ツール・ド・フランスは無観客を想定して日程通りの開催か

2020ツール・ド・フランスは世界各地での新型コロナウイルス感染拡大を受けて、スタートやゴールに観客を入れない運営方法を視野に入れながら、予定通りの6月27日から7月19日までの日程を死守して開催する策が検討されている。

2019ツール・ド・フランス第10ステージ ©ASO

新型コロナウイルスの猛威が欧州各国を襲い、国民が自宅待機を命じられている現状。ツール・ド・フランスとともに二大大会と言われるジロ・デ・イタリアは5月9日から31日までの開催を断念し、主催者は大会延期という苦渋の決断を余儀なくされた。

国際自転車競技連合(UCI)の幹部が「ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスが中止になるようなことになれば、自転車競技の沽券にかかわる非常事態だ」と発言しているが、6月末に開幕するツール・ド・フランスはどうなるかが焦点。

ツール・ド・フランスは自転車競技最高峰の大会であり、その象徴と位置づけられる伝統レース。フランス政府としても自国文化の象徴であるツール・ド・フランスだけはそのステータスを守っていきたいという考えがある。

沿道に観客がいないコースを走るパリ〜ニース第5ステージ ©A.S.O. Fabien Boukla

真夏の祭典からテレビ中継による純粋レースへ

フランス政府スポーツ省のロクサナ・マラシネアヌ大臣は3月26日、SNSによるツイートで、「ツール・ド・フランスはスポーツの記念碑です。開催までにはまだ時間があるので、決めるのは時期尚早です。まずこの難局を乗り越えるために全力を注ぎましょう」と書き込むとともに、主催者ASOとの調整に乗り出した。

マラシネアヌ大臣自身が競泳背泳ぎの元世界チャンピオンであり、五輪メダリストだが、サッカーの欧州選手権と東京五輪が延期を選択した一方で、ツール・ド・フランスは現時点で延期を検討せず、これまで同様の夏に開催するという政府の考えをサポートしていく。

フランスの有力紙などで報じられている報道を総合すると、ツール・ド・フランス出場選手や関係者すべての安全確保を最優先としつつ、感染拡大を誘発しないために無観客、広告キャラバン隊中止などの措置を講じて、予定された日程で開催する方向で努力していくという。沿道で目撃できないことになる観衆にはテレビ観戦をすすめている。

ASOは同様の主催レース、パリ〜ニースでもスタート・ゴール地点に観客を集めないレースを実施(最終日のみ打ち切り)。新型コロナウイルスの感染状況をにらみながらも、それに向けた準備を続けているようだ。

●ツール・ド・フランスのホームページ

ツール・ド・フランス6日後の東京五輪は問題なし…ティボー・ピノ

グルパマFDJのティボー・ピノ(フランス)は 6月27日から7月19日まで開催されるツール・ド・フランスを2020シーズン最大の目標としながら、6日後の25日に日本で開催される東京五輪の個人ロードレースに出場する考えを示した。

ツール・ド・フランス第8ステージで総合優勝を期待されるピノがライバルに差をつけてゴール ©ASO Alex BROADWAY

富士山麓を走る東京五輪のコースが山岳に強い選手に適しているため、フランス勢はピノのほか、AG2Rラモンディアールのロマン・バルデ、ドゥークニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップらをエースに起用する構想がある。このうちバルデはツール・ド・フランスを欠場し、5月のジロ・デ・イタリアと東京五輪に照準を合わせると発言している。

「ツール・ド・フランスばかりが人生ではない」という考えはピノの頭の片隅にあるというが、ツール・ド・フランス最終日にシャンゼリゼ通りを走ることは重要な意味があり、その後に空路を移動して東京入りする準備を考えているようだ。

「ボクは東京五輪に行くことを確信している」とピノは1月17日に発言。7月19日にツール・ド・フランスの激闘を終えてわずか6日後に富士山でレースするという日程の過酷さは問題ないとした。

ロマン・バルデは2020ツール・ド・フランスをパスする可能性がある ©A.S.O. Pauline BALLET

サンセバスティアンでも実績がある

ピノはツール・ド・フランスの1週間後に開催されたスペインのクラシカ・サンセバスティアンでいい走りをした経験がある。

「サンセバスティアンでの経験もある。ボクたち選手は15日後よりも6日後のほうが脚が回ることが多いんだ」とピノ。
「だから肉体的な疲れはあまり神経質になることはなく、いかに精神的なものをコントロールできるかがキーとなる。頭の中できちんと整理できていたら、ツール・ド・フランスの疲労は6日にはなくなっているはずだ」

2016年にピノは当初、リオ五輪のフランス代表に選ばれていたが、ウイルス感染により代表入りを見送られたという経緯がある。2020年はどうしても五輪を走りたい。バルデとアラフィリップとの役割分担は不明だが、ピノも日本で目撃できる可能性が高くなった。

ピノ(左から2人目)、アラフィリップ(同4人目)は五輪でどう走るのか? 2019ツール・ド・フランス第14ステージ ©ASO Pauline BALLET

●2020東京五輪のホームページ

2020ツール・ド・フランスにフランス3チームが主催者推薦出場

ツール・ド・フランス主催者は2020年6月27日から7月19日に開催される第107回ツール・ド・フランスの出場22チームを発表した。UCIワールドチーム19に加え、2019UCIプロチーム1位のトタル・ディレクトエネルジー(フランス)が自動選出。主催者推薦としてB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトとアルケア・サムシックのフランス2チームが選ばれた。

2019ツール・ド・フランス第14ステージ ©ASO Thomas MAHEUX

2020ツール・ド・フランス出場チーム
●UCIワールドチーム
AG2Rラモンディアール(フランス)
アスタナ(カザフスタン)
バーレーン・マクラーレン(バーレーン)
ボーラ・ハンズグローエ(ドイツ)
CCC(ポーランド)
コフィディス(フランス)
ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)
EFエデュケーションファースト(米国)
グルパマFDJ(フランス)
イスラエル・スタートアップネイション(イスラエル)
ロット・スーダル(ベルギー)
ミッチェルトン・スコット(オーストラリア)
モビスター(スペイン)
NTTプロ(南アフリカ)
イネオス(英国)
ユンボ・ヴィズマ(オランダ)
サンウェブ(ドイツ)
トレック・セガフレード(米国)
UAEエミレーツ(UAE)
●2019UCIプロチーム1位
トタル・ディレクトエネルジー(フランス)
●ワイルドカード
B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト(フランス)
アルケア・サムシック(フランス)

●ツール・ド・フランス公式サイトの発表

ベルナルのツール・ド・フランス参戦にフルームは焦る?

2020年のツール・ド・フランスで大会最多タイの5勝目に挑むイネオスのクリストファー・フルーム(英国)が、順調ではないリハビリ効果を押し隠して、「1月7日にはスペイン・マジョルカ島でのトレーニングキャンプに参加する」とコメントした。

クリテリウム・デュ・ドーフィネを走るクリストファー・フルーム ©ASO/Alex Broadway

2013、2015〜2017年のツール・ド・フランスで総合優勝しているフルームも34歳。2019年はツール・ド・フランスの調整レース試走中に落車し、複数カ所の骨折を負った。手術とリハビリを経てトレーニングを再開したが、本人が予定していたよりもパフォーマンス回復には長い時間を要しているようだ。

2018年にはチームメートのゲラント・トーマス(英国)が総合優勝。2019年にも同じチームのエガン・ベルナル(コロンビア)が総合優勝した。3選手は今季もイネオスに所属し、役割分担をすることになる。

クリストファー・フルーム(左)とエガン・ベルナル ©A.S.O. Thomas Colpaert

オフシーズンにベルナルはジロ・デ・イタリアに出場する予定であることをコメントしていたが、年を明けて一転。ジロ・デ・イタリアを回避して、ツール・ド・フランスで連覇に挑むことを明かした。フルームにとってこの発言はおだやかではないはずだ。

「コンディションの向上具合はまずまずで、トレーニングキャンプでさらに磨きをかけたい」とフルームは楽観的にツイートしているが、周辺を取り巻く現状は厳しい。6月27日に開幕するツール・ド・フランスまでにフルームのパフォーマンスが100%戻るのかも焦点だが、ベルナルやトーマスとどんな立ち位置になるのかも不透明。

●イネオスのホームページ

エガン・ベルナル一転…ジロ・デ・イタリアをパスしツール・ド・フランスへ

2019ツール・ド・フランスの総合優勝者、イネオスのエガン・ベルナル(コロンビア)が2020ツール・ド・フランスで2連覇に挑むことを明らかにした。当初は出場を示唆していたジロ・デ・イタリアを欠場する考え。イネオスは大会最多タイの5勝を目指すクリストファー・フルーム(英国)、2年ぶり2度目の総合優勝を見すえるゲラント・トーマス(英国)の3エースが出場する可能性がある。

エガン・ベルナルが2019ツール・ド・フランスで総合優勝 ©ASO Alex BROADWAY

ベルナルの2020年シーズンは2月11日から16日まで自国で開催されるコロンビアツアーで始める予定。ドゥークニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップ(フランス)とともに開幕する。

3月8日から15日までフランスのパリ〜ニースで連覇を目指し、3月23日から29日まではスペインのボルタカタルーニャを走る。その後はコロンビアの自宅に戻り、ツール・ド・フランスのための山岳トレーニングを行う計画。

最終的な準備レースとしてツール・ド・スイスまたはクリテリウム・デュ・ドーフィネに出場する見込み。

●イネオスのホームページ

マイヨジョーヌをオークション…アフリカの子どもに自転車51台を提供

ツール・ド・フランスとルコックスポルティフは12月14日、パリ市内のホテルでツール・ド・フランスのマイヨジョーヌをオークションする催しを開催し、7650ユーロ(約100万円)を調達し、ケベカ協会を経由してアフリカの子どもたちに自転車51台を提供。若い学生が簡単に学校に到達する機会を増やした。

2019ツール・ド・フランスで作られた20タイプのマイヨジョーヌ ©A.S.O./P.Ballet

2019年の第106回ツール・ド・フランスは個人総合1位の選手が着用する黄色いリーダージャージ、マイヨジョーヌが考案されて100年目。それを記念して各ステージの象徴的なイメージをあしらった20枚の特別ジャージがデザインされた。

20枚のマイヨジョーヌはアフリカの子どもたちに自転車を提供する活動を続けるケベカチャリティを通して役立てられることになる。

マイヨジョーヌ仕様のケベカバイク

このうち4台の自転車はツール・ド・フランスの4賞ジャージをイメージしたもの。2019年大会の各賞受賞者によるサインが入っているという。

●ツール・ド・フランスのホームページ