NIPPOデルコの日本勢もレース再開に向けて練習続行中

日本の4選手が所属するNIPPOデルコ・ワンプロバンスは、新型コロナウィルス感染症のパンデミックを受けて、依然先行きが読めない状況下ながら、シーズン再開に向けてトレーニングに打ち込んでいる。各選手と大門宏監督から近況報告やメッセージが届いた。

©NIPPO DELKO One Province

2020シーズンは現在UCI(国際自転車競技連合)公認のすべての国際レースが中止、あるいは延期され、他のプロスポーツ同様に中断された状態にある。NIPPOチームも1月下旬のシーズンイン以後、早くも5勝をマークし、好調なシーズンを歩んでいたが、3月8日から14日(最終ステージは中止)までフランスで開催されたパリ〜ニースへの出場を最後に、すべてのレースカレンダーが白紙になった。UCIは4月15日にすべての国際レースを7月1日まで、UCIワールドツアーを8月1日まで休止することを発表している。

11カ国から24選手が集まる多国籍チームは、所属選手、スタッフが全員自宅へと戻り、選手たちはそれぞれの国で定められたルールに従って、チームトレーナーからのメニューを元にできるかぎりのトレーニングを続けている。

厳しいロックダウン措置をとった欧州各国では5月に入り、徐々に規制が緩和され(フランスでは5月11日より、自宅から100km圏内での屋外トレーニングが可能に)、UCIは5月5日に8月以降の暫定レースカレンダー(UCIワールドツアー)を発表。今後、下位カテゴリーのスケジュールも発表される予定で、シーズン再開に期待が高まる。

一方で世界的に感染拡大収束の目処は立っておらず、日本国内のレースを含め、各大会の開催可否はレース開催国や外国人の出入国条件などに委ねられる形になる。

「待ってろ、2020シーズン!」別府史之

別府史之 ©NIPPO DELKO One Province

5月11日にフランスではロックダウンが解除されて、外でのトレーニングを再開できました。長くツラい時間でしたが、みなさんがくださったSNSやZWIFTでの励ましのメッセージのおかげで、モチベーションを保ちながら室内トレーニングをこなすことができました。今後は今まで外でトレーニングやレースができなかった分を取り戻すべく、自転車に乗れる喜びを感じながら、再び苦しく楽しいトレーニングを積み重ねていきたいと思います。
待ってろ、2020シーズン!

「またスタートダッシュを決めたい」中根英登

中根英登 ©NIPPO DELKO One Province

ここ数年は多くの時間を家族と離れ離れに過ごしてきていましたが、遠征ができなくなった今は自宅で家族と過ごす時間を大切にしています。今年の初戦となったツール・ド・ランカウイ、2戦目のツール・ド・台湾と、最高のコンディションでいいシーズンがスタートできました。世界中に平穏が訪れて安全にレースが再開されたときは、また同じようにスタートダッシュを決めて、チームを支えてくれている多くのスポンサーとファンの方々に、元気をいち早く届けられるように今できる範囲でしっかり準備していきます!

「リベンジするべく鍛え直したい」岡篤志

岡篤志 ©NIPPO DELKO One Province

このような状況になり、現在は室内トレーニングや軽いソロライドをメインに、コロナ収束を待つ私です。今年は1月からのシーズンインとなりましたが、納得のいく走りができないまま、シーズン中断となってしまいました。まだ次の予定はわかりませんが、今は自分のパフォーマンスアップを目標に、来るシーズンに向けて、リベンジするべく鍛え直したいと思います。みなさまも健康に気を付けて、このコロナ禍を乗り切りましょう!

「今も昔も変わらず自分を極めていきたい」石上優大

石上優大 ©NIPPO DELKO One Province

まずは、このような状況でも応援してくださるファンの方々、スポンサーのみなさまに心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
オリンピックをはじめ、レースが軒並み中止・延期になっていくなか、個人的にはいつもと変わらぬ、モチベーションで練習することができています。なにをモチベーションとしているかと言うと難しいところですが、今も昔も変わらず「自分を極める」というところが根底にあると思います。ここ最近は練習をこなし、練習後、本を読むという日々が日課になりつつあります。
今は自粛生活で、いつもとは違うストレスを感じ、とても苦しい時間だと思います。ただ、どうか今は自分の命、周りの人の命を大切に、この時間を切り抜けましょう。またみなさまの前でレースができることを、心より楽しみにしています。


大門宏監督のコメント

フランスやイタリアをはじめヨーロッパ各国でのロックダウンが始まってから2カ月が過ぎようとしている。人類を脅かすパンデミックの最中、日本だけでなく世界中の市民の雇用を担っている企業、ホテル、観光業、飲食店に携わる方々にとって先の見えない厳しい状況が続いている。大会の主催者、我々にとって民間スポンサーの存在はあまりにも大きくチーム運営の根幹だが、プロスポーツの運営に携わる関係者の1人として連日ここまで世界中の政府の動向、世界経済に関心を持ったことはかつてなかった。

肺炎の高熱も耐え難い。現役時代、ナショナルチームの遠征先(コロラドスプリングス)で肺炎の症状で生死をさまよった。最近「医療崩壊」に社会の関心が集中しているが、夜中に救急車で担ぎ込まれた病院で、身動きもできず気絶寸前、意識ももうろうだったこと、ドクターに身を委ねるしかなかった感謝の記憶が走馬灯のように蘇ってきた。

我々のチームは1月からシーズンが始まり3月のツール・ド・台湾、パリ〜ニースまで14レースの活動はできたが、NIPPOの長年にわたる目標でもある「将来の担い手」を抱える国内チームは公式レースの開幕戦も開催されていない。レースの観戦を楽しみにしているファンにとっても寂しい限りだが、多くの選手にとってトレーニングのみに明け暮れる状況が続いている。もちろんプロ野球などメジャースポーツ含めてスポーツ業界全体に言えることだが大会の主催者、チーム運営側の心境を察すれば察するほど事態を深刻に受け止めている。

UCIから修正された8月からのワールドツアーのレースカレンダーが発表されたが、開催条件に関する指針でも示されているとおり、実際の開催の可否に関しては、新型コロナウイルスの感染状況次第であり100パーセント開催国の政治判断に委ねられている。しかしながら公式な訂正スケジュールが決まったことは、さらなる延期はない、社会の影響を踏まえた「中止」も覚悟している。

日本とEU間の出入国だけに限らず世界中を飛び交う我々にとって各国の定める「隔離政策」も活動の鍵を握る。もし現在標準化している「14日間の隔離」が年末まで実施されれば、我々の転戦活動にも大きな制限が強いられることも必至。

今月中に明らかになりそうな我々の主戦場となるプロシリーズなど他のレースのスケジュールの発表を待ってから、日本だけでなく世界中の社会の動向に注視しながら選手とともに粛々と準備していきたい。

ツアー・オブ・ジャパンの中止は残念だったが、これからも日本はジャパンカップサイクルロードレース、ツール・ド・北海道など4つのUCIレースが予定されている。日本でレースの運営に携わる関係者の苦労は常日頃から実感しているが、この経済状況含めて厳しい状況、逆風も予想されるが、スタート前、ゴール後のソーシャルディスタンスに関しての配慮など、国内チームとも協力してチーム側もできる限りの努力はしていきたいと思っている。

●NIPPOデルコ・ワンプロバンスのホームページ

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