ブエルタ・ア・エスパーニャ…ツールでもジロでもない、特異のグランツール

ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスとともにグランツール、あるいは三大ステージレースと呼ばれるブエルタ・ア・エスパーニャ。知名度としては日本でも国際的にもナンバー3だが、そこにはスペインならではの魅力があって、他の2大会とはかなり雰囲気が異なる。

40年前の1978年、ベルナール・イノーがグランツール初制覇となるブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝 © Unipublic

ツール・ド・フランスは2018年に105回大会を行い、そしてジロ・デ・イタリアは101回大会を行った。いずれも100年以上の歴史を有するのに対し、ブエルタ・ア・エスパーニャはその歴史が浅く、1935年に始まった。しかも1937年には内戦が勃発し、ドイツ軍の援護を受けたフランコ独裁政権がスタートして大会は中断。1941年にようやく第3回が開催されるが、たった2年で第二次世界大戦となり、再開したのは1945年だった。しかも40年近く続いたフランコ政権時代は、ブエルタ・ア・エスパーニャが国外向けに露出されることはなく、1980年代になってようやく国際性を持つようになった。

開催時期も戦略的に変更した。ずっと4月に開催されていたが、グランツールとしての位置づけをねらって9月開催にスライド。以来、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランス前に体力を消耗したくなかった有力選手が参加するようになり、大会規模もグンと両大会に近づいた。近年はツール・ド・フランスを主催するASOが運営に参画し、そのノウハウを投入。以前よりも国際的になり、その認知度は飛躍的に高まった。

それでもブエルタ・ア・エスパーニャはスペイン独特の雰囲気を今も随所に残す。スペインならではの風景の中を走るからでもある。もともとスペインは夏に自転車で走るのはあまりにも暑すぎることから、ピレネー山脈に近い北スペインだけが自転車の盛んな地域だった。しかしスペインを代表するステージレースなのだから、できるだけスペイン国内を一周し、最終日はできるだけ首都マドリードにゴールしたい。近年は40度の猛暑に悩まされながらもスペイン全土をめぐる。

勝負どころはピレネー山脈だけではない。ビスケー湾岸にはカンタブリカ山脈があり、その一角にあるアストゥリアス地方の過疎地には、地元民の生活路として使われていない信じられないほどの厳しい上りがある。他の欧州諸国では道路構造令などの法律上、ありえないほどの激坂がいくつも登場するのもスペインだからである。さらに南部のシエラネバダ山系は標高3000mを超える山もある。全体として山岳ステージがとても多く、選手としてもタフな精神力が要求される。それだけにファンとしては見応えのあるレースなのだ。

南部のアンダルシア地方など殺伐とした陸地を走ることもあるが、独特の白壁に太陽が照りつける村々を走り抜け、非常に美しいシーンを見せてくれる。そんな風景の中に、巨大な黒牛の看板が出現することもある。これはもともと酒造メーカーの看板で、当初はロゴ入りだったが、ドライバーの視線が釘付けとなって交通事故が多発したため、黒く塗りつぶされてしまったらしい。

宿泊ホテルはどれも重厚で歴史あるものだが、内装はきれいに整備され、とても居心地がいい。フランスなどに比べると料金も激安で、宿泊料の中に朝食が含まれるのがスペイン風だ。ホテルの朝食では、ニンニクと完熟トマトをパンに塗りたくって食べる。パンをトーストする場合はオリーブオイルをたっぷりとかける。もちろんオレンジは半分に切って自動絞り器でジュースにして飲む。

夕食はあきれるほど遅く、夜の10時くらいに食べるのがスペイン流だ。バルと呼ばれる一杯飲み屋には大皿に一口サイズのタパスが並べられ、それをつまみながら飲む。店員もチェックしているとは思えないので、会計はおそらくおおざっぱだ。床には紙ナプキンや料理を刺していたつまようじがそのまま捨てられ散乱する。郷に入れば郷に従えである。

2018年のブエルタ・ア・エスパーニャは8月25日から9月16日まで開催される。どんな戦いになるのか、とても楽しみである。

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双子のイェーツ兄弟がそろってブエルタ・ア・エスパーニャに参戦

ミッチェルトン・スコットに所属する双子の兄弟、サイモン&アダム・イェーツが8月25日に開幕するブエルタ・ア・エスパーニャにそろって出場する。当初はサイモンがジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャ、アダムがツール・ド・フランスのみを走る予定だったが、急きょアダムがブエルタ・ア・エスパーニャの出場メンバーに加わった。

双子のイェーツ兄弟がそろってブエルタ・ア・エスパーニャに参戦

アダムは山岳に強く、2015ツール・ド・フランスで総合4位と新人王を獲得。2018年はツール・ド・フランスで総合成績の上位をねらったが、期待通りの活躍はできなかった。

サイモンは2016ツール・ド・フランスでアダムに続いて新人賞。兄弟選手がともに新人賞を獲得したのは史上初だった。2018ジロ・デ・イタリアでは第6ステージで首位に立つと、マリアローザを着用してステージ3勝。初優勝に王手をかけたが、第19ステージで大きく遅れて優勝争いから陥落した。

ブエルタ・ア・エスパーニャでチームはスペイン語を話すコロンビアのエステバン・チャベスをエースに起用するはずだったが、2018ジロ・デ・イタリア総合2位の位置にいながら伝染性単核球症とそのアレルギーを発症。現在も治療に専念していて、ブエルタ・ア・エスパーニャ出場を見送った。

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サガン、ポート、ピノが8月25日開幕のブエルタ・ア・エスパーニャ参戦へ

3年連続の世界チャンピオン、ツール・ド・フランスで大会最多タイとなる6度目のポイント賞を獲得したボーラ・ハンスグローエのペテル・サガン(スロバキア)が8月25日にスペインのマラガで開幕するブエルタ・ア・エスパーニャに出場する。7月のツール・ド・フランスで負傷リタイアしたBMCのリッチー・ポート(オーストラリア)、体調不良で欠場したグルパマFDJのティボー・ピノ(フランス)も参戦する。

世界チャンピオンのアルカンシエルで表彰式を待つペテル・サガン © ASO

優勝候補のリッチー・ポートが鎖骨骨折でリタイア © ASO
ティボー・ピノ © Gian Mattia D’Alberto – LaPresse

2018ブエルタ・ア・エスパーニャ全日程
8月25日(土) 第1ステージ マラガ(個人TT) 8km
8月26日(日) 第2ステージ マルベリャ~カミニートデルレイ 163.5km▲▲
8月27日(月) 第3ステージ ミハス~アラウリンデラトレ 178.2km▲
8月28日(火) 第4ステージ ベレス・マラガ~アルファカル 161.4km▲▲
8月29日(水) 第5ステージ グラナダ~ロケタスデマル 188.7km▲
8月30日(木) 第6ステージ ウエルカル・オベラ~サンハビエル 155.7km
8月31日(金) 第7ステージ プエルト・ルンブレラス~ポソアルコン 185.7km
9月1日(土) 第8ステージ リナレス~アルマデン 195.1km
9月2日(日) 第9ステージ タラベラデラレイナ~ラコバティリャ 200.8km▲▲
9月3日(月) 休養日
9月4日(火) 第10ステージ サラマンカ~フェルモセリェ 177km
9月5日(水) 第11ステージ モンブエイ~リベイラサクラ 207.8km▲
9月6日(木) 第12ステージ モンドニェド~ファロデエスタカデバレス 181.1km
9月7日(金) 第13ステージ カンダス~バリェデサベロ 174.8km▲▲
9月8日(土) 第14ステージ システィエルナ~レスプラエレス 171km▲▲
9月9日(日) 第15ステージ リベラデアリバ~ラゴスデコバドンガ 178.2km▲▲▲
9月10日(月) 休養日
9月11日(火) 第16ステージ サンティリャナデルマル~トレラベガ(個人TT) 32km
9月12日(水) 第17ステージ ゲチョ~バルコンデビスカヤ 157km▲▲▲
9月13日(木) 第18ステージ エヘアデロスカバジェロス~レイダ 186.1km
9月14日(金) 第19ステージ レイダ~ナトルランディア(アンドラ) 154.4km▲▲▲
9月15日(土) 第20ステージ エスカルデス・エンゴルダニ(アンドラ)~コルデラガリナ 97.3km▲▲▲
9月16日(日) 第21ステージ アルコルコン~マドリード 100.9km

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ブエルタ・ア・エスパーニャが公式タパスを公募…全ステージでおいしいものを提供

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ヤマハがブエルタ・ア・エスパーニャのオフィシャルモトに

ヤマハがスペイン最大の自転車レース、ブエルタ・ア・エスパーニャの新しいオフィシャルモトになったことが発表された。導入されるのは欧州市場で発売されているトレーサー700。先導バイク、コミッセールモト、チームアシスタントに合計22台が提供される。

ヤマハ・トレーサー700は欧州のみで販売される

ヤマハはジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスに続いてグランツールと呼ばれる三大ステージレースのすべてでオフィシャルモトになった。契約は欧州法人のヤマハ。

ブエルタ・ア・エスパーニャのオフィシャルモトになったヤマハ

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電力会社エネルなどジロ・デ・イタリア協賛各社が勢ぞろい…5月4日開幕

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ブエルタ・ア・エスパーニャが公式タパスを公募…全ステージでおいしいものを提供

8月25日にスペインのマラガで開幕し、9月16日に首都マドリードにゴールする23日間のステージレース、ブエルタ・ア・エスパーニャが公式タパスを公募する。タパスはスペインで「Tapa=タパ」と呼ばれる小皿料理で、バルと呼ばれる飲食店でおつまみとして提供される。今回の企画は「la eTapa=ラ・エタパ」という総称で、全21ステージ(エタップ)で関係者にふるまわれることになっている。

さすが、ガストロノミーが尊重される欧州文化。日本の料理家もぜひ!

今回はコンクール形式。公式サイトから応募してノミネート。10分以内の動画を作成し、SNSなどを使ってPRする。6月25日から7月16日までがPRの期間となり、7月16日に優勝者が発表される。優勝者は大会期間中の全21ステージでスタート地点のビラージュで受賞したタパスを提供することができる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ公式タパスの応募サイト

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バルギルはブエルタ・ア・エスパーニャ出場できず…所属チームが落選

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バルギルはブエルタ・ア・エスパーニャ出場できず…所属チームが落選

2017ツール・ド・フランスで山岳王になったフランスのワレン・バルギルは、ブエルタ・ア・エスパーニャ主催者が所属するフォルテュネオ・サムシックを主催者推薦枠で指名しないという方針を表明したことで、2018年の同大会に参加できないことになった。

ワレン・バルギル

ブエルタ・ア・エスパーニャの参加チームは22で、そのうちワールドチーム18が自動的に出場権を獲得。残る4枠はワイルドカード(主催者推薦)で、大会側はコフィディス(フランス)、カハルラル、ムリアス・エウスカディ、ブルゴスBH(以上スペイン)の4チームを指名する方針であることを明かした。

バルギルはサンウェブに所属していた2017年、ツール・ド・フランスで区間2勝と山岳賞を獲得。1カ月後のブエルタ・ア・エスパーニャにはアシスト役として起用されたが、チームの戦略を無視して自らの勝利のために走ったため大会序盤でレースをリタイアするようにチームから命じられた。

フォルテュネオ・サムシックのワレン・バルギル

フォルテュネオ・サムシックがシーズン始動…地元期待のバルギル獲得