【ツール・ド・フランス現場雑感】10人用の山小屋に6745円で泊まる

ポガチャルがアタックしてステージ10勝目…遅れたビンゲゴーはマイヨジョーヌ

第110回ツール・ド・フランスは7月6日、タルブ〜コトレ・カンバスク間の145kmで第6ステージが行われ、UAEエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴー(デンマーク)に24秒差をつけて今大会初優勝。大会通算10勝目。総合成績ではビンゲゴーが首位に立ち、これを25秒差で総合2位ポガチャルが追う展開となった。

ポガチャルがアタック。ビンゲゴーがこれを追えない ©A.S.O. Charly Lopez

荷物をまとめて帰ろうとしたが脚が回った(ポガチャル)

最後の上りで一騎打ちとなったビンゲゴーとポガチャル。残り2.8kmでポガチャルが勝負に出た。上りとは思えないスピードで一気に差をつけ、さらにじわじわと引き離す。2年ぶり3度目の総合優勝を目指す王者の走りだった。

2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

「上り坂でユンボ・ビスマ勢の速い走りに圧倒されたので、昨日のように調子が悪かったら荷物をまとめて帰ろうと思った。でも脚が回った。25秒遅れは絶好のタイム差だ。最終ステージまでし烈な戦いになるだろう」とポガチャル。

2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

ファンアールトがビンゲゴーを牽引。ポガチャルもついていく ©A.S.O. Charly Lopez
2023ツール・ド・フランス第6ステージ ©A.S.O. Charly Lopez
ポガチャル対ビンゲゴーの一騎打ち ©A.S.O. Charly Lopez

これまでの経験値が多少なりとも生かされている

ピレネーの山岳ステージ初日はゴールのラランスから関係車両は憲兵隊の誘導で宿泊地のポーまで35kmを隊列で北上していきます。観客も帰路を急ぐため混乱は必至で、そのためボクは北のポーへは向かわず、さらに奥深くのオービスク峠に向かうキャンプ場を予約しました。

ダイニングルームの階段を登っていくとベッドルームが2部屋。さらに別のベッドルームやシャワー4つ、トイレ3つがある

そのため渋滞にもあうことなく、ものの30分ほどで管理棟に到着。午後7時を過ぎても鍵のありかにたどり着けるように暗証番号をメールでもらっていましたが、やっぱり対人のほうが安心ですよね。そして案内されたのが、谷の一番奥にある大きなシャレ(山小屋)。そこまでは未舗装路の徒歩。キャスター付きのバッグが全く役に立たず、とりわけ翌朝の上りは途中で2回休んだほどです。

テーブル席にコンセントがなく、結局パソコン仕事はここでした

管理棟の前にはプールがありましたが、見ているだけで寒くなるほど周囲はしっとりとして心地よい程度の寒さに。ディナーも朝食も別料金でオーダーできましたが、いいお値段で、しかもキッチンもあるというので手持ちの食材で部屋飲みに。

レセプションから歩いて一番谷底にある山小屋をあてがわれ、荷物を運ぶのに息が切れた

二棟構造がひとつになった大きな山小屋です。ベッドルーム3部屋はすべて2階にあって、合計10人が宿泊できるようです。トイレは3カ所ほど、シャワーも3連繋がりのものとちょっと立派な別のものが1つ。フェイク暖炉もありました。

キッチンもあるのでレストランにはいかず、手持ちの食材でくつろぎながら部屋飲み

ホテルドットコムで決済した宿泊費は6745円。真冬の格好でテラスに出て、カウベルの音が風に流れて聞こえる中で歯ブラシ。フランスが地上の楽園と感じる瞬間です。ずっと滞在していたいですが、あと1時間で出ないと。

翌日のゴール後はオービスク峠を越えればすぐ。ヒツジにブロックされなければ大丈夫。できるだけ岩盤側を走って谷底を意識しないで運転することを心がけ、いちはやく到着。

プールはあるけど寒くて入れない
オービスク峠の東麓側は断崖絶壁
1kmごとに頂上までの距離・勾配値が表示されている
ツール・ド・フランスが初採用した4つの峠の一つ、オービスク

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【ツール・ド・フランス現場雑感】英国人夫婦がフランスで営む民宿

ヒンドレーがピレネー初日に独走…総合でも首位に

第110回ツール・ド・フランスは7月5日、ポー〜ラランス間の163kmで第5ステージが行われ、ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)が残り20kmから独走して初優勝。総合成績でも首位に立った。

ヒンドレーが初優勝して総合でもトップに。2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

優勝候補ポガチャルがまさかの1分遅れ

ヒンドレーは2022年のジロ・デ・イタリアを制した実力者で、総合成績でも首位に立ち、一躍優勝争いの一角に。「初参戦でここまでできるとは考えていなかった。アタックは計画していなくて即興だった」とヒンドレー。

連覇を目指すユンボ・ビスマのヨナス・ビンゲゴーは孤軍奮闘で追ったが、総合成績で47秒差をつけられた。UAEエミレーツのタデイ・ポガチャルはこの日1分38秒も遅れ、総合6位に後退。「イタリアの女子レースで自転車選手の彼女が転倒して、1分ロスしたことよりもショックだ」とポガチャル。

大会5日目にしてピレネーの本格的な山岳ステージが始まった ©A.S.O. Pauline Ballet
2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
ヒンドレーがマイヨジョーヌ ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

フランス渡航30年にしてこれぞオススメしたい民宿

前日にノガロサーキットでの仕事を切り上げて、30分ほどでたどり着いたのがこの日のお宿。日本で言ったら民宿で、アットホームな雰囲気が楽しめる人には最適です。ただし経営者との距離が近いのがよくある民宿の難点で、もっと放任してほしいという人には向いていないと思います。ところが…。

ヨーグルト、ジャム、パンは自家製

この日はそんな民宿とはちょっと違ったところでした。部屋代は一般的なホテルと比べたら安価ですが、「ディナーが食べたいときは24時間前までに連絡ください。プレートが3品で15ユーロ」という案内があったので、メールでディナーをオーダー。すぐに「もちろん」というレスが返ってきました。

この手の民宿はオーナーが見つけたとっておきの場所にあることが多く、たいてい路頭に迷います。ところが時代の進化で、宿泊予約サイトの地図をたたくと、Google マップが起動して、そこまで案内してくれます。なんていい時代になったんでしょう。

向こうに見えるのがピレネーだ

たどり着いたのはポツンと一軒宿。2部屋しか客室がなく、この日の宿泊はボクだけ。シャワーを浴びてからダイニングに行くと、それはもうおいしい匂いが充満。テーブルにはワインも用意されていて、これで前日のホテルの朝食と同じ値段とは。

この宿でよかったものは、経営者があまりしゃしゃり出てこず、ディナーをゆったり食べることができたこと。もちろん、就寝前に「世間話や伝達事と翌朝の朝食時間など」のお話はありましたが、お客さんのスタンスを尊重した接し方にとても好感を持ちました。

2023ツール・ド・フランス第5ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

そしてディナーが終わったあとは、ポツンと一軒宿は管理人の英国人夫婦がクルマで下山してしまったので、ボクだけのものになりました。

それでも会話したことをまとめると、夫婦で英国からフランスに移住してペンションを持ったとのことです。庭には食材になる植物を育てていて、朝食のヨーグルト、パン、ジャムは自家製です。英国のカベンディッシュがあと1勝してほしいとご主人。

この日はぐっすりと眠ることができ、朝のランニング練習はアップダウンの連続に手こずりましたが、シャワーを浴びておいしい朝食。10時までに手洗いの洗濯をして、ちょっとくつろいでから一路勝負どころのピレネーへ。まだ大会は始まったばかりなのに、山岳ステージ早くないですか?

トレックチームのメインスポンサーとなったリドル

この民宿はタルブの北にあるので、タルブ、ルルドともう30年も走り通したピレネー北麓の町々を通過していきます。ルルドのよく知った郊外型商業施設群でディスカウントスーパーのリドルへ。

リドルってフランスのドンキというイメージでしたが、30年の現地取材にして初めて入ったら大船グランシップのライフみたいな感じです。商品スキャンは机の上を転がすだけの超高速。こっちの人は大量買いしますが、列が長くならないのがうれしい。

ルルドとタルブを結ぶ街道にあるアデという町はいつも気になる

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【ツール・ド・フランス現場雑感】仕方なしの高額ホテルはやっぱり気持ちいい

フィリプセン2連勝…マイヨベールの獲得を宣言

第110回ツール・ド・フランスは7月4日、ダクス〜ノガロ間の182kmで第4ステージが行われ、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン(ベルギー)が大集団のゴール勝負を制し、2日連続で優勝。大会通算4勝目。

2023ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

フィリプセンはポイント賞でもトップに立ち、マイヨベールを着用することになった。

総合成績では、UAEエミレーツのアダム・イェーツが初日から4日連続で首位をキープしている。

マイヨジョーヌのアダム・イェーツ ©A.S.O. Charly Lopez

ポイント賞のマイヨベールを最終日まで守りたい(フィリプセン)

この日は同地にあるポール・アルマニャックサーキットがゴール。優勝したフィリプセンは「まるでレーシングドライバーになった気持ちだ」と好調ぶりに気分がいい。「昨日からこのステージは勝利を狙っていた」。

スプリント王の称号であるポイント賞の緑ジャージ、マイヨベールも獲得し、「今大会はこのジャージを最後まで守り抜くのが最大の目標になる」と語った。

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2023ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
2023ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet
2023ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

リゾートホテルを利用する協賛会社グループはいいなあ

大会3日目の午後にようやくフランス入りしたツール・ド・フランス。その日は黎明期からの伝統地であるバイヨンヌがゴール。レースが終わったあとは、一般客がなだれ込んだチームバス駐車場所の道路を慎重に運転しながら脱出。この日の宿は大西洋に近いリゾート地ということもあり、リゾートっぽい湖畔に面した三つ星のホテル過ごすことになりました。

朝食は1日の活力。フランスはやっぱりバターがおいしい

すでにコフィディス社の一行が到着していて、そのうちに赤いオフィシャルカーの隊列も到着。首脳陣も泊まるような、このあたりでは立派なホテルのようでした。

ツール・ド・フランス取材の場合、ホテルに到着したらシャワーを浴びて、レストランに繰り出して、疲れて寝ちゃうという生活なので、ホテルの施設を利用するヒマもありません。ベッドがあればいいじゃんと考えていた時代もあって、高いお金を払ってまでいいホテルを確保する必要がどれだけあるのか。この日のホテルもスパがありましたが、まったく興味がなく、そして水着を持ってきていません。

2023ツール・ド・フランス第4ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

周辺に安価なホテルが確保できないときは、高くてもアクセスのいいホテルのほうが疲れないし、やっぱり設備がいいと気持ちいいですよね。近年は計画的にいいホテルを予約してストレスを解消するようにしています。

アンドレ・ダリガード(右)とベルナール・テブネ

ホテルは湖畔に面してテラスのソファ席などがあり、コフィディス社チームがピアノを引いたり、ビールを飲んだりしてくつろいでいました。彼らはスタート地点のビラージュで関係会社やその町の偉い人をアテンドするために帯同しているグループ。安ホテルを転々としている広告キャラバン隊とは異なり、優雅な23日間を送っています。

ダックスのビラージュは闘牛場の横だ

ホテルには2つのレストランが併設されていましたが、部屋で軽く飲食して、すぐに休息。翌朝6時には起きて湖畔をランニング。欧州入りしてちょっと身体に脂肪がついたような気がしますが、ランは快調です。シャワーを浴びてからしっかりと朝食。料金は2400円もしますが、朝こそいっぱい食べないと。

スペインのサンフィルミン祭りの日にスペイン選手やチームが着用する赤いバンダナ

そしてゴールのノガロへ。闘牛場の横にビラージュがあり、町の人たちがおそろいの赤いバンダナを首に巻いて歓迎してくれました。

アルマニャック地方のフロックドガスコーニュは食前酒。そしてガチョウのパテ

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【ツール・ド・フランス現場雑感】バルが多いスペインではなかなか食事にありつけない

フィリプセンがスプリント初戦V…イェーツが首位堅持

第110回ツール・ド・フランスは7月3日、スペインのアモレビエタ・エチャノからフランスのバイヨンヌまでの187.5kmで第3ステージが行われ、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン(ベルギー)が大集団のゴール勝負を制し、2022年の2勝に続く大会通算3勝目を挙げた。

フィリプセンがツール・ド・フランス第3ステージ優勝 ©A.S.O. Pauline Ballet

総合成績ではUAEエミレーツのアダム・イェーツ(英国)が首位を難なく守った。

2023ツール・ド・フランス第3ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

みんな筋肉がフレッシュなので難しい戦いだった(フィリプセン)

スペインで開幕した23日間のレースは、この日のステージ後半にフランス入り。平坦なコースとあって、スプリント力のある選手が優勝を狙ってゴール前で一気に活性化。チームの牽引役を利用してフィリプセンがトップでゴールした。

「最初のスプリントはとても緊張する。みんな筋肉がフィレッシュなので難しい戦いだった。全員が全力を出し、そこから抜け出せたのだから自信になる」とフィリプセン。

2023ツール・ド・フランス第3ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)ビクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

山岳賞のニールソン・ポーレス(左)とローラン・ピションが先頭を走る ©A.S.O. Charly Lopez

最後かもしれないスペインの晩餐は海の幸限定で

スペイン滞在3日目。2日間は宿泊先の町全体が大騒ぎとなった夏祭りがあって、外に食べに行くのは巻き込まれる可能性があると判断。日本から持ってきた賞味期限目前の非常食と、スペインのスーパーで買ったスペインワインやチーズなどで部屋飲みしていました。

スペインはバルという飲み屋が多く、そこに入って教えてもらったプラザ(中央広場)のレストランで

スペイン最後の夜はペンシオンと呼ばれるアパートへ。フロントがなく、玄関ドアが閉まっているのでそこに貼ってある管理人の電話に国際コールしてアパート前に来てもらうというやつです。この日はゴールのサンセバスティアンから20km弱のアンドアンという衛星都市で、明るいうちに着いたのであまり焦りはありませんでした。

ペンシオンと呼ばれるタイプの狭い宿泊施設。それでも騒音に悩まされず、グッスリ

焦ったのは管理のマダムが来てから。「私のパソコンにはあなたの予約は入っていない」とのこと。「いや、ホテルドットコムで予約されているんですけど」という会話をお互いの翻訳ソフトを介してやり取りをして、なんとか新しくて清潔だけど極めて狭い部屋を確保しました。

でも重要なのは、安眠できそうな静寂を確保できたこと。ようやく寝不足が解消されるはずです。

スペインで過ごすのも、この先のキャリアのなかで機会はないかもしれないので、最後だけはレストランでしっかりと楽しむことに決めていました。できれば学生時代の終わりに欧州旅行した時、スペイン北西端のラ・コルーニャで食べたシーフード系がいいなとか。

大西洋岸を走った第3ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

今回のスペインでの最初で最後のディナー。まずはGoogleマップで繁華街を探し、地図上でナイフ&フォークのマークが付いたお店へ。ところがどうも雰囲気が違います。すでに入店しているお客さんは飲み物しか手にしていない。スペインのこういったバルはいわゆる飲み屋で、カウンターにサンドウィッチのつまみがある程度なんですね。

バルのお兄さんとなかなか通じない会話をしたあとに、親切なことに飲食を提供するお店の場所を教えてくれました。こうして教会の横、プラザと呼ばれる広場に面したレストランのテラス席に落ち着いてメニューを広げてみると…。当然ながらスペイン語が全くわかりません。

フランスに戻ってのランチはこんな感じ

ここは契約しているポケトークで写真を撮れば、そのまま画面に日本語が表示されるという手段に。ところが現実はそううまくいかず、表示された日本語がほとんど意味わからないレベル。結局はカタコトの言語力で念願のお魚を注文しました。

ツール・ド・フランスは単なるスポーツじゃないという証明

今回初めての外食で気分をよくして、狭いけど清潔な部屋でグッスリ。まずまずの疲労回復で翌朝を迎え、朝のランニングトレーニングで昨夜のレストランをマーキングしておきました。この町はもう来ないと思うけど、Garminアプリを振り返れば記憶がよみがえりますからね。

ランニングをしてみると町の地形がよくわかります。この町は崖の上に集落が作られているんですね。第2ステージの中盤に通過した町ですが、急坂を上って中心街を訪れ、さらに急坂を下ってゴールを目指す。これこそが単なるスポーツじゃないという証明です。

たまにはリゾートホテルで。ツール・ド・フランス首脳陣も同宿だった

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【ツール・ド・フランス現場雑感】eSIMのUbigiアプリで日本と同じようにスマホが使える

サンセバスティアンはフランス勢が勝利継承…ラフェ初優勝

第110回ツール・ド・フランスは7月2日、スペインのビトリア・ガスティス〜サンセバスティアン間の182kmで第2ステージが行われ、コフィディスのビクトル・ラフェ(フランス)が残り1kmから単独で抜け出して初優勝。

バスクの旗が選手たちを鼓舞する ©A.S.O. Charly Lopez

総合成績では前日に首位に立ったUAEエミレーツのアダム・イェーツ(英国)がその座を守った。チームエースのタデイ・ポガチャル(スロベニア)は区間3位となり、4秒のタイムボーナスを獲得。ジェイコ・アルウラーのサイモン・イェーツ(英国)を逆転して総合2位に浮上した。

ポイント賞のサイモン・イェーツ(左)と総合1位のアダム・イェーツ ©A.S.O. Charly Lopez

フランスの伝統チーム、コフィディスは2008年のモンリュソンでシルバン・シャバネルがステージ優勝して以来、15年ぶりの勝利となった。ラフェはスペインのサンセバスティアンでフランス人選手のステージ勝利の伝統を維持した。 1949年にはルイ・カピュ、1992年にはドミニク・アルヌーが優勝している。

2023ツール・ド・フランス第2ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

「サンセバスティアンではフランス選手がずっと勝っているので優勝を狙っていた。途中の上り坂では集団から遅れないだけを心がけて、残り1kmまで体力を温存していた」とラフェ。

総合成績ではアダム・イェーツがその座を守った。
「エースのポガチャルがボーナスタイムを獲得できるように走った」とマイヨジョーヌを着用しながらもアシストとしての走りを務めた。

ニールソン・ポーレスが山岳賞を守るとともにこの日の敢闘賞も獲得 ©A.S.O. Charly Lopez
区間優勝のラフェ ©A.S.O. Charly Lopez

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)ビクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2023ツール・ド・フランス第2ステージ ©A.S.O. Pauline Ballet

スペインはやっぱり慣れていなくて、なんとなく落ち着かない

昨日と同じ問題のホテルへ。昨夜はできるだけ喧騒の届かない3人部屋をあてがってくれましたが、今日のシングルルームは若者たちが結集した広場に面した窓があって、午後から始まっていた運動会の声援がよく聞こえます。

サンセバスティアンは雨

「こんなものならかわいいもんだ」と、つい油断していたら、昨日と同様に夜になってから若者たちの喧騒が始まりました。音楽グループの歌に合わせて飲んで歌ってと、これが翌朝6時まで続きます。彼らはどんなに体力があるんでしょう。

この日も実はあんまり眠ることができなくて、明るくなった7時すぎにはランニングのトレーニングに。広場は足の踏み場もないほどプラスチック製カップと割れた瓶が散乱しています。散会していない若者たちが道端にたむろしていますが、それほどガラが悪くは見えません。年齢としたら高校生か20代前半のようでした。

地下駐車場の位置を撮影しておかないと自分のクルマが見つからないおそれがある

取材活動は高速道路を使ってゴールとなるサンセバスティアンへ。バスク語ではドノスティアと呼ばれていて、道路標示は併記されています。サンセバスティアンに到着したらあいにくの雨。泥をかぶったボクの新車はこの雨のなかの高速走行で落ちるかなと思っていましたが、なかなかしぶとくきれいになるのは時間がかかりそうです。

そしてこの日はあまりにも早くゴール地点に向かったので、迂回路の進行方向を看板表示する担当車両を途中で追い抜いてしまいました。追い抜いたということは、彼らが看板を設置する場所より先行してしまったということで、ここからは地図を見ながらのゴール地点探し。そしてプレスセンター探し。しかもゴールはまだ交通規制されていなく、一方通行を逆走する設定のコースはあやうく対向車両(彼らのほうが正しい)と鉢合わせするところでした。

地下駐車場の入り口を撮影しておかないと自分のクルマが見つからないおそれがある

いずれにしても2023年はまだ地に足がついていません。なんとなく居心地が悪く、だから朝のランニングもGarminから与えられたメニューを完遂できず。この日は霧雨になってきたので体調を考慮して無理には走り続けなかったのですが。やはりツール・ド・フランスは外国に出ると、少しだけ違和感があって、ボク自身も微妙にくつろぐことができず、テンポをつかみきれないのかもしれません。

eSIMのUbigiアプリで日本と同じようにスマホを使う

今回のパソコンからの原稿送稿は、eSIMのUbigi(ユービージー)を利用して、テザリングによって通信しています。Ubigiはフランス拠点の接続サービス会社ですが、スマホアプリで利用でき、しかもさまざまなプランや地域が用意されています。

2022年は日本のtrifa(トリファ)を使いましたが、Ubigiが値下がりして経済的になったので変更しました。ただしフランスの会社だけに日本語のカスタマーサポートはなく、日本の人が海外で使うならチャット機能でていねいに利用方法を解説してくれるtrifaのほうがおすすめかも。Trifaもかなり安価になっていますからね。

トランジットのアムステルダムで一気に2GB以上使ってしまったので、スペインの3GBを追加購入した

Trifaのデータプランと価格

ヨーロッパ周遊・31日間(30GB)8750円
フランス・7日間(1GB)570円
ヨーロッパ周遊・31日間(10GB)3300円
●eSIMのtrifa(トリファ)のホームページ

Ubigiのデータプランと価格

フランス・30日間(3GB)1200円
フランス・30日間(10GB)2000円
フランス・30日間(50GB)5500円
スペイン・30日間(3GB)1300円
ヨーロッパ周遊・30日間(1GB)1200円
EU27+UK+スイス・1日間(0.5GB)290円
EU27+UK+スイス・30日間(3GB)1700円
EU27+UK+スイス・30日間(10GB)3200円

2022年はTrifaのヨーロッパ周遊・31日間(30GB)を使ってコストは1万1530円でした。今回はUbigiのEU27+UK+スイス・30日間3BGを1700円で購入しましたが、トランジットのアムステルダムでお試しのつもりでアクセスしているうちに2GB以上を使い込んでいました。スマホとパソコンの同期に大量のデータが送受信されたのかは不明。フランスに入ったらフランスのみの対応の30日間(50GB)を5500円で購入するつもりでしたが、スペインで残量がなくなってしまうので、スペイン対応30日間(3GB)1300円を追加購入。

それでも安いですね。そして今のところ2022年のTrifaよりもつながりやすい気がします。

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【ツール・ド・フランス現場雑感】かれこれ30年目。選手とともにパリのゴールを目指す

兄弟対決は弟アダムが兄サイモンを制し、総合成績で首位に

第110回ツール・ド・フランスは大会初日の7月1日、スペインのビルバオを発着とする距離182kmの第1ステージが行われ、UAEエミレーツのアダム・イェーツ(英国)が初優勝。2020年の4日間に続いて首位に立ち、マイヨジョーヌを獲得した。

アダム・イェーツがマイヨジョーヌを獲得 ©A.S.O. Pauline Ballet

この日は残り7.5kmから双子のイェーツ兄弟が抜け出し、ジェイコ・アルウラーの兄サイモンを弟アダムが制した。アダムは2016年新人王。サイモンは2019年のツール・ド・フランスで区間2勝している。

2023ツール・ド・フランス第1ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

このまま行っていいか、無線で確認して兄と走った

「エースのポガチャルを牽引する動きをしていたら兄と2人になってしまった」というアダム。兄弟はチームが異なるが仲がよく、アダムは無線で監督に2人でゴールを目指していいのかを確認。双子の一騎打ちを制した。

「ボクはあくまでもポガチャルのアシスト。これからも仕事をこなすよ」とアダム。

バスクの旗が打ち振られる ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨベール(ポイント賞)アダム・イェーツ(英国、UAEエミレーツ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ニールソン・ポーレス(米国、EFエデュケーション・イージーポスト)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

アダム・イェーツが区間3位のポガチャルと抱き合う ©A.S.O. Pauline Ballet

iPhoneのシャッター音が欧州対応となり、いつものように自動で消える

ツール・ド・フランスの全日程を単独で回ったのは1997年が最初。コロナ禍で現地入りを断念した2020年と2021年を除いて、現場取材はそれ以前10年間の自転車雑誌時代を含め30回以上になります。

車両ステッカーはブルー・ピンクで、広告キャラバン隊を1日に1回限定で追い抜いていいという権利がある

若いころはどんな挑戦が待っているんだろうとワクワク感しかありませんでしたが、いまはどんなアクシデントに遭遇するのかと心配しかありません。2023年は大移動がないので関係者としては難しくないルートだというのに。

とりあえずストレスをお金で回避すべく、往路のアムステルダム行きは追加料金8万円でビジネスクラスに昇格。フライトの30時間前から席に空きがあれば、わずかなプラス料金で快適な座席に移ることができるんです。

出発30時間前にアップグレードできたビジネスクラス

今回はアムステルダムを経由して、その日のうちにフランスのボルドーへ。外国人特権でフランス車を免税で購入できるシステムの陸送受け取り場所がボルドーくらいしかないからです。

トランジットのアムステルダムのハイネケン330ml缶が1000円することをチラ見しました。物価高騰と円安のダブルパンチは目をつむるしかありません。不注意でホテルをダブルブックするとかミスで無駄金を払うなどのことがなければ、必要な出費はもう仕方ないと考えるようにしています。ビールが必要な出費なのかはわかりませんが…。

あ、iPhoneのシャッター音が欧州対応となり、いつものように自動で消えました。

アムステルダムからフランス入りする飛行機が遅れて、ボルドー空港に到着したのは日本時間としてはすでに日にちが変わっていました。しかしこれは想定できたので、出国ロビーから歩いて行けて、24時間フロント対応のホテルに現地時間で午前1時着。

渡欧初日はベッドに横になれる瞬間がたまらないですが、今回は180度フルフラットのビジネスクラスで来てしまったので、それほどの感激がなく、バタンキューとはいかず。そして3時間ほど深く眠ると、さすがに日本時間としてはお昼となってしまったので寝ていられず午前5時から朝ごはん。大きな空港の近くのホテルは早朝に旅立つ人も多いですからね。

今回の取材の相棒はシトロエンC3エアクロス。実に操作性がよく時速130kmでも不安なく運転できる

そしてボルドーから自分名義の新車、シトロエンC3エアクロスを受け取って、陸路スペインへ。高速道路は全エリアで無料Wifiが利用できます。そして大会公式オランジーナで水分補給。フリースを着込まないと寒いです。

日本を離れた翌日には、ようやくツール・ド・フランスの現地入り。まずは米国の女性カメラマン、ベスに10年ぶりに遭遇。そして「あらー、髪の毛が随分グレーになったわね」との言葉をもらい、久しぶりとなる関係者にもごあいさつ。

この日から2日間はビルバオから20kmほど離れたムンギアという町の宿を確保していました。宿泊予約サイトのホテルドットコムから「この夜は祭りがあって騒音で眠れないから、キャンセルをおすすめします」というメールが来ていたのは知っていましたが、他ホテルを探すのも面倒なので読み飛ばしたままでした。

まだ日が暮れていないのにホテル前は大騒ぎだ

で、ホテルを訪ねるとスペイン語しか話せない主人と翻訳ソフトでのやり取りとなりました。

「眠れないからと、予約サイトに頼んでメッセージを英語で送ったのに」
「ボクの部屋はないの?」
「あるけど…、とにかく朝7時まで眠れないと思う」
「大丈夫。窓を占めるから」

と、なんとかキーをもらいました。この町に到着したのは午後5時前後ですが、すでに始まった祭りは凄まじいことに。男たちがホテル1階のバーで楽器とともに合唱し、隣の広場に集まった若い女性たちが音楽に合わせて深夜から合唱する。

ホテルの部屋から見た深夜3時の喧騒。普段は公共駐車場だがこの日は会場となった

それが朝7時まで続くんです。どんな体力をしているんでしょう。喧騒は壁や床を突き抜けて耳まで届く。バスク人の合唱をなめてはいけないと後悔するばかりでした。

ホテル近くに駐車場がないので、地面に水たまりのある未舗装地にクルマを停めておいたら、見事に泥だらけ。新車なのにカンベンしてください。そしてステッカーを盗まれたので、ゴールのペルマナンスに行ってもらわないと。こういのは経験値でカバーでき、あまり動揺しません。無駄に歳は取っていないですからね。

新車なのにカンベンしてください

いやはやの初日。無事にパリまでたどり着けるのでしょうか?

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