ファンデルプールとファンアールトはどっちが強い? どちらも強い!

2023シクロクロス世界選手権がオランダのホーヘルハイデで2月3〜5日に開催され、マチュー・ファンデルプール(オランダ)とワウト・ファンアールト(ベルギー)が一騎打ちの展開に。抜きつ抜かれつの激闘はファンデルプールが最後にライバルを制して5回目の世界チャンピオンになった。2人のデュエルはこの後、ロードレースに舞台を移して引き続き行われる。

シクロクロス世界選手権はファンアールト(左)とファンデルプールのマッチレース ©Kristof Ramon / Red Bull Content Pool

彼との戦いは10年続く。でも終わりじゃない。必ずまた勝負することになる

2人は幼少期からのライバルで、常に世界タイトルを争ってきた。今回のレースでもスタートしてすぐに2人が後続選手に差をつけて先頭を走る展開に。立て板を飛び越えるセクションでファンデルプールがわずかに優位に立つものの、走破力があるファンアールトが先行を許さない。勝負は最終周回へ。ファンアールトはライバルが板越えで主導権を握る前に勝負に出た。ファンアールトがわずかにリードを取り、ゴールを目指したが、ファンデルプールが必死に食らいつき、最後のコーナー手前で追い越して勝利した。

祖父レイモン・プリドールがなし得なかったマイヨジョーヌを獲得したファンデルプール ©A.S.O. Charly Lopez

5度目の世界チャンピオンになったファンデルプールがレース直後にコメントした。

「多くの人は以前にも同じような勝負を見たことがあるよね。もう10年も彼との戦いは続いている。でもこれで終わりではない。まだロードシーズンがあり、必ずまたファンアールトと勝負することになるだろう」

シクロクロス世界選手権の優勝者

●ジュニア
2012ファンデルプール2位ファンアールト
2013ファンデルプール②U23でファンアールト3位
●U23
2014ファンアールト3位ファンデルプール
●エリート
2015ファンデルプール3位ファンアールト
2016ファンアールト
2017ファンアールト②2位ファンデルプール
2018ファンアールト③3位ファンデルプール
2019ファンデルプール②2位ファンアールト
2020ファンデルプール③
2021ファンデルプール④2位ファンアールト
2022ピドコック
2023ファンデルプール⑤2位ファンアールト
丸数字は複数優勝回数
2022ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを着用するファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

宿命のライバル。ともに28歳。どちらも身長185cm前後と自転車選手としては大きい。2022年のシクロクロス世界選手権、ファンデルプールは東京五輪マウンテンバイクでの落車で痛めたケガにより欠場。ファンアールトもロードシーズンでのタイトル獲得のために出場を見送った。両雄不在のレースで英国のトム・ピドコックがチャンピオンになったが、今回は2人の圧倒的実力を目にしてピドコックが早々に連覇を断念。ロードシーズンに照準を当てるため出場しなかった。こうして2年ぶりに、2人のデュエルが実現した。

ファンデルプールの父はロードやシクロクロス界の有名選手。母はツール・ド・フランスで万年2位と呼ばれなからも人気があったレイモン・プリドールの娘だ。地元オランダで開催された今回のシクロクロス世界選手権のコース設計は父がした。それだけにライバルに負けるわけにはいかなかった。

2021ツール・ド・フランスのファンデルプール ©A.S.O. Charly Lopez

ロード選手としてもスーパースターだ。2021ツール・ド・フランスでは第2ステージで優勝して首位に。祖父も着用できなかった黄色いリーダージャージー、マイヨジョーヌを6日間にわたって獲得した。

ツール・ド・フランスであらゆる勝ち方を見せたファンアールト

一方のファンアールトもツール・ド・フランスで通算9勝を挙げている。特に21年は山岳、個人タイムトライアル、そして平坦ステージの最終日パリと変幻自在に勝利を量産。昨年は大会2日目にマイヨジョーヌを獲得すると、第4ステージで独走勝利。その後はエースのビンゲゴーのアシスト役に徹し、初優勝の立役者となった。

冬場の自転車種目であるシクロクロスはこの世界選手権を最後にシーズン終幕。このあとはロードレースが週末ごとに欧州各地で開催されていく。春はミラノ〜サンレモ(イタリア)、ツール・デ・フランドル(ベルギー)、パリ〜ルーベといったワンデーレースが注目される。

ツール・ド・フランスで大活躍のファンアールト ©A.S.O. Pauline Ballet

「ライバルとの戦いはこれからだ」。オランダとベルギーの威信をかけて戦う両者の言葉が一致した。

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