9200系デュラエースがついに登場…完成車は軽自動車並み価格に

自転車用パーツで最高級と言えば、大阪府堺市にある部品メーカー、シマノが製造するデュラエースだ。2021年9月1日に同社はその最新モデルとして9200系を発表。即日のうちにジャイアント、ピナレロ、トレック、ブリヂストンサイクルなど世界の大手メーカーが同パーツ搭載の完成車をリリースした。前2段、後ろ12段の電子制御変速、制動力の高いディスクブレーキ。完成車価格は150万円前後となった。

新型DURA-ACE Di2

最新モデル発表と同時に各メーカーが搭載車を発売へ

9200デュラエースは変速とブレーキシステムのみの展開だが、合計45万円以上する。後ろ変速機の単品価格は8万8704円だ。乗れる状態にするにはフレームや車輪、ハンドル、サドルなどの部品をそろえる必要があり、自転車1台としては軒並み120万円を超える。

ジャイアント・TCR ADVANCED SL0 DISC DA
DOGMA F12 DuraAce Di2 Disc

9月下旬に発売されるブリヂストンサイクルのアンカーRP9は、完成車価格で121万円。ちなみにシマノが同日発表した第2グレードのパーツ群、アルテグラを搭載したモデルを選択すれば66万円。細かな部分を考慮しなければ、この金額が最高級パーツと第2グレードの差の指標ともなる。

トレック・ドマーネ デュラエース

世界最大級の自転車メーカー、ジャイアントもデュラエース搭載のTCRアドバンスドSL0ディスクを発売。価格は137万5000円。イネオス・グレナディアーズチームが乗るピナレロはドグマFデュラエースDi2 12Sを181万5000円で発売した。もはや軽自動車が購入できる価格だ。

アンカーRP9・レーシングブラック

デュラエースはなにがいいのか? 賞金のかかったプロレースでは、わずかな性能差が勝負を分けることもあり、選手が使いたがるのは理解できる。実際に、発表前の本場レースでは刻印を隠したプロトタイプを使う選手もいた。そんな高性能パーツを一般の人たちにも使いこなせるのか?

今回の9200デュラエースに限らず、高級パーツの魅力はストレスを感じることなく走れることだ。握力の弱い女性でもブレーキレバーを軽く引くだけで確実に制動する。上り坂で苦しいときも、指先でワンクリックすれば瞬時に変速してくれる。だから初級者こそデュラエースが重宝するとも言える。精巧な作りなので、整備さえ怠らなければ10年は初期性能を大きく落とさないというメリットもある。

こういった点を総合するとお買い得感が少しある。ただしシマノ製品はある程度のグレードのモデルなら基本性能は十分なので、コストを考えれば廉価グレードを選択するのも間違いではない。F1レースでは世界の最高峰で戦うマシンを一般愛好家が手にするチャンスはないが、デュラエースはお金さえ出せば自分のものにできる。高いけど。

新型ULTEGRA Di2

楽になったらもう元には戻らない…手元変速の開発

変速機を動かすレバーは、かつては下側フレームに取り付けられていて、金属製のワイヤでつながれた変速機を動かしていた。変速するためにはハンドルから手を離す必要があった。これでは快適ではないと考えたのがシマノだ。まず変速レバーをインデックス化して、ワンクリックするごとにギアが1段ずつ動作するようにした。さらにギア側の歯先それぞれに切削加工をしてチェーンが瞬時に動くようにした。そしてついに、走行中にたいてい握っているブレーキレバーに変速レバーを組み込んでしまった。手を離さないで変速できるようにしたのだ。

1990年、7700デュラエースに世界初としてこのシステムが導入された。あっという間に世界標準となり、他メーカーも追従。次第にこのシステムは最下級グレードまで採用されるほどスタンダードなものになった。デュラエースはその後、モデルチェンジのたびに4ケタの品番を大きくし、十代目が9200系となる。