ファンデルプールがガンナとポガチャルを制してミラノ〜サンレモ優勝

世界最長距離となる289kmで開催されたミラノ〜サンレモ(3月22日、イタリア)はマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)を制して優勝。2023年に続く大会2勝目。

ファンデルプール(中央)、ガンナ(左)、ポガチャルが最後の坂で先頭に。2025ミラノ〜サンレモ ©LaPresseFabio Ferrari/LaPresse

世界王者ばかり3選手のゴールスプリント勝負に

ファンデルプールはミラノ〜サンレモで2度目の勝利を飾った。大会2勝は17年ぶり。ポガチャルがチプレッサの上りで仕掛けてガンナを含む3人の優勝争いとなると、ガンナがペースを維持し、2選手をふるい落とそうとしたポガチャルに抵抗。ファンデルプールは頂上の手前でカウンターアタックした。

最後は3選手でのゴールスプリントとなり、ファンデルプールが残り300m地点からスパートして優勝した。

地中海リヴィエラ海岸に到達した2025ミラノ〜サンレモ ©LaPresse

人生で最も調子いいのでポガチャルに勝てると感じていた

「私は人生の中で最もいい状態にいる。ティレーノ〜アドリアティコでいい感触を得ていて、1週間の休息で最高の状態になれるとわかっていた。ポガチャルについていける自信があった」とファンデルプール。

「チプレッサではティム・ウェレンスがスピードを上げた瞬間から厳しくなった。ポガチャルが私たちを振り落とそうとすることは知っていたが、私は彼についていくのに十分な脚力があった。トルキーノを越えた後に日差しを見たとき、沿岸で気温が高くなるのを感じてチャンスだと思った。それがチプレッサで大きな努力ができた理由でもあるが、優勝争いが3人だけだと知って驚いた。

ポガチャルを打ち負かすことは特別なこと。彼は素晴らしい走りを見せた。ラスト300mからスプリントすると決めていたので、今日はそれが勝利のポイントだった。ミラノ〜サンレモで2度目の勝利を修めてうれしい。モニュメントはどれも特別だが、今日のレースの展開を考えると、このパフォーマンスを誇りに思える。今日はレースが非常に厳しかったので、終わった時はかなり感情的になった。また1つモニュメントを制覇したなんて信じられない」

ポガチャルのアタックに反応するファンデルプールとガンナ。2025ミラノ〜サンレモ ©POOL LucaBettini/LaPresse
ファンデルプールがガンナとポガチャルを制して優勝。2025ミラノ〜サンレモ ©LaPresse

2人の世界チャンピオンを相手にこれ以上できなかった

「今日は本当にうれしい。チームとして、私たちは素晴らしい仕事をした。私は世界チャンピオンである2人の優れたサイクリストに対して、これ以上のことはできなかった。私は自分のペースでポッジオを走り、頂上までその位置をキープして、2人のライダーについていくために下り坂では目を閉じた。今年はこれ以上のことはできなかったので、来年こそ勝てるように頑張りたい」と2位ガンナ。

優勝のファンデルプール。左が2位ガンナ、右が3位。2025ミラノ〜サンレモ ©LaPresse

最善を尽くしたが今日はマチューが強すぎた

「私たちは計画どおりに、完璧な仕事をした。チームは素晴らしかった。私は最善を尽くした。チプレッサでアタックした。1人で行けると試みたが、マチューやピッポ(ガンナ)と一緒に行けて満足だ。本当にいいグループだった」とポガチャル。

「ポッジオでも再度挑戦した。早めに仕掛ける必要があることは分かっていた。マチューは今日非常に強かった。私たちはみんなラスト300m、同じポイントでスプリントを開始する考えを持っていたが、少し追い風があったので直線路のローマ通りはとても速かった。マチューが最も強かったので、彼に敬意を表したい。3位に満足する必要があるが、来年もっと頑張りたい」

世界最長289kmの自転車レース、2025ミラノ〜サンレモ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ファンデルプールが北の地獄パリ〜ルーべで独走2連覇

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が4月7日にフランスで開催された第121回パリ〜ルーベで独走勝利した。2023年に続く優勝だが、今回は世界チャンピオンのアルカンシエルを着用してガッツポーズでゴールした。

世界チャンピオン、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)。2024パリ〜ルーべ ©A.S.O. Pauline Ballet

3分遅れの2位はチームメートのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)で、同選手の2位も2年連続。3位はリドル・トレックのマッズ・ピーダズン(デンマーク)。

コンピエーニュをスタートする2024パリ〜ルーべ ©A.S.O. Pauline Ballet
距離259,7kmで争われた2024パリ〜ルーべ ©A.S.O. Pauline Ballet
パリ〜ルーべの難所アランベールを走るフレッド・ライト ©A.S.O. Pauline Ballet
2024パリ〜ルーべは快晴となり、砂埃が舞った ©A.S.O. Pauline Ballet
2024パリ〜ルーべ ©A.S.O. Pauline Ballet
ファンデルプールが2024パリ〜ルーべを走る ©A.S.O. Pauline Ballet
2024パリ〜ルーべ、石畳区間はチームカーが乗り入れられないのでチームスタッフが車輪を持って待機 ©A.S.O. Pauline Ballet
ファンデルプールが2024パリ〜ルーべで独走 ©A.S.O. Pauline Ballet
ファンデルプールがパリ〜ルーべを連覇 ©A.S.O. Pauline Ballet
2024パリ〜ルーべを制したファンデルプールを中央に、左が2位フィリプセン、右が3位ピーダズン ©A.S.O. Pauline Ballet
ゴール後のシャワー室で。ティム・ドクレルク ©A.S.O. Pauline Ballet
広告キャラバン隊ダイスキ! 2024パリ〜ルーべ ©A.S.O. Gautier Demouveaux

ファンデルプール北の地獄を制す…宿敵ファンアールトは痛恨のパンク

「北の地獄」と呼ばれる石畳の悪路が待ち構える伝統レース、第120回パリ〜ルーベが4月9日、フランスのコンピエーニュからルーベまでの257kmで行われ、アルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(28)=オランダ=が独走で初優勝した。ライバルのワウト・ファンアールト=ベルギー、ユンボ・ビスマ=は先頭に立ちながら痛恨のパンクで3位に終わった。

勝負どころ、アランベールの石畳を走るファンデルプール(左)とファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

優勝候補ばかり7選手が北の地獄の終盤に結集

ファンデルプールがモニュメントと呼ばれる伝統あるワンデーレースでの強さを証明した。3月18日にイタリアで開催されたミラノ〜サンレモに続く優勝。2020年と2022年にはベルギーのツール・デ・フランドルを制していて、3つ目のタイトルを獲得した。

路面が荒れているほど観客が集まる ©A.S.O. Pauline Ballet

この日はファンデルプールの波状攻撃によってファンアールトや他の有力選手で構成された7人に第一集団が絞り込まれた。この中にチームメートのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)がいたこともファンデルプールにとってはラッキーだった。優勝候補のジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSM)は勝負を仕掛けた終盤の石畳区間でファンデルプールと接触して落車。

ファンアールト(先頭から2人目)はこの日好調だったが… ©A.S.O. Pauline Ballet

ファンデルプールが後方を気遣っていたすきを突いてファンアールトがアタックした。ところがここで不運のパンクで失速。ファンデルプールがライバルを追い抜いてゴールまで独走した。

「最初はファンアールトがパンクしたとは知らなかった。でも、追い越した時はペースが遅くて、彼に問題があるのが分かった」というファンデルプール。

ファンデルプール(右)とファンアールト(中央)の両雄がバトル ©A.S.O. Pauline Ballet

「悪夢のようなパンクだったが、これも人生だ。自転車を交換してあきらめずに前を追ったが、ファンデルプールのような強い選手までの20秒を詰めるのは困難だった。今日は彼のアタックに反応できていたので、2人のゴール勝負になれば自信はあった」とファンアールト。最後はマークに付いたフィリプセンにもゴール勝負でかわされて3位になった。

ゴールのルーベ競技場で絶叫して喜びを表すファンデルプール ©A.S.O. Pauline Ballet

「これまでで最高の1日を過ごしたと思う。私は本当に強いと感じていて、数回の攻撃を試みたが、有力選手らを落とすのは困難だった。勝負どころの石畳区間は、デゲンコルプのクラッシュとファンアールトのパンクがあって、私は先頭に立っていることに気づき、フィニッシュラインまで全力で走った」とファンデルプール。

落車で勝利を逃したデゲンコルプがゴール後に倒れ込んだ ©A.S.O. Pauline Ballet

「フィニッシュラインまでファンアールトと一緒に行くことになれば、レースは違ったものになっていたかもしれない。彼の身にふりかかった不幸は残念だけど、それもレースの一部だ。パリ~ルーベで優勝するにはいい脚と幸運が必要なんだ」

優勝のファンデルプールを中央に、左が2位フィリプセン、右が3位ファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

新兵器エア調整システムが実戦使用された

DSMとユンボ・ビスマがパリ〜ルーベでタイヤ空気圧管理システムを使用した。ハンドルのリモートボタンを使用して、バイクに乗りながらタイヤの空気圧を増減できる。石畳と舗装路が交互に連続する同レースでは有利になる。

タイヤ空気圧を走行中に変えることができるスコープアトモス

ボタンを押すとワイヤレス信号により車輪ハブ部のバルブが開閉する。タイヤ内側にエアコンプレッサーがあって、走行中でも空気を抜いたり膨らませたりできる。路面状況に応じて最適なグリップ力と転がり抵抗にすることにより、選手は自信を持ってバイクを操作できるようになり、パフォーマンスと安全性が向上する。石畳ばかりでなく突然の雨でもメリットを発揮する。

すでに一般販売されていて、価格はこのシステムだけで約58万円。

ファンデルプールが北の地獄パリ〜ルーベで伝説的勝利

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が4月9日にフランスで開催された第120回パリ〜ルーベで独走勝利した。2位はチームメートのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)、3位はユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)。

アランベールの石畳を走るファンデルプール(左)とファンアールト(右) ©A.S.O. Pauline Ballet

フランドル2勝とミラノ〜サンレモに続くクラシック3勝目

ファンデルプールは3月18日にイタリアで開催されたミラノ〜サンレモに続くモニュメント優勝。北のクラシックレースでは2020年と2022年にツール・デ・フランドルで優勝していて、3勝目となる。

2023パリ〜ルーベ ©A.S.O. Pauline Ballet

この日はファンデルプールの波状攻撃によってファンアールトやフィリプセンを含む7人の先頭集団が形成された。優勝候補のジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSM)は石畳区間でファンデルプールと接触して落車。

すかさずファンアールトが勝負を仕掛けたが、ファンデルプールがこれに反応。ファンアールトは運悪くパンクして、ゴールまでファンデルプールが独走した。

パリ〜ルーベ2023で先頭集団に加わって機をうかがうファンアールト(2番目) ©A.S.O. Pauline Ballet

ファンアールトと一緒にゴールまで行きたかった

「これまでで最高の1日を過ごしたと思う。私は本当に強いと感じていて、数回の攻撃を試みまが、ライバルを落とすのは困難だった。勝負どころの石畳区間カルフールダルブルでは、デゲンコルプのクラッシュとファンアールトのパンクがあって、私は先頭に立っていることに気づき、フィニッシュラインまで全力で走った」とファンデルプール。

「最初はファンアールトがパンクしたとは知らなかった。でも、追い越した時はペースが遅くて、彼に問題があるのが分かった。フィニッシュラインまで一緒に行くことができれば、レースは違ったものになっていたかもしれないので、残念。とにかく、不幸はレースの一部だ。パリ~ルーベで優勝するにはいい脚と幸運が必要なんだ」

先頭からファンデルプール、ファンアールト、シュテファン・キュング ©A.S.O. Pauline Ballet
ファンデルプールがパリ〜ルーベを制した直後に絶叫 ©A.S.O. Pauline Ballet
落車で最後は優勝争いから脱落したジョン・デゲンコルプ ©A.S.O. Pauline Ballet
パリ〜ルーベ優勝のファンデルプールを中央に、左が2位フィリプセン、右が3位ファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

ファンデルプールが62年前の祖父に続くミラノ〜サンレモ独走勝利

イタリア語で春という意味の「プリマベーラ」と呼ばれている伝統大会、第114回ミラノ〜サンレモが3月18日に開催され、アルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(28)=オランダ=が初優勝した。62年前に祖父のレイモン・プリドール(フランス)が勝利した時と同じような独走シーンだった。

ミラノ〜サンレモを初制覇したファンデルプール ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse
レイモン・プリドール氏。2018年撮影、2019年逝去 © A.S.O. Thomas Maheux

最長距離となる300kmは国際ルールの規定を超える

イタリア北部の大都市ミラノから地中海岸のサンレモを目指すレース。距離294kmは国際規定の上限を超えるが、伝統大会として特別に容認されている。しかもミラノのスタート後に非競技区間があって、これを加えると選手は300km超を走る。現在行われている国際大会としてはもちろん最長距離だ。

ミラノ〜サンレモ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ミラノを出発したレースは中盤までロンバルディア平原を南下した。144km地点でトルキーノ峠を越え、地中海のリビエラ海岸に突入。この日は東からの風が選手にとってはフォローウインドとなり、メイン集団を加速させた。スタート直後から逃げていた選手を265km地点で吸収して、レースは終盤で振り出しに戻った。

地中海リビエラ海岸を西に進む ©Fabio Ferrari/LaPresse

勝負は残り5.5km地点を頂上とするポッジオ・ディ・サンレモに持ち込まれた。UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がこの上り坂でアタック。これにファンデルプール、ユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)、イネオスグレナディアーズのフィリッポ・ガンナ(イタリア)が反応。4人の先頭集団が形成された。

ポッジオの上りで仕掛けた(先頭から)ポガチャル、ガンナ、ファンアールト、ファンデルプール ©POOL GETTY/DEWAELE/LaPresse

ファンデルプールが勝負に出たのは頂上手前だ。ここでわずかに2番手以降と差が開いた。危険に満ちた下り坂をクリアすればゴールまでは平坦路だ。

最後の丘で2番手以降にわずかな差をつけたファンデルプール

「下り坂であえてリスクを冒さなかった。もしクラッシュしていたら自分を許すことはできなかったけど、仮に捕まってもゴールスプリントで勝てる」と冷静さを失わなかったファンデルプール。ゴールとなるサンレモのローマ大通りで独走状態に。「特別なレースでの特別な勝利だ」と最後は両手を挙げた。それはまさに祖父のウイニングポーズとそっくりだった。

ポッジオ・ディ・サンレモの頂上でわずかにリードしたファンデルプール ©Fabio Ferrari/LaPresse

1週間前に行われた7日間のステージレース、ティレーノ〜アドリアティコでは活躍を期待されながら、いいところがなかった。

「ティレーノ〜アドリアティコで隠れていたわけではなく、ベストな体調ではなかった。そのレース後にチーム全員と素晴らしいトレーニングの週を過ごしたし、彼らは僕のためにミラノ〜サンレモでいい仕事をしてくれた。チームとして今回の勝利を祝いたい」

残り200mで勝利を確信したファンデルプール ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse

1961年大会で独走優勝した祖父プリドール。1962年から1976年まで14回ツール・ド・フランスに出場して、総合2位3回、3位5回。ポディウムと呼ばれるパリでの表彰台に8回上っているが、総合優勝できなかっただけでなく首位のマイヨジョーヌを獲得したこともない。

ローマ通りを独走したファンデルプール ©Tano Pecoraro/LaPresse

祖父プリドールと同じ勝利に「優勝を誇りに思う」

ツール・ド・フランス最多の5勝を挙げたジャック・アンクティル(フランス)と時代を同じくしてしまったという不運があり、同選手が引退すると同じく最多勝を挙げる怪物エディ・メルクス(ベルギー)が立ちはだかった。新聞では「万年2位」と書かれたが、フランスでは一番人気があった。

優勝のファンデルプールを中央に、左が2位ガンナ、右が3位ファンアールト ©Gian Mattia D’Alberto/LaPresse
ツール・ド・フランスではレイモン・プリドール人気は今も衰えない ©A.S.O. Pauline Ballet

そんな祖父が幼児期からレース会場に連れてきたのがファンデルプール。2021ツール・ド・フランスでは6日間にわたってマイヨジョーヌを着用し、そしてこの日プリマベーラを制して肩を並べた。

「勝つのは最も難しいレース。祖父の優勝から62年経った今、ここで優勝したことを誇りに思う」

イタリアに春の到来を告げるミラノ〜サンレモ ©Fabio Ferrari/LaPresse

ファンデルプールとファンアールトはどっちが強い? どちらも強い!

2023シクロクロス世界選手権がオランダのホーヘルハイデで2月3〜5日に開催され、マチュー・ファンデルプール(オランダ)とワウト・ファンアールト(ベルギー)が一騎打ちの展開に。抜きつ抜かれつの激闘はファンデルプールが最後にライバルを制して5回目の世界チャンピオンになった。2人のデュエルはこの後、ロードレースに舞台を移して引き続き行われる。

シクロクロス世界選手権はファンアールト(左)とファンデルプールのマッチレース ©Kristof Ramon / Red Bull Content Pool

彼との戦いは10年続く。でも終わりじゃない。必ずまた勝負することになる

2人は幼少期からのライバルで、常に世界タイトルを争ってきた。今回のレースでもスタートしてすぐに2人が後続選手に差をつけて先頭を走る展開に。立て板を飛び越えるセクションでファンデルプールがわずかに優位に立つものの、走破力があるファンアールトが先行を許さない。勝負は最終周回へ。ファンアールトはライバルが板越えで主導権を握る前に勝負に出た。ファンアールトがわずかにリードを取り、ゴールを目指したが、ファンデルプールが必死に食らいつき、最後のコーナー手前で追い越して勝利した。

祖父レイモン・プリドールがなし得なかったマイヨジョーヌを獲得したファンデルプール ©A.S.O. Charly Lopez

5度目の世界チャンピオンになったファンデルプールがレース直後にコメントした。

「多くの人は以前にも同じような勝負を見たことがあるよね。もう10年も彼との戦いは続いている。でもこれで終わりではない。まだロードシーズンがあり、必ずまたファンアールトと勝負することになるだろう」

シクロクロス世界選手権の優勝者

●ジュニア
2012ファンデルプール2位ファンアールト
2013ファンデルプール②U23でファンアールト3位
●U23
2014ファンアールト3位ファンデルプール
●エリート
2015ファンデルプール3位ファンアールト
2016ファンアールト
2017ファンアールト②2位ファンデルプール
2018ファンアールト③3位ファンデルプール
2019ファンデルプール②2位ファンアールト
2020ファンデルプール③
2021ファンデルプール④2位ファンアールト
2022ピドコック
2023ファンデルプール⑤2位ファンアールト
丸数字は複数優勝回数
2022ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを着用するファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

宿命のライバル。ともに28歳。どちらも身長185cm前後と自転車選手としては大きい。2022年のシクロクロス世界選手権、ファンデルプールは東京五輪マウンテンバイクでの落車で痛めたケガにより欠場。ファンアールトもロードシーズンでのタイトル獲得のために出場を見送った。両雄不在のレースで英国のトム・ピドコックがチャンピオンになったが、今回は2人の圧倒的実力を目にしてピドコックが早々に連覇を断念。ロードシーズンに照準を当てるため出場しなかった。こうして2年ぶりに、2人のデュエルが実現した。

ファンデルプールの父はロードやシクロクロス界の有名選手。母はツール・ド・フランスで万年2位と呼ばれなからも人気があったレイモン・プリドールの娘だ。地元オランダで開催された今回のシクロクロス世界選手権のコース設計は父がした。それだけにライバルに負けるわけにはいかなかった。

2021ツール・ド・フランスのファンデルプール ©A.S.O. Charly Lopez

ロード選手としてもスーパースターだ。2021ツール・ド・フランスでは第2ステージで優勝して首位に。祖父も着用できなかった黄色いリーダージャージー、マイヨジョーヌを6日間にわたって獲得した。

ツール・ド・フランスであらゆる勝ち方を見せたファンアールト

一方のファンアールトもツール・ド・フランスで通算9勝を挙げている。特に21年は山岳、個人タイムトライアル、そして平坦ステージの最終日パリと変幻自在に勝利を量産。昨年は大会2日目にマイヨジョーヌを獲得すると、第4ステージで独走勝利。その後はエースのビンゲゴーのアシスト役に徹し、初優勝の立役者となった。

冬場の自転車種目であるシクロクロスはこの世界選手権を最後にシーズン終幕。このあとはロードレースが週末ごとに欧州各地で開催されていく。春はミラノ〜サンレモ(イタリア)、ツール・デ・フランドル(ベルギー)、パリ〜ルーベといったワンデーレースが注目される。

ツール・ド・フランスで大活躍のファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

「ライバルとの戦いはこれからだ」。オランダとベルギーの威信をかけて戦う両者の言葉が一致した。