【ツール・ド・フランス現場雑感】帰国時のPCR検査をパリで初体験

第109回ツール・ド・フランスは最終日前日となる7月23日、第20ステージとして距離40.7kmの個人タイムトライアルが行われ、ユンボ・ビスマのワウト・ファンアールト(ベルギー)がトップタイムを叩き出し、今大会3勝目、大会通算9勝目を挙げた。

第20ステージを制したファンアールト ©A.S.O. Charly Lopez

首位ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)は区間2位の好タイムを記録してマイヨジョーヌを堅持。初の総合優勝を確実にした。

マルク・ヒルシ ©A.S.O. Pauline Ballet

この日の区間優勝はビンゲゴーのチームメートであるファンアールトで、「チームから総合優勝者が誕生することに興奮している。彼は人間としてもしっかりしている」とコメント。

今大会3勝目、大会通算9勝目と個人記録も際立つが、ビンゲゴーを連日献身的にアシスト。ファンアールトがマイヨジョーヌ獲得の立役者となったことは間違いない。

ビンゲゴーは中間ラップタイムで暫定トップと好走 ©A.S.O. Pauline Ballet

●4賞ジャージ
マイヨジョーヌ(個人総合成績)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
マイヨベール(ポイント賞)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ビスマ)
マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)ヨナス・ビンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ビスマ)
□マイヨブラン(新人賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEエミレーツ)

2022ツール・ド・フランス第20ステージ ©A.S.O. Charly Lopez

15分で終わったPCR検査、そして検査結果はさり気なく到来

2022年はこれまでのツール・ド・フランス取材よりも1日前にパリ入りする必要がありました。エールフランスが減便し、大会翌日の朝の帰国便しかフライトしていないため、この日にフランス政府推奨の検査機関があるパリでPCR検査を済ませておかないといけなかったからです。

PCR検査機関で7時半の開業を待つ人たち

パリでボクの到着を待っていてくれたのは、40年前に入学した大学フランス文学科でボクの後ろに座っていた同級生でした。つまり山口姓で、名前もちょっと似通っています。現在はパリ在住で、めったにない機会なので連絡を取り合いました。

この歳なのでボクのことを「山口くん」と呼んでくれる人はもはやほとんどいないんですが、そう呼ばれることのなんと心地よいことか! そしてボクも学生時代と同じで「山口さん」と呼びます。

かつての同級生の名前が次々と出て、一番楽しかったころの記憶が蘇りました。会ってよかった。山口さん、これからもパリで頑張ってください。

沿道の盛り上がりを楽しみながら仲間が集まる生活が戻ってきた ©A.S.O. Charly Lopez

午前9時にPCR検査をした結果が午後4時に。結果は「ネガティブ!」

この懐かしい再会の前に、帰国に向けた大事なタスクを済ませていました。日本政府が帰国時に義務づけているコロナ陰性証明取得のためのPCR検査です。以下、2022年7月24日現在の状況でご紹介しています。

パリ16区にあるラボ。フランス政府推奨のPCR検査機関リストにあった

日本人が日本に帰国する際は帰国便離陸前72時間以内に医療機関でPCR検査を受け、医師が発行してくれる陰性証明を提示する義務があります。町の薬局などでできる検査はおおよそ不可で、鼻咽頭ぬぐい液で抗原定量検査など指定された方法でないと搭乗すら認めてもらえないとのこと。そのためフランス政府が推奨する病院を調べ、検査日時を予約しました。

さてフランス政府が推奨する検査機関はホームページでリスト掲載されています。でも電話して予約をするのって大変ですよね。そんなときは旅行代理店に依頼するのが確実なのでオススメします。その手数料はボクの場合、35ユーロでした。別コストになりますが現地オペレーターに付き添ってもらうこともできるそうです。

実際にどんな段階を踏んで陰性証明を取得するか。

  • PCR検査機関に予約を入れる。メールで予約受け付け表が届く。
  • 検査機関を訪れて問診票に記入。受付事務に処状況を確認しながら、50ユーロを現金で支払う。フランスの健康保険証を持っている人は無料。
  • 日本政府が認める検査方法で検体を採取。わずか3分ほど。
  • 数時間後に登録したメールに結果が記載されたホームページアドレスが届く。フランス語の証明がダウンロードできる。
  • 日本の場合、フランス語の陰性証明は認められないので、翌日に改めてPCR検査機関を訪ねて証明書をもらう。
パリのレンタルサイクルシステム、ベリブがeバイク化していた

ボクが検査機関を訪れたのは7月23日の午前9時。前日までにピレネー山脈から900kmを移動して、前夜にパリまで20kmほどのホテルに到着。検査機関には遅れてはならぬという通達を受けていたので、まさかの朝の渋滞でドキドキしないように朝7時前にホテルを出発したらわずか30分で到着してしまいました。

パリの土日は路上パーキングが無料なので検査機関の真ん前に駐車してしばらく観察。開業時間の7時半にはすでに3人が並んでいました。その後も分刻みの予約者があとをたたずに医療機関を訪れていました。

ボクは近くを散策してブランジュリー屋さんでパンとコーヒーをいただきながら時間を費やし、予約時間の9時に足を踏み入れました。フランス語の問診票を記入することになりますが、想定外の質問としては「最後のワクチン接種の日時」と「これまでコロナ罹患したか。した場合は罹患日」という項目がありました。

医療機関は次々と検査希望者が訪れますが、予約時間がばらついているのでほとんど待たずに事務担当者のチェックに。パスポート番号や生年月日が正式に入力されているかを訪ねられ、50ユーロの支払いをその場でしているうちに、担当者が検体容器に貼るボクの名前のシールを出力。

3年ぶりに訪れたパリは自転車レーンが倍増。車道と同じ幅のレーンがセーヌ川沿いに伸びる

そしていよいよ採取。女性ドクターが小部屋に案内してくれるんですが、その隣に高所作業をする脚立がなぜか片付けられずに置いてあって、そんなもんなのかなあと心が和みました。

病院や検査機関はマスク必着なのですが、検査時は鼻の穴が露出するまで下げろと、それでいて口は出すなと指示されました。大きなリクライニングシートに深く座り、あごを上に向けるような体勢でおよそ20秒くらい鼻腔に綿棒を差し込まれてぐるぐるされ、「以上」とそっけなく。

「セ・フィニ?」と質問すると「セ・フィニ!」と。なんのあいさつもなくその施設から追い出されました。

夕方3時半過ぎにその医療機関からメールが到着し、ログインアカウント作成を求められ、それが受理されると「検査結果」のページにアクセスが可能になります。すぐに再度のメールがあって、ログイン可能になったので、検査結果をのぞいてみると「ネガティブ!」の文字が。

以上全てフランス語での進行でしたが、翻訳ページを活用すればなにを求められているのかが把握できるので、問題はないと思います。

2019年に片側の尖塔が火災で崩壊したパリのノートルダム大聖堂も修復が進んだ

翌日に厚生労働省のフォーマットに記入してもらえば完璧

ボクの利用航空会社はエールフランスで、エールフランス側の搭乗前健康調査ではフランス語の陰性証明をアップロードすれば完了。ただしファストトラックのSOSアプリでは日本語あるいは英語の証明書が求められます。そのため翌日に医療機関を再訪し、日本でプリントアウトして持ってきた厚生労働省のフォーマットを提示。これに記入してもらったものをアップロードすると、証明完了となりました。

帰国時の流れは翌日の現場雑感でご紹介しています。
●ファストトラックのSOSアプリは青色にしておいたほうがいい

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