同時にスプリント賞でも首位を守り、2部門でリーダーのまま最終ステージへ。またキナン勢は、個人総合争いにおいてライバルとなり得る選手の動きをチェックしながら、終始レースをコントロール。アシスト陣がプロトン(メイン集団)を完全に統率し、中島のリーダー堅守に大きく貢献した。

大会は残すところ1ステージ。最終日はキャンディからニゴンボ(Negombo)までの118.5km。スタートして5.8kmでこの日唯一のカテゴリー山岳を通過するが、その後はおおむね下り基調。33.6km、77.8km、106.8kmの3カ所に中間スプリントポイントが設けられていて、レース展開次第ではここで付与されるボーナスタイムが個人総合争いを左右する可能性もある。最大10秒のボーナスが与えられるフィニッシュと合わせて、ライバル同士の駆け引きも勝負の大きな要素となる。

引き続きリーダーチームとして臨むキナンは、中島の個人総合優勝を懸けて第2ステージに続いてのプロトン統率を行う。これまでに培ってきた組織力が試される1日となりそうだ。

スリランカTカップ 第2ステージ結果(85.3km)
1 イェフゲニー・ネポムニャフシー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) 2時間12分23秒
2 アルマン・カミシェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +12秒
3 ニコラス・ホワイト(オーストラリア、オリバーズリアルフードレーシング) +38秒
4 ヌルアミルルファクルディン・マズキ(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム)
5 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)
6 中島康晴(KINAN Cycling Team)
13 中西健児(KINAN Cycling Team) +41秒
16 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +57秒
17 新城雄大(KINAN Cycling Team)
47 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +15分52秒

個人総合時間
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 5時間0分31秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +3秒
3 平塚吉光(チームUKYO) +12秒
4 ローガン・グリフィン(ニュージーランド、ネックス・CCNサイクリングチーム) +2分34秒
5 吉岡直哉(チームUKYO) +2分41秒
6 イェフゲニー・ネポムニャフシー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +2分47秒
14 中西健児(KINAN Cycling Team) +3分38秒
16 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +3分54秒
17 新城雄大(KINAN Cycling Team)
38 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +18分49秒

スプリント賞
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 24pts

山岳賞
1 ジュリアン・アマドリ(フランス、チームフランスディフェンス) 25pts
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 10pts
8 中西健児(KINAN Cycling Team) 2pts
9 新城雄大(KINAN Cycling Team) 2pts

チーム総合
1 ヴィノ・アスタナモータース 15時間7分51秒
3 KINAN Cycling Team +1分26秒

トマ・ルバ

トマ・ルバのコメント
素晴らしいレースコントロールができた。今日は短くも難易度の高いステージだったけれど、なにが起こるか分からないレースだからトライを続けていく必要があった。力のある選手のアタックもあったけれど、なによりよい1日にできたことがうれしい。(チームプレーが生きた)こうした経験は今後に必ず生きる。今日の(中西)健児の走りは、昨年のツール・ド・フローレス(ルバが個人総合優勝)で私をアシストしてくれた時の経験があったからこそできたものだと感じている。若い選手たちにとっては、1つひとつの経験を積み重ねていってほしい。
最終ステージを残すのみとなったが、決して簡単な1日にはならない。多くの選手が攻撃に転じるだろうし、われわれも再びトライをしていかないといけない。とにかく戦い抜くだけだ。

中島康晴

中島康晴のコメント
今日は完ぺきだった。これほど頼もしいメンバーはいないのではないかと思うくらいに、素晴らしい展開を作ってくれた。レース前半は雨乞がしっかり働いてくれて、その後は集団の人数が絞り込まれてもキナンは4人を残すことができた。数的有利な状況を作り出せたことで、ライバルチームの動きを封じ込められた。そのおかげで、自分はリーダージャージを守ることだけに集中できた。
ステージレースの最終日はなにが起こっても不思議ではない1日になる。一番大事なステージになるので、これまでの自分の経験を生かして結果につなげたい。平坦ステージということで、スプリントをねらうチームもあると思う。いろいろなチームの動きを見ながら、展開に合わせて走ることができればと考えている。

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中島康晴がスリランカTカップ第1ステージで優勝…3人のゴール勝負を制す

キナンサイクリングが出場するスリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)が5月4日に開幕。123.9kmで争われた第1ステージは、序盤から逃げ続けた3選手がそのまま優勝争いに転じ、最後はキナンの中島康晴が制してステージ優勝。2018年シーズンのキナンに初めての勝利をもたらした。この結果、中島はリーダージャージを獲得し、第2ステージからは個人総合首位としてレースに臨む。

中島康晴がスリランカTカップ第1ステージで優勝 ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

UCI公認の国際レースとしては初開催となるスリランカTカップ。同国を構成するセイロン島の東海岸から西海岸まで、3日間・327.7kmで結んでいく。キナンはこの大会に向けて中島のほか、中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大の5選手を招集。各ステージのレース距離が100km前後と短いことから、スピード重視のメンバー編成で同国へと乗り込んだ。

迎えた第1ステージは、パサイクーダ(Passikudah)からマヒヤンガーナヤ(Mahiyanganaya)までの123.9km。スタートからフィニッシュまでの高低差は約90mと、ほぼ平坦にカテゴライズされるレイアウト。35度前後の気温の中でのレースとあり、有力チームを中心に絞り込みが進むことを想定。キナン勢は確実に前方に位置し、重要な局面を複数のメンバーで対応していくことを意識した。

スタート直後から始まったアタック合戦では、ライバルチームの動きを見ながらチェックを繰り返したキナン勢。10km地点を過ぎたところで13人が飛び出すと、そのまま逃げの態勢へ。キナンからは中島が加わり、レースを先行する。最大で約4分のリードとした中島らの逃げだが、メイン集団もフィニッシュまで残り50kmを切ったあたりからペースを上げてタイム差を縮めていく。

逃げグループに変化が生まれたのは残り約40km。他選手のアタックに中島が反応すると、もう1人を加えてそのままペースアップ。一緒に逃げてきた他の10人を振り切って先を急いだ。途中で通過したこの日2回目のスプリントポイントでは、中島が2位通過している。一度縮まった後続とのタイム差だったが、3人の逃げとなってからは拡大傾向に。やがて逃げ切りを濃厚とした中島らは、ステージ優勝を懸けての駆け引きへと移っていく。残り10kmを切ってからはフィニッシュまで一直線。フィニッシュまでの距離を減らしながら、相手の様子をうかがっていく。

3人の形勢に大きな変化はなく、勝負はスプリントへ。2番手につけ、ライバルの動きを読み切った中島は、万全の態勢になったラスト100mで加速。労せず先頭に立つと、追う2人を寄せ付けずトップでフィニッシュラインを通過した。中島にとっては、キャリア通算8勝目(UCIレースのみ)、そしてキナンにとってはついにやってきた今シーズン初勝利。UCIレースでの成績と同時に、日本人選手の強化を目指す過程にあるチームにとって、今後の弾みとなる大きな勝利になったといえそうだ。

途中まで中島らと逃げていた第2グループの10人をはさみ、残るキナン勢4人が含まれたメイン集団は3分23秒差でフィニッシュ。レースを終えて中島の勝利を知り、メンバーは喜びを爆発させた。これにより、中島は個人総合首位に立った。また同時にスプリント賞でもトップになっている。

5日に行われる第2ステージは、マヒヤンガーナヤからキャンディ(Kandy)までの85.3km。今大会最短距離でありながら、唯一の山岳ステージ。中盤に2つのカテゴリー山岳が立て続けに現れるが、2つ目の山頂からフィニッシュまで約37km残されている。あらゆる展開が想定されるが、リーダーチームとしてこの日を迎えるキナンがどうレースを進めるか。チーム力や各選手の総合力が問われる1日となる。

スリランカTカップ 第1ステージ結果(123.9km)
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 2時間47分42秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +0秒
3 平塚吉光(チームUKYO) +4秒
4 チェ・ドンヒョン(韓国、ガピョンサイクリングチーム) +2分19秒
5 モハドシャフルル・マットアミン(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム) +2分29秒
6 吉岡直哉(チームUKYO)
16 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +3分23秒
42 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
46 中西健児(KINAN Cycling Team)
51 新城雄大(KINAN Cycling Team)

個人総合時間
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 2時間47分30秒
2 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +3秒
3 平塚吉光(チームUKYO) +12秒
4 チェ・ドンヒョン(韓国、ガピョンサイクリングチーム) +2分31秒
5 ローガン・グリフィン(ニュージーランド、ネックス・CCNサイクリングチーム) +2分37秒
6 ジュリアン・アマドリ(フランス、チームフランスディフェンス) +2分39秒
16 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) +3分35秒
42 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
46 中西健児(KINAN Cycling Team)
51 新城雄大(KINAN Cycling Team)

スプリント賞
1 中島康晴(KINAN Cycling Team) 19pts

チーム総合
1 チームUKYO 8時間29分2秒
3 KINAN Cycling Team +50秒

中島康晴

中島康晴のコメント
中間スプリントポイントで(アスタフイェフ選手が)自分よりスプリント力があると分かったので、彼の力をうまく利用しながら勝つ方法を考えた。レース前にマップでフィニッシュ付近が緩い上り勾配であることを確認していたので、最終局面はギリギリまでタイミングを計ってラスト100mでスプリントを仕掛けた。
今大会は日本人選手にもチャンスがあるレースで、個人的には若い選手たちに活躍の場を与えられればと考えている。自分がリーダージャージを着ることで、いろいろな戦術が立てられると思うので、リーダーチームであることだけに固執せずステージ優勝をねらったり、なにかきっかけをつかめるようなレースにしたい。

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キナンがスリランカ入り…ビッグレースに向けた布石づくりの3ステージに

UCI(国際自転車競技連合)コンチネンタルチーム、キナンサイクリングは5月4日から始まるスリランカTカップ(SRI LANKA T-CUP)に出場する。開幕の2日前にスリランカ入りし、開幕前日の3日には開幕地のバサイクーダに到着。南アジアに位置するスリランカでのレースはチームにとって初めてとなるが、準備を着々と進めている。

スリランカ Tカップの開幕地に入りしたキナンチーム ©︎KINAN Cycling Team / Syunsuke FUKUMITSU

スリランカTカップは2017年に初開催され、2018年からUCI公認の国際レースに昇格。全3ステージ、総距離327.7kmで争われる。なかでも注目されるのが、この大会唯一の山岳ステージに設定された第2ステージ。海抜約90mから最も高度のあるポイントで889.3mまで上るルートとなっているものの、最高標高地点からフィニッシュ地点までは約37km。レース距離が85.3kmと短いこともあり、山岳ステージとはいえスピードに富んだ勝負になることが予想され、総合争いにも関係するクイーンステージと目されている。その他2ステージは平坦で、こちらも120km前後のレース距離となっている。

キナンはスピード域の高いレースに対応すべく、中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、中島康晴、新城雄大の5選手をセレクト。スプリントは雨乞を軸に、リードアウトに中西と新城、発射台に中島。また、山岳ではルバで勝負ができるよう、登坂力のある中西や集団コントロールに長ける新城と中島がレースを作る役割を担う。

この先にチームにとってシーズン最大目標とするツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野が控えていて、スリランカでの3日間は、選手の調整状況の把握や本番に臨む選手の選考にも大きくかかわってくるものとなる。今大会は10カ国から14チーム、64選手が出走。日本からはキナンのほか、チームUKYOが参戦。4日の第1ステージは、現地時間午前9時10分(午後0時40分)にスタート。3日間の戦いの火蓋が切られる。

スリランカTカップ(UCIアジアツアー2.2)
5月4日 第1ステージ バサイクーダ(Passikudah)〜マヒヤンガーナヤ(Mahiyanganaya) 123.9km
5月5日 第2ステージ マヒヤンガーナヤ〜キャンディ(Kandy) 85.3km
5月6日 第3ステージ キャンディ〜ニゴンボ(Negombo) 118.5km

スリランカTカップのオフィシャルウェブサイト

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