サイモン・イェーツがジロ・デ・イタリア総合優勝…7年前の逆転負けを晴らす

第108回ジロ・デ・イタリアは最終日となる2025年6月1日、ローマを発着とする141kmで第21ステージが行われ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのサイモン・イェーツ(英国)が初の総合優勝を決めた。総合2位はイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)、同3位はリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)。

サイモン・イェーツが2025ジロ・デ・イタリア総合優勝 ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse

ローマの最終フィニッシュはオラフ・コーイが制覇

サーキットレースとなった最終日はサイモン・イェーツのチームメート、オラフ・コーイ(オランダ)がスプリント勝負を制し、第12ステージに続く2勝目、大会通算3勝目を挙げた。コーイを先導したのは、エドアルド・アッフィニ(イタリア)とワウト・ファンアールト(ベルギー)で、最後のステージでサイモン・イェーツの総合優勝を最高の形で祝福した。

2025ジロ・デ・イタリア最終日のスタートラインに並ぶ各賞受賞者 ©Massimo Paolone/LaPresse

サイモン・イェーツは、最終日前日のコッレ・デッレ・フィネストレでのアタックにより、2018年のブエルタ・ア・エスパーニャに続いてグランツールを制した。新人賞を獲得したデルトロとカラパスが表彰台に。リドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)は第1ステージから最終日までポイント争いの首位を守り、XDS・アスタナ チームのロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア)は他のすべての選手に圧倒的な差をつけて山岳賞を獲得した。

2025ジロ・デ・イタリアの最終ステージはローマ ©Fabio Ferrari/LaPresse
総合優勝のイェーツを中央に、左が2位デルトロ、右が3位カラパス ©LaPresse

あのフィネストレ峠で逆転する計画があった

「プロになって以来、最高のレースで勝つことを夢見てきた。グランツールはまさにこのスポーツの頂点だ。2018年のジロ・デ・イタリアでなにが起こったかはみんな知っている。イタリアではいい時も悪い時もあったけど、このレースは私を何度も呼び続け、ついに優勝することができた」とイェーツ。

サイモン・イェーツは2018ジロ・デ・イタリア第6ステージで首位に立ち、マリアローザを着用して区間2勝を挙げて総合優勝に向かっていた。ところが最終日2日前の第19ステージでクリストファー・フルームの大逃げにより首位を陥落。総合優勝をさらわれていた。38分51秒も遅れてフィニッシュしたが、大ブレーキを起こしたのがフィネストレ峠だった。イェーツはコースが発表されてすぐに、このフィネストレ峠でリベンジすることを目標に準備してきたという。▼過去記事はこちら

ポイント賞のマリアチクラニーノを全ステージで着用したマッズ・ピーダスン ©Fabio Ferrari/LaPresse

「今回のジロ・デ・イタリアの間、私はもっと遠くを見ていた。レースで勝つのは簡単なことではないと思っていた。でも、最終日前日も仲間たちは私に挑戦するように励ましてくれた。私もそれを信じ、大変な1日だったがやり遂げた。フィネストレ峠で抜け出すアイデアがあった。自分の脚は強いと分かっていたので、一人で自分の努力に集中したかった。爆発的なスピードが求められる他のステージよりも、長く持続的な走りでライバルに差をつけることが求められた。他のステージはより戦術的なものになった。昨日のステージは比較的シンプル。このジロ・デ・イタリアで、私は再び自分自身を見つけることができた。今年は私の年だ。これまでのような不運に見舞われることはないん。今日は信じられないようなスタートになった。バチカン市国に立ち寄ることになったと気づいた時だ。教皇の祝福を受けたことは、私だけでなく、すべてのライダーにとって忘れられない瞬間となった」

山岳王のフォルトゥナート ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse
サイモン・イェーツとそれを支えたチームスタッフ ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)サイモン・イェーツ(英国、チーム ヴィスマ・リースアバイク)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
マリアアッズーラ(山岳賞)ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDS・アスタナチーム)
マリアビアンカ(新人賞)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)

ローマ教皇レオ14世がジロ・デ・イタリア最終日に選手を激励

第108回ジロ・デ・イタリアは最終日となる2025年6月1日、ローマを発着とする第21ステージが行われ、コース途中で訪問したバチカン市国でローマ教皇レオ14世の歓迎を受けた。新教皇は「次世代の模範となりなさい」と出場選手に声をかけた。

ローマ教皇レオ14世にマリアローザが手渡された ©Vatican Media

ジロ・デ・イタリアはツール・ド・フランスと異なり、最終到着地がその年によって違う。2025年は首都ローマで、3年連続でジロ・デ・イタリアの最終ステージを開催した。

ローマ教皇レオ14世を謁見するジロ・デ・イタリアの4賞ジャージ着用者 ©Vatican Media

レオ14世教皇は、バチカン市国を通過するジロ・デ・イタリアの選手たちを祝福した。「ジロ・デ・イタリアの最終ステージでみなさんにお会いできて光栄です。みなさんは世界中の若者の模範です。みなさんの働きに感謝します。みな皆さんが体を大切にすることを学んだように、心も大切にしてほしいと思います。神の祝福がありますように」

2025ジロ・デ・イタリアの最終ステージはローマ ©Fabio Ferrari/LaPresse
ジロ・デ・イタリア最終日のローマでは選手たちの到着前にファミリーライドが行われた ©Valentina Stefanelli / LaPresse
総合優勝のイェーツを中央に、左が2位デルトロ、右が3位カラパス ©LaPresse

サイモン・イェーツが最終日前日に大逆転でジロ・デ・イタリア優勝をほぼ確実に

第108回ジロ・デ・イタリアは最終日前日となる2025年5月31日、ベレス〜セストリエーレ間の203kmで第20ステージが行われ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのサイモン・イェーツ(英国)が首位のイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)、総合2位のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)に差をつけてゴール。総合成績で首位に立ち、初優勝をほぼ確実にした。

最終日前日に大逆転したサイモン・イェーツ(英国) ©Fabio Ferrari/LaPresse

サイモン・イェーツは2018ジロ・デ・イタリア第6ステージで首位に立ち、マリアローザを着用しての区間2勝で総合優勝に向かっていた。ところが最終日2日前の第19ステージでクリストファー・フルームの大逃げにより首位を陥落。総合優勝をさらわれていた。38分51秒も遅れてフィニッシュしたが、大ブレーキを起こしたのがこの日のフィネストレ峠。イェーツはコースが発表されてすぐに、このフィネストレ峠でリベンジすることを目標に準備してきたという。▼過去記事はこちら

2025ジロ・デ・イタリア第20ステージ ©LaPresse

前方で逃げていたファンアールトがイェーツを待った

前日までの総合成績で1分21秒遅れの3位にいたサイモン・イェーツは残り15kmのコッレ・デッレ・フィネストレで、レースリーダーのデルトロと総合2位のカラパスを引き離した。イェーツのチームメイトであるワウト・ファンアールトが逃げ集団に加わっていて、イェーツがアタックすることが伝わると峠の手前の谷間で待機した。イェーツは区間3位に入り、区間9位のデルトロに5分13秒の差をつけた。さらに3位のボーナスタイム4秒も獲得し、ローマでのグランドフィナーレ前夜にイェーツは3分56秒のリードを奪い、第108回ジロ・デ・イタリアの首位に立った。

2025ジロ・デ・イタリア第20ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse

2018年に苦戦したのと同じ場所でアタックしたかどうかは分からない

「最後の数百メートルで、自分がなにをしてしまったのかを実感し、脚の感覚が戻ってきた。後続と大きな差はあったけど、ジロ・デ・イタリアで勝てるとは思っていなかった。2018年に苦戦したのと同じ場所でアタックしたかどうかは分からない。今日はハイペースを維持できると分かっていたので、逃げ切ろうとしていた」とイェーツ。

「今日は本当に調子がよく、頂上までプッシュし続けることができた。峠の手前の谷からチームメートのワウト・ファンアールトが引っ張ってくれ、頂上に着いてからは自分のペースで走るしかなかった。ジロ・デ・イタリアのルートが発表されて以来、これまでのキャリアを決定づけるこの上りでなにかを試したいという思いが常にあった。レース中ずっと調子はよかったが、自分を信じなければならなかった。そしてついに、そこでなにかを成し遂げることができた。この瞬間、それがなにを意味するのかを言葉で表現するのは難しいが、これは私のキャリアのピークであり、これを超える瞬間は他にないと思う。選手として晩年の私は、長年目標にしながらも今日まで達成できなかったジロ・デ・イタリアで優勝するために死力を尽くした」

サイモン・イェーツが加速し、カラパスとデルトロが追いかける ©Fabio Ferrari/LaPresse
中南米大陸選手の闘い。エクアドルのカラパスがアタックし、メキシコのデルトロが追いかける ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第20ステージ ©LaPresse
最難関フィネストレを驚異的タイムで走るサイモン・イェーツ ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリアの最高峰フィネストレは山頂部が未舗装路 ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリアの最高峰フィネストレは山頂部が未舗装路 ©LaPresseFabio Ferrari/LaPresse

ハーパーがツアー・オブ・ジャパン総合優勝以来となるプロ2勝目

ステージ優勝はチーム ジェイコ・アルウラーのクリス・ハーパー(オーストラリア)で、逃げ集団から抜け出し43kmの単独走行の後、優勝を果たした。2019ツアー・オブ・ジャパンの総合優勝以来となるプロ2勝目。欧州でのプロ初勝利。2023年と2024年にはジェイコ・アルウラーにいたサイモン・イェーツのアシスト役だった。

「逃げ集団を狙うつもりだったが、実際にそれが現れるかどうかは分からなかった。自分の総合優勝争いは終わったので、たとえフィネストレ峠を大きな差で駆け上がったとしても、総合優勝候補の誰かがステージ優勝したとしても驚きはしなかった。あの登り坂が始まると、リドル・トレックはハードなペースで走った。レミ・ロシャスが抜け出すと、僕は彼を追いかけた。すると別の集団が現れ、そこから飛び出した。追いつけるのはアレッサンドロ・ヴェレ一人だけだったが、僕は自分のペースで登り続けた。爆発的に走らないよう、ペースをコントロールし、フィニッシュまで持ちこたえられるようにした。スポーツディレクター経由で常に状況を把握していて、サイモン・イェーツとの差は十分にありました。彼とワウト・ファンアールトが並んでいることも知っていた。谷底でファンアールトに追いかけられていると知って、少し緊張した。でも、最後まで粘り強く耐えてよかった・最高のレースだった。ジロ・デ・イタリアでこれ以上のフィニッシュは望めない。サイモンのアシストとして多くのレースでチームメイトとして共に戦ってきた。彼がどれほど才能があり、グランツールを制覇できる力を持っているか、私は知っている。ジロ・デ・イタリアで彼が優勝することを心からうれしく思う。優勝できると分かっていた。彼がまだチームメイトでいられたらよかったのにと思う。彼は当然の結果を手にしたのだから」(ハーパー)

2025ジロ・デ・イタリア第20ステージはハーパーが優勝 ©Marco Alpozzi/LaPresse
サイモン・イェーツが2025ジロ・デ・イタリア最終日前日に逆転首位 ©Massimo Paolone/LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)サイモン・イェーツ(英国、チーム ヴィスマ・リースアバイク)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
マリアアッズーラ(山岳賞)ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDS・アスタナチーム)
マリアビアンカ(新人賞)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)

2025ジロ・デ・イタリア第20ステージ ©Marco Alpozzi/LaPresse

【ジロ・デ・イタリア】プロドム初優勝。デルトロがカラパスを逃さず総合優勝に王手

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月30日、ビエッラ〜シャンポルク間の166kmで第19ステージが行われ、デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのニコラ・プロドム(フランス)が初優勝。

プロドムが2025ジロ・デ・イタリア第19ステージで独走勝利 ©LaPresse

総合成績では首位のマリアローザを着るイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)がEFエデュケーション・イージーポストのリチャル・カラパス(エクアドル)の連続アタックを封じ込めて区間2位でフィニッシュ。ボーナスタイムを獲得し、ライバルとの差をさらに開いて初の総合優勝に近づいた。

2025ジロ・デ・イタリア第18ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
カラパスのアタックに付いけいけたのはデルトロだけだった。2025ジロ・デ・イタリア第19ステージ ©LaPresseFabio Ferrari/LaPresse
プロドムが2025ジロ・デ・イタリア第19ステージで独走勝利 ©LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
マリアアッズーラ(山岳賞)ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDS・アスタナチーム)
マリアビアンカ(新人賞)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)

プロドムが2025ジロ・デ・イタリア第19ステージで独走勝利 ©LaPresse

【ジロ・デ・イタリア】デンツが独走勝利…両エース棄権のチームで一矢

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月29日、モルベーニョ〜チェザーノモデルノ間の144kmで第18ステージが行われ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツ(ドイツ)が独走し、2年ぶり3度目のステージ優勝。総合1位のマリアローザを着用するイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)は同2位リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)らと一緒にゴールして首位を守った。

ニコ・デンツが2025ジロ・デ・イタリア第18ステージで独走 ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第18ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第18ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
2025ジロ・デ・イタリア第18ステージ ©Fabio Ferrari/LaPresse
デンツが2025ジロ・デ・イタリア第18ステージ優勝 ©LaPresse

●4賞ジャージ
マリアローザ(個人総合成績)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)
マリアチクラミーノ(ポイント賞)マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
マリアアッズーラ(山岳賞)ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDS・アスタナチーム)
マリアビアンカ(新人賞)イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)

マリアローザを着るデルトロ ©Marco Alpozzi/Lapresse

ローマ教皇レオ14世をジロ・デ・イタリア最終日の選手ら謁見

ジロ・デ・イタリア最終日となる6月1日、レオ14世教皇がバチカン市国を通過する最終ステージの選手たちを出迎えることになった。

2024ジロ・デ・イタリア第21ステージ ©Gian Mattia D’Alberto/Lapresse

文化教育省長官のジョゼ・トレンティーノ・デ・メンドンサ枢機卿の提案を受け入れ、バチカン市国政府とバチカン市国のスポーツ公式団体「アスレチカ・バチカーナ」と共同で故・フランシスコ教皇の功績を称えるために行われる。

バチカンでのジロ・デ・イタリア最終ステージは、6月14日と15日に予定されているスポーツの聖年(ジュビリー)に先駆けて行われるイベント。2021年10月28日にアスレチカ・バチカーナがUCI(国際自転車競技連合)加盟を受けて計画されてきた。4月29日、ローマ教皇庁文化教育省長官のポール・ティゲ司教によって正式発表された。

第108回ジロ・デ・イタリアの最終ステージはローマのカラカラ浴場からスタート。選手たちはペトリアーノ入口からバチカン市国に入国。バチカン城壁内のルートは全長3km。