ダイエットや2型糖尿病治療で使われるようになった「ケトン」という存在が今後のスポーツ界において懸念すべきドーピング問題になると、信頼できる自転車運動(MPCC)が議論すべき課題として取り上げた。ケトン体投与することで運動パフォーマンスがすみやかに向上すると指摘している。
アスリートの健康と自転車競技の信頼性に関わる問題
2025ツール・ド・フランスのコース発表が行われた前夜、10月28日にパリでMPCC第18回年次総会が開催された。議論された多くのトピックの中で、6年連続でケトンが議題に上がった。
ジャーナリストの調査によると、自転車チームにおける過剰な医療化が指摘され、それに続くディスカッションセッションでいくつかの懸念が指摘された。ケトン問題はこれまで以上に深刻になることは必至だという。この問題に関して国際自転車競技連合(UCI)が委託した調査の結果はまだ出ていないとされる。
ベルギーの研究施設が2019年にMPCCの会議で「ケトン」という存在を初めて言及。この化合物の使用がもたらす健康リスクと運動パフォーマンス向上の可能性を懸念した。ケトンは確実にドーピング手段としてグレーゾーンにあるとした。
UCIはケトンが健康とパフォーマンスに与える影響の評価結果を2025年末まで発表する予定はないという。それに対してMPCCは、アスリートの健康問題と自転車競技の信頼性を考えると、この問題への対策は待ったなしのタイミングであると力説。UCIはケトンの使用が許容されるという証拠を明示するか、あるいはそうでない場合はケトンの使用を推奨しない、または禁止すると明確に述べなければならないという。
治療やダイエットに効果もあるが生命維持のための身体の反応
人間の身体の中では「ブドウ糖」という物質を材料にエネルギー源を作る。たいていの人はご飯やパンを主食にして、ブドウ糖をエネルギー源とすることで運動できるようになる。ケトン体は脂肪合成や脂肪分解の過程で発生する中間代謝産物。通常、血液中にはほとんど存在しないが、糖尿病や糖質制限、絶食など、脳や筋肉のエネルギー源である糖質(グルコース)が利用できないときの代替エネルギー源として使われる。
近年では「糖質制限」の人気が高まるなか、ダイエット手段としてケトン体が注目を浴びていて、ケトジェニックダイエットと呼ばれている。ケトン体をメインに使ってもらうには糖質を減らす必要があり、医療現場では2型糖尿病患者においてインスリン抵抗性を改善し、効果を発揮することも確認されている。
その一方で、ケトン体が体内で増えるということは普通の状態ではなく、生命を維持するための防御手段という側面もある。体内で過剰に蓄積されると血液を酸性に傾け、生命を脅かす危険な状態を引き起こす可能性もある。フィットネスに有効とされる一方で、このような弊害もある。
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