自分でも気づかないスポーツ適性を見つけるためにまずは登録

五輪でメダルを獲得できるスポーツに偶然出会えるとは限らない。どんな競技に適性があるのかを発見し、アスリートとしてトップクラスになることを国が支援するプロジェクトへの登録者を募集している。

サッカーをしていた垣田真穂が自転車に転向し、パリ五輪へ

独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC:JAPAN SPORT COUNCIL)が設置するハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)などが実施している、ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト(J-STARプロジェクト)オリンピック競技の受け付けを開始した。対象は小学6年生以上(2025年4月1日現在 満11歳以上)。

2026年1月23日までに「アスリートパスウェイシステム(APS)」に登録した人が対象となる。中央競技団体は、APSに登録された新体力テストや競技記録(競技歴・大会結果など)の成長記録データから、適性がありそうなタレントをスカウトすることが可能。

J-STARプロジェクト(オリンピック競技)で発掘された選手から、パリ2024オリンピック競技大会への出場を含め5名の日本代表選手を輩出している。

APSのスカウト機能を活用したJ-STARプロジェクトの実施フロー
STEP1. J-STARプロジェクト参加希望者は、APSアカウントを作成して自身の情報を登録中央競技団体からのスカウトを希望する方は、2026年1月23日(金)までにAPSへ自身の情報を登録し、スカウト希望設定を「希望する」に設定する(任意)。

STEP2. 中央競技団体がスカウト希望者を閲覧し「データ選考」を実施中央競技団体が、個人情報を匿名化した状態でスカウト希望者の情報を閲覧し、データ選考をする。より詳細な確認を実施したい有望者に対し、スカウト(開示請求)を行う。

STEP3. 中央競技団体のデータ選考通過者は「発掘プログラム」に参加スカウトを許諾した有望者は、競技特性に応じた測定、競技体験、面談等を行う中央競技団体による発掘プログラムに参加し、より詳細な確認を受ける。

STEP4. 中央競技団体の検証・育成・強化プログラムへ進出中央競技団体によって競技適性の可能性が認められると、中央競技団体が独自で実施する検証・育成・強化プログラム(J-STARプロジェクト事業外)に進出できる。

J-STARプロジェクトとは

オリンピック・パラリンピックなどの世界レベルの競技大会で輝く未来のトップアスリートを発掘するために、JSCがスポーツ庁、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、公益財団法人日本パラスポーツ協会/日本パラリンピック委員会(JPSA/JPC)と連携して、2017年度より実施している事業。

APSは、まだスポーツをしていない人からアスリートとして活動している人まで、だれでも無料で情報を登録することのできる「アスリート履歴書ツール」。J-STARプロジェクト(オリンピック競技)では、2023年度から、中央競技団体がAPSの「スカウト機能」を活用してタレント発掘を実施している。自身では気が付かなかった能力が評価され、経験したことのない新しい競技と出会うなど、可能性が広がる。また、氏名などの情報は匿名化された状態で選考が実施されるため、誰でも公平な評価を受けることができる。

●アスリートパスウェイシステムのホームページ

垣田真穂、個人パシュート優勝確定後も激走して日本新&アジア新

2025トラックアジア選手権は大会7日目の2月27日、マレーシアのニライにあるベロドローム・ナショナル・マレーシアでエリート女子個人パシュートが行われ、垣田真穂(楽天Kドリームス/早稲田大)が優勝した。

垣田真穂がアジア選手権エリート女子個人パシュートでアジア新・日本新 ©日本自転車競技連盟

アジア選手権でなんと三冠の垣田…U23ロードを含めて4タイトル

すでにポイントレースとチームパシュートで優勝している垣田は、予選をトップタイムで通過。1-2位決定戦に進出した。韓国のシンジエウンとの1-2位決定戦でも圧倒的なスピードの違いを見せつけて、レース中盤でシンを追い抜いて優勝が確定するが、その後も最後まで走り切った垣田は4000mを4分41秒436の記録でフィニッシュ。

エリート女子個人パシュートは2025年1月1日から競技距離が男子と同じ4000mに変更されていて、垣田自身も大会では初めての距離へ。追い抜き勝ちを決めたあとも4000mを走り切ってタイムを計測。この結果、日本新記録・アジア新記録を達成した。

垣田真穂がアジア選手権エリート女子個人パシュートで優勝 ©日本自転車競技連盟

垣田は2月にタイで開催されたアジア選手権ロードのU23女子でも優勝。これを合わせるとアジア4冠となる。今後はトルコのトラックネーションズカップに出場。イタリア籍のコンチネンタルチーム「ビーピンク・ボンジョアンニ」に合流すればロード選手としてのシーズンも待っている。

アジア選手権エリート女子個人パシュートで優勝した垣田真穂 ©日本自転車競技連盟

垣田真穂が実力差を見せつけてアジア選手権ポイントレース優勝

2025トラックアジア選手権は大会4日目の2月24日、マレーシアのニライにあるベロドローム・ナショナル・マレーシアでエリート女子ポイントレースが行われ、垣田真穂(楽天Kドリームス/早稲田大)が優勝。垣田はポイント周回で常に上位でコントロールラインを通過し、実力差を見せつけて優勝した。

垣田真穂がアジア選手権エリート女子ポイントレース優勝 ©日本自転車競技連盟
垣田真穂がアジア選手権エリート女子ポイントレース優勝 ©日本自転車競技連盟

エリート男子ポイントレースは山本哲央が接戦を制す

エリート男子ポイントレースには山本哲央(ブリヂストンサイクリング)が出場。最終のポイント周回まで持ち込まれた優勝争いは、最後の着順が上回った山本が優勝した。

山本哲央がアジア選手権エリート男子ポイントレース優勝 ©日本自転車競技連盟
山本哲央がアジア選手権エリート男子ポイントレース優勝 ©日本自転車競技連盟

エリート男子ポイントレースでは、同ポイントながら最終の着順で上回った吉田奏太(鳥取・倉吉西高)が逆転で優勝した。

吉田奏太がアジア選手権ジュニア男子ポイントレース優勝 ©日本自転車競技連盟

エリート男子1kmタイムトライアルは市田龍生都が後半に急伸V

エリート男子1kmタイムトライアルでは市田龍生都(JPCU福井)が全体の2位で決勝に進出。決勝で市田は1周目を3番手のタイムで回ったが、その後を最速ラップで回って逆転で優勝した。

市田龍生都がアジア選手権エリート男子1kmタイムトライアル優勝 ©日本自転車競技連盟

垣田真穂…全日本トラック5冠も目標はツール・ド・フランス

「いつかはツール・ド・フランスで走りたいけど…」。パリ五輪自転車競技トラック代表。全日本トラック五冠。3000mの日本記録保持者。順風満帆で飛躍してきた早稲田大2年、垣田真穂に迷いが生じている。ロード代表で2028ロサンゼルス五輪を目指すが、その種目でメダルは獲得できるのか? 世界の強さを痛感した19歳が揺れている。

垣田真穂。12月14日に20歳の誕生日を迎える

五輪で金メダルを目指すのならトラックの方が近い

福岡でサッカーをしていた少女が県のアスリート発掘事業でさまざまなスポーツを体験。風を切って走る自転車に魅力を感じてこの競技を選んだ。科学的な能力測定で抜群の数値を連発し、2022世界選手権ジュニアロードで2位のゴール勝負に加わった。あっという間に世界中の女子ロードチーム関係者が注目する存在になった。

「ロードレースのほうが好き。でも五輪で金メダルを目指すのならトラックの方が近いとは思う」と、当時高校3年生ながらその道を冷静に見据えていた。だからパリはトラック選手として出場した。

パリ五輪では落車もあって思うような結果は残さなかったが、大会後に女子ロードチームのEFエデュケーションに入るのは決まっていた。「高校生で始めた自転車はロードが基本。パリに向けて3年生の最後からトラックに専念した。パリが終わって、ロードに戻ろうと決めていた」

陸上競技に例えれば中距離では世界レベルにある田中希実がフルマラソンに挑戦するようなチャレンジだ。加えてトラック日本代表チームで大切に育成された逸材が、いきなり多言語必須のプロロードチームに放り込まれるという環境変化もあった。五輪直後にロードレースでデビューするのだが、チーム最年少の垣田には不安なことばかりだった。

「英語さえ全然話せません。まだ加入したばかりで、役割もそれほどなかったけど、レース中の指示は理解できなかった」

11月2日に開催されたツール・ド・フランスさいたまにエリート女子日本代表として参戦

長距離が走れなくなってしまいロードから逃げていた

トラック日本代表ならチームが米などの和食具材を持ち込んでくれる。しかしロードレースはホテル転々。「ロードで行くって決めたら海外で単身全てしないといけないから、早く慣れる必要がある。でもそれってちょっと楽しみです」

久しぶりのロードはもちろんきつかったが、それ以上に楽しかった。

「ずっとトラックをやっていたのでロードがこれまでより走れなくなっているのを実感していて、実はロードから逃げていた。ほんとはメチャメチャ大好きなのに。たくさんの人がトラックでサポートしてくれているのもわかっていたから、内心ではどうしようとずっと悩んでいた」という。久々のロードで、それにいきなり欧州の大きなレースに起用されたのだから厳しい展開となったが、「距離は長いし、上りの練習はできていなかったけど、楽しかったです!」

欧州でロード2レースを経験した後に全日本選手権で5冠を取ってさらに揺れ動く。

さいたまスーパーアリーナを駆け抜ける垣田

世界のトップはトラックもロードも強いから負けずに頑張る

「来年は現時点で所属するロードチームは決まっていない。ロードに専念するか、トラックも兼任するか。次のロス五輪でメダルを取ることが目標ですが、トラックとロードでどちらがメダルに近いかを考えながら、自分で選択して頑張りたい」

垣田が自転車に転向した高校1年のとき、ツール・ド・フランスに女子クラスはなかったが、2022年に開幕。「やっぱりツール・ド・フランスはいちばん大きな大会で、ずっと出てみたいと思っていた。2025年に出場するのは厳しいと思うけど、世界のトラックで活躍している選手はロードでも結構ガツガツやっているので、負けずにチャレンジしていきます」

垣田真穂プロフィール

2004年12月14日、福岡県北九州市生まれ。10歳で福岡県のタレント発掘事業に合格。14歳でスポーツ庁やJOCなどが推進するジャパンライジングスタープロジェクトに参加して自転車競技を選択。地元に自転車部のある高校がなく、ロード練習を主に取り入れている愛媛・松山学院高に進学。

杭州アジア競技大会・トラック女子チームパシュート優勝、トラック女子マディソン優勝
2024ネーションズカップ・女子マディソン優勝
自転車アジア選手権では通算4冠
2024全日本選手権トラック・個人パシュート、スクラッチ、マディソン、オムニアム、チームパシュート優勝

19歳の垣田真穂が世界選手権ロード女子エリート代表に大抜擢

世界選手権ロードが2024年9月21日から29日までスイスのチューリッヒで開催され、早稲田大/EFオートリー・キャノンデールの垣田真穂がエリート女子の個人タイムトライアルとロードレースで日本代表になった。

垣田真穂

2022年9月の世界選手権ロードにジュニア代表として派遣され、5位に入って日本の関係者を驚かせた垣田。その後は早稲田大での学生活動と並行してトラックナショナルチームに起用され、2024パリ五輪に出場。9月にはトラック全日本選手権で5冠。さらに女子ロードチームのEFオートリー・キャノンデールの選手として欧州ロードレースにも参戦を始めた。

エリート女子ロードは与那嶺恵理(LABORAL KUTXA –FUNDACION EUSKADIと木下友梨菜(ベルマーレ)も出場。新城幸也(バーレーンビクトリアス)が男子ロードに出場する。

2024世界選手権ロード日程

9月21日(土)
パラサイクリング・チームリレー

9月22日(日)
パラサイクリング女子・個人タイムトライアル
エリート女子・個人タイムトライアル
エリート男子・個人タイムトライアル

9月23日(月)
ジュニア男子・個人タイムトライアル
パラサイクリング男子・個人タイムトライアル
U23男子・個人タイムトライアル

9月24日(火)
ジュニア女子・個人タイムトライアル
パラサイクリング男女・個人タイムトライアル

9月25日(水)
パラサイクリング男女・ロードレース
男女混成リレー・チームタイムトライアル

9月26日(木)
パラサイクリング男女・ロードレース
ジュニア女子・ロードレース
ジュニア男子・ロードレース

9月27日(金)
パラサイクリング男女・ロードレース
U23男子・ロードレース

9月28日(土)
パラサイクリング男女・ロードレース
エリート女子・ロードレース

9月29日(日)
パラサイクリング男子・ロードレース
エリート男子・ロードレース

垣田真穂が全日本トラック5冠…UCIプロロードチーム登録も

TEAM RAKUTEN K DREAMS/早稲田大の垣田真穂(19)が全日本選手権トラック競技でエリート女子の5冠を達成した。またUCI(国際自転車競技連合)の選手リストではEFオートリー・キャノンデルに登録され、今後は国際的な女子ロードレースにも参戦していくことが予想される。

垣田真穂が個人パシュートで日本新記録3:28.122 ©日本自転車競技連盟

垣田は全日本選手権初日のエリミネーションこそ3位になったが、TEAM RAKUTEN K DREAMSのメンバーとして出場したチームパシュートで内野艶和、池田瑞紀、水谷彩奈とともに優勝。

女子マディソンで優勝した垣田真穂(右)と内野艶和 ©日本自転車競技連盟

オムニアム、内野艶和とコンビを組んだマディソン、スクラッチで優勝。個人パシュートでは同学年の池田瑞紀(TEAM RAKUTEN K DREAMS/早稲田大)を抑え、日本新記録となる3分28秒122でゴール。5冠を達成した。

オムニアムの最終レース、ポイントレースでしかける垣田真穂 ©日本自転車競技連盟
チームパシュート優勝のTEAM RAKUTEN K DREAMS。左から垣田真穂、内野艶和、水谷彩奈、池田瑞紀 ©日本自転車競技連盟
垣田真穂が女子エリートスクラッチ優勝 ©日本自転車競技連盟