自転車の欧州選手権ってどんな大会? その意義を理解するための3つのキーワード

スポーツには1つの国や地域のチャンピオンを決める選手権大会(チャンピオンシップ)がある。世界チャンピオンを決定させるのが世界選手権、その国のチャンピオンを決定させるのがナショナル選手権だ。自転車競技にも世界選手権と各国選手権があるが、その中間に位置するのが大陸選手権だと言われている。

2021欧州選手権ジュニア女子ロード ©Ilario Biondi/BettiniPhoto©2021

驚くことに欧州選手権は大陸選手権とは別枠の存在

自転車競技の大陸選手権は、UCI(国際自転車競技連合)が認定する各大陸ごとの選手権大会。主に以下の4つの大陸で開催されている。

  • アジア選手権
  • アフリカ選手権
  • アメリカ選手権(南北アメリカをまとめて1つ)
  • オセアニア選手権
欧州選手権U23男子ロード(136.5km) ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023

欧州は欧州選手権として独立した大会があり、これを含めると5大陸だが、一般的に「大陸選手権」と呼ばれるのは欧州を除いた4つ。欧州選手権は欧州各国のトップ選手が集まり、ロードレース、トラック、マウンテンバイク、BMXなどさまざまな種目で競い合う国際大会。主催は欧州自転車競技連合(UEC)で、毎年開催されている。

2023欧州選手権エリート男子ロード ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023

なぜ欧州選手権は大陸選手権ではないのか?

理由は主に以下の通り

欧州は別枠
自転車競技の歴史的背景から、欧州は競技人口・レベルともに突出していて、独自の欧州選手権が長い歴史を持っている。そのため、他の大陸(アジア・アフリカ・アメリカ・オセアニア)と分けて考えられている。

■ ISUやUCIの方針

フィギュアスケートや自転車競技など、国際連盟(UCIやISU)は「欧州以外の地域の競技レベル向上」を目的として、欧州以外の4大陸で選手権を開催している。欧州はすでに競技が盛んなため、他の地域の発展を促す意味合いが強い。

地理的・運営的な区分

世界の大陸区分として、欧州を除いた「アジア・アフリカ・アメリカ・オセアニア」の4つが国際大会の枠組みとして使われることが多い。アメリカは南北をまとめて1つの「パンアメリカン選手権」として扱われる。

2023欧州選手権ジュニア女子ロード ©Luca Bettini/SprintCyclingAgency©2023

スロベニアのリュブリャナが2026欧州選手権ロードの開催地に決定

フランスのドローム=アルデシュで10月1日から5日まで開催されている欧州選手権で、UEC(欧州自転車競技連合)理事会は正式に2026年UECロード欧州選手権をスロベニアとその首都リュブリャナに決めた。大会は2026年10月3日から7日まで開催され、リュブリャナは国際的な自転車競技の中心地となる。

UECエンリコ・デッラ・カーザ会長は、「私たちはいくつかの高品質な提案を受け取った。これにより、ロード欧州選手権が国際スポーツ界で重要な地位を確立していることが確認された。スロベニアを選んだ理由は、この国がもはや新興国ではなく、確立されたリーダー的存在であるから。今日、スロベニアではスポーツと自転車競技が密接に結びついている。この国はオフロード自転車競技において常に活発であり、近年では世界最高レベルで活躍するチャンピオンたちのおかげで、成長を続けるムーブメントを牽引している。2026年UEC欧州選手権は、何千人ものファンをひき付け、自然の美しさと文化的豊かさにあふれる地域を紹介する大規模なイベントとなるだろう。スロベニア自転車連盟とその会長パヴェル・マルジョノヴィッチ氏、そしてこの提案を可能にしたパートナーに心から感謝したい」とコメント。

2025欧州選手権ジュニア男子ロードを制したカール・ヘルツォーク ©Ivan Benedetto/SprintCyclingAgency©2025

2026年ロード欧州選手権(リュブリャナ – スロベニア、2026年10月3日~7日)

10月3日: 男子ジュニア – 女子エリートロードレース
10月4日: 女子ジュニア – 男子エリートロードレース
10月5日: 男子U23 – 女子U23ロードレース
10月6日: 混合チームリレー(エリートおよびジュニア)
10月7日: 個人タイムトライアル(全カテゴリー)

ログリッチがスロベニアのアスリートオブザイヤー受賞

サイクリストのプリモシュ・ログリッチ、クロスカントリースキーヤーのアナマリヤ・ランピッチ、スロベニアの男子ハンドボール代表チームがスロベニアスポーツジャーナリスト協会によって2020年に最も活躍したアスリートに選ばれた。最も有望な若手スポーツ選手は円盤投げのクリスティアン・チェが受賞した。

ログリッチがブエルタ・ア・エスパーニャ第1ステージで優勝 ©PHOTOGOMEZSPORT2020

とりわけスペインのブエルタ・ア・エスパーニャで王座を防衛し、ツール・ド・フランスで2位だったログリッチは、2019年も最優秀スロベニア選手賞を受賞した。2020年は61票を獲得し、43票を獲得したツール・ド・フランスの優勝者タデイ・ポガチャルを破った。

ランピッチがスロベニアアスリート女王の座を獲得するのは初めて。2019年の受賞者であるクライマーのジャンジャ・ガーンブレットの後を継いだ。ランピッチはワールドカップのスプリントで総合3位を獲得し、新年のツール・ド・スキーでのスプリントでも最高のパフォーマンスを発揮。伝統的なスポーツジャーナリスト協会の投票では、115のうち81票を集めた。

●国際スポーツプレス協会の詳細ページ

ログリッチが連覇…第75回ブエルタ・ア・エスパーニャ
21歳のタデイ・ポガチャルがツール・ド・フランス逆転優勝へ

ログリッチェ、ポガチャル…2019年はスロベニア勢台頭

グランツールと呼ばれる三大ステージレースの最後を飾る第74回ブエルタ・ア・エスパーニャが8月24日から9月15日までスペイン全土で開催され、ユンボ・ビスマのプリモシュ・ログリッチェが総合優勝。スロベニア勢としてのグランツールも初制覇だったが、総合3位と新人王も同国のタデイ・ポガチャル(UAEエミレーツ)が獲得した。

先行するポガチャル、それに追従するマイヨロホのログリッチェ ©Photogómez Sport

南米勢のグランツール全制覇を阻止

5月のジロ・デ・イタリアはエクアドル選手、7月のツール・ド・フランスはコロンビア選手。どちらも大会史上初の優勝者国籍だった。迎えたブエルタ・ア・エスパーニャも開幕前はコロンビア選手の総合優勝が濃厚という大方の予測。2018年は英国勢がグランツールを完全制覇したが、今季は南米勢が席捲するのでは言われていた。

その予測通り、初日はコロンビアのミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ)が首位に。2日目はコロンビアのナイロ・キンタナ(モビスター)が区間勝利。ロペスは7日目までに3度も首位に躍進し、そして大会9日目の山岳でついにキンタナが首位となった。

総合優勝のログリッチェを中央に左が2位バルベルデ、右が3位と新人賞を獲得したポガチャル ©Photogómez Sport

最初の休息日を過ごした翌日、第10ステージの個人タイムトライアルで圧勝したのがログリッチェだ。5月のジロ・デ・イタリアでは開幕にピークを合わせ、初日の個人タイムトライアルに勝って首位に。ところが23日間の長丁場という戦いで、終盤に調子を落として優勝争いから脱落した。ジロ・デ・イタリアで疲れ果てたログリッチェは、ツール・ド・フランスを回避。ブエルタ・ア・エスパーニャをパスすることも選択肢のひとつだったが、将来に向けて経験値を積むことを選んだ。

現在29歳のログリッチェはもともとスキーのジャンプ選手。ジュニア時代の世界選手権では団体種目で金メダルを獲得している。21歳の時に自転車競技に転向した。ジャンプ選手時代から瞬発力と持久力のバランスに優れていて、集団走行に慣れるとすぐに好成績をマークしていく。2017、2018年とツール・ド・フランスの終盤ステージで各1勝。2018年は総合4位に。ジロ・デ・イタリアでは個人タイムトライアルで2016年に1勝、2019年に2勝した。

タデイ・ポガチャルが第20ステージで2019ブエルタ・ア・エスパーニャ3勝目 ©Photogómez Sport

「今年のジロ・デ・イタリアでは総合優勝を争っていた終盤に失速してしまったが、それ以外は最終週に好成績を挙げている。今回のブエルタ・ア・エスパーニャも最後に調子を上げるつもりで調整した」とログリッチェ。第10ステージの個人タイムトライアルで首位に立つと、鉄壁のアシスト陣の援護もあって最終日までコロンビアやスペイン勢の攻撃をしのいだ。

さらにスロベニア勢はポガチャルが区間3勝と大活躍し、いきなりの総合3位に。第9ステージで初勝利したときは、「最終日の表彰台でログリッチェの隣に立てたらうれしい」と夢を語ったが、それを実現してしまった。

総合1位のログリッチェ(右)と新人賞のポガチャル ©Photogómez Sport

スロベニアの格下チームに所属していた2018年にアマチュア版ツール・ド・フランスと言われるツール・ド・ラブニールで総合優勝したのがポガチャルだ。今季になって現在のトップチームに移籍し、グランツールは初参戦だった。

スロベニアは自転車競技が盛んなイタリア北部に隣接することから、強豪国となる下地はあった。ジロ・デ・イタリアが国境を越えてスロベニアを訪問することもある。最新の世界ランキングは、個人でログリッチェが1位、国別でスロベニアが3つ順位を上げて8位に浮上している。

ブエルタ・ア・エスパーニャを終えて世界ランキング1位になったログリッチェ ©Photogómez Sport

●ブエルタ・ア・エスパーニャのホームページ