インドネシア東ジャワ州で行われているインターナショナル・ツール・ド・バニュワンギ(International Tour de Banyuwangi Ijen、UCIアジアツアー2.2)は、9月28日に第3ステージが行われた。ここまで2選手を個人総合上位に送り込んでいるキナンサイクリングは、レース後半の山岳区間での攻撃を決めて4選手が上位フィニッシュ。個人総合4位でこのステージをスタートしたトマ・ルバが3位に、同6位だった山本元喜が5位に浮上。
大会は後半戦へ。前半2ステージを終えた時点でキナンは、ルバと山本が個人総合上位につけるほか、第2ステージではサルバドール・グアルディオラが8位フィニッシュ。いい流れを継続している。
139.4kmに設定された第3ステージ。中盤に3級山岳スンベルブル(Sumberbuluh)、さらにフィニッシュ前約30kmのところで3級山岳パケル(Pakel)を上る。特にパケルは上り始めから10%前後の勾配が続き、頂上手前で最大勾配15%を迎える。舗装も粗く、この区間をいかにクリアするかがその後の総合成績にも関係すると見られる。
金曜日はイスラム圏の休日にあたる安息日であることから、レースは午後に実施。アクチュアルスタートともに飛び出した6人がそのまま逃げグループを形成。この動きを容認したメイン集団は、リーダーチームのセントジョージコンチネンタルがコントロール。その後ろにキナン勢5人がつけ、淡々と距離をこなしていく。そのまま中盤まで進行し、逃げと集団との差は約4分で1つ目のカテゴリー山岳のスンベルブルを通過した。
続く下り区間でメイン集団がペースアップ。先頭をゆく選手たちとのタイム差を着々と縮めていく。キナン勢5人はトラブルなく、集団内の好ポジションをキープしてレース終盤へと入っていった。
やがて迎えるはこの日2つ目のカテゴリー山岳にして、最大の勝負どころとなるパケル。距離3.6km、平均勾配7%にとどまらず、数km手前から上り基調となり、さらには道幅が狭くなることから、集団内のどの位置から急坂区間へと入っていくかもポイントとなった。
ここで満を持して動いたのはキナン。パケルの上りを迎えてすぐの激坂区間でまず新城雄大がアタック。これを数選手がチェックに動き、プロトン全体がスピードアップするとともに、各選手の登坂力の差が明確になってくる。セントジョージコンチネンタルのペースメイクによって新城は吸収されるが、上りの中腹で今度は山本とグアルディオラがアタック。さらにはルバとマルコス・ガルシアもカウンターアタック。最大勾配15%のポイントでルバとガルシアが、先に動いた2人に合流。
このキナン勢の奇襲攻撃に対応できたのは、個人総合3位につけるベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル)ただ1人。5選手に絞られた精鋭グループは、これらの攻撃に先んじて飛び出した選手や逃げグループのキャッチを試みながら、フィニッシュまでのダウンヒルへと入った。
約25km続いた下りで、序盤から逃げていた選手たちを捕まえたキナン勢。パケルでアタックを決めたジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング)にステージ優勝こそ譲ったものの、第2グループでやってきたルバが4位、グアルディオラが6位、山本が7位。終盤のけん引役として貢献したガルシアも8位に続き、攻撃の起点となった新城もフィニッシュラインを通過。5選手全員が最終ステージへと駒を進めた。
この結果、キナン勢は個人総合でルバと山本がともに順位を1つ上げて3位と5位に浮上。また、チーム内ステージ上位3選手のタイム合算で争われるチーム総合でも2位に順位を上げている。
大会は残すところあと1ステージ。最終日にして最大の見どころとなる、イジェン山の頂上フィニッシュでフィナーレを迎える。スタート以降しばらくは平坦が続くが、残り30kmを切ってから山岳区間へ。4級山岳ジャンベサリ(Jambesari)、3級山岳カリベンド(Kalibendo)と立て続けに越え、そのままイジェン山へ。登坂距離6.3kmで、平均勾配13%の上りは、登坂に入ってすぐに急坂となる厳しいものに。中腹で最大の22%、その後も20%前後の激坂が立ちはだかる。路面が滑りやすく、一度走りのリズムを崩すと勝負に加わるのが難しくなる。まさに、この山を制した選手が大会を制すると言ってもよさそうだ。レース距離は127.2kmに設定されている。
第3ステージで完全に勢いに乗ったキナン。チームが得意とする本格山岳で、総合での逆転を期する。
インターナショナル・ツール・ド・バニュワンギ・イジェン第3ステージ(139.4km)結果
1 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) 3時間22分26秒
2 ニールス・ファンデルプル(オランダ、チームプロサイクリングスタッツドットコム) +54秒
3 ヤコブ・ブリュク(オランダ、グローバルサイクリングチーム)
4 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team)
5 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル)
6 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +56秒
7 山本元喜(KINAN Cycling Team)
8 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +1分18秒
63 新城雄大(KINAN Cycling Team) +7分40秒
個人総合時間賞
1 マーカス・クレイ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) 11時間15分39秒
2 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) +2分54秒
3 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) +2分58秒
4 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) +3分1秒
5 山本元喜(KINAN Cycling Team) +4分11秒
6 ヤコブ・ブリュク(オランダ、グローバルサイクリングチーム) +4分19秒
19 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) +12分49秒
43 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) +15分55秒
44 新城雄大(KINAN Cycling Team) +16分46秒
ポイント賞
1 ジェシー・イワート(オーストラリア、チームサプラサイクリング) 21pts
7 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 14pts
13 山本元喜(KINAN Cycling Team) 9pts
15 サルバドール・グアルディオラ(スペイン、KINAN Cycling Team) 8pts
29 マルコス・ガルシア(スペイン、KINAN Cycling Team) 3pts
山岳賞
1 マーカス・クレイ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) 12pts
6 トマ・ルバ(フランス、KINAN Cycling Team) 6pts
11 山本元喜(KINAN Cycling Team) 2pts
チーム総合
1 セントジョージコンチネンタル 33時間51分54秒
2 KINAN Cycling Team +12分14秒
トマ・ルバのコメント
次々とアタックを決めることができて、チームワークでエキサイティングなレースにすることができた。明日(第4ステージ)はクライマーによる勝負になる。チーム一丸となって走り切りたい。
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