垣田真穂…全日本トラック5冠も目標はツール・ド・フランス

「いつかはツール・ド・フランスで走りたいけど…」。パリ五輪自転車競技トラック代表。全日本トラック五冠。3000mの日本記録保持者。順風満帆で飛躍してきた早稲田大2年、垣田真穂に迷いが生じている。ロード代表で2028ロサンゼルス五輪を目指すが、その種目でメダルは獲得できるのか? 世界の強さを痛感した19歳が揺れている。

垣田真穂。12月14日に20歳の誕生日を迎える

五輪で金メダルを目指すのならトラックの方が近い

福岡でサッカーをしていた少女が県のアスリート発掘事業でさまざまなスポーツを体験。風を切って走る自転車に魅力を感じてこの競技を選んだ。科学的な能力測定で抜群の数値を連発し、2022世界選手権ジュニアロードで2位のゴール勝負に加わった。あっという間に世界中の女子ロードチーム関係者が注目する存在になった。

「ロードレースのほうが好き。でも五輪で金メダルを目指すのならトラックの方が近いとは思う」と、当時高校3年生ながらその道を冷静に見据えていた。だからパリはトラック選手として出場した。

パリ五輪では落車もあって思うような結果は残さなかったが、大会後に女子ロードチームのEFエデュケーションに入るのは決まっていた。「高校生で始めた自転車はロードが基本。パリに向けて3年生の最後からトラックに専念した。パリが終わって、ロードに戻ろうと決めていた」

陸上競技に例えれば中距離では世界レベルにある田中希実がフルマラソンに挑戦するようなチャレンジだ。加えてトラック日本代表チームで大切に育成された逸材が、いきなり多言語必須のプロロードチームに放り込まれるという環境変化もあった。五輪直後にロードレースでデビューするのだが、チーム最年少の垣田には不安なことばかりだった。

「英語さえ全然話せません。まだ加入したばかりで、役割もそれほどなかったけど、レース中の指示は理解できなかった」

11月2日に開催されたツール・ド・フランスさいたまにエリート女子日本代表として参戦

長距離が走れなくなってしまいロードから逃げていた

トラック日本代表ならチームが米などの和食具材を持ち込んでくれる。しかしロードレースはホテル転々。「ロードで行くって決めたら海外で単身全てしないといけないから、早く慣れる必要がある。でもそれってちょっと楽しみです」

久しぶりのロードはもちろんきつかったが、それ以上に楽しかった。

「ずっとトラックをやっていたのでロードがこれまでより走れなくなっているのを実感していて、実はロードから逃げていた。ほんとはメチャメチャ大好きなのに。たくさんの人がトラックでサポートしてくれているのもわかっていたから、内心ではどうしようとずっと悩んでいた」という。久々のロードで、それにいきなり欧州の大きなレースに起用されたのだから厳しい展開となったが、「距離は長いし、上りの練習はできていなかったけど、楽しかったです!」

欧州でロード2レースを経験した後に全日本選手権で5冠を取ってさらに揺れ動く。

さいたまスーパーアリーナを駆け抜ける垣田

世界のトップはトラックもロードも強いから負けずに頑張る

「来年は現時点で所属するロードチームは決まっていない。ロードに専念するか、トラックも兼任するか。次のロス五輪でメダルを取ることが目標ですが、トラックとロードでどちらがメダルに近いかを考えながら、自分で選択して頑張りたい」

垣田が自転車に転向した高校1年のとき、ツール・ド・フランスに女子クラスはなかったが、2022年に開幕。「やっぱりツール・ド・フランスはいちばん大きな大会で、ずっと出てみたいと思っていた。2025年に出場するのは厳しいと思うけど、世界のトラックで活躍している選手はロードでも結構ガツガツやっているので、負けずにチャレンジしていきます」

垣田真穂プロフィール

2004年12月14日、福岡県北九州市生まれ。10歳で福岡県のタレント発掘事業に合格。14歳でスポーツ庁やJOCなどが推進するジャパンライジングスタープロジェクトに参加して自転車競技を選択。地元に自転車部のある高校がなく、ロード練習を主に取り入れている愛媛・松山学院高に進学。

杭州アジア競技大会・トラック女子チームパシュート優勝、トラック女子マディソン優勝
2024ネーションズカップ・女子マディソン優勝
自転車アジア選手権では通算4冠
2024全日本選手権トラック・個人パシュート、スクラッチ、マディソン、オムニアム、チームパシュート優勝

19歳の垣田真穂が世界選手権ロード女子エリート代表に大抜擢

世界選手権ロードが2024年9月21日から29日までスイスのチューリッヒで開催され、早稲田大/EFオートリー・キャノンデールの垣田真穂がエリート女子の個人タイムトライアルとロードレースで日本代表になった。

垣田真穂

2022年9月の世界選手権ロードにジュニア代表として派遣され、5位に入って日本の関係者を驚かせた垣田。その後は早稲田大での学生活動と並行してトラックナショナルチームに起用され、2024パリ五輪に出場。9月にはトラック全日本選手権で5冠。さらに女子ロードチームのEFオートリー・キャノンデールの選手として欧州ロードレースにも参戦を始めた。

エリート女子ロードは与那嶺恵理(LABORAL KUTXA –FUNDACION EUSKADIと木下友梨菜(ベルマーレ)も出場。新城幸也(バーレーンビクトリアス)が男子ロードに出場する。

2024世界選手権ロード日程

9月21日(土)
パラサイクリング・チームリレー

9月22日(日)
パラサイクリング女子・個人タイムトライアル
エリート女子・個人タイムトライアル
エリート男子・個人タイムトライアル

9月23日(月)
ジュニア男子・個人タイムトライアル
パラサイクリング男子・個人タイムトライアル
U23男子・個人タイムトライアル

9月24日(火)
ジュニア女子・個人タイムトライアル
パラサイクリング男女・個人タイムトライアル

9月25日(水)
パラサイクリング男女・ロードレース
男女混成リレー・チームタイムトライアル

9月26日(木)
パラサイクリング男女・ロードレース
ジュニア女子・ロードレース
ジュニア男子・ロードレース

9月27日(金)
パラサイクリング男女・ロードレース
U23男子・ロードレース

9月28日(土)
パラサイクリング男女・ロードレース
エリート女子・ロードレース

9月29日(日)
パラサイクリング男子・ロードレース
エリート男子・ロードレース

垣田真穂が全日本トラック5冠…UCIプロロードチーム登録も

TEAM RAKUTEN K DREAMS/早稲田大の垣田真穂(19)が全日本選手権トラック競技でエリート女子の5冠を達成した。またUCI(国際自転車競技連合)の選手リストではEFオートリー・キャノンデルに登録され、今後は国際的な女子ロードレースにも参戦していくことが予想される。

垣田真穂が個人パシュートで日本新記録3:28.122 ©日本自転車競技連盟

垣田は全日本選手権初日のエリミネーションこそ3位になったが、TEAM RAKUTEN K DREAMSのメンバーとして出場したチームパシュートで内野艶和、池田瑞紀、水谷彩奈とともに優勝。

女子マディソンで優勝した垣田真穂(右)と内野艶和 ©日本自転車競技連盟

オムニアム、内野艶和とコンビを組んだマディソン、スクラッチで優勝。個人パシュートでは同学年の池田瑞紀(TEAM RAKUTEN K DREAMS/早稲田大)を抑え、日本新記録となる3分28秒122でゴール。5冠を達成した。

オムニアムの最終レース、ポイントレースでしかける垣田真穂 ©日本自転車競技連盟
チームパシュート優勝のTEAM RAKUTEN K DREAMS。左から垣田真穂、内野艶和、水谷彩奈、池田瑞紀 ©日本自転車競技連盟
垣田真穂が女子エリートスクラッチ優勝 ©日本自転車競技連盟

パリ五輪自転車競技トラック代表に男子7選手、女子6選手

第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)の自転車競技トラック種目日本代表選手が5月22日に日本自転車競技連盟から発表された。

パリ五輪トラック競技が行われるサンカンタン・アン・イブリーヌのベロドロームナシオナル ©Paris 2024
男子女子
今村 駿介池田 瑞紀
太田 海也内野 艶和
小原 佑太太田 りゆ
窪木 一茂垣田 真穂
長迫 吉拓梶原 悠未
中野 慎詞佐藤 水菜
橋本 英也
リザーブ(フランス同行)
松田 祥位梅川 風子
リザーブ(フランス同行なし)
山﨑 賢人

トラック中距離女子

内野艶和 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
垣田真穂 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
池田瑞紀 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
梶原悠未 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

トラック短距離女子

佐藤水菜 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
太田りゆ ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

トラック中距離男子

橋本英也 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
窪木一茂 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
今村駿介 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

トラック短距離男子

小原佑太 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
中野慎詞 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
太田海也 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
長迫吉拓 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

リザーブ(フランス同行)

梅川風子 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI
松田祥位 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

リザーブ(フランス同行なし)

山崎賢人 ©公益財団法人日本自転車競技連盟/Shutaro MOCHIZUKI

内野艶和・垣田真穂のマディソンはネーションズカップで連勝ならず

自転車トラックネーションズカップ第3戦は大会2日目の2024年4月13日に女子マディソンが行われ、第2戦で優勝している内野艶和(楽天Kドリームス)と垣田真穂(楽天Kドリームス/早稲田大)のペアが出場。終始上位集団でレースを進めたが、強豪3チームを相手に思うようにポイントを獲得することができず5位でレースを終えた。

女子マディソンを走る内野艶和、垣田真穂。UCIトラックネーションズカップ第3戦 ©JCF

池田瑞紀(楽天Kドリームス/早稲田大)と水谷彩奈(楽天Kドリームス/日本体育大)のペアは12位。

女子マディソンを走る内野艶和。UCIトラックネーションズカップ第3戦 ©JCF
女子マディソンを走る垣田真穂。UCIトラックネーションズカップ第3戦 ©JCF
女子マディソンの池田瑞紀、水谷彩奈。UCIトラックネーションズカップ第3戦 ©JCF

●大会のホームページ

内野艶和と垣田真穂が最終周回で大逆転優勝…ネーションズ女子マディソン

香港で開催されている2024UCIトラックネーションズカップ第2戦は大会2日目となる3月16日、女子マディソンが行われ、内野艶和(楽天Kドリームス)と垣田真穂(早稲田大/楽天Kドリームス)からなる日本のエースコンビが優勝した。

内野艶和(左)と垣田真穂がトラックネーションズカップ第2戦女子マディソンで優勝 ©日本自転車競技連盟

250mバンクを120周する30kmで争われたレースは、強豪国ニュージーランドがリード。ポイントが倍になる最終周回、12 回目のスプリント勝負で内野が圧倒的なスピードで1着通過。ニュージーランドを1点差で大逆転した内野・垣田ペアが優勝した。

垣田真穂(左)と内野艶和が女子マディソンで逆転優勝。トラックネーションズカップ第2戦 ©日本自転車競技連盟
内野艶和(左)と垣田真穂。トラックネーションズカップ第2戦 ©日本自転車競技連盟

池田瑞紀(早稲田大/楽天Kドリームス)、岡本美咲(京都・北桑田高)ペアは12位。

池田瑞紀、岡本美咲が女子マディソンで12位。トラックネーションズカップ第2戦 ©日本自転車競技連盟

女子スプリントは佐藤水菜が準々決勝敗退

女子スプリントには佐藤水菜(楽天Kドリームス)、太田りゆ(ブリヂストンサイクリング)、梅川風子(楽天Kドリームス)、酒井亜樹(桃山学院教育大/楽天Kドリームス)が出場。

女子スプリントを走る佐藤水菜(左)。トラックネーションズカップ第2戦 ©日本自転車競技連盟

予選を7位通過の佐藤は1回戦に勝利し2回戦へ進出。予選13位の太田と同じく19位の梅川は1回戦敗退。酒井は予選29位で予選敗退。

佐藤は2回戦で相手選手の降着もあり準々決勝へ進出したが、マチルド・グロ(フランス)に敗れた。

●日本の出場選手一覧