日本航空などが6月22日に発表した自転車輸送用の受託手荷物専用ボックス(SBCON=エスビーコン)。高価なロードバイクが傷つくことなく空路で移動できると全国サイクリストの期待が高まったが、8月に初開催されたモニターツアーはさまざまな規制に阻まれ、開発陣が思い描いたようなシナリオにならなかった。魔法のアイテムのようで現実には多くの難題がある。
SBCONを実質的に開発したのはIoTシステム開発会社として実績を持つ「Sワークス」。スペシャライズド社の持つブランドネームと同じだが、関連性はないものの「良好な関係」だという。6月の発表時からさまざまな課題をクリアするためにすでに十数回は改良型を制作しているという。
これまで飛行機に自転車を預けるケースでは、積載時の扱いによる破損が少なからず問題となっていた。チェックイン時に「破損時の免責書類」に署名しないと預けられないので、自分の手から離れるのさえ不安だった。それを解決したのが今回のSBCONだ。航空機下部の荷室にピッタリとフィットする独特の外観。重厚な樹脂製段ボールでできているので、収納したロードバイクが壊れることはまずない。
利用者は空港まで自転車で走っていくか、クルマで運搬するなどで空港チェックインカウンターに持ち込む。専用設計されたボックスは前輪を外すだけで、ものの数分で収容できるという。これなら不慣れな輪行をすることもないし、愛車がキズつく恐れもほとんどない。大手メディアや自転車専門誌などがそれを報じ、全国サイクリストの反響は大きかった。
8月に「しまなみ海道モニターツアー」を3日間の日程で開催したが、ここで思わぬ壁に直面する。空港ビルに自転車をそのままの状態で持ち込むことができないことが判明した。そのためツアー利用者はいったん輪行袋に収納してカウンターまで担いでいくことになった。
「サイクルステーションを備えているような地方空港ならそのまま自転車でアクセスできることもありますが、羽田や関西空港、セントレアなどの基幹空港は自転車によるアプローチが確立されていない。さらに現状では自転車を押して空港施設内を歩くことができないんです」とJAL担当者。
SBCONは一般ユーザー向けのサービスに先がけて、ツアーなどに組み込むBtoB戦略を展開する。つまりパッケージツアーにSBCONが導入されるというかたちになる。そればらばツアー会社が空港施設の外で自走サイクリストを迎え、SBCONに収納してしまえばいいのではと期待したものの、荷物チェックを受ける際に箱から出して安全を確認しないといけないというのが現行ルールだという。またツアー催行にひと手間が加わるということで、参加費用がアップされることも予測できる。
SBCONを取り巻く課題はそれ以外にも多い。カートのように自転車を転がしてカウンターに歩いていけるようなルール改正も模索しながら、サイクリストが安全に空路で旅していけるようなシステム作りをこれからも検証していきたいという。
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