スマホで出前注文すると、人並み外れた筋肉を持つ新田祐大が届けてくれたら、それはビックリだ。それが現実となった。日本最大級の出前サービス『出前館』が、新型コロナウイルスの影響を受け、大会賞金を獲得する機会が減っている自転車選手1万人を支援。空き時間に全国の出前館配達スタッフとして活動してもらおうという試みが始まった。
新田祐大、小林優香、長迫吉拓が出前スタッフに
6月28日、東京都の日本橋界わいで配達用の電動アシスト自転車に乗る3選手がいた。感染予防対策のためにマスクを着用しているが、鍛え抜かれた太ももを見ればタダ者でないことが分かる。競輪界のスーパースター新田、ガールズケイリンの小林優香は東京五輪トラック代表。長迫吉拓はBMX競技でリオに続く2大会連続の五輪代表だ。
「大雪のクリスマスの日に温かいうちに口にしたときのうれしさ」(新田)、「祖父母の家に泊まったとき、なんとも言えない特別なおいしさがあった」(長迫)と、幼少期における出前の記憶を思い返すが、自らが出前をするのは初体験だ。
「プロが届けるプロの味です。ボクたちが得意とする自転車を使って、少しでも日本や世界を元気にできるお手伝いがしたい」と、今回の企画に立候補した思いを新田が語っている。
「自転車は生活と密着しているのに、競技を知らない人が多い。今回のプロジェクトはお互いにいい機会になると思って参加しました」と長迫。
バレーボール部時代に友だちと大会後に出前を注文するのが楽しみだったという小林も、「たくさんの人に知ってもらえるきっかけになると思ったので」と参加した。
配達者の交通安全マナーの順守は出前業務を担う企業として重要だ。自宅待機が多くなったことで料理宅配の需要が急増しているが、それとともに配達者の道路通行におけるトラブルも社会問題化しつつある。多くの配達者が移動手段として使っているのはもちろん自転車だ。
「都心部では交通量も多いので、普段乗っている時以上に気をつけなければならないと感じた。目立つ服を着ていても、右左折やブレーキのタイミングなどドライバーにはわからないところもあるので」(新田)。
選手カードからオーダーすれば、その選手に支援金も
今回、新型コロナウイルスの影響で大会などの稼働機会が減り、収入が減少し、さまざまなアルバイトを行うアスリートも増える中、『出前館』では礼儀正しく、体力もあるアスリートの受け入れを増やす方針に。特に自転車を仕事の道具として接する自転車競技選手は、特別手当などの金銭的な支援と同時に、配達時に選手プロフィールカードを配布することで、認知度アップと寄付の呼びかけも行っていきたいという。
「人に届けるという点でとても緊張感があった」と、新田はこの日の感想をこう語った。
「このコロナ禍の中では、自転車を外でこぐということがうれしい。風通しもよく非常にいい環境下で業務ができたと思います。また自分たちにもマッチしている内容だと思いました」
長迫は、「スポンサーを受けて現役生活をしているが、こうした業務でお金をいただくという一つの事業を体験できた。このひとつひとつの積み重ねが、ボクがもらっているお金なんだなと改めて実感したので新鮮でした」という。
自転車競技選手の中でもトップアスリートである3人からスタートしたプロジェクトは、これから自転車選手など1万人の参加受け入れを行う。各地域で、頑張るアスリートが出前を届けることで、アスリートの応援を行いながら地域の活性化につなげたいと同社。
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