ユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(25)が第109回ツール・ド・フランスで初の総合優勝を達成した。大会は史上初めて北欧のデンマークで開幕し、7月1日から24日まで行われた。同国選手として1996年のビャルネ・リース以来の2人目の勝者となった。
チームメートのワウト・ファンアールト(ベルギー)が連日にわたって積極的な走りを見せ、ビンゲゴーの勝利に貢献するとともに、区間3勝、ポイント賞、総合敢闘賞を集中にした。した。3連覇を狙ったUAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)は総合2位。
3連覇を狙ったポガチャルから離れず、タイムトライアルで突き放す
2021年にポガチャルに続いて総合2位となったビンゲゴー。第11ステージで首位に立つと、最終日前日の個人タイムトライアルで総合優勝を確実にした。その日の勝利者会見で「昨年からツール・ド・フランスに勝てると信じていた」と明かす。
一見か弱く見える選手だ。母国である開幕地で大声援を送られて思わず目頭が熱くなるほどの素朴な性格。ポガチャルのように若い頃から注目されることはなく、魚河岸でアルバイトをしながら練習し、プロになった努力家だ。しかしマイヨジョーヌを着用し続けていくうちに王者の風格が感じられるようになり、記者会見も堂々としたところを見せた。
2年前、チームは最終日前日にどん底に叩き込まれた。マイヨジョーヌを守ってきたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が個人タイムトライアルでポガチャルにまさかの逆転負けを喫したのだ。
「そんなことの再来は望んでいなかったから、いい走りができて首位を守ることができてようやく安堵した」と今回のビンゲゴー。
3連覇を狙ったポガチャルから、アルプスでマイヨジョーヌを奪うと、その後は息を呑むような戦いを展開する。どちらも守りに入らず、毎日全力でライバルを引き離しにかかった。攻撃の手を緩めないポガチャルに、ビンゲゴーは食らいつき、そして最終日前日の個人タイムトライアルで突き放した。
「お世話になったチームとデンマークにいい報告ができる。デンマークでの報道をまだ知らないけど、みんな興奮していることは推測できる」
変幻自在の動きを見せたファンアールトが敢闘賞
ビンゲゴーの初優勝に大きく貢献したのがベルギーのワウト・ファンアールトだ。ステージ3勝と、スプリント王の称号であるポイント賞を獲得。序盤の4日間はマイヨジョーヌを着用したが、「チームエースはビンゲゴー」と割り切り、集団から遅れた同選手を引き上げたりした。
最終日前日はそんなファンアールトにとっても感慨深い結果になった。2年前にログリッチが逆転負けしたときのチームメートだったからだ。自身がトップタイムで優勝するとともに、ビンゲゴーがマイヨジョーヌを死守してゴールすると感極まって頬に涙が伝わった。
「チームから総合優勝者が出ることは特別なことだ。ビンゲゴーは強くもあるが、人間としても素晴らしい。そんな彼をチーム全員が栄冠に導いたのだから、本当にうれしい」
コロナ禍での3年目のツール・ド・フランス
2002年は大会が2カ月遅れの秋に延期され、スタートとゴールに観客を入れない運営で開催。2021年は感染状況も落ち着いたことからいつもの夏開催へ。そして2022年はフランスに第7波が到来。4度の総合優勝を誇るクリストファー・フルームなど複数の選手が大会中に罹患しリタイアした。主催者は大会中盤から選手への接触を禁止。チームバスが駐車するエリアに立ち入るスタッフにマスク着用を義務づけた。
感染者は多いもののフランスではコロナ以前の生活が戻った。海外からの観光客数は激減しているが、2024年のパリ五輪に向けて観光大国としての復権に努める。
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