毎日の通学手段として自転車を使うのなら、ペダルをこぐだけで心肺機能向上と体幹強化ができるようなトレーニングができたら…。そんな提案からマジメに開発されたのが「トレチャリ」。全国の高校球児をターゲットに2018年7月から販売を開始する。
甲子園の強豪校も高校生の本業である勉強をしっかりと行う学校が増えている。野球だけに費やす時間が限られ、効率的な活動を日々行う重要性が高まっている。高校球児・部活動応援フリーマガジン「タイムリー!」が全国約4000校の高校野球部にアンケートをした結果、高校球児の通学手段第1位は自転車。同誌を発行する島本隆史さんはそこに着目し、「自転車通学時を利用して補助トレできるような自転車を作ろう」と企画した。
「野球用品は新製品といってもあまり変わらない。画期的なものが出現しないので、アイデアひとつで面白いものを作れたら」と、甲子園出場経験がある野球用品販売会社経営の米沢谷友広さんが開発に加わった。
2017年7月から自転車量販メーカーとタッグを組み、部活生が求める機能を十分に搭載した自転車の開発に乗り出した。原材料や機能、サポート体制などを議論し、数多くの試作品を経て完成。こうしてできあがったのが通学用のトレーニング自転車「トレチャリ」。毎日甲子園を目指して練習に励む球児たちの通学時間を練習時間に変える夢のクロスバイクだ。
こだわったのは5点だ。
(1)ノーパンクタイヤ。パンクによる時間のロスをなくすとともに、重量増によって運動負荷を高める。
(2)シマノ製21段変速ギヤによる負荷コントロール。鍛える日はギヤを重くして通学トレーニング。疲れた日はギヤを軽くして帰宅して休憩。
(3)鍛えようとする筋肉に負荷をかけるためには適正な乗車姿勢が重要。それを実現するロードバイク用のシャープなサドルを採用。
(4)握力強化に最適な樹脂グリップを搭載。赤信号時は握力強化トレで鋭いカーブボールが投げられるようにする。
(5)スマホホルダーを搭載してアプリ活動で運動量や消費カロリーを把握。高いモチベーションでトレーニングが継続できる。
健大高崎、花咲徳栄など多くの高校野球部でコンディショニングやフィジカルトレーニング全般を指導する塚原謙太郎トレーナーは、「関節に負荷をかけずに心肺機能を鍛えられるのがメリット。ランニングよりも足を高く上げるので体幹もいっそう鍛えられる」とトレチャリの効果を分析。ランよりも股関節の可動域を広げることができるのもいいという。
そのうえで、「乗るときの乗車姿勢が重要です。骨盤の位置を落とさずにしっかりと立てること」とポイントを指摘。
適正なライディングフォームを取ることで身体の裏にある疲れにくい大きな筋肉、大臀筋やハムストリングスなどを効率よく使ってペダルを踏むことができる。野球部ではベンチプレスやスクワットなどでその部分を鍛えるのだが、学校によっては設備を持たないところもあるし、それ以前に練習時間の捻出が必要になる。それを解決するのがトレチャリというわけだ。
「腕を使いながらこぐことで全身運動にもなる。トレチャリで通学時間が有効活用できる」と塚原トレーナー。
「トレチャリが浸透し、球児たちの一般的なトレーニングアイテムになったら、アプリを使ったトレチャリ走行選手権も開催したいと考えています」と島本さんの夢は広がる。通販最大手のアマゾンを使った一般販売は7月上旬の予定。税込み価格は3万5640円。
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