⽇本初上陸のレッドブル・クラッシュドアイスは1万人が大興奮

アイスホッケー、ダウンヒルスキー、そしてスノーボードクロスの要素を取り⼊れたアイスクロス・ダウンヒル競技の世界選⼿権 ATSX Red Bull Crashed Ice World Championship(ATSX レッドブル・クラッシュドアイス・ワールドチャンピオンシップ)の2018‒19シーズン開幕戦が、12⽉7⽇(⾦)・8⽇(⼟)に横浜市にある臨港パークで⽇本初開催された。

横浜を象徴するビル群を背に猛スピードで駆け抜ける選⼿たち © Armin Walcher / Red Bull Content Pool

レッドブル・クラッシュドアイスは、アイスホッケーのプロテクターを付けた選⼿が、街中に設置された⾼低差がある氷の特設コースを最⾼時速80kmに達する中、⼀⻫に滑りおりるレース。レースは1ヒート4選手で⾏われ、コース途中に設置されたヘアピンカーブやバンクコーナー、連続バンプや段差などの障害物をかわしながら猛スピードで駆け抜
ける。2001年に初開催、2010年より世界選⼿権となり、記念すべき50回⽬の⼤会を今回アジアで初開催した。

⾼低差22m、⻑さ350mの造成したコース上に、中をマイナス14度の冷却剤が流れるチューブが連なるシートを敷き、上から⽔をまいて厚さ約10cmの氷のコースを張るのだが、あいにくの暖冬により凍っては溶けるを繰り返す緊急事態に。急きょ50トンの氷を購⼊し、徹夜で応急処置を施すなどコース設営は難航を極めた。

⽔を撒くスタッフ。コース造成は夜通し⾏われた © Suguru Saito / Red Bull Japan

また競技⾃体も、氷の状態を元に戻せるかの⾒通しが⽴ちにくい状態が続いたため、7⽇午前に予定していたタイムトライアルを急きょ6⽇(⽊)深夜に実施するなど、スケジュールを⼤幅に変更し、7⽇の最終予選と8⽇決勝の開催に漕ぎつけた。

⼤会には男⼥あわせて146選⼿が出場。最終予選と決勝は両⽇で約1万⼈の観客が⾒守る中で実施された。

男⼦は2015-2016年と2016-2017年シーズンのワールドチャンピオン、キャメロン・ナーズ(Cameron Naasz、米国)、⼥⼦は2017-2018年のチャンピオン、アマンダ・トルンゾ(Amanda Trunzo、米国)が優勝した。ナーズは「昨シーズンは総合優勝を逃したので、今シーズンは⾮常にいいスタートが切れてうれしい。⽇本での初開催は、⼤会および競技にとってとても有意義だったと思う。運営チーム、チームともに素晴らしく、ここで優勝できたことをうれしく思う」とコメント。アマンダ・トルンゾは「純⼦は⻑年に渡ってこの競技にかかわっていて、この⼤会を機に⽇本の選⼿がきっと増えると思うので、⼤会の成功は数年後にもみられると思います。私と張り合ってくれる選⼿が現れたらうれしい」とコメントした。

前年覇者スコット・クロクソールを追う安床武士(右から2番目)、山内⽃真(右) © Armin Walcher / Red Bull Content Pool

⽇本からは2017-2018シーズンランキング10位の⼭本純⼦、インラインスケートのハーフパイプで幾度も世界チャンピオンに輝いている安床エイトと安床武⼠の安床兄弟ら15⼈が参加。決勝の男⼦64名、⼥⼦16名の枠に、2本滑って好タイムで順位が決まるタイムトライアル(男⼦は上位32名、⼥⼦は上位8名が決勝進出)で安床武⼠が28位、⼭本が6位で進出。

続いて7⽇に開催されたLast Chance Qualifier(最終予選)を、同志社⼤アイスホッケー部の⼭内⽃真と、現役⾼校⽣の吉⽥安⾥沙が勝ち抜き、計4⼈の⽇本⼈選⼿が決勝に駒を進めた。

迎えた決勝では、1回戦(Round Of 64)で安床武⼠と⼭内が同組、かつ2017-2018シーズンのワールドチャンピオンのスコット・クロクソール(Scott Croxall、カナダ)と同組になり、残念ながら両名とも敗退した。

レース後、安床武⼠は「体調、精神⾯ともにいい状態で、初めて決勝トーナメントに進めたのですが、(昨シーズン世界チャンピオンの)スコットの滑りが、あまりにもレベルが⾼すぎてちょっと焦り、レース中に1回転倒したのが⼼残りです。しかし、思いっきり⾏けたので満⾜しています。すごくたくさんの⽅が応援してくれていることが本当に⾃分たちにとって⼒になり、⾃分の実⼒以上のタイムが出せたので感謝しています。レッドブル・クラッシュドアイスに
これからも出場し続け、再び⽇本で開催されるように頑張りたいです」と語った。

これまで単身で海外大会を転戦してきた山本純子にとっては夢にまで見た国内大会だった © Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

⼥⼦も⼭本と吉⽥が1回戦から当たる組み合わせとなったが、⼭本が準々決勝(Round Of 16)を勝ち抜き、準決勝は3位で敗退したが、5〜8位決定戦(Small Final)で2位に⼊り、6位で初戦を終えた。

⼥⼦準決勝の映像
⼥⼦5〜8位決定戦の映像

⼤会を振り返って⼭本は「決勝に出場した選⼿は、誰もがレベルの⾼い選⼿ばかりで、ファイナル⽬指していたのですが届きませんでした。⾃分のベストを尽くして最後まで⾛れたのでよかったと思います。⾛っている時に⾃分の名前を呼んでいる声が聞こえてきて、すごく勇気づけられました。海外から来た選⼿もレースを楽しんでいたし、コースを造る⼈、レースを運営する⼈など、たくさんの⽅々によって⼤会を成功できたと思います」と語った。

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クラッシュドアイスにもっとハマりたい…初参戦健闘の山内⽃真

同志社大アイスホッケー部所属の20歳、クラッシュドアイス初挑戦の山内⽃真が、12月8日に神奈川県横浜市の臨港パークで開催されたレッドブル・クラッシュドアイスで気をはいた。

山内⽃真 © Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

大会最終日のファイナルに進出した日本男子はわずか2人。Xゲームズ・インラインスケートの元世界王者である安床武士。そして山内だ。

ラウンドオブ64の組み合わせは予選のタイムトライアルの結果、2017-2018シーズンの世界チャンピオンであるスコット・クロクソール(カナダ)と武士が同じ組となっていて、そこに敗者復活戦から勝ち上がってきた2人が加わる。その1人が山内だった。

「クロクソールと武士さんはタイムトライアルの上位32選手として決まっていて、その組にボクが入るとわかったときは興奮しました。ビビるのではなく、がぜんやる気が出ましたね。おそらく今回の大会でベストの組だと思いました。強豪メンバーだけど、このレースってなにがあるかわからないので」

前年覇者スコット・クロクソールを追う安床武士(右から2番目)、山内⽃真(右) © Armin Walcher / Red Bull Content Pool

クラッシュドアイスの存在を知ったのは中学1年生のころ。憧れていたスポーツがまさか日本で開催されるとは思わなかった。大学で部活動を続けながら練習会に参加し、ダントツの実力で日本代表として選出された。

そして迎えたラウンドオブ64。スタートはほぼ同時だが、すぐに実力のあるクロクソールが抜け出していく。山内は武士に先行して前の2人を追ったが、攻めてはいけないと思ったところで前走者をたまらず抜きにかかって転倒。失速して最下位に後退した。

「自分が焦ったら1番ダメなところで。やっぱり意気込みすぎたステージだからこそ焦りが出てしまった。それにスキルも足らなかったのかなと思います」

自らのストロングポイントはアイスホッケーで培ったダッシュ力。終盤の平たんな直線路で逆転をねらっていた。しかし世界チャンピオンとレースをすることが心理面で緊張感にとらわれたのか、自分自身をコントロールできなかった。

「このコース自体が世界屈指の難関コースだったので、もっともっとレースに参加したい気持ちがありました。感無量です。このスポーツにさらにハマりたいと思いました」

とにかく大観衆の声がすごかったという。コケても笑って走りきれたのですごい楽しかったという。もうこのスポーツの魅力にとりつかれた。後の選手もどんどん参入してきてほしいという。

「アイスホッケー選手にもチャンスがあります。自分が伸びるところをどんどん見つけてほしいと思います」

山内⽃真が日本初開催の大会で1人気をはいた © Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

競技は冬季五輪の新規種目となる可能性もある。そのためにもっともっと競技人口を増やして、日本選手の力を向上させていくことも必要だ。来年以降も日本で開催されることを期待する。

「最後まで笑ってフィニッシュできたのでホッとしています。次のチャンスがあるのならそこでもっと成長したところ見せてジャンプアップしていきたい。自分に足りないものを次の大会までもっと鍛えて。フラット部分のスケーティングはそれほど劣らないけれど、角度のある部分で要求される技術面はまったく劣っている。必ずファイナルに残っていける選手になることが応援してくれているみなさんに対しての恩返しだと思います」

レッドブル・クラッシュドアイス2018-2019シーズン第1戦 横浜大会
●男子最終成績
優勝 Cameron Naaz/キャメロン・ナーズ(米国)
36位 安床武士/やすとこたけし/32歳
52位 山内斗真/やまうちとうま20歳(同志社大)

第2戦 2019年2月2日 ユバスキュラ(フィンランド)
第3戦 2019年2月8-9日 ボストン(米国)

⼭内⽃真 © Lisa-Marie Reiter / Red Bull Content Pool

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